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六畳間シアターより愛をこめて

7000円でリージョン1を見る!

ゾンビ

困った。amazonから届いたDVD、Jeepers Creepersが再生できないのだ。絵メニュー画面とチャプターインデックスは出るのだが、本編再生が全くできない。チャプターから途中の場面に飛ぶのも無理。裏面のおまけ系は問題なく再生できるのだ(ネタバレがあるから、本編を観た後に、だって。だからその本編を観せてくれ、ちゅうの)。
これほどの不具合はDVD歴2年半の間でも初めてだ。途中でフリーズ、というのは何枚かあったが、それは物理的なキズが原因だと思っている。さてはとうとう例のリージョンフリーチェックにかかってしまったのか(=一部のソフトに仕込まれている、リージョンフリー機であることを検知すると再生不可にしてしまうプログラム。パーフェクトストーム、パトリオットなどが該当するらしい。自分の場合、パーフェクトストーム(日本版)は再生できたんだけどなあ。手動設定でリージョンコードを任意に変えられる機種:つまりそのリージョンになりすませるもの、については、このチェックが効かないらしいから一応安心)。

現使用プレイヤーは、パイオニアDV−S737改。シンガポールの業者から、リージョンフリーに改造した機種を送ってもらった。コード設定は「自動」なので、このチェックにいつぶちあたるかと、正直なところ不安だった。
もう一つ問題視するのは、このソフト、本編がスタンダードサイズとワイドスクリーン、2種類とも同一面で収録されている点(おまけ系は裏面)。素人考えでは、映画2本分が同じ面、ということで容量的に大丈夫なのか(収録されているから大丈夫なのだろうけど)、何かしら記録方法で読みとりにくくなってしまう方法がなされているのでは、との憶測も出てくる。
一方で単にソフトが不良品という可能性も捨てきれないわけで、ご近所さんに「これチェックしてもらえる?」なんて、リージョン1再生環境を有する同志がいるわけもなく、さてどうしようか。
1.ヤフオクに出しちゃう。購入額(円安で3千円くらいかかっている)全て取り返せないだろうし、本当に不良品だった場合、トラブりそう。
2.次のリージョンフリー機に買い替えるまで棚で醸造。実はDV−S747(DVDオーディオは当然のこと、SACD−マルチまで再生できちゃう)を狙っているのだけれど、これのリージョンフリー機は、ヤフオクに個人改造のものが一つ出ているだけ(しかも高い:10万!)。非プログレ機なら1万円台でリージョンフリー機が買えるが(マランツ、サムソンなど)、何台も重ねるのもなァ。
3.amazonに文句を言って交換してもらう。実は私の拙い英文で「再生できないがこのタイトルに関してそういったトラブルは報告されているか?」と尋ねてみたのだが、返答は「helpを参照せよ」。自動返答だ。埒があかない。まあ、やっとamazonも黒字に転換できたのだし、機種の相性による不具合(かもしれないケース)まで聞く手間暇はかけられませんわな。お門違い:文句を言うなら発売元(=MGM)に対してか。

観られないとなるとますます観たくなるのが人情。日本でのロードショー(2月9日より)の間に映画館で観てしまい、このDVDのことは無かったことにする、というのが大人の選択なのだろうけど、第一、それだとこのコラムのネタにもならないしね(笑)。
で、結局選んでしまったイバラの道:「PCでのDVD再生にチャレンジ」。一番手間と時間がかかり、その過程でのストレスも大きく、得られた結果が「やっぱり専用機がいいや」てなことになりかねない(多分そうだろう)けれど。
元来、PCでDVDに関わろうなんて、ハナっからOutOf眼中だったの。DOS/V機自作をされた方ならおわかりと思うが、うちのPC、ガワはもう5年前のもの、AT電源のセレロン466という骨董品である。DVD再生のようなパワーが必要なグレードアップを図ろうとすると、CPU以前にマザーボード、ケースにまで手をつけなきゃいけないのだ。

ところが。ものは試しにヤフオクでDVDドライブを検索したところ、CREATIVE/PC-DVD ENCORE Dxr2というセットが安く出ている。この製品のいいところは、映画再生に不可欠なドルビーデジタル(AC−3)信号が、付属のハードウェアデコードカードから出力されるので、別途サウンドカードは不要、かつこのカードが独立して画像処理をしてくれるおかげで、低スペックのPCでもコマ落ちせずにDVDが楽しめるという(ペンティアム100からOKだって、ほんまかいな)。
2年以上前に3万程度で売られていたものだが、6250円で落札できた。ドライブ+サウンドカード+再生ソフト、オール込みで4桁で済ませたいな(低価格リージョンフリー機よりも意地でも安くしないと!)という、かなりな条件で考えていたので、この落札額はラッキー。別途送料が850円と振込手数料がかかったけれど。

さあ、先方に代金を振り込み、ほどなくして届いたパッケージ、早速インストールすべくマニュアルを開くと!一番この世で聞きたくない一言が書いてあるではないか。「リージョン2専用です。ソフトをインストールすると自動的にリージョンは2に設定されます。2以外のリージョンに変更することはできません」がーん!PCのDVDって、普通5回くらいまで変更可能って話じゃなかった?リージョン1を中心に観るのだから、それで十分、あえてリージョンフリー化することもあるまい、と楽観視していたわしが甘かった・・・・。確かにドライバーディスクもFor Region 2 to 6というラベルが貼ってある。でもここでメゲてはいけない。相手はPCだ。据置専用機ほどガチガチに固められているわけではなかろう。
ネットで型番を入力して検索すると、出るわ出るわリージョンフリー情報。やっぱり皆考えることはいっしょね。このドライブはもう4年前の古い機種なので、ハードウェア自体がリージョンを持っているわけではなく、ソフト的に設定を変えるだけで済むらしい。つまりある意味「古い故に」有利だったというわけ。リージョン設定のフリーウェアを英国かどこかからダウンロード(無償なのだから本当にありがたい、私がノーベル賞選考委員だったら作成者に賞を進呈したいくらいだ、選考理由は国際文化交流への貢献)、なんなくリージョン変更(2to1)に成功。

さて、気になる画質であるが、コマ落ち、音途切れ、ブロックノイズもなく、古いPCであることを考えると、「いい仕事してる」と言えるだろう。しかし、それはPCの小さいモニターで観る場合の話であって、プロジェクターにつなぎ80インチに投影してみると、暗い部分のモスキートノイズ、回転系や振動に起因すると思われる周期的に表れる帯状のノイズ、輪郭も不鮮明、と普段見慣れた据置専用プレイヤーの出力画像に比べると、ビデオに例えるなら3倍速対標準くらいの落差を感じる。
でもまあ、今まで見られなかったDVD−ROMのコンテンツにもアクセスが可能になり、万一据置機で再生できなかった時の安心料としてセカンドマシン的存在ができたことは頼もしい。
というわけで、ベテランPC自作派の方にとっては「もう終わってる」いまさらなテーマかもしれないが、タイトルとおり1万円以下でリージョン1再生が実現したわけであり、その意味でスペック落ちで粗大ゴミと化したマシンの再利用策として、どうしようかお悩みの方にはおすすめ。

<Jeepers Creepers>
さて、懸案のJeepers Creepersの再生であるが、これも見事に再生できた。再生途中で不具合が発生するわけでもないので、これはプレスの歩留まりに運悪く当たってしまったのではなく、やはり自分のプレイヤーとの相性、もしくは自動リージョンフリー設定の回避プログラムがとうとう働いてしまった、と考えられる。
苦労した分、本編視聴の感慨もひとしお・・だったらいいのだが、知人に「Jeepers CreepersのPC再生にチャレンジしている」と言うと「それほどの映画やおまへんでえ」と呆れられてしまった、その程度の映画でした(笑)。
導入部の怖さ(殺人鬼のアジト探訪)は相当なもの。後半はうーん。もっと怖くできたはずの設定、素材を「寸止め」しているという印象。あるいは、予算が前半でいっぱいいっぱいになってしまったか。

<ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA ZOOM TOUR LIVE>
ELO(Electric Light Orchestra)は70年代、弦を積極的に取り入れながらもそれほどプログレに走らず、むしろポップ路線で数々のヒットを飛ばしたバンド。昨年、復活作ZOOMをリリース、それに伴うライブ収録がこのDVD。「次の曲はZOOMから・・・」とのMCに観客がそろってブーイング、ジェフ・リン(リーダー、vo)が思わずのけぞる、なんてところが笑える。自分としても、昔の曲さえ演ってくれればうれしいクチで、電話口からの問いかけで始まる(この音処理が当時新鮮だった)片想いの切なさを唄うバラードtelephone line、弦と分厚いコーラスが絡み合いながら疾走するturn to stone、この2曲が自分にとってのハイライトだ。
しかし、どこがelectric lightなorchestraやねん!と文句を言いたくなる小じんまりしたライブ。オーケストラといっても弦は3人だけ。レーザー光線やライティングのギミックも無し、ということで視覚的にはつまらなく、昔のELOはもっとすごかったはず。最新ライブの画質音質をとるか、昔のライブ(ソフトが出ていたらだけど)の熱気や同時代性をとるか、といったところか。

<Roger Waters: In The Flesh Live>
ロジャー・ウォータースは70年代プログレッシブロックを代表するバンド、Pink Floydのリーダー兼ベーシスト。去年収録のソロライブといえど、その選曲は、Floydの名作「狂気」「炎」「アニマルズ」「ザ・ウォール」からが中心、ボーカルは本人だし、と本家のライブLD:P.U.L.S.EのDVD化がなかなか実現しない今、うれしいリリースだ。それにこのソフト、これまで自分が観た音楽ライブもののDVDの中では最高のクオリティ。ライブゆえ暗めなのだけれど、ちゃんと階調が出ているしモスキートノイズも極少。音も各パートの分離が明確で、ギター3本のアンサンブルがちゃんと聴き分けられる。「アニマルズ」からの「ドッグ」。聴かせどころのツインギターハモリ、胸に沁みます。また、Floydの作品は効果音が積極的に取り入れられていたが、このライブでも、リアに時計音、話し声、飛行機の爆音などを振っていてとても面白い音作りになっている。
というわけで、昔の輝きを失っていない(shine on you!)ライブ、Floydファンは買うべきです(あ、その前にThe Wallは入手済みですよね?)。

<EAGLES:HOTEL CALIFORNIA>
音楽ものをもう一枚。このDVDはふつうに日本の店頭に並んでいる。ロックの歴史を語る上でハズせない、名作中の名作、私も耳タコ聴きで25年。去年やっとデジタルリマスターのCDが出て、確かに以前のCD盤より音の鮮度は上がったと思う。立ち上がりがキビキビして、各楽器の輪郭もくっきり。しかし、一曲目、まだアコギの胴鳴りの太さまでは出てこなくて、まあ、死ぬまでにこのアルバムが満足いく鳴り方をさせてみたいのだけれど。
今回取り上げたのは、DVD−AUDIOで最近リリースされたもの。実は現使用のプレイヤーはDVD−AUDIOには対応できていないのだけれど、別トラックでdts(5.1)が収録されており、これはうちでも再生可。音の配置は残響音を後ろに振るというオーソドックスなものではなく、積極的に各パートを各チャンネルに分けるので、リスナーの周りを演奏者が取り囲むというコンセプトだ。この場合、リアスピーカーも厳密にはフロントと同機種を使わないと。逆にあまりにキャラクターの違ったリアだとかなり違和感があるだろう。
で、その感想だが、スピーカー数が増えそれぞれから鳴る楽器の数はステレオ再生時より少ないわけだから、そのメリットとして、たとえばギターソロの細かいニュアンスなどは聴き分けやすい。一曲目、後半のツインギターの絡み合いに聴き惚れた。あらためて名演だと思う。一方で、360度周囲を取り囲んでの演奏というのは、そのギミック的な楽しさが際だちすぎ、「味わう=鑑賞」というより「面白がる」という側面を強く感じた。むしろ、効果音を多用してドラマ的要素もあるプログレ系について5.1再生というのは魅力的だ。
また、ドルビーデジタルよりは転送レートで勝るdtsといえど、圧縮されたフォーマットであることには変わりなく、その点やはりまだCDのアドバンテージは細かなニュアンスにおいて感じ取れた。

<フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン>
東宝さん、プライスは6千円の高値安定だけれど、この名作を出し惜しみせず早めにリリースしてくれてありがとう。「フラバラ」と呼ばれるこの作品、ビデオリリースされる前はファンの間で伝説化していて、それは(自分がそうなのでかくの如く推察するのだけれど)劇場公開ではなく、その後のTV放映で初めて観た子供の心にトラウマとして深く刻み込まれていたからではないだろうか。
例えば:小学生が登校して教室で発見する食い散らかされたウサギの死骸、採石場や洞窟(我々も秘密基地と称してそのような場所を好んで探し求めていたのでは)の奥、暗がりから現れる異形の者。車に轢かれながらも、足を引きずり植え込みに逃げていく浮浪児など、数々のシーンから「見てはいけないものを見てしまった」という強い印象が残っている。自分は両親の厚い保護のもと、お茶の間でぬくぬくとTVを見ていられるが、その一見平穏な日常の裏側/外側の暗闇には、禍々しい存在が隠れている、という(それこそホラーの原点なのだが)想像が生まれる。前述の事故の場面でも、水野久美は団地のベランダから少年に食べ物を放ってよこす。ベランダという境界線の「内」と「外」を際だたせる印象的なシーンだ。
画質、音質については申し分ない。先月紹介の「三大怪獣」に比べても、特撮シーンの画質のバラつきが少なく、安心して観ていられる。5.1リミックスされているが、リアから音は殆ど出てこない。海外版=ラスト、有名な大ダコ対決シーンも観られる(この部分、コメンタリーも丁寧に別録だ)が、サプルメント収録の「海外版のみに入っていた特撮シーン」(団地からの逃走時に自らパトカーを襲う、など)を含め、日本公開版に比べると、キワもの的扱いに感じられる。単なるモンスターとして、フランケンシュタインの凶暴性のみが強調されていて、それは作品の本質を全く理解していない改悪だ、とはっきり言うことができる。

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