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6. インフレーション宇宙 Inflationary universe

白田英雄

ビッグバンによってはじまったとされる宇宙ですが、そのままではなにかと不都合があることがわかってきました。
ひとつは宇宙を考えるときは、宇宙は一様であるとみなすのですが、ではなぜ平坦とみなすことができるかということです。爆発ではじまったのでしたら、あちこちに密度の不均一が生じてしまって、今のように一様にはならなかったはずです。
もうひとつは、宇宙のある方角とその反対からの方角から来る光の強さがなぜ均一かということです。4回の背景放射のところで説明したように、宇宙のどの方角からも3Kの温度の電波が観測されています。つまり、宇宙の両端から来る光(電波)が同じものだということなのですが、なぜ、こんなにも離れた場所から来る光が同じになりうるのでしょうか。(宇宙の地平線問題)
これらの問題を解決するために、アラン・グース Alan Harvey Guth (1947 - ) や佐藤勝彦 (1945 - ) はインフレーション宇宙を考えました。
宇宙の膨張はずっと同じ速度ではなくて、ビッグバンの極初期において、急激に膨張して、それからその膨張速度がゆるまったと考えるのです。

もともとがでこぼこがあったとしても、インフレーションによってひきのばされることによって、そのでこぼこはめだたなくなってきます。小さい球面では表面の曲率がめだちますが、大きい球面では表面が平らに近くなってくるのと同じです。表面のでこぼこのひとつのでっぱりがひとつの球だと思ってください。これによって、宇宙の一様性は説明できます。

また、インフレーションの前の宇宙はとても小さかったので、それぞれの部分が関係できていたので、その関係がひきのばされたあとも残ることになりました。これによって宇宙の地平線問題も説明できます。
COBEやWMAPなどによる宇宙の背景放射の詳細な観測によって、背景放射のゆらぎは非常に小さいことがわかってきています。

提供:NASA/WMAP Science Team

その一方で、小さいながらもゆらぎがあることがわかってきて、それによって、宇宙の大規模構造にも説明ができるようになってきています。これは、銀河が群れをなしている部分と、銀河がほとんどないような部分が宇宙にあることが観測からわかってきているのですが、そのことを説明しているということです。
インフレーションの原因は今のところ色々と説はあるようですが、これといった決定打はないようです。でも、やがて、観測や研究の進展によって、インフレーションの原因もわかる日がやってくるのでしょう。
さて、宇宙の極初期にあったインフレーションですが、実は現在は第2のインフレーションが発生しているのだそうです。
宇宙にはまだ謎が多いです。

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