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SF読者のための量子力学入門

素粒子論 Particles Theory
21. 最終理論? Theory of Everything

白田英雄

長く続いたこの連載も今回で最終回です。
今回は素粒子の理論での現状のはなしをしましょう。
4つの力があって、そのうちの電気力、弱い力、強い力までは標準模型と呼ばれる大統一理論でひとつの力としてまとめられる目途がついてきています。まだ、理論的、実験的に解決しなくてはいけない問題は残っていますが、これらの力が統一されるであろうことを疑う学者は少ないのではないでしょうか。

ところが、残るひとつの力である重力は、大統一理論を求めた過程では統一することはできないとされています。他の力には極性があるのですが、重力は引き合う力ばかりであって、これを計算に含めようとすると無限大が発生してしまうのです。
重力の理論はすなわち一般相対性理論のことですから、重力を量子力学で統一された他の力と統一するということは、一般相対性理論と量子論を統合することに他ならないのでした。古くから多くの学者がこの問題にのぞみましたが、うまくいっていません。
ひとつの解として浮上してきたのはひも理論と呼ばれる理論です。
物質を形作る素粒子は実は点ではなくて、ある大きさのある1次元のひもであるというものです。点は大きさを持たないので、それの計算に無限大が生じるのはある意味仕方ないことなのですが、ひもは有限の大きさを持っているため、その無限大が回避されるというのです。

大統一理論や、それを発展させた超対称性理論の対称性を含むため、ひもは10次元空間に存在しないといけないことになります。ところが、私たちの住むこの世界は時間を含む4次元の時空で構成されています。そこで残る6次元の空間は非常に小さい丸に閉じていて、私たちの目には見えないとする考えが採用されました。このアイディア自体は実はアインシュタインの時代にすでにありました。カルツァとクラインの理論です。5次元時空を考え余分なひとつの次元はぐるりと小さく巻きついて見えなくなっていると考えたのです。この時空を計算することによって、重力と電気力が統一できます。ただ、現実と合わない部分があったために、この理論はお蔵入りとなっていたのです。

良いことずくめのひも理論ですが、実験での検証に必要なエネルギーレベルが非常に高く、現在は検証不可能ではないかとさえ言われています。また、なぜ6次元が小さく巻きついているのかということも謎とされています。重力の統合の手段として、他のアプローチもなされています。そのひとつがループ量子論と呼ばれるものです。
ここでは時空が量子化されます。今まで量子化されるのは物質の方でした。ところが、ここでは物質の存在する空間そのものが量子化されると考えるのです。すると、時空の最小単位は点でなくなってくるので、自然に無限大の問題が解決するのだそうです。
このループ量子論はスピンネットワークというもので記述されるため、時空が何次元であろうと問題がありません。そのためこの理論とひも理論は互いに矛盾はしなくて両立が可能な理論であるとされています。
今はどの理論が本当に重力を統一する究極の理論であるのかはわかっていません。しかし、いずれこの問題にも解決する日がくるのではないのでしょうか。

22. 参考文献 reference

この連載の中ではまったく数式を使わずに説明をするという主旨で書いてきました。しかし、量子力学というものは本質的に計算が重要な位置を占めており、事実より先に計算結果による予言が成されることも多かった理論であります。
当然、数式の理解がこの理論を正確に理解するのに必須となります。
参考文献として、数式が少ないものや多いものなど、この連載をはじめるにあたって集めた文献を列挙してみましょう。

「マンガ 超ひも理論」広瀬立成、大谷匠司(PHP)
「量子宇宙への3つの道」リー・スモーリン(草思社)
「超ひも理論とはなにか」竹内薫(ブルーバックス)
「Aha! 量子力学がわかった!」一石賢(日本実業出版社)
「図解雑学 素粒子」二間瀬敏史(ナツメ社)
「ゼロから学ぶ量子力学」竹内薫(講談社)
「なっとくする量子力学」都築卓司(講談社)
「なっとくする量子化学」中田宗隆(講談社)
「いま、もう一つの素粒子論入門」益川敏英(丸善株式会社)
「素粒子物理学」原康夫、稲見武夫、青木健一郎(朝倉書店)

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