日本の奇祭

Shintaro Takasugi

 ここ文分(ぶんぶ)村では奇妙なことに住民の左右の腕の長さが違うという。その秘密は六百年続いている奇祭、ぶんぶ祭にあった。
 宇手摩神社のお祀りする神は宇手摩輪仕文分毘売(ウデマワシブンブヒメ)。伝説によれば西へ向かうヤマトタケルを見送る宇手摩輪仕文分毘売が、名残惜しさから腕を頭の上でぶんぶん回し続けたところ、あまりの勢いに風が起き、体が松の梢まで持ち上がったという。祭ではその故事にちなみ、村人は一晩中踊り続ける。

田植えやらせーりゃーえー
となりん田ぁまで手が届くー
はあ、ぶんぶん


 そう、このぶんぶんというところで腕を回す動作が、住民の片腕を長くする原因となっているのだ。

(了)


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