2001年のアカデミー賞はこの作品で決まり?・・・『Traffic』

新年あけましておめでとうございます。今年もこのページご愛顧のほどよろしくお願いいたします。え、もう2月だぞって?いや、この原稿を書いてるのが1月上旬なんで・・・すんません。

さて、昨年末、2週間にわたって私、日本に一時帰国してまいりました。約1年ぶりの日本。とは言っても1年前は仕事で帰っただけなので、日本を楽しんだのは約2年ぶりのことですね。いや、やっぱ日本のメシはうまいわ。今回は毎回DVDの辛口レビューを連載されているモズ中野さんとも久々に再会できましたし。モズさん、あのお店よかったっすよ。最後のサイコロステーキがちょいといただけませんでしたが。(笑)

今号はそのモズさんとの激烈ゴジラ討論会をお届けしようと思っていたのですが、ポイントは1月号のモズさんの原稿にすべて織り込まれているようなので、取りやめ。(爆)・・・ま、今年のゴジラ、内容はともかくとしてお客の入りがさっぱりなようなので、今後のゴジラ映画の製作は赤信号点灯ってことですね。20代の若い方々のご意見を聞いたところ、『ゴジラなんかOut of 眼中』って声も多く、オジさんとしてはちょいと寂しかったりもします。しかし、確かにもういつまでも着ぐるみの『ゴジラ』や怪獣映画ばっかり作ってる時代じゃないのかもしれませんぞ、THさん。

んなわけで今回もいつものとおり企画変更。アメリカに帰ってきて見た新作映画の中から秀作『Traffic』をご紹介しましょう。

舞台はカリフォルニアのメキシコ国境地帯が中心。この国境沿いに展開される麻薬戦争を描いた映画です。ちなみにタイトルの『Traffic』は不法な商品の取引・・・って意味になるようです。監督は『セックスと嘘とビデオテープ』(古いなあ)と『エリン・ブロコビッチ』でおなじみのスティーブン・ソダーバーグ。社会性と娯楽性を兼ね備えた作品を作ることができる監督さんですね。

アメリカとメキシコの国境での麻薬戦争を縦糸に、4つのメインストーリーが横糸としてドキュメンタリータッチで非常にうまく織り込まれています。(『家庭内のドラッグに悩む裁判官』『麻薬商人の妻』『麻薬商人を追うアメリカ側捜査官』『メキシコ側捜査官』)一部互いのストーリーが直接絡み合うエピソードもあるのですが、基本的にはそれぞれのエピソードが独立しています。しかし、それでいながら全体では一本のストーリーになっているのです。この構成の妙にはうなりました。(イギリスのTVミニ・シリーズを再構成した作品のようです。)

それぞれのストーリーに合わせて映像の雰囲気が大きく異なっており、画面が切り替わった瞬間に「あ、これはこのストーリーだ」と感覚的に理解できるため、ワケが判らなくなることもありません。全般に麻薬をシリアスに取り扱ってはいますが、笑えるシーンも結構あったりして、娯楽作品としても評価できます。

特筆すべきは裁判官役のマイケル・ダグラスでしょう。前作『Wonder Boys』から突如として肩の力が抜けた演技を見せるようになってきましたが、今作でも自ら麻薬対策担当でありながら、麻薬中毒の娘に翻弄される裁判官の悲哀を自然に演じています。娘役の女優さんもラリッた雰囲気と優等生の切り替えがアブナくっていけてます。この娘さんが父親であるマイケル・ダグラスにラリりながら"Fuck you!"って言った時には場内がどよめきましたです。

ストーリー&映像的には『メキシコ側捜査官』のエピソードが乾いたフィルム・ノワールって雰囲気で秀逸でありました。(このエピソードの刑事役の男優もうまい。)

唯一気に入らないのは麻薬商人の妻を演じるキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。出世作『マスク・オブ・ゾロ』では「お、こんなにキレイな女優がいたのか!」と思わせてくれたのに、放映中のLUXのCMでもおなじみのように、いまじゃブヨブヨの単なるオバサン。うーん、すべてダンナのマイケル・ダグラスが悪いんや!(笑)

ちなみに前夫人メグ・ライアンをラッセル・クロウに寝取られたデニス・クエイドがこの映画の中ではキャサリンちゃんを寝取ろうとしてダンナの怒りを買ってしまう、とーっても可哀想な役で出演してます。

日常に蔓延する麻薬を描いて、題材的にはやりきれない想いがつのる作品ですが、希望も感じさせてくれるエンディングが描かれるのが救いですね。久しぶりに『映画らしい映画を見た!』と満足させてくれる作品の登場です。SFとはあまり縁がありませんが、是非とも日本公開時にはご覧ください。

さて、今年度のアカデミー賞はこの『Traffic』を軸にトム・ハンクス主演『Cast Away』、ジュリア・ロバーツ主演『エリン・ブロコビッチ』、チョウ・ユンファ主演『グリーン・デスティニー』、ラッセル・クロウ主演『グラディエーター』あたりが争うとの下馬評です。トム・ハンクスの過激なダイエットだけが見もの(爆)の『Cast Away』と、字幕版という不利な要因を持つ『グリーン・デスティニー』は常識的にはちょっとキツイと思われます。(日本人的にはASIAがんばれ!ってところで『グリーン・・・』に取ってもらいたいです。)『グラディエーター』は良く出来たハリウッド大作ではありますが、これで作品賞って言われるとちょいと違う?感じです。そうすると、ソダ−バーグ監督の2作品の中から選ばれるか?という気もするのですが、2作品ノミネートされると逆に票が割れてつらいかもしれませんね。ノミネート決定直前に話題になったってことで、『Traffic』だけがノミネートされればこれで決まりかな?と個人的には予想してます。まあ、実際にはこれからの映画会社のプロモーションが一番影響するんでしょうけどね。(笑)

<次回予告> いよいよ登場!『羊たちの沈黙』の続編『ハンニバル』!人食いレクター博士がパワーアップしてついに帰ってきます。原作とは異なる戦慄のラストシーンに待っているものは?話題のスリラー巨編を全米観客の反応とともにお届けする予定です。(次回は予定通りにしたいなあ。)


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