第3部 革命2(魔法物語)

第6章 月光

   Chapter VI Der Mondganz
        人生においてただひとつの疑うことのできぬ幸福は
        他人のために生きることである。
              レフ・ニコライヴィチ・トルストイ

 ジャンが最初にガブレリアに訪れてから四度目の使節が着いた。
 正式な使節の他に定期的にやってきていた業者が、三回目の使節までにガブレリアの大エアロック前の宇宙空港を完成させてくれたおかげで、着陸は簡単にすんだ。
 いま、使節代表エルコック・マレー議員を乗せた金星にあるヒュッポス社製の船の隣に、二隻の中型機が着陸していた。ひとつは火星のラノス社製二二二〇型最新機で、テレピクチュア社の撮影隊が乗っていた。つい最近ようやっと地球解体作業およびガブレリアに関する情報が解禁になったので、マスコミがさっそく乗り出してきたというわけだ。彼らの今回の目玉は、今有名な和楽器バンド月光のメンバーによる現地レポートであった。
 もう一隻は、宇宙船業界最大手で小惑星セレスに本拠をおくASDC社製の宇宙船ソレイユであった。ジャンはあれ以来何度も使節団とは別にガブレリアを訪れ、現状をフェリスに報告していた。エルコックの許可なしにガブレリアに立ち入ることのできるのはガブレリア人に許可を受けたジャンだけだった。たまたま今回は使節団とぶつかってしまったが。ソレイユには今回初めてガブレリアを訪れる『三人』の人物がいた。
 ひとりは眼鏡をかけた普通の若者であったが、あとの二人はとても人間といえるような代物には見えなかった。人の形をした鋼鉄の固まり。テドを初めて見た人がまず感じる第一印象だ。しかし、ある意味では彼はまさに人間を越えた存在であった。彼のボディは人造のものであるが、彼は人間と同じように考え、感じることができた。
 テドは円筒状の物体を押していた。
「実際にその目で見ても信用なさらないんじゃないんですか。」
 ジャンのことばはその二人のどちらに向けられたものでもなかった。
「現在ある材料だけでは、魔法の存在を肯定することはできぬ。これは推測であって推理ではないが、君のいう感染則や相似則は{超心理学}{パラサイコロジー}によって説明できるのではないかと私は考えている。」
 円筒の中から発する声にジャンはなおも食い下がった。
「ではこの前話したアリスとかの妖精はどうなんですか?」
 ジャンが話している相手は、子供の背ぐらいの円筒の下に車輪が付けられていて床の上を移動できるようになっている物だった。円筒の上には小型のビデオカメラのようなものがのっかっている。その後には乳母車の把手のようなものがついていて、その円筒を押せるようになっている。誰にも、それがかつて高名な科学者であって政治家でもあったと自称するあの〈生きている脳〉、カッパー・ステイト博士だとは思えないだろう。彼のことをよく知っている人ですら、この円筒のことをよくできたからくり程度のものと錯覚してしまうことがよくあった。しかし、この円筒の中には、生身のカッパー博士――彼の脳味噌が収められているのである。さすがの彼も、あまりもの高齢ゆえ最先端の科学の研究からは退いていたが、いまだその探求心は衰えていなかった。
 カッパーはできの悪い生徒に対して辛抱強くするように、ジャンの質問に答えた。
「それは一種の分裂自我だよ。超心理学的なものだがな。」
「でも、彼女は私の知らないことも知っている。」
「人間の深層心理というものは、普遍的無意識というものでつなっがっている。そこを通して君の知らない知識が流入してきたと考えるのが自然であろう。なにしろそれは君以外に姿を見せることはないのだろ。」
 ジャンは笑って意識を集中してみせた。ジャンの横に若い少女の姿が浮かび上がってきた。カッパーといっしょに来た若いほうの男は飛びあががって驚いたが、当のカッパーは声色ひとつ変えずに言った。(もっとも彼は滅多なことでは感情を外に出さないのだが。)
「空間に虚像を投射してみせる能力の例は私も見たことがある。ESPの一例にすぎないはずだ。」
 ジャンは呆れ返って反論した。
「しかし、ドクター、私にも彼女にもESPや{PK}{サイコキネシス}の反応はないんですよ。」
 ドクター・カッパーは根気よくジャンの質問に答え続けた。
「私に言わせれば、その種のセンサーは完全なものではない。それがある種の思考波に対して反応を示さないことも立証済みだ。」
 四人はエアロックを抜けて地上におりたった。まだ新しい宇宙港の地面は太陽系の他の惑星にあるそれと違って、きれいな真っ平らの表面をしていた。ジャンが宇宙服も着けずに外に出たのをみてた三人は驚いた。自分も宇宙服を脱ごうとしはじめた三人目の男をあわててジャンが制止した。
「待つんだシチタ、何の防護もなしにこんなところで宇宙服を脱いじゃまずいぞ。」
「しかし、君は何の防護もしていないじゃないか。」
 ジャンは笑って腰のところに下げている小型の機械をさした。
「私も初めて見たときは驚いたがね、重力転換機の極性を調節することで放射線をカットできるんだ。」
「ばかな。私は君の生まれる前から重力転換の構造に携わってきたんだぞ。そんな機能は初めて聞いた。」
 カッパーは円筒形の胴体から『腕』をだしてジャンの腰の機械を調べた。そして素早く計算をしてみたがそれでも物足りなく、テドのコネクタに自分の手を接続して、テドのコンピュータで詳細な計算をした。
「なるほど。しかしジャン、あんまりこれを過信しすぎてもいかんぞ。君の重力転換機では十MeV以上のエネルギーをもった粒子を防ぐことはできんのだからな。」
 彼は腕をしまいながら目をジャンの方に向けた。
「しかし、このことに気付いた人間はよほど重力転換について詳しいということだぞ。」
「ガブレリア人たちの話によると、これは聖ニックが発明したことだそうです。それ以前にはある魔法使いの発明した呪文によって放射線を防いでいたということなんですが、呪文に集中している間はほかのことができなくなっていたそうです。」
 七平太が口を挟んだ。
「僕にしてみりゃ、なんでこう魔法魔法とうるさくしなくちゃいけないのかが疑問ですね。超能力ですら実験室で常に再現できるような質の物じゃないでしょ。そのうえに魔法なんぞにとり組もうなんていうのは科学的にナンセンスじゃないですか。」
「七平太、おまえは物事を単純に考えすぎているぞ。そのような態度こそ科学的ではない。精神活動を機械的に検出できるようになったのは、最近のことなのだ。従来の超能力の試験は、精神活動の数値化をせずに実施されてきたのだ。しかし、超能力は精神活動に対して敏感に反応することが、初期の研究から報告されていた。我々はようやっと超能力を科学的に研究することができるようになってきたのだ。全ての条件を考慮せずに再現性の欠如を論ずることこそ非科学的な行為なんだぞ。私は魔法も同種のものであると考えている。
 おまえのお祖父さんとひい祖父さんががこれを聞いたらきっと嘆くぞ。」
 カッパーの言葉に七平太は少しむっとして答えた。
「ドクター、たしかに曾祖父は一流の考古学者でした。でも、祖父、シンイチ・アカギは神という概念に取りつかれ、晩年はほとんど学会からも無視されていたと聞きます。そのような先祖の話は持ち出してほしくありません。」
 カッパーは少し口ごもった。
「あれは私の責任だ。私があの時もっとしっかりしていれば、シンイチがあのような愚挙に出るのを止められたはずだった。」
 これには逆に七平太の方があわてた。
「ああ、いえ、ドクターのせいではないですよ。私が言いすぎたようです。すみません。あなたが止めたところで、祖父は同じように行動していたでしょう。」
「うむ。彼の性格からするときっとそうなのかもしれんな。」
 そうこうするうちに一行はガブレリアの大エアロックのところまでたどりついていた。そこは撮影隊の人や器材で埋まっていたので、ジャンはその脇にある小さな入口にみんなを案内した。撮影隊の何人かがそんな彼らを見咎め、にらみつけたが、ジャンは彼らの方をちらっと見ただけであとは無視することにした。ジャンが入口のキーにパスワードを打ち込むと、入口が中に入りこんでいき、人が通れるようになった。
 中にはジャンの秘書であるラウールが待っていた。ラウールはガブレリアの魔術師のような濃い緑色のマントを着けていた。
「エアロックの連中を見たでしょ。いま、撮影隊のことでエルコックと女王がもめているのですよ。それできっとこっちから来るんじゃないかと思いまして。」
「エルコックがフェリスのところにいるのか。それじゃあ、ガブレリアにとってどちらが重要人物なのか奴にわからせてやるとするか。」
 ジャンの皮肉にラウールは笑って答えた。
「そいつは無理ってもんですよ。私が迎えに出るときにはもう決着がついていましたからね。」
 ラウールは四人をメインストリートに案内した。
「あ、すまないが、ちょっと議会の方へよっていきたいんだ。ドクターがぜひあの像を見たいとおっしゃるものでね。フェリスに少し遅れるといっておいてくれないか。」
 ラウールを送り出してしまったので、ジャンがみんなを円形議場の方に案内した。
「ジャン、あの像の髪が赤く光って見えたというのは本当なのかね。」
 カッパーにつられて像を見上げながらジャンが答えた。
「空が晴れた日には、夕日があの像のところに映えるんです。日が真西に沈む日にはちょうどあの像の真後ろから後光がさすようになるという話です。」
 〈生きている脳〉にしてはめずらしく、像を見上げるその声はどこか感動に深く沈んでいるように聞こえた。
「……これは、そのように設計されているからに他ならない。」
 カッパーの光学センサーが夕日にきらっと光った。
「ピートは{宇宙}{そら}に生まれたがそれでも地球人として一生を終えたか……」
「ピート? キャプテン・アレフのことですか?」
 ジャンはぼんやりと歴史の授業でならったことを思い出した。
 ラグナレク――つまり言うところのハルマゲドン以前に、ピーター・アレフもしくはキャプテン・アレフと呼ばれる科学者である冒険家がいたという。彼はまた科学の魔術師とも言われていて、彼と彼のスタッフたちの活躍によって、惑星警察にすら解決できなかった難事件をつぎつぎ解決してゆき、太陽系の平和を守ったという。ここまで来ると伝説かお伽話の世界であるが、少なくとも、警察は彼の名の知名度を利用して犯罪の発生率を押さえたということだけは確かだ。彼がラグナレクに寸前に地球に降りたって以降、太陽系の犯罪発生率は一桁増えたとまで言われる。ジャンの生まれるずっと前の話である。
「でも、聖ニックがガブレリアを開放したのは今から二、三年ぐらい前だというから年代が少しずれてないですか。」
 カッパーは像から視線をジャンに移していった。
「いや。私があまりなにか言ってもしょうがないだろう。伝説は伝説のまま残しておいた方がいいこともあるのさ。さあ、王のところへいこうじゃないか。」
 テドはカッパーの『車椅子』を回しながら、もう一度像を見上げた。
「たしかによくできた像ですね。」
「いいから早く行くのだ。」
 立ち止まってしまったテドにカッパーは焦れったそうにいった。テドは渋々それにしたがった。

 フェリスは泉のところまで出迎えていた。
 ジャンは一行をフェリスに紹介した。彼女はニックとの旅でアレクサンドロスと行動していたのでテドのことはあまりめずらしく感じなかったが、自分の目の高さにも満たないこの円筒状の物体には興味がわいたようだった。
「すみませんがあなたは、人間? それともロボット?」
 カッパーのレンズ眼はフェリスの目を見つめた。
「私はかつて人間だったんだよ。お嬢さん。私はかつて地球で生まれた者の残りのひとりなんだ。」
「あなたは魔法に興味があるのだと聞いていますが。」
「興味はあるよ。だが、今回私はもっと大事な用があってきたのだ。聖ニックの遺言について話してくれないかね。大体のことはジャンに聞いているが、本人から直接聞いたというあなたの口から聞いてみたかったのだよ。」
 フェリスは不思議そうな顔をしながらも、ニックの最後の言葉を暗唱しはじめた。そして城のことについて触れられたところで、カッパーはストップをかけた。
「確かに城が切札になるといったのだね。」
 フェリスがうなずいたのをみて、カッパーはジャンたちにいった。
「聖ニックはおそらくなんらかの方法で、今日のような日の来るのを予知していたようだ。つまりは太陽系政府が地球解体法案をいずれだすということを、そして近い将来に『切札』が必要になる日が来ることを予見していたのだ。しかし、私ですらラグナレク当時にはそんなこと想像だにできなかったのにどうしてそのような推理が行なわれ得たのだろう。」
「ニックはジョハンスンが神に選ばれたといっていました。そして自分のことも。」
「もし、その神というやつが私の知っているものだとしたら、同じひとつの運命に結びついているのかもしれない。」
「ドクター!」
 七平太が非難がましく声をかけたが彼は無視して続けた。
「それは母星の滅びを告げていた。私はてっきり地上でその直後に起きた最終戦争のことを言っているものと思ったのだが。私にとっての間もなくがシンイチのと違っていたというわけか……」
 ジャンと七平太にはわからなかったが、カッパーはあのラグナレクのまさに始まった日に、神と称する意識体と話をしていた。カッパーはもう一度フェリスの方をむいた。
「フェリス女王、私はあの城の内部を調べなければならないようだ。できれば使わずにすめばそれに越したことはないのだが。だが、私が調べなければ切札として役立てることはできないだろう。」
 フェリスは空を見上げ、それにつれて金色の髪が波打った。
「城にはもうかなり長い間人を入れておりません。遺言を聞いたのは確かに私ですが、このことを私ひとりで決めるわけにはいきません。しばらく時間をいただけますか。」
「それと確か、もうひとつここと同じような作りのドームがあるそうだが。」
「ええ、かつてオーストラリアと呼ばれていた大陸に、そこもわたしたちの支配下にあります。」
「そこにも、ここと同じような城があるのかね。」
 フェリスはかぶりを振った。
「城があるのはこのドームだけです。ジョハンスンがこのドームを中心に五つのドームに対する中央集権を敷いていたものですから。権力の象徴はひとつで足りたのでしょう。残念ながら他の三つのドームは疫病や事故で放棄されてしまいました。」
「オーストラリアのドームの方を調査するのにも、話し合いが必要ですか。」
「いえ、そちらはとくに封印されているのは廃棄場だけですから。」
「では、許可が下りる前にそちらの方を先に調べてしまおう。ジャン、君も来るかね。」
 ジャンはフェリスの方を見ていった。
「いえ、私は残ります。私はここの評議会に発言権がありますから、ドクターの要請を支持することができますから。その代わり、案内役に部下のひとりを付けましょう。そうしとけば、こちらに戻ってきたときも簡単に入れますから。」
 ジャンはフェリスの従者のひとりに、ジョーを呼んでこさせ指示を与えた。
「移動にはソレイユを使って結構です。それがいちばん速いでしょうから。」
 ジャンにカッパーは礼を言った。
「おそらくあすの朝までには戻ると思う。」
「それでしたら、その頃までには結果が出ているでしょう。」
 カッパーたちを見送ってからジャンはフェリスの方へむきなおった。
「エルコックはどうでしたか。」
「話になりませんね。要求を突き付けてくるだけでこちらのいい分に耳を貸そうともしない。」
 ジャンは肩をすくめてみせた。
「とにかくなるだけ時間を稼いでください。あれを取り合えず足止めしているうちなら、まだ望みはあります。」
 そこでふと思い出して彼は付け加えた。
「そういえば、門のところにいる撮影隊をなんとかしなくては。」
「彼らを入れることには迷っているのです。」
「しかし、いずれ入れなくてはならなくなると思いますよ。ここで門前払いをしたのでは、ガブレリアの悪い宣伝になってしまいます。すでに彼らはイライラしはじめていますよ。第一あれはカッパー議員の息の掛かったものがお膳立てしてくれたことなんですよ。うまく行けば世論を利用して計画を中止に持ち込むこともできます。」
「わかりました、そういうことでしたら仕方ないですね。」
 フェリスは気の進まないように答えた。
 どう見てもカッパーやジャンたちの陣営は劣勢であった。その中においてすでに施行されつつある法案を修正しようというのは不可能に近い技であった。これに失敗したらどうしよう? いや、失敗なぞ許されないのだ!

 ガブレリアのおもだった者のうちに、カッパーの言葉に反対するものはいなかった。星回りが予言の成就のときが訪れたことを告げていたからである。しかし、それはもうひとつ不吉なことの起きることも告げていた。それだから人々は外の世界からやってきた撮影隊の人たちを拒みたい気持ちであった。ジャンの説得によりようやっと許可が下りたが、進んでそれを受け入れようとするものはいなかった。自然、撮影隊に対する態度も、冷たいものになっていた。撮影隊の隊長は、ぜひとも城の内部を撮りたいと主張したが、もちろんその願いがかなえられるわけがなかった。ジャンは彼らに立ち寄ることを禁じられた場所について説明したが、魔法に無知な彼らはそれを迷信としか思っていなかった。
 朝はやく、夜明け前になって、カッパーたちは帰ってきた。
 ジョーから連絡を受けたジャンが彼らをむかえた。一晩中付き合っていた七平太の目は充血していて、ふらふらしているようにも見えたが、かなり長時間眠らないでもすむカッパーとテドはピンピンしていた。
「ドクター、捜し物は見つかりましたか?」
「私の予想は大体あったっていたようだ。ここの城を調べられればそれも確実なものになる。」
「城の許可ならすぐに降りましたよ。」
「それならばこれからすぐにいくとしよう。」
 七平太が彼らについていこうとしたのを見て、ジャンが止めた。
「君は少し睡眠をとったほうがよさそうだ。」
「うむ、私もそう思う。それでジャン、君が一緒にきてもらえるかね。」
「いえ、ドクター。行きたいのは山々なんですが、実は撮影隊のことが心配なんですよ。最近はマスコミにあれをするなこれをするなと言うような組織はないですからね。結構連中はイライラしているんですよ。ほっとくと何をしでかすかわからない。こんなことになるのなら、マスコミなんかあてにするんじゃなかったな。」
「君にしては随分と弱気な意見だな。だが、我々はそのマスコミに頼らなければならないようなぎりぎりのところまで追い詰められているのだよ。確かに連中はやりすぎだとは思うがな。」
 カッパーがテドに合図すると、背中に器材をしょったテドはカッパーを押して城の方へむかった。ジャンはフェリスにあずかった鍵で城門をあけ、カッパーにそれを預けた。
「なかから鍵を閉めるようにしておいてください。」
 門の錠が中からおろされる音を聞きながら、ジャンはなにか不吉な予感を感じていた。

 テドが鍵を掛けると同時に、城内部に明かりがともった。二人は思わずぎょっとして振り返ると、壁につけられた五つの柄の燭台に蝋燭がともっていた。カッパーはその燭台が人間の手でできていることに気付いて、もう既になくして何十年にもなる心臓が締め付けられるような気がした。
「む。え、『栄光の手』か……」
 ESPセンサーには反応がなかったし、燭台のひとつをはずして(それと同時に蝋燭の炎は消えた)調べてみたが、何の仕掛けも発見できなかった。テドに燭台をもとの位置に戻させるとすぐに、蝋燭が再びともった。
 明らかにこれはオーストラリアのドームでの調査とは様子が違うようだ。
 七平太をおいてきたのは正解だったのかもしれない。カッパーとテドならたいていの精神的ストレスには耐えられるが、七平太だったらどういう反応を見せるかわかったものではない。
 明かりにそって移動しながら、カッパーはすぐにその明かりのともり方に法則性があることに気付いた。すべての蝋燭がともっているわけではなく、彼らの進むべき方向にだけ、しかも、彼らが十メーターぐらい近付いたところで火がともるようになっているものらしかった。科学的な方法によってこのような効果を演出するのは簡単なことである。しかし、ここにはそれを行なうための仕掛けは一切発見できない。もし、それを説明する方法をみつけたとしても、この鋼鉄製の壁が磨かれることもないのに輝き続けていることはどう説明したらよいのだ。壁には何も塗られていないというのに。カッパーの科学的に鍛えられた目は、このことをすぐに魔法と結びつけて考えることを許さなかった。それでも、既知の科学的方法によって説明できない現象がここに起きていることだけは認めずにはいられなかった。
 今は亡きバーソロミュー・エイモス・ジョハンスンの言葉がよみがえる。(もし、目的に対する負の意識がとり去られとするならば、意識の対象への作用は魔法の原則に従うはずである。)
 ここではカッパーたちの発する負の意識より、ガブレリア人全体のもつ肯定的な意識の方がずっと影響力が強いというわけだ。
 道はやがて下の方へと下る螺旋階段に行き当たった。テドは心配そうにカッパーの方を見たが、カッパーの、ビデオカメラのようになっている目の部分がうなずくようにたてに振られるのをみて、カッパーの体をもちあげ下へと降っていった。何十メートルも降りただろうか。階段は唐突に終わりをつげ、正面にカッパーたちに馴染み深い記号の描かれた扉が現われた。
 これこそ彼らの探していたもの、ガブレリアを楽々もちあげられるほどの出力を持った重力転換装置であった。中を点検するため扉を開けようとするテドの手が一瞬氷付いた。その次の瞬間にはカッパーもテドが見つけたものに気付いた。扉には刃物かなにかでP・A・J・Aと刻まれていた。
 ピーター・アレクサンダー・ジョン・アレフ。
 カッパーは彼の残した最後の仕事に対して感動を禁じ得なかった。しかし、今はやらなければならないことがある。カッパーはいつもそうしているように感情を殺してテドに扉をあけるように命じた。これが本当に使える代物かどうか点検しなければならない。カッパーとテドは何年か前にピートが聞いたのと同じ音を耳にした。
 それは完全には停止していなかったのだ。
 計器を見るだけでわかった。この巨大な重力転換機の出力は外界からの放射線をほぼ完全に締め出していたのだ。オーストラリアドームの重力転換機はすぐに作動させられる状態にあったが、七平太たちに手伝わせてようやっと一晩かけてそれに火を入れたのだ。ガブレリアの前王はこれを作ってからずっと作動状態に置いていたのかもしれないが、オーストラリアの方はまだ一度も動かされた形跡が無かった。重力転換はもともと低燃料での作動を原則としているから、適当な燃料鉱石を用意しさえすれば、百何十年も動かし続けることができる。
「やはり、あれはやがて来る日のことを見越してあの遺言を残したのだ。この星に、これだけの規模の重力転換機を点検できるほどの技術者は残されていないからな。」
 そしてカッパーは仕事にとりかかった。

 山本丈にとって今回の仕事は不愉快の連続であった。たしかに地球に生存していた人々のレポートはグループのいい宣伝になるかもしれないが、この仕事を受けるようになった経緯からしてまず気に入らない。
 仕事を依頼してきたテレピクチュアの連中も最初は乗り気ではなかったらしい。とある政治家が金まかせに今回の仕事を強要したという。そしてテレピクチュアの首脳が丈達、月光のメンバーを巻き込んだ。彼らは政治の道具に利用されているってわけだ。
 彼らにもっと力があればこんな仕事断わっていただろう。だが、いくら最近売れ出したバンドだといっても、まだ経験の浅い彼らにとってテレピクチュアに見放されることは、一番の活動の場を奪われることに等しかった。選択権は彼らにあったわけではなかったのだから。
 それでも、それはまだ我慢できる方のことだ。
 このガブレリアの連中といったらどうだ。連中のおかげで撮影隊が中に入れるまで丸一日無駄にしてしまった。しかも、ようやっと許可をだした彼らであったが、今度は今回の撮影のひとつの目玉である、エルコック議員の報告にあった鋼鉄の城の撮影許可が下りないのだった。それではせめて中に入るだけでもと撮影隊長は粘ったのだが、何でも宗教上の理由で中に入ることすらあたわないというのだ。丈達は貴重な音楽活動の時間を割いてここにきているというのに。
 イライラして目をさました彼はまだ夜明け前だということに気付いて悪態を洩らした。そこでふと、どうせ中に入れないんだからせめて城を外から眺めてやろうとベッドを抜け出してその城門のところへとやってきていた。
 と、男がひとり城門を開けているではないか! 男は{機械人形}{オートマン}をともなっていて、その機械人形は円筒形の機械を押していた。丈はその男が城のなかに入っていくものと思っていたが、円筒を押す機械人形だけが中に入っていった。男はしばらく閉まる門の前にたたずんでいたが、やがてこそこそとした足取りでそこを立ち去ろうとした。丈はこのガブレリア人の裏切り行為を撮影隊のみんなに知らせようと思ったが、思い止まってこの男をとっちめてやろうと思った。
「おい、そこで何をしているんだ。」
 丈の声に男はびくっと肩をふるわせた。ゆっくりと振り返ったその男の顔は、しかし、丈の見たことのあるものだった。どこで見たのか。そうだ、前の地球解体計画の責任者に選ばれたジャン・パストゥール評議会議員だ。そういえば今回も使節団とは別にここにきていたのだ。
「なんと、君は月光のジョウ・ヤマモト君ではないか。私は月光のファンなんだ。」
 自分のファンだといわれてうれしくないものはいない。が、丈は彼に問い掛けた動機を忘れなかった。
「そんなことよりあんた、ここで何をしてた?」
「そういう君こそ何をしているんだ。」
「そういう問題じゃなくて、俺はあんたがあそこで何をしてたか見てたんだよ!」
 丈は敵がひるんだのを見て追い打ちをかけた。
「俺達が散々ねばったというのに、ここの連中は俺達をあの城のなかに入れてくれなかった。なのにあんたは……」
「ドクターは、あの中に入る正統な理由があったんだ。」
 ジャンの反応に、丈は勢いを止めた。どうにも要領がつかめない。
「ドクター?」
「ドクター・カッパー・ステイトだ。君は彼が入っていくのを見ていたんだろ。」
 丈はまだ何か釈然としないながらも、憤りはだいぶ弱まっていた。
「ドクター・ステイト議員は人間じゃないという噂を聞いたことがあるが。あのロボットみたいのがそうなのか。」
「いや、彼は人間だ。元人間だけどな。円筒の形をした車のついたのが彼だ。彼の行為がガブレリアのために行なわれているということが、ガブレリアの首脳たちに認められたからこそ、彼がそこに入ることが許されたのだ。それにこの仕事は二重にドクターにはやる権利がある。地球はキャプテン・アレフが最後まで守ろうとした星だからな。」
「キャプテン・アレフだって?」
「ドクターはアレフの保護者みたいなものだったんだ。」
 丈はしばらく絶句していたが、やがてぽつりといった。
「俺の両親がまだ小さかった頃、一度そのキャプテン・アレフ本人に命を救けられたことがあったそうだ。」
「それに彼はガブレリアで予言されていたものなのだそうだ。」
 丈は一度は納得しかけていたものの、予言という言葉を聞いたとたん再び反発した。
「迷信なんて糞食らえだ! ここの連中は占い無しで行動できない野蛮人なのか!」
「ここの世界では魔法や占いは迷信ではないのだ。君は超能力も信じて無いんじゃないのか。」
「何言ってるんだあんたは。超能力は科学的に証明されているけど、魔法なんてものは、フェアリーテール――お伽話のなかに出てくるだけの代物じゃないか。」
 ジャンは少しむっとして、意識を集中させてアリスを視覚化してみせた。
「それはフェアリーテールのあるものは{虚構}{フィクション}じゃなくて{事実}{ファクト}だからよ!」
 丈はアリスの{像}{イメージ}と声に驚いて腰を抜かしてしまった。口では超能力を信じるといっていても、彼はその実物を見たことが無かった。
「ドクター・カッパーにいわせれば、魔法も超能力の一種なのだそうだが、いずれにせよ今まで現代科学に知られていなかったタイプの力であるらしい事だけはわかっている。信じる信じないの問題でなく、ここでは現実的な判断の元になっているんだ。」
 ジャンの精神集中が解けたため、アリスの姿は消えたが丈にはなぜか彼女がまだここにいることが感じられるような気がした。丈は完全に度胆をぬかれ反論する気力すら失せていた。
「ともかく、このことは黙っていてほしい。撮影隊の人たちと無用の争いをしたくないんだ。この番組が成功すれば、地球解体を中止させ、ここの人たちを守ることができるかもしれないんだ!」
 丈は大きく息をついて精神を落ち着けて考えてみた。
「わかりましたよパストゥール議員。約束を守りましょう。」
 丈が去るのを見送りほっとしつつも、ジャンはまだいやな予感が拭いきれないのを感じていた。
「彼は裏切らないわ。」
「わかっているよ。」
「それに彼は『資格』もあるわ。」
 それでも、ジャンの不安はおさまらなかった。しかも、その予感はあたっていた。

 それはほどなくして起こった。
 ジャンはフェリスの屋敷の前で、まだ起きてきたばかりの七平太に魔法の話をしていた。ジャンは根気よく七平太にそれを信じさせようと努力したが、彼は取り合おうともしなかった。いい加減ジャンも疲れてきた頃に、例の山本丈が彼らのところに息を切らせて走ってきた。
「パストゥール議員! 大変だ。」
「一体どうしたというんだ。君が何もしなかったなら、何も起こらないはずだろ。」
 といいつつも、ジャンは不安が的中したことを悟っていた。
「冗談は無しだ。昨日のあんたの行動を見ていたのがもう一人いたんだ。そいつが撮影隊中に噂をばらまいたおかげで向こうはえらい騒ぎだ! 連中不安が爆発寸前ですよ。」
「なんてこった! わかった、すぐ行こう。」
「そいつは止めといた方がいいですよ。あんたが行ったらよけい騒ぎが大きくなる。あんたがそもそもの元凶なんですよ。」
 ジャンは一瞬むっとしたが、思い止まった。
 やがてすぐに、遠くの方から喚声が聞こえてきて、その喚声に乗ってきたようにしてジョーが走ってきた。ジョーは口を開きかけたが、そこに山本丈がいるのに気付いてためらった。ジャンがうなずいてみせたのを確認して、彼はようやっと一言発した。
「撮影隊の人間と、ガブレリア人の間に喧嘩が起きました!」

 カッパーとテドが仕事を終えて出てきたとき、もう昼を回っていた。
 彼らが出てきたときにちょうど、七平太が駆け付けた。
「ドクター。ひ、広場で喧嘩が……」
「喧嘩?」
 なおも息を切らしながら七平太は叫んだ。
「と、ともかく早くきてください。」
 カッパーはあの地球最後の日の時のことを思い出してやな予感がしてきた。彼は最近滅多に使ったことのないモーターを車輪につなげた。かつてピートが付けてくれたこの仕掛けを使えば、カッパーは誰かに押してもらわずとも自力でかなりの速さで移動することができた。しかし、それもピートのことを思い出したくない一心で、最近はほとんど使わなくなっていた。テドも後からかけてくる。七平太はなんとかカッパーに追い付きながら、ジョーが知らせてきた状況を説明した。撮影隊の一人が、聖ニック像に落書をしてそれを咎めた現地人との間に喧嘩が起こったというのだ。しかも彼らは要求が満たされず散々まちぼうけを食らわされたおかげで、フラストレーションがたまっていた。
「ジャンはどうしたのだ?」
「か、彼はあとから王と一緒にきます。」
「こんなことが起きないように彼が残ったんじゃなかったのか。」
 しかし、起こってしまったことを悔やんでもしょうがないことをカッパーは知っていた。要はいかに対処すべきかだ。
 円形議場の聖像前で、撮影隊の人たちが二人の取っ組み合いをはやしたてていた。その場に居合わせたガブレリアの人たちは為すすべもなくうろうろしている。
「テド、二人を止めるのだ。」
 テドは群衆をかきわけ二人のなかに割り入った。しかしこのことはかえって撮影隊の人たちの感情に火を付けてしまった。カッパーは自分たちが城に入っていくところを彼らのうちの一人に見られていたことを知らなかったのだ。押し寄せる憎悪の嵐に、さしものカッパーもたじろいた。ガブレリア人たちも自分たちの身の危険を感じて、いつしかカッパーの後にかくれていた。悪いことはつづくものである。間の悪いことに、ちょうどそんなときにジャンがグラントムたち魔法使いをつれて駆け付けた。
「あいつだ! あいつが俺達を散々引きずり回した張本人だ!」
 撮影隊の一人がジャンを指差して叫んだ。しかしカッパーは注意が自分たちからそれたとたんに行動を開始することができた。
「七平太、あの人たちを早く逃がすんだ。テド! 彼らを食い止めてくれ!」
 そして、あまりにも強力な感情をぶつけられたじろいでいるジャンと魔法使いたちの方へいそいで移動した。
「何をしている。早くこの場から去るんだ。いったん退いて体勢を建てなおすのだ。テドはもうもたんぞ!」
 はっとしたようにジャンたちは後退しはじめた。それでも危機一髪であった。テドが持ちこたえたのは一瞬だけで、すぐに暴徒と化した撮影隊の人間に押し倒されたからだ。グラントムは魔法使いたちを先導して議場の部屋のひとつに隠れた。カッパーもすぐにそのあとに続いた。ぎりぎりのところで目標を失ってしまった撮影隊の人間たちは、そのまま城の外まで出ていってしまった。
 暴徒たちが去るとすぐにカッパーは議場に戻った。テドは暴徒にもみくちゃにされ、手足が妙な方向にねじれていたが、まだ『生きて』いることを確認してほっとした。しかし、ぐずぐずしていられない。今の暴動に加わらなかった撮影隊の人間たちに、この場所から動かないよう注意して、彼はジャンたちの方へといった。魔法使いたちは暴徒たちの意識をそらすための魔法の儀式にとりかかっていた。カッパーは彼らを邪魔しないように気をつけながら、ジャンと暴徒のあとをおった。
 なんてこった! 何もかもぶち壊しじゃないか!

 フェリスと数人の魔法使いの側近が城の手前で暴徒たちを迎えた。
 彼らの中には、何人かの使節団の人が交じっていたが、彼らは自衛のための銃の所持が許されていた。今や彼らはそれを暴力の手段として用いようとしていた。使節の一人が銃でフェリスを狙った。続いて何回かの銃声。しかし、当たったものはひとつもなかった。続いてまた何発かの銃声がとどろいたが、フェリスの側近にすら当たらず、またどこかに当たったような気配すらなかった。暴徒の一人がたまたまそれを見付けた。フェリスの足元にはひしゃげてつぶれた弾丸が銃声の数と同じだけ転がっていた。さすがに暴徒たちはひるんで行軍がとまった。
 フェリスは眉を釣りあげ彼らに警告した。
「あなた方はすでに、ガブレリアを守護する印を侵しています。これ以上あなた方のここでの行動は認めません。すぐにここを立ち去りなさい!」
 しかし、そのことばは却って彼らをあおるだけであった。暴徒たちは再び怒りに我を忘れ、フェリスたちの方へと突進した。側近たちは呪文を唱えはじめていた。暴徒たちはそのまま地面に描かれた巨大な円形の中まで進んで、そこではじめてこれ以上進むことも退くこともできなくなっていることに気付いた。それと同時に、側近たちの呪文は唱え終わった。
 彼らはまるではじめからここにいなかったように忽然と消え失せた。
 ようやっとその頃になってカッパーとジャンは追い付いてきた。
「彼らはどこへ?」
「彼らの船ごと空へ返しました。」
 そして、残念そうな顔をして二人の方を見たフェリスは言った。
「これ以上外界の人たちと接触するのは無理なようです。私たちはガブレリアを外界と隔絶することにしました。あと半日したら結界を閉じます。外の人たちのことはお願いします。」

 ガブレリア人に今ジャンがしてやれることは何もなかった。
 ジャンはカッパーがグラントムになにか説明しているのをぼんやりと眺めていた。
 撮影隊の残された人たちはすでにエルコックの船でつれ去られていた。七平太やラウール達もソレイユに乗ったあとだ。今ガブレリアの町中に残る『外世界人』は彼とカッパーだけになっていた。
「あなたが残るのなら私たちは歓迎しますよ。」
 いつのまにか近付いてきた、グラントムの弟子の一人であるアルベールが言った。
「結界が閉じられたら何十年もの間、このガブレリアと接触することはできなくなってしまうのですよ。」
 ジャンは名残惜しそうにその年下の魔法使いを見た。
「でもだな、アルベール。私はやらなくてはならないことが外の世界にまだあるような気がするんだ。それがようやっと形になりはじめたというところだ。それが終わったら、いつか戻ってきたいな。できるなら。」
 フェリスやグラントムへのあいさつは簡単なものだった。
 ジャンは空を仰いだ。太陽系の他の星では決して見ることのできない青い空を。
 ソレイユが飛びたったところで、ジャンは馴染みの声を聞いて驚いた。
「ジャン、ガブレリアの見えるうちに見といた方がいいわよ。」
「アリス!」
「いいから話はあと。ガブレリアが結界に覆われてしまうわ。」
 ジャンは急いで窓の方へむかった。重力転換機が加速による重力を相殺しているので、船内を移動するのは容易である。遠ざかり行くガブレリアをのぞみながら、ジャンはアリスの気配に対して声をかけた。
「いいのか? 妖精がガブレリアを離れてどれだけ長く生きていられるかはわからないんだぞ。外の世界は負の意識も強いし……」
「言うようになったわね。あたしはジャンと一緒にいるって決めたんだからいいの!」
 ガブレリアは急速に小さくなっていき、やがて見えなくなってしまった。
 ジャンはこれがガブレリアを見た最後になるとは知る由もなかった。

 西暦二二二一年。地球最後の都市ガブレリアは現われたときと同様、唐突に歴史上から姿を消すことになった。
 しかし、この事件は後世にまで太陽系人に対して魔法への不信感を植え付ける結果となった。

(第八回に続く)


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