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SF読者のための量子力学入門

前期量子論 Old Quantum Theory
3. ド・ブロイ波 de Broglie's Wave Mechanics

白田英雄

かつて波と考えられてきた光が、波と粒子の両方の性質を持っていることについて説明してきましたが、それでは粒子としてとらえられている電子などはどうでしょう。波が粒子の性質を持つなら粒子も波の性質を持っていると考えてよいのでは?
実は電子を波と考えてやると、とあるパラドクスが解決するのでした。
よく、電子は原子核のまわりをまわっているのだという説明を聞いたことがあるでしょう。丁度惑星が星のまわりをまわっているイメージですね。

惑星の場合、重力と遠心力がつりあってトータルとしてのエネルギーは均衡しています。ところが、電子と原子核では事情が異ってくるのです。
光が電磁波であることを証明したマックスウェルの方程式は、電荷を持った粒子が加速運動をするとき電磁場が発生することを導きます。
物理でいうところの加速とは、速さが変化するという意味だけでなく、速さの向きが変化するときにも使います。速さと速さの向きをあわせたもののことを速度ベクトルといいますが、加速というのはひろく速度ベクトルが変化することをいいます。(ややこしいようですが、こうした方が方程式が簡単になるのです。)
さて、電子が原子核のまわりをぐるぐるまわっているとすると、電子の速度ベクトルが変化する (=加速する)ことになりますから、マックスウェルの方程式より電磁場が生じることになります。そこには電磁場によるエネルギーが生じることになります。

エネルギーがなにもないところから生じることはエネルギー保存則に反することになるので、どこからかエネルギーをもってこないといけなくなります。回転する電子がもってるエネルギーは運動エネルギーですから、電子は速度を減少させることになります。すると電子と原子核のあいだにはたらく電気力とつりあっていた遠心力が小さくなるので、電子は原子核に落ちてしまいます。
これでは原子は安定して存在できないことになってしまいますよね。
ド・ブロイは、これを電子が波の性質を持っていると仮定することで解決する方法を考えました。
電子が軌道上にあるとき、軌道の長さが波長の整数倍であるなら一周してきた波と元の波が強めあいますが、そうでないときには波は打ち消しあってしまいます。結局、ある波長の波だけが安定して存在します。

(ちょっと強引ですが、この時点ではなぜ電磁場が生じないかの説明はしていません。)
この場合の波長は電子の運動量(速度と質量をかけたもの)に比例するとしました。光の運動量の計算との類推です。
こうしたときの電子の波のことをド・ブロイ波といい、この考えによって原子が安定に存在できることが説明されたのでした。
実際に電子が波の性質を持っていることは実験によって確認されています。
ここで注意です。
電子の波長によって軌道が安定するというモデルはあくまで量子力学の発展の途中で考えられた
概念でしかありません。
本当に電子が原子核のまわりをぐるぐるまわってると考えてはいけません。

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