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プログレカフェ夜話―SFと音楽のスパイラル―

プログレカフェオーナー口上

KONDOK

 私がSFと音楽という主題を考えた時、真っ先に思い浮かぶのは、1960年代後半に端を発して凡そ10年弱、クリームという優れたブルースロックバンドの後を受けて、主に英国で花開いたプログレッシブ・ロックムーブメントでした。彼らの音楽は、高い技術とリスナーに迎合しないプログレ性あふれる野心に裏打ちされた、ある意味芸術性も兼ね備えたものといえます。ポップス的な甘さは抑制され、クラシックやジャズを取り入れた曲構成は、必然的に長くまた即興的な部分も併せ持ちます。そうなりますと、曲の構成に物語的な主題を持ち込み、アルバム1枚そのもの、あるいは1回のステージ全部が一連の物語として表現するグループも出てきました。そして、彼らがそのモチーフとして良く活用したのがSFの底流に流れるセンス・オブ・ワンダーでは無かったかと思います。
 ドラッグ的なサイケデリックトリップを音で表現したピンク・フロイド、未来への絶望と希望をトータルコンセプトで歌い上げるムーディ・ブルース、ジャズの即興性を取り入れながら圧倒的な迫力で魂の幻想的な彷徨を演奏するコラシアム、そして、たった1枚のアルバムでプログレッシブというジャンルを決定的にし、いまなお多くのミュージシャンに影響を与えながら、人類とロック(あるいは地球)の未来を描き続けるキング・クリムゾン。その後、もっと多くのロックバンド達が、もっとストレートにSFやファンタジーの主題を取り入れていきます。曰く、ELP、イエス、ジェネシス、ジェスロ・タル、BJH・・・・。
 私自身のプログレッシブロックを巡る旅は、しかし、一旦途切れます。彼らのムーブメントも、巨大資本の流れに飲み込まれ、時代はパンクやグラム、あるいはダンスミュージックを中心とする、いわば肉体的、ヴィジュアル的に“売れる”音楽にシフトしていったからです。
 彼らのいくつかも転向を余儀なくされました。皮肉なことに、一番売れたのはその頃のアルバムだったかもしれません。
 しかしながら、プログレッシブロックムーブメントの底流は、英国から大陸へ、旧世界から新世界へ、裾野を着実に広げていました。数年前、大手レコード店の1コーナーにプログレッシブロックのものがあるのを見て、ビックリしました。それも、英国に限らず、イタリア、ドイツ、フランス、ポーランド、オランダ、アメリカ・・・・はてはブラジル、チリ、そして日本。それはもう、音楽のオリンピック状態でした。
 そこから、再び私のプログレッシブロックを巡る旅は動き出します。しかも、今度は同時代から過去へと時代を遡って・・・。凡そ20年のブランクは、豊穣な作品群との廻り合いという期待と渇望に、自ずと耳と身体が動きます。
 その途上で廻り合った多くの優れたプログレ野郎と彼女達。マスターマインド、アリーナ、アネクドテン、マリリオン、ラナ・レーン、ラクリモーサ、ザ・フラワーキングス、ドリームシアター、スポックス・ビア―ド、アフタークライイング、アブラクサス・・・・・・、更に、もっとマイナーなグループも、まだまだがんばる旧世代もいっぱいいます。
 これら多くのプログレッシブロックにはSF的センスが流れています。従って、曲からインスピレーションを受けるとしたら、またSFが自然です。SFを揺りかごにして生まれたロックが、今度はSF的な物語を紡ぎ出す。こんな螺旋状態も時空の廻り合いの場とすれば、多様性に溢れた豊穣な世界は偶然と必然に育まれ、あちこちで新しい宇宙を紡ぎはじめるのではないでしょうか。
 そんな思いをこめて、プログレカフェを開設しました。お気に入りの1枚、あるいは1曲から受ける喜びと、空想の力を考えてみようと思います。時には、主題がSFでないものもあるでしょう。でも、プログレの底辺にはSFと同じセンスが流れていることを信じて、出発したいと思います。これからの夜長、お酒やコーヒーを片手に、もし宜しければお付き合い下さい。

KONDOK

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