Book Review
レビュアー:[雀部]
『鹽津城』
  • 飛浩隆著
  • 河出書房新社
  • 2200円、Kindle版1980円(税込)
  • 2024.11.26発行

【収録作】
「未の木」「ジュヴナイル」「流下の日」
「緋愁」「鎭子」「鹽津城(しおつき)」

『SFにさよならをいう方法 飛浩隆評論随筆集』
  • 飛浩隆著
  • 河出書房新社
  • 1078円、Kindle版970円(税込)
  • 2021.12.7発行

「石飛卓美さんのこと」収録
 内容は、全然SFにさよならを言ってないんですけどね(笑)

SFにさよならをいう方法 飛浩隆評論随筆集
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『鹽津城』

 【収録作】

「未の木」
 人の遺伝子を読み取って、それをお手本とした実を付ける木。ちょっと気味が悪いけど、試してみたい。すれ違う平行世界との間に生まれた繋がりがほんのり暖かい。
「ジュヴナイル」
 櫻木みわ先生のインタビューをした時に、掲載された『文学ムック たべるのがおそいvol.7』で読んで凄いなあと。これだけ食べ物(グルメ)に関する情報が溢れている現在、我々は情報を食べているんだなとよく感じます。ここは美味しいと信じて食べるときっと美味しさが増す(笑)飛先生が食事シーンを書くと美味しそうに思えるのは選び抜かれた言葉の力なんですけどね。
「流下の日」
 昨年放送していた『永久のユウグレ』(2025.9月~)が、生体AI(遺伝子レベルで組み込まれている)と拡大した婚姻制度を扱っていて、こういう考え方が人口に膾炙してきている感があります。まさかアニメでアドバルーンを上げているとかはないだろうな。 マイナンバーカード導入の混乱を見るにつけ、バングルのような機器が導入されるとしたらどういう理屈をひねり出すのだろうか。 「緋愁」 昔さんざん話題になったが、電磁波の影響あるんだろうか。今時のスマホ事情をみるにつけ、若者は全員病気になってもおかしくはない。

「鎭子」
 世界のすべてのものが一様に融け混じり合ってできた「うみ」それはどんな物でも溶かし込んでしまう。 瀬戸内海に面した地域に住んでいるので、日本海を見るたび波が高いなあと思う。 私には海は凪いでいて穏やかなのが普通なのですが、飛先生の小説を読むとそれは少数派の意見であることがよく分かります。 それにしても食事のシーンの美味しそうなこと。酉島伝法先生の 『奏で手のヌフレツン』の食事のシーンも美味そうだった。でも全体から感じるのは、酉島先生は大阪ぽくって、飛先生からは日本海と山陰の匂いがする。
「鹽津城(しおつき)」
 ロシアのウクライナ侵略戦争で「鹵獲」という言葉を知った。「鹵」が塩を意味することも。実は「鹵」は「歯」に関係する言葉ではないかとそれまで思っていた(汗;)
 巳衣子の歯並び、凄まじいですね。あの窮極の乱杭歯、どういう意味があるのか商売柄特に気になります。『怪獣生物学入門』で倉谷滋先生がゴジラの乱杭歯について考察されてますが、進化学的な意味はあるのだろうかと考えたり(笑)
 (「雲魂」で飛先生にお目にかかったのでうかがってみたら、“ひどい歯並びであることを表現したかっただけで、歯科的な意味は特にない”)そうでした(汗;)

冒頭のカミさんと私の思い出が違う話ですが、結局二人合わせれば何とかましな思い出になるんじゃない?ってことに(笑) 

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『SFにさよならをいう方法 飛浩隆評論随筆集』

【目次】
○第一部 読んだもののことなど
「読書日記」
「ガチSFだが、ふつうの小説として 佐藤哲也『妻の帝国』を読んで」
「いま、ここにある情景──佐藤亜紀『ミノタウロス』」
「人と宇宙とフィクションをめぐる「実験」──『マインド・イーター[完全版]』刊行に寄せて」
「SF散文のストローク──野尻抱介はハードSFの何を革新したか?」
「アロー・アゲイン」
「火星への帰宅──クリュセの魚の棲む家へ」
「伴名練『美亜羽へ贈る拳銃』」
「石川宗生『半分世界』」
「ハヤカワ文庫SFからの五冊」
「いつかみんなが愚かになる日のために──パオロ・バチガルピ『第六ポンプ』」
「中国生まれの作家が英語で描く歴史と幻想──ケン・リュウ『紙の動物園』」
「魔術の小説、小説の魔術──クリストファー・プリースト『奇術師』」
「SFを生きる──第28回日本SF大賞選評」
「年少者に最新かつ最高のものを──第29回日本SF大賞選評」
「心からの感謝を──第30回日本SF大賞選評 第37回日本SF大賞選評」
「第38回日本SF大賞選評」
「第39回日本SF大賞選評」
「一〇〇一の十字架──星新一『小さな十字架』」
「『シン・ゴジラ』断想」
「第3回創元SF短編賞選考」
「第3回ゲンロンSF新人賞講評録(抄)」
「帯を架ける」
「バラードはお好きですか」
○第二部 書くこととその周辺
「日曜作家登場!!」
「腕をふりまわす」
「ベストSF2004国内篇第1位に寄せて──『象られた力』」
「受賞のことば──第26回日本SF大賞『象られた力』 」
「受賞のことば──第6回 Sense of Gender 賞大賞『ラギッド・ガール』」
「受賞の挨拶──第6回 Sense of Gender 賞大賞『ラギッド・ガール』」
「飛浩隆Eメール・インタビュー」
「レムなき世紀の超越」
「読者の心に歯形をつけたい」
「伊藤さんについて」
「栗本薫さんの死について」
「石飛卓美さんのこと」
「『トイ・ストーリー2』雑感」
「立って、在る、こと──ダンス版『グラン・ヴァカンス』公演に寄せて 」
「受賞の挨拶──第41回星雲賞日本短編部門『自生の夢』」
「『自生の夢』について──『自生の夢』ベストSF2017国内篇第1位に寄せて」
「受賞のことば──第38回日本SF大賞『自生の夢』」
「働きながら書き続ける10の方法」
「マザーボードへの手紙」
「若い友人への手紙」
「半年後への手紙」
「ノート」
「解説 東浩紀」

[飛浩隆 ]
1960年、島根県生まれ。島根大学卒。81年、「ポリフォニック・イリュージョン」で第1回三省堂SFストーリーコンテストに入選、「SFマガジン」に掲載されてデビュー。92年までに同誌に10編の短編を発表。その後10年の沈黙を経て、2002年に長編『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』を発表、一躍脚光を浴びる。05年、『象られた力』で第26回日本SF大賞、07年、『ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ』で第6回Sense of Gender賞、18年、『自生の夢』で第38回日本SF大賞を受賞。その他の著書に『零號琴』他。
[雀部]
飛浩隆先生著者インタビュー(『グラン・ヴァカンス ~ 廃園の天使1』)からはや23年。「廃園の天使Ⅲ 空の園丁」の著者インタビュー、お待ちしております。
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