『ゴジラ2000』アメリカ上陸実況中継
〜ミレニアムゴジラ、アメリカ上陸!〜

今号より、アメリカで公開中の最新SF映画のレビューコラムを担当することに
なりましたデトロイト在住のmitchと申します。日本公開前にいち早くレビュー
をお届けしていきますのでお楽しみに。

・・・で、初回から問題発生です。
実はこの時期、アメリカのショウビズ界は『映画の中休み』で、目立ったSF映
画の新作は全くと言っていいくらい公開されていません。迷ったあげく、今回は
日本では今年の正月映画として公開済みの『ゴジラ2000』のアメリカ公開時
のアメリカでの反応をお届けすることとしました。

ご存知のとおり、2年前にはエメリッヒ版『Godzilla』が全米&日本で公開され、
「あんなもんはゴジラじゃない!」との酷評とともに消えていきました。(個人
的にはストーリーはともかく、SFX的には見所満載で悪くないと思ってますが。)

そのせいか予定されていたPart2(1作目ラストシーン参照)はハリウッドでは
製作されることなく、ついにこの8月21日に日本製『ゴジラ2000ミレニア
ム』が『Godzilla2000』として全米公開されるに至ったわけです。

公開の間際にはアメリカの評論家からも反応がちらほら。『Mr.Showbiz』という
サイトの
http://mrshowbiz.go.com/reviews/moviereviews/movies/Godzilla2000_2000.html
(あ、ちなみに点数は100点満点ですよ。10点満点ではありません。)
といった反応がプロの評論家内では支配的でありました。

曰く、「60年代・70年代ならともかく、このデジタル時代にプラスチックの
目玉つけた着ぐるみが模型の街を歩くのを見たいか?」(でもこれが日本のゴジ
ラなんだけど・・・)「ジュラパを見たことない6歳以下なら満足するか?」
「GCIはiMacで作ったとしか思えん」「最悪の演技・不快な吹き替え」・
・・と罵詈雑言。

しかし、ここまでメタクソな評価が逆に私の「見たい!」という気持ちを駆り立
て、公開初日にワクワクしながら劇場へと向かったのでありました。

以下、時系列でゴジラ上陸の様子を御報告。

■上映まで
1)30分前に劇場に到着。チケット売り場は混雑していたが、劇場内は60歳
くらいの黒人のおじさん一人だけ。
2)しかし、上映間際には客席200の半分埋まって昼間の回にしては上出来。
(ただし、200席の劇場で初日ってことは、興行的に期待されていない。)
3)客層は幼稚園児くらいから小学校高学年の親子連れが中心。中学生コンビ、
オッサン一人ってのも何人か。(アメリカのオッサン連中は日本のゴジラのこと
を我々が考えている以上によく知ってるようです。)

■<番外>予告編上映
おー、なぜかゼロ戦の軍団が。来年公開の『Pearl Harbor』だあ。CGと実物の
コンビネーションのようだが、どう見ても実機はゼロ戦じゃないような。(詳し
くないので間違ってるかもしれません。)この映画でアメリカがどうやって盛り
あがれるんだろう???それにしても、日本映画の上映の前にこの予告、当てこ
すりと感じたのは場内唯一の日本人だった私だけ???

■本編上映
1)うーむ。予想以上に特撮の出来が・・・特にゴジラの海岸への上陸は正視に
たえない。水の扱いが全編通じてヘタ。画質のバラツキも相当ヒドイ。やっつけ
仕事なのが丸わかり。
2)米人による吹き替えのヘタさも相当なもんだが、セリフの英訳自体もかなり
陳腐な感じ。それ以上に元の役者の演技も・・・佐野史郎・阿部寛・・・おまえ
ら二人で映画の雰囲気壊してるぞ。
3)ラストの変身オルガとの戦いはアメリカ人もかなり真剣に鑑賞。特にオルガ
がゴジラを飲みこむあたり・・・このシーンの特撮はCGに辟易したアメリカ人
には逆に新鮮に映ったかもしれません。
4)変身前は失笑が出た(爆)タコ・オルガも変身後の造形はなかなか。4歳く
らいの隣の男の子も怖がってました。

■素朴な疑問点
ゴジラやオルガがあんだけ近所で暴れてるのに、電車で観光に出かけたり、ディー
ラーでクルマ買ってる日本人って・・・

■ラストシーンにて
上記のオルガとの戦いの後、場内は失笑3連発。
1)タバコを吸ったあと「Godzilla----!!!」と叫んでゴジラに殺されるアベちゃ
ん。
2)「我々の中にもゴジラが棲んでいるからさ。」という村田ちゃんのラストの
キメセリフ。(ここで場内100人から一斉に大爆笑。目の前の女子中学生親子
連れに至ってはイスから崩れおちながら笑っていた。)
3)『The End』のエンドタイトルに『The?End』と疑問符が付加された時。
(これはアメリカ版オリジナルに違いない。)

・・・要約すると、一般アメリカ人は前半は今一つ乗りきれず、後半のバトルシー
ンはそれなりに気に入って、ラストで頭カチ割られた・・・って反応でした。

■余談
エンドタイトルのあと、前の親子連れのおばちゃんが私を日本人だと気づいたか、
私を見て「にやーっ」と意味ありげな笑い。ここで「負けたらイカン、一発ギャ
グかまそう」と思って「Shame on Japanese!」(日本人の恥だ!)と言ってやっ
たら、本編よりウケてしまった。「わかるわかる・・・はははははは。(1分間
は続いた。)」半分冗談だったのに−・・・(涙)

■エピローグ
『Godzilla2000』の全米興行は1週目こそ健闘したものの、2週目以降の客足の
伸びが予想以上に悪く、ほとんどの劇場において2−3週でファーストランを終
了。『ミレニアムゴジラ』は全米上陸した途端に『観客の失笑』という究極兵器
で見事に爆死してしまう結果となりました。

この作品、全米で『Godzilla』の続編として公開するにはちょいと御粗末な出来
栄えであったことは否めません。特にストーリーと役者の演技はSF映画をナメ
テるのか?とさえ勘ぐってしまうレベル・・・ただ、SFX面ではすべてがNG
というわけではなく、もう少し時間をかける気持ちが東宝さんにあれば解決でき
た部分も多かったように感じられました。この年末に日本で公開予定のゴジラ新
作も日程的にはかなり厳しい作業を強いられている様子。果たしてこれは日本を
代表するSF・モンスター映画を製作する姿勢として正しいのか?次回作が本作
の二の舞にならないことを祈るしかありません。・・・ね、モズ中野さん。

(初回からいきなり変化球ですみませんでした。次回はまっとうなレビューをお
送りいたします。)

<予告>
第6号では今年全米で公開され、日本では未公開の作品から傑作群をご紹介。
(『Pitch Black』『Frequency』『Space Cowboys』そして『Battlefield Earth』
・・・え?)
第7号では全米クリスマスシーズンのメジャー作品レビューをお届け予定。

皆様から「ぜひこれをレビューして欲しい!」という作品の要望があればお応え

していきますので、今回『ゴジラ全米上陸編』の感想と併せて、ぜひ送ってくだ
さいませ。


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