Book Review
レビュアー:[雀部]
もののけエマノン
『もののけエマノン』
  • 梶尾真治著、鶴田謙二装画
  • 徳間書店
  • 2090円(税込)
  • 2026.3.31発行
【収録作】
「またたきホイアン」
「ありあけジーン」
「まどろみフォッシル」
「もののけジャンクション」
「さまよいサンクチュアリ」
【エマノンの軌跡】これまでの《エマノン》シリーズの初出情報
 本書は「読楽」2020年8月号~2025年6月号の発表順に収録

『もののけエマノン』紹介と感想

 以下、ネタバレにつき白いフォントにしてます。本書を読まれた方は、反転させてお読み下さい。
 ある意味、一方の到達点と思える「もののけジャンクション」(書名が『もののけエマノン』だから、この作品のテーマがメインと思う)の後に「さまよいサンクチュアリ」が配されていて(発表順でもあります)、今後の《エマノン》シリーズの方向性がうかがえて、大変興味深いです。
 たぶんシリーズ最後の作品は「もののけジャンクション」と反対方向に振れた作品になるのではと私は感じました。読んだ皆さんはどう思われたでしょうか。
 また「さまよいサンクチュアリ」は、クローンネタでもあり、それは同じ遺伝子の人間が多数存在するということですね。細菌間では、種類の違う細菌同士でも遺伝子の交換が行われて、抗生物質に対する耐性菌が増えるようですので、ヒカリとエマノンの間で「能力の交雑」的なことが起こり、時を超えるエマノンが誕生して凄い展開になるとかないのでしょうか。←だいたい読者の予想は外れるけど(汗;)

 ネタバレ、ここまで(汗;)総ての《エマノン》ファンの方、必読の書となっています!
 12年前の著者インタビューでは『うたかたエマノン』までの本に関してインタビューしてます。

「またたきホイアン」

 エマノンの親友であるヒカリは、限られた寿命しか持たないが、悠久の時間の中を過去・未来に跳ばされるという宿命を背負ってます。オールドファンなら、ヴァン・ヴォクト氏の《武器店》シリーズの新聞記者マカリスターが、莫大な時間エネルギーを体に蓄積し、まるで振り子のように、過去と未来を行ったり来たりするシーンを思い出すでしょう。
 ヒカリが初めて愛した相手のことをエマノンに託しますが、ヒカリの宿命とエマノンの宿命(衝動?)がぶつかった時、そこに生まれたドラマが切ないです。

「ありあけジーン」

 少年期・青年期・壮年期とポツリポツリとエマノンと出会うサクオ。なぜエマノンが現れるかを疑問に持ちながら思慕するサクオだが、そこにはエマノンの宿命と関係した秘密があった。

「まどろみフォッシル」

 人里離れた山の嶺で、大量の海棲生物の化石を見つけた伊沢は、普段着のように思える軽装の女性・エマノンに出会う。彼女は親友が紛失したあるモノを探しているというが、そこは尋常ならざる生物たちが蠢く領域だった。

「もののけジャンクション」

 一点もののぬいぐるみをネット販売することで生計を立てている男は、ある日知り合いに誘われて一緒に登山に出かける。その道中、とある山道で不思議な形のケルンを崩してしまう。そしてその日から、怪異に襲われるようになってしまった。あの日の登山に関係があるに違いないと思った男は、再び山道に分け入るが、そこで再びエマノンに出会い、怪異の原因を知ることになる……

「さまよいサンクチュアリ」

 エマノンが食堂に入ろうとしたとき、ふたりの少女が食堂の外の木陰に身を隠しているのに気がつく。すると、それと同時に少女の一人から送られてきた「お願いです。見なかったことにして下さい」という言葉がエマノンの頭の中に直接響いた。
 ふたりはサンクチュアリと呼ばれる施設から逃げてきたのだが、エマノンと同様に気配を消したり、お互いに思念を読んだり出来るようなのだ……

[梶尾真治]
熊本県生まれ。「美亜へ贈る真珠」でデビュー。代表作に『地球はプレイン・ヨーグルト』(星雲賞)『未踏惑星キー・ラーゴ』(熊日文学賞)『サラマンダー殲滅』(日本SF大賞)、映画化した『黄泉がえり』や舞台化した『クロノス・ジョウンター』など。
本作『もののけエマノン』も、2027年度に、潤色・演出柴幸夫(ままごと)で、舞台化予定。
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