| TOP Short Novel Long Novel Review Interview Colummn Cartoon BBS Diary |

プログレカフェ夜話
―SFと音楽のスパイラル―

クォーターマス:UK 
◇ クォーターマス 1970
(後編)

KONDOK

―そうそう、この前グループ名は「当時英国で放映されていたSF―TV番組からとった」と言いましたよね。それが分かったんです。
 怪奇SF映画を検索していたら、あったんですね。英国はハマープロダクションが製作した「原子人間」。原題は「Quatermass Experiment」その主人公がクォーターマス博士なのです。ああ、ご存知でしたか? そうか、SFファンですものね。残念ながら未だ観ていないので、その話はまた別の機会にしましょう。でも、ハマープロ、B級の香りが大好きです。
 そう、それと、有ったんです。Bootlegが! 1971年ドイツでのライブ録音です。その名も「A Phantom Pteranodon」。いかにも、恐竜(正確には翼竜ですが)オタクが嬉々として作ったような一品ですが、演奏は迫力満点で、当時クォーターマスがテクニックと前衛性を十二分に備え、即興性にも対応できるスタイルを既に確立していたことが伺えます。
 ただ一つ残念なのは、名曲「ポストウオーサタディエコー」が聞けないこと。でも、これは後の楽しみにとっておきましょう。きっと、どこかのアルバムで発掘された録音が見つかるはずです。何せ彼らは、Big Big Bird 「Pteranodon」 なのですから。

 では、そろそろアルバムの話に戻りましょう。
 正統的なブルースロックの流れにジャズやクラシックのスタイルを取り入れ、ハードでタイトな演奏を確立していたクォーターマス。彼らの曲は、スリリングでありながら物悲しく、荘厳でありながら不気味さを兼ね備えたもので、70年と言う時代とSFTV映画の主人公に見る非現実性を具現したような作風となりました。

 アルバム全体としては、前衛的なキーボード演奏による「エントロピー」で幕が開き、「エントロピー」で幕が閉じます。その間に、純粋なハードロックである「ブラックシープオブザファミリー」、極端なイラコライザーを使ったボーカルが、聞く者を都市の憂愁に誘い込む「ポストウォーサタディエコー」、ミサ曲のような「グッドロードノウズ」、再びアップテンポでハードな「アップオンザグラウンド」と「ジェミニ」、と続き、ハードから即興的な展開に移行して、次の大曲を予兆させる「メークアップユアマインド」に至ります。そしておおとりが10分に及ぶインストルメンタル曲「ラッフィン・タックル」です。多くのリスナーはこの最後の曲に、様々なイメージを託しこむことになります。無機質な機械のきしみ奏でる音、何かの崩壊を導くようなストリングスの刻み、そのバックに流れ戯れるキーボードの群れ……
 そもそも、ラッフィン・タックルとは何でしょう? 調べると、スポーツ用語として出てきます。激しい反則性のタックルでしょうか。アメリカンフットボールやアイスホッケーで使われるようです。
 でも、彼らの音楽から来るイメージはチョッと違うのではと思います。弦楽器による単調な繰り返しが次第に盛り上がり、キーボードとベースが絡み、ドラムが聞く者を彼方にトリップさせていきます。
 あえて言えば、無機質な機械が乱立し立ちはだかる間を縫って進むライダーのような、あるいは、時計の振り子のように迫ってくる滑車(これもタックルです)をかわしながら奥へ奥へと突き進むパイロットのような緊迫感と高揚感が聞き手に迫ります。
 この曲自身の作曲はクォーターマス。クォーターマスサウンドの根幹を成す大作です。

 でもなんといっても「ポストウォーサタディエコー」ですね。この1曲を聞くためだけにアルバムを買っても良いと思うぐらいです。曲名の意味は良く分かりません。歌詞は、黙々と働いた都会人が、疲れた精神と肉体を癒すように歓楽街をさ迷い、幻覚に取り付かれ、再び働く戦士に戻っていく様子を、呪文のように響くエコーたっぷりのシャウトボイスで切々と歌い上げられます。
 次の曲に進むのが惜しいぐらいに余韻に溢れ、いつまでも文字通りエコーがかかったようにメロディーが頭にこだまするのです。社会性に溢れたメッセージというより、生き物としての根源的な疑問が、働く戦士の仮面の間隙から溢れ出た瞬間の叫びとでも言えば良いのでしょうか。

 オフィシャルなアルバムとしてはバンド名を配したこの1枚しか残していないクォーターマス。その後、それぞれ様々なバンドのメンバーあるいはソロとしてクレジットされますがあまり有名になったものは無いようです。万一再結成されても、70年代の香り溢れるB級SF映画のような、ハラハラさせてやがて悲しき真実にたどり着くハードボイルド的作風はもう望めないかもしれませんが……でも、聴いてみたいですね。いつか。

―第1話完―
(次回の予定 マリリオン:UK ◇ ブレイブ 1994 )

クォーターマス ディスコグラフィー
Quatermass ( UK )  Since 1969
Album
 ○Quatermass 1970 (今夜の一枚)
 ○A Phantom Pteranodon ;Live at Deutschland Halle 1971(Private)
Albums of the members
● John Gustafson
 with "Hard stuff" ○ Bullet Proof 1972
○ Bolex Dementia 1973
 with "Baltik" ○ Baltik 1973
● Peter Robinson
 with "Contraband" ○ Time and Space 1971
 with "Suntreader" ○ Zin Zin
○ Music Of Morris Pert 1976
● Mick Underwood  
 with "Outlaws" ○ Dream of The West 1961
 with "Strapps" ○ Strapps 1976
○ Secret Damage 1977
○ Sharp Corpotation 1978
 with "Quatermass II" ○ Long Road 2003
*出典:1990 Repertoire Records West Germany etc.

トップ読切短編連載長編コラム
ブックレビュー著者インタビュー連載マンガBBS編集部日記
著作権プライバシーポリシーサイトマップ