レビュアー:[雀部]
- 宮澤伊織著・窓口基装画
- 著者サイン本表1
- 創元SF文庫
- 2024.10.31発行
- 880円(税込)
【収録作】
「神々の歩法」
「草原のサンタ・ムエルテ」
「エレファントな宇宙」
「レッド・ムーン・ライジング」
『神々の歩法』独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
一面の砂漠と化した北京。廃墟となった紫禁城に、アメリカ軍の最新鋭戦争サイボーグ部隊が降り立った。
標的は、魚座の超新星爆発の影響で吹き飛ばされた高次元知性体(AI知性体も含む)が、地球に落下し人間と融合した“憑依体”。
さながら神のごとき戦闘能力に対し、なす術もなく駆逐される部隊員たちの前に、突然青く炎を曳いて少女ニーナが現れた。自身も憑依体となりながらなんとか理性を保つニーナの協力を得て、部隊員たちは世界各地に現れる憑依体に挑んでいく……。
高次の力にアクセスして特殊能力を発揮するには、パターンに沿った舞踏が必要というのも洒落てる(ラノベの設定にもある?)
「神々の歩法」
人類を殲滅せんとする元ウクライナの農夫vsアメリカ軍ウォーボーグ+八歳から十代半ばまで急成長させられた少女ニーナの憑依体。ニーナに憑依した<船長>は、高度な知性を持ったプログラムだが、鬱病に罹っていて時々しか表層に出てこない(汗;)
また、憑依体の使う高次元攻撃は、オールドファンなら、石原博士の『宇宙船オロモロフ号の冒険』における宇宙船間の戦闘シーンを思い出すでしょう。
「草原のサンタ・ムエルテ」
憑依体の少女と、拡張感覚器官<ランタン>を装着したウォーボーグ部隊がなんとか折り合いを付けて特訓を重ねる。
新たな憑依体は、日本の東北に出現した。早速現地へと向かう部隊だが、既にニーナは出発した後だった。ニーナに憑依した<船長>の言によると、ニーナは同じ境遇の「友だち」を欲しているというのだ!(汗;)
しかし、今度の憑依体は、「死」そのものを体現したメキシコ人女性カミラだった。
「エレファントな宇宙」
アフリカのウガンダに現れた憑依体は……ゾウの群れ!
ゾウの群れが、宇宙にアップロードした後、高次元からダウロードして造り上げつつあるのは、巨大な仏陀!
「レッド・ムーン・ライジング」
今回の敵は、<現実改変ブルートフォース攻撃>をしかけてきた。しかもその高次元エネルギーの存在が、どこに潜んでいるか皆目見当が付かないという。
敵は、こちらの様子をリアルタイムで把握しているようだが、こちらからはその痕跡が見つからない。そこには意外な盲点があった……
- 宮澤伊織著、めばち装画
- 著者サイン本表1
- 創元SF文庫
- 2025.9.12
- 924円(税込)
【収録作】
「宇宙飲んでみた」
「時間飼ってみた」
「家の外なくしてみた」
「近所の異世界散歩してみた」
「エキゾチック物質雑談してみた」
「登録者数完全破壊してみた」
『ときときチャンネル 宇宙飲んでみた』感想 独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆1/2
その昔(2000年直前)《SFバカ本》というシリーズがでてまして、「白菜篇」「だるま篇」「たいやき篇」と出ていたような。
腐海からサルベージすればどこかにあるはず(汗;)いわゆるバカSFを集めたアンソロジーです。もの凄く好きだったのですが、いつの間にか無くなってました(汗;)それはさておき、宮澤先生のこのシリーズは、どちらかというと欧米テイストのSFバカ本のような感じがします。ベイリー氏の『時間衝突』系のお話しですね。
十時(ととき)さくらは配信サービス《ときときチャンネル》で、同居するマッドサイエンティスト・多田羅未貴(たたらみき)の発明品を紹介し、収益化して生活費の足しにすることを思い立つ、目指せチャンネル登録者数1000人!。
宇宙を飲んで、時間を飼って、無限に拡張する家の中で迷子になる?(笑)
なんと、粒子間の結びつきエネルギーが閾値を超えた時に繋がる、他の超高次元の粒子間ネットワークにアクセスしてかすめ取った情報を元に製作した発明品みたいですよ(笑)そのネットワーク名は《インターネット3》というらしい。 全編配信者口調と視聴者コメントで構成された配信者SF。
「宇宙飲んでみた」
宇宙を飲んでみると、宇宙がわかる!←わかった気分になる?のかな、飲んでみたいぞ。
「時間飼ってみた」
時間を結晶化したヤツは、結晶化した割り箸鉄砲の超凄いヤツ(動物)に見えるらしい(笑)名前はバンちゃん。
「家の外なくしてみた」
時間は実数、空間は虚数とか書いてあって、橋元淳一郎先生の
『空間は実在するか』インタビューを思い出しました。
実は、空間が実数で時間が虚数であっても数式上はOKみたいですけどね。
スクランバーを使うと、どこまでも家の中が広がっていって外が無くなる……
「近所の異世界散歩してみた」
元々スクランバーを使ったのは、写る景色から住所を特定される危険性を排除するため。
動作異常を改良したスクランバーをバンちゃんに取り付けて外を散歩してみた。
「エキゾチック物質雑談してみた」
エキゾチック物質って、最初に知ったのはホワイトホールの入り口を閉まらないよう固定するためにはエキゾチック物質なるものが必要だと書いてあって。まあよく分かってはいない物質だ(汗;) 手に入れたのが《わけありエキゾチック物質詰め合わせ六種》という怪しげな……
「登録者数完全破壊してみた」
今回の配信は、「同時接続が500人を超えるまで続ける」というもの。
量子もつれを利用して、データを送受信する装置を未来に送って(前回の誤配送されたエキゾチック物質を返送)、「登録者数が増える→数字が増える」の因果律を逆転させるという。
そこに《インターネット3》からの視聴者さんがからんできますね(笑)
文中に梵字の「∴」(ゆえに)が出てきますが、患者さんにこの名前のお年寄りが居ました。「∴」と書いて「いい」と読みます。なんでもお坊さんに名前をつけてもらったけど、どなたもちゃんと読んでくれないとぼやかれてました。
[宮澤伊織]
秋田県出身。2011年『僕の魔剣が、うるさい件について』でデビュー。
2015年、「神々の歩法」で第6回創元SF短編賞を受賞。2017年より刊行されている〈裏世界ピクニック〉シリーズはコミック化、アニメ化もされ人気を博す。
23年刊行の『ときときチャンネル 宇宙飲んでみた』は『SFが読みたい! 2024年版』の「ベストSF2023 国内篇」第3位となる。他の著作に『ウは宇宙ヤバイのウ!』『そいねドリーマー』などがある。