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創刊二周年特別企画





 前回の「鏡」のアンソロジーのとき既に次回は「時計」で行こうということになっていたので考える時間はたっぷりあったのだが、いざアイデアを練る段になると帯に短したすきに長しで迷いに迷った。

 まず考えたのは体内時計がずれる話で、主人公は睡眠と覚醒のリズムが26時間周期になってしまい、毎朝どうしても起きられなくて困るというもの。原因は脳の深部にできた腫瘍だとわかるのだが手術で取るわけにはいかない、どうしたものか…と悩んだ主治医があれこれ調べると26時間周期どころか28時間周期、30時間周期に体内時計がリセットされてしまった症例があちこちで見つかっていることがわかる。さらに調べていくと周期の遅れは地球上で、ある規則性を持って出現しているらしい。その規則とは? 村人が全員48時間周期で暮らす長寿村でその答えは見つかるのか? …こうなるとどうあがいても長編になってしまうのでこの案はボツ。

 進化時計とナノマシンを組み合わせたアイデアというのも考えた。近未来、誰もが体内に無数のナノマシンを共生させているのだが、そのナノマシンたちは宿主の体内で世代交代を繰り返すうちに次第に進化して集合意識を持つに至り、自分たちの住む世界を宇宙とした神話を持つようになる。そこへある輸血事故を機に他人の身体から大量のナノマシンが注入されてくる。エイリアンの出現でありファーストコンタクトである。新旧のナノマシンの世代は新人類と旧人類くらい離れている。少数派の新ナノマシンは旧ナノマシンをいかにして説得あるいは制圧するのか… これはどこがいったい「時計」やねんというつっこみが聞こえてきそうなのでボツにした。

 〆切を過ぎてもいっこうにアイデアがまとまらずやきもきしていたある日、ふと "Blind Watchhealer" というコトバが頭に浮かび、その線で無理矢理書き上げたのが拙作で、結局うんと短いものしかできなかった。

 自分の原稿が上がったのが遅かったので実は高本さんと桓崎さんの作品にほとんど目を通していない^^;) おふた方がかように難しくも魅力的な「時計」というテーマをどう料理してくれたのか、じっくり読ませていただくのが楽しみである。

中条卓/Anima Solaris 編集長

鯨時計 著/高本淳

 ニミッツ級原子力空母『セオドア・ルーズベルト』を旗艦とする米艦隊は作戦航海の途上バミューダ海域において突然“白い嵐”に遭遇し別世界へと送り込まれてしまう。そこはかつて人間たちが絶滅させたはずの鳥や動物たちの住まう生き物たちの楽園、無人の地球だった。いったい何事が起こったのか? どうすればふたたびもとの世界に戻れるのか? その答えを求めて同様にこの世界に引き込まれた海洋生物学者一家と変わり者の戦術情報担当士官が生命進化という壮大な宇宙の謎に挑む。

薔薇と黒龍の守り 著/桓崎由梨

 “おじいちゃんが死んだら、知鶴には時計をやろうな。《ろさがりか》の絵がついた、綺麗な金ぴかの時計を……”
 祖父の形見の時計を探しているうちに、少女は、不思議な人々の集会へ足を踏み入れた。彼らとの出会いが、少女を閉じられた空間へと追い立てる。
 《逢魔が時》に繰り広げられる奇妙なストーリー。

銀河の時計直し 著/中条卓

 自転車で坂道を下る途中で、おれは天に向かって懐中時計を差し上げている奇妙な盲目の老人に衝突してしまった。ガラスが割れ、針が止まってしまったその時計を自分で直すと言い張る老人の家におれはついていったが…

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