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六畳間シアターより愛をこめて

年末年始に何を観よう?

ゾンビ

ハード関連の話が続いたので、今月はオーソドックスにおすすめDVDソフトなどの紹介をいたします。

・スターウォーズエピソード1
既に皆さんお持ちですね。今更おすすめ、というわけではないですが・・・
筒井康隆自身の俳優活動に関するエッセイ集「文学外への飛翔(小学館)」の中に、本作品についての論評が載っていた。「新たなる希望」に始まるクラシック3作品に比べて、エピソード1は、神話性が希薄で、前3作品のモチーフの繰り返しでしかない、とかなり手厳しい。ルーカス自身によるシナリオはいいかげん。彼は根っからの映画人なので、プロの作家ではないにもかかわらず、そのワンマンショー的シナリオは疑問視されることなく絶対的。それ程までにルーカスは神格化されているのか、と。
「いいかげんさ」の例示として、あのポッドレースのシーン。スタート前、宿敵セブルバがこっそりアナキンのマシンの部品をへし折ってしまうが、アナキンはスタートでエンストするくらいで大したトラブルも無く優勝してしまうのはご都合主義に過ぎるのでは、とのこと。私は部品破損は、スタート時のエンストではなく、レース中にちゃんと片方のエンジンが故障するという危機に瀕しており、その伏線だと思うのだが、それはさておき、アナキンはなぜ勝てたのか、今回のDVDを観ても私もスッキリしない。
殆ど周回遅れだったのにもかかわらず、たった3周のレースをトップまで追い上げる(殆どゴボウ抜き)ということは、アナキンのマシンが桁違いに速いのだとしか思えず、それは現代のF1レースの細かいレギュレーションに比べると他の選手にとってあまりにアンフェアなのでは。それから、最後の競り合いでセブルバのマシンと接触した際にお互いの部品がスタックしてにっちもさっちもいかなくなってしまうのだけれど、それで結局何故勝てたのでしょう?
該当シーンをコマ送りにしてチェックしたが、アナキンがスロットルとは別の、ハンドブレーキ(?)を前に倒す、(次のカット)エンジンからの噴射増大、(次のカット)驚き身をよじるセブルバ、(次のカット)バラバラになるセブルバのポッドをかいくぐり、トップになるアナキン(このカットは絵的には動きがダイナミックでとてもかっこいい)、と、やはり勢いで勝ちました、としか言いようのないわけのわからなさだ。
さらにルーカスらスタッフのコメンタリーをONにしてみる(そもそもここまでいろいろあたらなければいけないこと自体、説得力の無さを露呈しているようなものに思えてきた)。解説によると、互いの衝突でセブルバのマシンはバランスが崩れ、クラッチがはずれてエンジンの回転が上がり爆発したのだ、とのこと。そのことがわかるようにエンジン音をかなりいじっているとか。調査完了。
エピソード1において、唯一ポッドレースのシーンはアナキンが主役のところ。彼の性格描写にも力が注がれるべきだと思う。それなのに、ここで彼から受ける印象は、沈着冷静、物事に動じない利発な少年、という枠を出ない。後年フォースのダークサイドに取り込まれてしまう、その片鱗が感じられない。極端にすれば、例えば怒りにまかせてレース中にセブルバを殺害してしまうぐらいの思い切った負の描写があってもよかったのではないだろうか。インディが映っているだの(客席の右階段を上がっています)、ジャバの取り巻き連中だの、といったお遊びに目を奪われていると、物語の幹、主流に対する認識が希薄になりはしないか。
さらに勝手を言わせていただくと、ダースモールのタトゥイーンでの扱い。アミダラやジェダイ騎士を亡き者にせんと放たれた刺客であるにもかかわらず、一体レースの間はどこで何をしていたわけ?例えばこういうのはどうだろう。レースの応援に集中して気づかない一行の背後から迫るダースモール。気づいたクワイガンジンと競技場で戦闘が始まってしまい、逃げまどう群衆、破壊されるスタンド。それとレースの一位争いを絡めてもいい。どうです、「ベンハー」へのオマージュ(後述)に加えて「パニックインスタジアム(シブい!)」をリミックスした、チャールトンヘストントリビュートバージョン(笑)。
このレースシーン、その発想からして「ベンハー」のいただきだというのは、異論の無いところだろう。ポッドのデザイン(駆動系と操縦系を分離させ、それを結ぶのもヒモ)は馬車そのものだし、ジャバが周回を数えるのに小動物をはじくのも、本家での魚型のカウンターを連想する。何故か(笑)丁度うちに「ベンハー」のDVDもあったので観てみたが、レース前の準備段階、出場選手の紹介など、構成から小道具のセレクションまで、その類似点を見つけるのも面白い。
DVDのクオリティ面については申し分ない。サラウンドは全チャンネルボリューム全開。劇場ではよくわからなかった細かい効果音もホントよくわかる。LDベテランユーザーも、冒頭の星数の多さ、その安定した再生、それだけで感激されるのでは、と思う。

・Valentine
仮面を着けたショッカーが美女を次々と殺戮・・・という13金/ハロウィーン系ホラーと言ってしまえばそれだけの映画。しかし、女優の人選がなかなかシブく、007最近作でついつい視線が胸に行ってしまい困った(笑)デニス・リチャーズ、加えて、NHKで放映中のSF青春ドラマ「ロズウェル」(私は毎週観てます)から、イザベル役のキャサリン・ヘーグルと、このキャスティングでピンと来る方にはおすすめします。
画・音共にかなり良い。サラウンドの聴き所は、2人目の犠牲者が出るシーン。パーティ会場、壁面全体にたくさんのビデオ映像が投影された一種のインスタレーションの迷路で女性がさまよう。壁のいたるところから画像にあわせて短いセンテンスが発せられているのだが、女性の視線移動、身体の動きに合わせて、その音も動きながら前後左右から取り囲む。そのパラノイア的シンクロ感覚は、5.1ch再生という条件が不可欠だし、そういう意味では定石パターンに終始するホラーでも(だからこそ、か)立体音響効果による演出を積極的に取りいれている。

・Every Breath You Take(dts−CD/The Police)
DVDオーディオ vs SACDマルチ。音楽CDの新フォーマットとして、(ピュア)オーディオ雑誌もなんとか盛り上げようと腐心しているようだ。映像無し、音楽オンリーで5.1chを聴く、というのはいかなるものか。
その好奇心を満たすため、現時点ではごく限られた機種を除き、それぞれのフォーマットに対応しているプレイヤーを買わなければいけないという、どちらがスタンダードになるか、もしくはどちらも根付かず消えていくのか、その行く末が見極められないような状況ですすんで人柱になれますか。で、今回紹介するdts−CD。何故か(理由はうすうすわかるけどね)日本ではほとんど売られていないが、現AV環境(dts再生くらいはある程度普及しているだろう)のままで音楽マルチ再生を実感できる。
ポリス・・・レゲエバンドとして聴く人は少ないかも、だが、例えば収録曲Walking On The Moon。少ない楽器編成ながら、ディレイで残響音を空間一杯に広げる音作りは、典型的なDub Sound。よってdts5.1化はその曲想に沿ったもの、と理解できる。鋭いリムショット、レゲエ特有の裏リズムを刻むギターのカッティングがディレイを伴ってカカカカ・・・とフロントから頭上を通って真後ろに抜けていく。曲の終盤では、シンセの効果音、シンバルを打ち鳴らす細かい音、それらが360度いたるところからわき起こり、それはスペイシーな心地よさである。
dts−CDは、既発ではSteely=DanのGauchoが聴きたい。10月にはクイーンの「オペラ座の夜」もリリースされた。ボヘミアンラプソディのあの重厚なコーラスに包まれる、と思うとこれも是非欲しい。
一方、SACDマルチはマイク・オールドフィールドのあの名作が出ているとのこと。DVDオーディオではフリートウッドマックの「噂」がリリースと、完全に我々世代をねらい打ち、である。個人的には、ピンクフロイドの「狂気」(あの時計のところなんかすごそう)、「エコーズ」なんかを出してほしいなあ。サラウンドはプログレが絶対ハマりますって。

・クリスティーナ&ローラinN.Y 春夏編
DVDソフトのみでのリリースを前提としたオリジナル作品。よって映画に比べると短いくせに高いんだこれが(5000円)。日系美女二人によるバイオリンとチェロのデュオ演奏を、NYの風景をバックに、という趣向。確かに雑誌の評判通りの高画質、高音質であるが、いくら美女とはいえ、インタビューなんていらないなあ。
一方でNYの風景は何度観ても飽きない。個人的なハイライトは、独立記念日に打ち上げられるイーストリバーの花火が見られること(ウディアレンの「マンハッタン」の冒頭でもちょっとだけ入っている、白黒だけど)。日本の花火って一発ずつ打ち上げて観賞する、という感じだけれど、アメリカは豪快だ。同時に5発くらい一列にどんどんどんどんどん。
ところで、もう無くなってしまったWTCビルというのは、マンハッタンのシンボル的存在の一つだったのだな、と観ながらしみじみ思ってしまった。というのが、自由の女神側から、マンハッタン島を望む場合、そのフレーミングは、高さ方向は自然とWTCビルを構図に取り入れている。巨大なトーテムポールに寄り添う他のビル群。そういったストーリー的な解釈の 絵面 えづらが私たちの意識に深く焼き付いてしまっているのだ。無くなってしまった今だからこそ気づくことである。

・宇多田ヒカル/アンプラグド
パッケージの裏を見ると、リージョンALLだって。ヒッキー、アンタはえらい!世界を目指すなら、リージョンコードなんてセコイしばりはムシムシ、でがんばれ。アンプラグドと言いながら、バンドの構成は7人+弦、というけっこう大がかりなもの。いかにもアンプラグドなアレンジの曲は、「オートマティック」「ファイナルディスタンス」あたりか。
このソフトのハイライトは、U2の名曲カバーWith Or Without Youであることに異論はなかろうかと。静かな導入部から淡々と歌いながらも徐々に感情を高揚させていき、終盤の頂点へ持っていくあたり、かなりの難曲だとは思うけど、それでもヒッキー節になっているのはさすが。
ただ一ついただけないのは、このソフトの5.1ch音響設計。フロントからはボーカルのみ、楽器は全てサラウンドから鳴っている。これまで観た音楽ソフトでも、パーカッションやコーラスなど一部を後ろにまわすものはいくつかあったが、ボーカルだけフロント、というのはねえ・・・一体どういうコンセプトなのだろうか。

というわけで今回もあまり数はこなせませんでした。全国1千万の6畳間シアタラー(なんじゃそりゃ)の皆様、楽しいお正月をお過ごしくださいませ。
(実はこの原稿最後までワープロしたところでファイルをトバしてしまい、2時間半かけて再入力したものです。下書きをメモしておいてよかったです。あーしんど)

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