まほう使いの弟子

白羽小雪

 泣いている子供に「パンダのハンカチ出すぞっ」と両手を広げたらウサギがわんさか現れて。なかなか捕まえられないザマを見られて笑われた。
 おばあちゃんが道を渡れないから「黄色い旗を出すぞっ」と意気込んだらチェッカーフラッグが飛び出してとんでもないことになっちゃった。おまわりさん人形やら手旗信号やら手裏剣の勢いで出しまくり収拾ついたときにはおばあちゃん地下鉄の階段を降りていた。
 あ〜ぁ。どうしてあたしってこうなんだろ、って小石蹴ったらその先にあの人が震えていた。たったひとりで難しい本広げてコートのえり立てている。大急ぎでLOVEを出そうと胸元叩いたら出てきたのは肉まんで、それでも「ウン」って言って駆け寄って。二つに割って差し出したら、あったかかった。

(了) 2000/3/5


「超短編特集!」のTopページへ