ブックレビュー

[たかお] 最後に、ニュースグループ alt.books.david-weber に今年5月14日に投稿された作者自身の近況報告をお目に掛けよう。 ウェーバー氏は今年の始めごろに手首を骨折したらしく、ニュースグループでひところ話題になったが、その執筆への影響とか、私生活で人工受精で苦労している、とか、いろいろな話題が書かれていて興味深いと思います。 
[David M. Weber]  わたしは2ケ月ほど執筆予定から遅れている。 実際、もう少し遅れているかもしれない。 はっきりとは言えないけれど。 わたしは3冊目のオナー・ハリントン・アンソロジーを書き上げるべく努力していて(これは既に書き上げているべきなのに、まだ終わっていないものだ)、遅くとも今月末には片づけたいと思っている。 それが終わったら、Harry Turtledove と Bill Fawcett にアンソロジーの共著者として、2編の原案を提供しなければならない。 それと同時に、当初は3部作の予定だったが今では4冊になり、おそらくもっと増えるだろう John Ringo と共著のシリーズの第1作に取り掛かる。 7月になれば、Eric Flint との共著のわたしの担当分を仕上げる予定になっていて、この共著は彼の小説「1632」の続編にあたるものだ。 この特別な本はわたしが彼に 「1632」宇宙のアンソロジーを一緒に作らないかと言ったことから始まったものだが、ストーリーのアイデアを話し合っているうちに、小説になってしまったものだ。 それがわたしの手を離れれば、次のオナー・ハリントン物に取り掛かれるだろう。 ということは実際には8月か9月に書き始めて来年の春あたりに書き終える、つまり、出版は2001年の晩夏か初秋になるだろう。 オナーの10巻目の次の本はたぶんファンタジー Bahzell の3冊目になるだろうが、他にも2冊仕掛かりを抱えているのでたしかではない。 この2冊は関連した歴史小説で、一つは現在の、一つは現在と1940年代を行き来するものだ。 当面は、Steve White は「In Death Ground」の続編の「The Shiva Option」を執筆している。 彼は半分ほど書き終わっていて、完了まであとだいたい4・5ケ月かかる見込みだ。

 以上からわかると思うが、わたしの時間は手首を骨折する前でさえギッチリ詰まっていて、この骨折が Steve が「The Shiva Option」のほとんどの部分を執筆している理由だ。 わたしは基本のプロットと荒い章立てを作り、同時に本の戦闘場面の詳細な基本部分を抽出してウォーゲームのシナリオを組み立てている。 わたしたちの執筆速度はずいぶん違ってきてしまったので、わたしたち二人が以前の巻でのようなかたちで共同作業をすることは実際的でなくなったのだ。 以前は、わたしたちは執筆の担当を章単位で分割していた。 ある章はわたしが、ある章は Steve が、そして登場人物の見方が共通するような部分については共同で執筆したものだ。 プロットの組み立てのほとんどと戦闘場面の企画については同様にわたしがやっていたが、基本的な執筆と登場人物の性格付けは、今度の本がそうなるだろうよりずっと等分に分担していた。 それでも2・3章はわたしが担当するつもりだし、もし Steve が締め切りに詰まったら、それより多くを担当するかもしれないが、わたしがやらなければならないことを考えればありそうにないだろう。 いろんな意味で、 Steve とわたしはこの本をわたしたちがかつてやっていた方法で出来るようになるまで延期したいのだが、それにはあと少なくとも2年はかかるだろう。 それで話し合った結果、わたしたちはストーリイがあまりにも長い間中断しており、理想的な執筆の型で出来ないとしても、この本を完成させて読者に提供する義務があると判断した。

 予見できる将来のあいだ、オナー・ハリントン宇宙と Bahzell宇宙に専念することはありそうなことだ。 Bahzell については少なくとも2冊の執筆を予定しており、さらに Bahzell 本を書き終えたら、5冊物のファンタジーの大作をかかえている。 オナー物に関しては、ストーリーが完結するまでにさらに8冊か9冊が刊行されるだろうと考えている。 それにわたしは今のところオナー本と登場人物が重複する、同じ宇宙の第二のシリーズを企画していてる。 オナー宇宙("Honorverse")を舞台にしてさらに20冊が(アンソロジーを除いて)最終的に刊行されるかもしれない。

 わたしの手首の現状に関しては、添え木は外したし、外科医には通常どおり手と手首を使ってかまわないと言われている。 わたしの手首はおそらく10%ほどの永久的な運動能力の損失を被ったようだが、これは手術前に考えていた80%強に比べてはるかにましだ。 さらに手首がおそらくcarpal tunnel syndrome (手根管症候群) のような疾患にかかりやすいこと、年をとってから関節炎にかかりやすいだろう、と告知された。 関節炎はとにかく父親の家系の持病ではあるが。 そういうわけで、執筆を完全に音声入力に移行するよう真面目に取り組んでいる。 繰り返し動作によるダメージを避ける唯一の方法は繰り返し動作を避けることだし、コンピュータに話すのはキーボードを両手で叩くのを避ける一法なのだから。 マイクを何度もアップグレードし、音声入力システムの一般トレーニングに励んで、かなりの進歩があったと信じている。 とはいえ、まだまだ本来そうあるべき自然な形には感じられず、ソフトウエアも生憎いくつかの単語で認識しやすいように単語を選ばなければならなかったり、独自の文法ルールを強制しようとする傾向が続いている。 キーボードの時に比べて、打ち間違いの修正にほぼ2倍の手間がかかるが、音声入力ソフトウエアにキーボード速度の約2倍か、たぶん3倍も聴き取らせることができるので、結局のところ打ち間違いの修正は、執筆速度にとっては重要な問題ではない。 問題なのは、それが思考の流れを壊すところにあるのだ。 ソフトウエアが完全な文や文句を好む事実が、それは文脈を解析して該当する同音異義語を決定しているからなのだが、もう一つの問題なのだ。 というのは、それが異なったスタイルの文の組み立てを強制し、そのスタイルがまだ自然に馴染んでいないからだ。 しかしながら、それも時間と練習の問題なのだろうと思う。

 時間を食い潰し執筆スケジュールを遅らせる他のものは、妻とわたしが体外受精をしようとしていることで、4月の大部分と(実際には3月のかなりの部分も)、病院通い、ホルモン注射、卵子の取り出しと再移植、妊娠テストなど、など、などで食い潰されたのだ。 なおまずいことに、わたしたちは4月初めに成功したと思ったのに、実際には生育不能な胎児で中絶せざるをえなかったのだ。 これらすべてに、骨折した手首、音声入力ソフトウエアへの移行と完全に馴染みのない記述テクニックなどなどを加え合わせたら、あなたも何故少しばかりわたしの執筆スケジュールが遅れているのかおわかりだろうと思う。 あいにく、一度スケジュール遅れが起きれば、一種の蛇腹効果で遅れたものはすべて執筆待ちの列から脇に弾きとばされることになる。 現時点での最良の見積もりでは、今は2から3ケ月の遅れにすぎないが、遅れを取り戻して実際のスケジュールに復帰するのに8ケ月から2年はかかるだろう。 そもそもわたしがスケジュールに遅れていることが、わたし自身ほどには読者に明らかにならないと良いのだが。

 今年の残りについては、できるだけ執筆活動から気を散らさないようにする。 7月に Conestoga に、8月にアルバカーキの BuboniCon大会とシカゴの WorldCon大会に参加し、10月か11月にミシガンのランシングに行く予定だ。 それらを除けば、今年は大会に参加しないつもりだ(まあ、戦没将兵記念日前の週末にチャタヌーガの Liberty Con に参加する予定だが)。 でも、Sharon とわたしは9月に体外受精の第二ラウンドを始めるが、これはたぶん少なくともいくらかの執筆の邪魔になるだろうし、それに家の改造計画もかかえている。 これがまた同様に約1月半遅れているのだ。 建築家に計画の手戻りをもたらした悪天候のおかげだ。

 もうかなり遅いから、この辺でやめよう。 いつもなら音声入力ソフトウエアを使って書いた文書は見直して校正をかけるのだが、本当にその時間もない。 だから、この文書にはそこここに意味をなさない話が隠れているかもしれない。 ここに書かれた情報は特別に許可の必要なものでもないし、ニュースグループで共有してかまわない。 Adam Burkeside は、彼はときどきニュースグループ用の情報を求めてわたしを悩ますのだが、残念ながら今はラテンアメリカのどこかにある種の土木事業で出かけている。 音信がないことからすると事業にかかりきりになっていて、また浮上するのに数ケ月かかるかもしれない。

 それじゃ、もう行かなくちゃ。

[たかお]札幌在住。 地場の弱小ソフトハウスの窓際に棲息。趣味は商品相場のささやかな博打。 酒の自家調達を目指し、現在ビール、どぶろくを醸造中。 E-mail: mitakao@pp.iij4u.or.jp

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