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AKIのキネマまんぽ

『2001年宇宙の旅』は“駄作”? 

『ボルト 3D』
『サマーウォーズ』
『ナイト ミュージアム2』
『宇宙(そら)へ。』

AKI

 先日、やっと佐藤勝彦著『宇宙論入門 誕生から未来へ』(岩波新書1161 2008年11月20日発行)を読み終えました。
 最初のプロローグに、「(SF風に)」として、「ビッグクランチからの脱出」という一文が載っていますが、これが先ず楽しめました。
 本書の内容は、アインシュタインの宇宙論から、ブレーン宇宙まで、そして、暗黒物質、暗黒エネルギーのお話し、最後は、宇宙の未来、終焉、マルチバース、人間原理までが親切に解説されています。
 本のタイトルには、『入門』と書いてありますが、予備知識があったので何とかある程度理解できましたが、なかなか“したたかな”本です。
 読み終えても、「宇宙の相転移」とか、「トンネル効果によって無から宇宙が誕生した」というくだりは、矢張り理解できませんでした。
 尤も、これらの理論も、現在の仮説の一つなので、理解できないのも仕方が無いかと思います。
 また、「『神』を必要としない科学的創世記が描きだされてきた」というフレーズが印象に残りました。

 この本を読み終えてから、『宇宙論の新次元 理論と観測で迫る宇宙の謎』(佐藤勝彦編 別冊日経サイエンス 2001年11月19日発行)を見直しましたが、流石に7年経つと、例えば、宇宙背景放射観測用の衛星が“COBE”から“WMAP”に変わるなど、宇宙の観測範囲と精度が、どんどん進歩しており、やがて、もっと観測資料が豊富になってくると、今までの「宇宙論」が「宇宙学」に変わって行く由。
 先ずは、重力波望遠鏡の開発が待たれます。

 古い記録を調べましたらば、佐藤 勝彦先生からは、2001年10月に、東京電力館科学ゼミナールで『宇宙の未来を支配する暗黒エネルギー 〜宇宙は第2のインフレーションをはじめたのか?〜』という講演をお聴きしていたことを思い出しました。
 また、重力波については、国立天文台の藤本 眞克先生から、同じく、東京電力館科学ゼミナールで『重力波を探す』とのタイトルで、2000年6月にお話を伺っております。
 丁度このころ、三鷹の国立天文台に、小型の“レーザー干渉計型重力波検出器”が設置されました。小型といっても、L字型に配置されたパスの長さはそれぞれ300m。
 未だに、重力波は検出されていないようです。
 関連siteによると、将来、計画されている、人工衛星3基によるレーザー干渉計型重力波検出器“DECIGO”は、衛星が正三角形に配置され、その一辺は1000kmとのこと。
 現在、重力波に関しては、丁度、電波のマクスウェルとマルコーニの間ぐらいな時代というところでしょうか。

 そんなわけで、先日、再び、『ゼロからわかる図解 最新宇宙論』(佐藤勝彦監修 学習研究社 2009年8月1日発行)を購入してしまいました。
 これは、字が少なく、絵が綺麗で楽しめます。(笑)

 8月29日に、2009年9月5日発行となっている「Newsweek 映画 ザ・ベスト 300 完全保存版」が、本屋の店頭に並んでおり、衝動買いしてきました。
 30年以上、Newsweekの映画欄を担当してきた、デービッド・アンセンの評価を中心としてスクリーニングされた名作・傑作・駄作、300本が、写真、評論付きで、1960年から年代ごとに分けられて掲載されています。
 因みに、『2001年宇宙の旅』は、“駄作”の中に入っています!

 今月紹介する映画は、以下の4本です。
『ボルト 3D』『サマーウォーズ』『ナイト ミュージアム2』『宇宙(そら)へ。』

■『ボルト 3D』

 8月1日は「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで、11:55からの『ボルト 3D』を観に行ってきました。
 土曜日で上映初日なのに、“スクリーン2”、客席:348に対して、入りは数十人。流石に、小さな子供連ればかりで、賑やか。
 このシネコンでは、日本語吹替版のみで、何故か、3Dと2Dの両方を並行して上映していました(お値段は大分違う!)。

映画:
 少女、ペニーは動物保護施設で白い子犬と出合い、“ボルト”と名を付け引き取る。
 それから5年後。偉大な科学者である、ペニーの父親の手によって、ボルトはスーパー犬に改造されていた。この改造技術をわがものにしようとする悪の軍団は、ペニーの父親を拉致。ペニーとボルトは父親救出のため、敢然とこの軍団と対決、壮絶なバトルが繰り広げられる。そして、ボルトの使命はペニーを守ること。
 突如、場面はカット。テレビ番組の劇中劇は此処で終了し、関係者はバカンスに出掛けてしまう。後に残されたボルトは、ペニーが誘拐されたと勘違い、彼女を追跡するが、誤って大きな段ボール箱の中に落ち込んだため、梱包され、届けられた先はニューヨーク。
 そこで、ボルトは、引っ越しの時に捨てられ、その後、人間不信に陥ったクロネコ、ミトンズと、テレビ番組「ボルト」の大ファンである、ハムスターのライノと出合い、この3匹はペニーと会うため、ニューヨークから、ハリウッドまで、大陸横断の長い珍道中を始める。
 その間、ボルトは自分が本当はスーパー犬ではないということを知り、また、犬本来の楽しみも覚え始める。
 艱難辛苦の果て、やっと辿り着いた懐かしいハリウッドのスタジオ。
 しかし、そこでボルトが見たのは、ペニーと仲良く共演している、もう一匹の新しい白い犬、ボルトであった。
 果たして、ペニーは、もう本当のボルトのことを忘れてしまったのであろうか。

 此処までで、物語の大半は終了したわけですが、この後、また、二転三転して最後まで息が抜けず楽しめます。
 従来の、ディズニー映画は、所謂、お子様向けのお話で、一本調子でしたが、今回はディズニーの子会社になったピクサーのジョン・ラセターが全面的に製作総指揮を執ったとかで、従来のディズニーとは全く異なった感覚の映画に仕上がっています。
 ハリウッドの裏話まで盛り込まれていて、楽しめます。
 朝日新聞の評論にも出ていましたが、「生まれた時から、スタジオという別世界の環境の中だけで育てられ、ある日、突然、外界を知る」、という筋書きは、ジム・キャリー主演の『トゥルーマン・ショー(1998)』を思い出させられました。
 このところ、忠犬もの映画が流行るようで、8月8日からは、リチャード・ギア主演の忠犬ハチ公の物語『HACHI』が上映されます。
 が、そのプロダクション・ノートを読むと、この映画制作時、その時々に合うように、大・中・小、3匹の秋田犬が用意された由。秋田犬は人に媚びないので、最初に信じた人にしか懐かないとかで、リチャード・ギアはこの3匹の犬と初対面したときにはかなり緊張したそうです。結果的には、この3匹に気に入られたようですが、この映画の撮影終了後、この犬たちはどうなったのか、ちょっと気になります。ミトンズのように人間不信にならなければよいがと思っています。

(原題)BOLT
2008/アメリカ/ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン配給
監督:クリス・ウィリアムズ、バイロン・ハワード
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
脚本:ダン・フォーゲルマン、クリス・ウィリアムズ
2009/08/01公開 1時間36分

■『サマーウォーズ』

 8月11日朝は、台風9号と、夜明けの大地震で、正に天変地異。
 しかし、情報源でまちまちの天気予報とは対照的に、現実のお天気は雨が止み、明るくなってきたので、本能の赴くまま、13:20からの『サマーウォーズ』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。
“スクリーン3”、客席:120の、ほぼ半分が埋まっていました。

物語:
 時は、2010年の7月。健二は高校二年生。数学には天才的な才能を示すが、後はパッとしない理系男子。夏休みだというのに、今日も物理部の部室で、友達と仮想世界“OZ”の保守点検アルバイトに没入している。
 そこへ憧れの先輩、夏希から、アルバイトと称して、彼女の田舎、上田までの同行を依頼され、健二は喜んで引き受ける。
 が、先方に着いてみると、そこは大家族の旧家で、しかも、彼女からは、そこの、もうじき90歳になろうという“栄曾お婆ちゃん”の期待に添うよう、健二に自分のフィアンセのふりをしてくれと頼まれる。
 その晩、健二は差出人不明のメールを開いたところ、長い数列が連なる暗号が届いていた。夢中になって解答を導き出した彼は、無意識にそれを返信するが、翌朝、起きてみると、仮想世界“OZ”は大混乱。そして、混乱を引き起こしている張本人は、何と健二のアバターであった。
 健二のこの偽アバターは、“OZ”内部のアカウントをどんどん取り込み、巨大化し、遂に、現実世界の情報網を混乱に陥れ、交通は渋滞、水道管は破裂する。そして最後、日本の小惑星探査衛星までおかしくなり、落下し始める。
 果たして、健二は、巨大化した自分の偽アバターを倒し、この混乱を食い止めることができるのであろうか。
 健二を支えるのは、彼の友人、そして、夏希の大家族、そして、世界中の人たち。

 監督は、ご存知『時をかける少女』(2006年版:アニメ)の細田守。
 青春映画であると同時に、サイバーSF。
 一見、便利になったインターネットによるコミュニケーションより、直ぐ近くにいる、人間同士、家族の絆の方が強い、という物語かも知れません。
 子供も沢山来ていましたが、子供たちにはポケモン的に、大人には、その人の知識に応じて(?)深く楽しめる映画でしょう。
 映画が終わって、退席するとき、後ろの若い女性が、友人に「田舎へ行きたくなった」とつぶやいていましたが、信州上田が、『時をかける少女』の尾道のように、大変美しく描かれています。特に、夏の入道雲が美しく、印象に残りました。
 この現実世界に対比される、サイバー空間の仮想世界“OZ”も、CGで綺麗に楽しい空間として描かれています。
 最後、巨大化した偽アバターと夏希が「花札」で勝負をするシーンは、ルールを知らないと、ちょっと分りづらいですが、海外での上映を意識してか、非常に日本調に美しく仕上がっています。

2009/日本/ワーナー・ブラザース映画配給
監督:細田守
作画監督:青山浩行
美術監督:武重洋二
エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治
脚本:奥寺佐渡子
OZデザイン:上條安里
原作:細田守、マッドハウス、日本テレビ放送網、角川書店
声の出演:神木隆之介、桜庭ななみ、富司純子、斎藤歩、谷村美月
2009/08/01公開

蛇足: 「上田観光コンベンション協会製作」のsiteによると、「この栄おばあちゃんのお屋敷の門は、真田一族の居城“上田城”の東虎口櫓門(ひがしこぐちやぐらもん)とそっくり」とのことでした。
http://www.ueda-cb.gr.jp/s-wars/index.html

■『ナイト ミュージアム2』

 8月17日は、11:55からの『ナイト ミュージアム2』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。
17日は、月曜日でレディースデイ。夏休みも後半、流石、ロビーは、お子様連れのレディーズで一杯でしたが、一番大きい“スクリーン1(客席:534)”は100人ほどの入りでした。
 夏休みのせいか、この映画も、昼間の回は全て日本語吹替版のみ。

物語:
 前のお話の続き。
 ニューヨークの自然史博物館の警備員をしていた主人公のラリーは、何故か、プチ発明家になっており、その小さな会社の社長。
 多忙な毎日を過ごしているが、暇をみて、夜になると自然史博物館へ行き、動き出す人形たちと会うのを楽しみにしている。
 が、ある日の夕方、自然史博物館に行くと、それらの人形が梱包されていた。
 館長に問いただすと、「理事会の決定で、館がリニューアルされることになり、これらの古く、要らなくなった人形たちは、スミソニアン博物館の地下倉庫に永久保存されることになった」と告げられる。
 この荷物は、翌日、スミソニアン博物館へ運ばれるが、お茶目の剥製の猿が、魔法の石版を持ち出したため、夜になると、スミソニアン博物館の人形たちも動きだし、世界制覇を目論むエジプトの王“カームンラー”は、“イワン雷帝”や“ナポレオン”、“カポネ”らと組み、新しく自然史博物館から来た人形たちと戦いを始める。
 この戦いを鎮められるのは、私をおいて他にはいないと、スミソニアン博物館に乗り込むラリー。
 果たして、ラリーは魔法の石版を取り戻し、カームンラーたちの世界制覇を食い止め、自然史博物館から来た人形たちを守ることができるのであろうか。

 今回は、博物館もスミソニアンと大きくなった分、夜に魔法の石版の力で動き出す人形たちも多種多様。最後は、リンカーンや、お土産屋のアインシュタインまで動き出す始末。
 この戦いで、ラリーをサイドから助ける蝋人形のアメリア・イヤハート(1932年、愛機で大西洋横断に成功した女性飛行士)は、かなりチャーミング。誰かと思いきや、ディズニーの『魔法にかけられて(2007)』で、お姫様になったエイミー・アダムス。
 物語は、ちょっと「?」のところもありますが、最後は、ハッピーエンド!

(原題)NIGHT AT THE MUSEUM 2
2009/アメリカ/20世紀フォックス映画配給
監督:ショーン・レヴィ
脚本:ロバート・ベン・ガラント & トーマス・レノン
製作:ショーン・レヴィ、クリス・コロンバス、マイケル・バーナサン
出演:ベン・スティラー、エイミー・アダムス、オーウェン・ウィルソン、ハンク・アザリア
2009/08/13公開 1時間45分

◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。

『ATOM』(米) 2009年10月10日
   原題:『ASTRO BOY』。(2009/10/23,全米公開)
 手塚治虫のコミックがハリウッドでCGアニメに。
 http://atom.kadokawa-ent.jp/top.html#/trailer
『宇宙(そら)へ。』(英) 2009年 8月21日
   宇宙飛行士たちが観た、美しい宇宙の光景。
 NASAの資料を元に、BBCが製作。
 http://www.we-love-space.jp/
『ハリー・ポッター』 2010年
   第7作目?

蛇足: 映画を観終えて、広いロビーに出たらば、子供連れで歩けないほどの混雑。
 どうも、お目当ては『仮面ライダーディケイド & シンケンジャー』の模様。
 また、先日、観た『サマーウォーズ』も“完売札留め”になっていました!

■『宇宙(そら)へ。』

 8月26日は思い立って、12:00からの『宇宙へ。』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。
 シアターは“スクリーン3”。上映、7分前に入ったのに、客席数:120に対して、座っていたのは3人のみ。結局、私を入れて、最後まで4人でした。
 何故か、4人とも、私同様の高齢者!
 週日とはいえ夏休み、若者は宇宙に関心がないのでしょうか。

物語:
 米ソ、鎬を削る宇宙ロケット開発競争。
 しかし、アメリカは劣勢。
 そして、「我々は、60年代のうちに月に人間を送る」という、ケネディの決断。
 失敗に失敗を重ねながら遂に月面着陸に成功する。
 と、此処までは、今年の1月に観た『ザ・ムーン』と、ほぼ同じ筋書き。
 しかし、この映画は、月面着陸後のシャトルの開発、そして、ハッブル望遠鏡の軌道打ち上げなどなどの諸業績も盛り込まれている、所謂、アメリカの宇宙開拓ドキュメンタリー映画。

 月面着陸までは、何があっても“よきアメリカ”時代のお話。国民全員が、はしゃいでいます。が、ベトナム戦争が泥沼化してからは、アメリカも変わらざるを得なくなります。
 予告編を観たときには、画質が悪いのでガッカリしましたが、これも宇宙開発の進行と並行して改善されて行き、その辺も興味がありました(当初の映像は、16mmフィルムだった由)。
 この『宇宙へ。』は、NASAの資料を基に、海を主題とした『ディープ・ブルー(2003)』、地上を主題とした『アース(2007)』の映画を制作したBBCが、NASA設立50周年と月面着陸40周年を記念して製作した映画とのこと。 
 前述の『ザ・ムーン』には、現在も元気な宇宙飛行士が沢山出演、技術的な証言もあり、楽しめましたが、この『宇宙へ。』は、正確なアメリカの宇宙開拓史と芸術性(美しい、シーンが沢山)に主眼をおかれて作られた映画のようで、また違った切り口で楽むことができました。
 夏休みも終わりに来て、何も観るべき映画がなくなったので出掛けましたが、充分、観る価値がある映画でした。

(原題)ROCKET MEN
2009/イギリス/
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督・脚本・製作総指揮:リチャード・デイル
翻訳監修:毛利衛
2009/08/21公開 1時間38分

◎ 今回、大分長い『ATOM』の予告編が上映されました。ハリウッドのCG製アトムの顔は卵形で、ちょっとバター臭い感じ。今までの、あの、ふっくら顔のアトムの方が、親しみが持てるような気がしますが。(10/10:公開)


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