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BookReview


レビュー:[雀部]&[五十嵐]&[ゆうふぉ]&[謎のプログラマー]

エンダーの子どもたち(上)

『エンダーの子どもたち』(上)
ISBN 4-15-011344-0 C0197

オーソン・スコット・カード著/田中一江訳
加藤直之カバー

『エンダーの子どもたち』(下)
ISBN 4-15-011345-9 C0197

オーソン・スコット・カード著/田中一江訳
加藤直之カバー

 

エンダーの子どもたち(下)
早川書房 各巻660円 2001/2/28刊
 スターウェイズ議会に対して反旗を翻したルジタニアと、危険極まりないデスコラーダ・ウィルスが銀河系に蔓延することを防ぐために議会は粛清艦隊を派遣した。
 かつてバガーの母星を葬った爆弾が、今度はルジタニアに対して使われようとしているのだ。あと数週間、その間にルジタニアに住む三種類の知的生命体、人間・ピギー・バガーたちの生きる道を探さなくてはならないのだ。
 前作でエンダーが心ならずも生じさせたピーターと、ハン家の召使いだったワンムは、議会工作により粛清艦隊を止めるべく活動を始めていた。
 ジェインの指揮の元、瞬間移動によって惑星住民を他の惑星に運び出す一方、新しい肉体を得たミロとヴァレンタイン(エンダーによって生じさせられた若いほうの)は、居住可能な惑星を、スターシップごとの瞬間移動によって探し回っていた。
 ルジタニアのエンダーは、自分の元を去った妻ノヴィーニャを追って隠遁生活に入ってしまう。耳の宝石を取り去り、ジェインとの交信手段を絶って・・・
 惑星<神風>に移民した日本人たちが出てくるのですが(なんと名古屋市が舞台)、大江健三郎に共感するカード氏の日本感ってなんか変ですよね。この巻は、シリーズの総まとめ的な印象が強く、強烈なインパクトはありませんでした。
 主人公の一人ミロは、生まれが1951年(スターウェイズ法典採択後)ということで、カード氏(もちろんこちらは西暦)と同じですね。で、障害をもっていたとなると、なんか関係がありそうですね。

《エンダー・シリーズ》

[雀部]  今年(2001年2月)《エンダー》シリーズ正編の完結編『エンダーの子どもたち』が、ハヤカワ文庫SFから刊行され、一応のけりが付いたのですが、皆さんは《エンダー》シリーズのどういうところが、お気に入りですか?
[五十嵐]  ん〜、うすうすゲームではなく違う星系で実際に戦いが行われていると知った時のエンダーの描写かな?ハインラインの宇宙の戦士でも泣けたわたし...
[雀部]  ハインラインとカードって共通点があるような。
 エンダーもジョニーも、人類を敵から守るために闘うんだし。
 あと、ちょっと説教くさいところも似てませんか?(笑)
[五十嵐]  そうですね。ピューリタリズムというよりはイエズス会臭い? それとも十字軍?:-p
#ジャズ・クルセダースは割と好きなんですが。:-)
[ゆうふぉ]  わたしは自分を守るためには徹底的にやっつける(結局,死に至るまで)という徹底した考え方に「共感」してしまいました。たぶん作者はそういう意図で書いたわけではないんだろうなあ,と思うのですが。
[雀部]  短編版だと、エンダーがバガーの故郷惑星を滅ぼすのは、そうするしか人類が勝つ方法が無かったからのような描き方ですね。あと、バトル・スクールでボンソーを殺してしまう結果になったのも、そこまでしないと本当の解決にならないからとの認識があったからでしょう。
[謎のプログラマー]  内なるパワーを秘めていながら、世間に馴染めず深く思い悩む、孤独な少年(少女)の描写が、自分の子供の頃と重なって、惹き込まれるから、かなぁ。榛野なな恵の描く、悩める子供達と、かなり近い。(^^; 身体能力に恵まれた悩み知らずの体育会系SF作家には、こういう作品は書けないと思います。(^^;;
[雀部]  なるほど、個人差はあるかも知れませんが、その意見は説得力がありますねぇ。エンダーもビーンも最初の頃は、運動面はぱっとしなかったですから。今に見ておれということかな。
 ところで、榛野なな恵さんて、代表作は?
 Webだと、「papa told me」てのが有名らしいけど、漫画は規制が厳しいらしく画像がないなぁ。
[謎のプログラマー]  少女コミックです。(^^;
 そうそう、エンダーのお気に入りで忘れちゃいけないのが《巨人の飲み物》のゲームです。プレイヤーの心を投影して展開が変わるという。こういうゲームをいつか作ってみたいと、当時は無謀にも思ったもんだ。(^^;
[雀部]  ぜひ、作って下さい(^o^)/
 現在の技術だと、嘘発見器みたいなのを使って、データをゲームの進行に活かすとかは出来ないのかなぁ。
[ゆうふぉ]  今のいわゆる「いじめ」にあっている子供達が「共感」してしまうと「危険小説」にされてしまいそうです。バガーが攻撃してくるのにはバガーなりの,「シャドウ」のストリート・キッド達は生きるため,という大義名分がそれぞれあったわけですが,ボンソーのような「いじめっこ」側の言い分はどうなのでしょう? 
[雀部]  カード氏は、善悪の描き分けがはっきりしているから、「いじめっこ」側の言い分は定型的なことしか書いてないですよね。所詮端役ということかな。
 自分のアイデンティティをエンダーに壊されて悩むボンソー像なんかを詳しく書いたら別の物語になるような気がしますね。

 では、《エンダー》シリーズで一番お気に入りの巻はどれでしょう?
 私は『死者の代弁者』がいっとう好きなんですが。故人になり代わり、その立場を代弁するという設定は、キリスト教的なのかなぁ。上巻で、エンダーが、世間からは乱暴者で通っていたマルカンの死を(その真実を明かすことによって)真実だけが持つ重みによって、代弁するシーンでは涙を禁じ得ませんでした。
[ゆうふぉ]  『ゲーム』,『シャドウ』>>『死者の代弁者』『こどもたち』>『ゼノサイド』かな? でも読んだ時期に差がありすぎて不正確かも。『死者の代弁者』は良い意味で予想を裏切られて楽しかったですが,『ゼノサイド』はちょっとノレなかった,という記憶があります。
[雀部]  ゼノサイドは、蜂の心とピギーの心を読み解かなくてはならないからかな。
[ゆうふぉ]  蜂,ピギー,ジェインはOKなのですが,地球人側の愛憎が面倒になってしまいます。
 それとノヴィーニャは、何故、あそこまでかたくなな態度になるのか、共感できません。
 そういう意味で『シャドウ』は『ゲーム』よりドライでしたね。
[雀部]  それは主人公がビーンだから(笑)『シャドウ』の続編も出るらしいから、楽しみですね。
 エンダーとかビーンは、読んでいてちっとも子供(しかも小学校低学年)らしく描かれてない(描こうとしてない)と思うのですが、どう思われましたか。《アルヴィン・メーカー》なんかでは、それをあまり感じなかったのですが。
[ゆうふぉ]  小学生の頃って、案外、大人びた考えをしていたような気もします。背伸びをしている場合もあるでしょうが、作文集や感想文集を読むと、うならされるようなこともあります(大人の手が入っている場合もあるかもしれませんが)。
[謎のプログラマー]  子供らしく描くってなんですか?そもそも子供は、自分が子供だなんて思ってない。せいいっぱいあれこれ考えてる。。それをきちんと描けるのが、カードとかキングとか山本周五郎とか榛野なな恵とか、子供の頃の記憶を忘れていない、本物のファンタジーな作家だと思ってます。
[雀部]  私が言いたかったのは「ゲーム」の場合、ストーリー展開上はともかくとしてエンダーが登場する部分を、大人に代えても違和感がないだろうなと感じたからです。
[謎のプログラマー]  カードの魅力で忘れちゃいけないのは、「影で見守る少女」の存在です。(^^;
 「ソングマスター」で、《リルク§》の章を開いたとき、「奇跡の少年」のラストのリトル・ペギー、まるで聖母マリアに出くわしたような至福の恍惚感と申しますか。ヽ(^o^;ノ前者はヴァレンタイン、後者はノヴィーニャと重なりますね。
[雀部]  最後に、このブック・レビューを読まれた方に、カード氏の魅力を紹介するとともにお薦めの言葉を頂ければ・・・
[ゆうふぉ]  じつは最初に読んだ「ソングマスター」は、あまり楽しめなくて「カード氏の魅力」と言われると困るのです。でも「エンダー」から入ると、その勢いで後に続く壮大な物語を楽しめます。
[雀部]  う〜ん、「ソングマスター」も面白かったけどなぁ^^;
 私は、カード氏の様々な魅力が楽しめる短篇集『無伴奏ソナタ』を最初に読まれるのをお薦めします。短編版「エンダーのゲーム」とともに、表題作は、音楽を扱ったSFとして長く記憶に残る作品で、涙無くしては読めません!
[謎のプログラマー]  「ソングマスター」は、私も大好き! エンダーシリーズと並ぶ代表作かと。
 とくにファンタジーの好きな方には、カードと、「ゲド戦記」のル・グウィンをお薦めします。
 私は友達がいないのですが(^^;、カードのファンは心の友です。
[雀部]  心の友よ!(笑)
 ゆうふぉさんと謎のプログラマーさんのお二人、今回はご参加ありがとうごさいました。
 このレビューを読んで下さった皆さんが、カード氏の魅力の虜になられることを願っております。

[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/

[五十嵐]

[ゆうふぉ]
病理医、ハードSF研所員。
プレストンプレスHP http://member.nifty.ne.jp/prestonpress/

[謎のプログラマー]
 ファンタジーが大好きなプログラマーです。


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