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六畳間シアターより愛をこめて

最終回:再び6畳間シアターのススメ

ゾンビ

この冬のボーナスで、プロジェクターを三菱のLVP−L2000からLVP−L01に買い換えた。といってもそれ程金額的には大層なことではない。例によってヤフオクのお世話になり、L2000を¥86,500で売りさばき、L01を¥147,000で落札。その差額6万円だけで、発売から一年経過したとはいえ一応現行機種に様変わりできたのはうれしい。うまく立ち回れたのではないかと思っている。

プロジェクターというものは、ランプに寿命がある。L2000の場合2000時間経つと切れてしまう。この交換ランプが5万円もするらしいので、現在500時間使用済という状態から、今後1〜2年かけて2000時間使い切った時点で、ランプ交換してまで使い続ける気持ちがあるかというと、多分そこまでの愛着はないだろう。さらに、その時点で売り払おうと思っても、買う側がさらにランプ交換代まで払って入手したがる価格設定というのは相当低くしなくてはいけない。というわけで、まだそこそこの値段で売れる今のうちに買い換えてしまえ、という結論である。

L2000はDVD再生の画質に特に不満があるというわけではなかったが、そのファンノイズの大きさには閉口していた。L01はさすがに現行機種だけあって静かだ。リアチャンネルよりもむしろフロントの聞こえ方が違ってきたことで、ファンノイズがいかに本来の再生音をスポイルしているかということに今更ながら気づいた。画質については、L2000と同じ800*600のパネルを使っているので、それ程期待していなかったのだが、発色がさらに鮮やかになり暗いシーンもなんなくこなす。結果として画面に奥行きが生まれたことで、同じシーンでもより味わい深く、多様な解釈ができそうだ。

最新のプロジェクターはどれも本当に静かだ。それに安い。10万円台でDVD再生なら充分使える高画質。L2000は3年前の製品で標準価格が¥498,000。L01が去年1月発売で¥398,000。L01が15万円以下で買えたのは、後発のさらに安いライバル機種に比べるとスペック数値的にも見劣りがするし、そろそろモデルチェンジも近いからなのかも。とにかく、プロジェクターはヴィンテージオーディオとは違い、末永く持ち続けるものではない。どんどん静かに、どんどん解像度が上がり、どんどん安くなっていくのだから。

今、プロジェクターを中心にホームシアターを組もうとすると、例えば私からL2000を購入して(笑)、DVDプレイヤーは探せばプログレッシブ出力できるものが2万円程度であるだろうし、音の方は5.1チャンネルのデコーダー&アンプ&スピーカーセットが1万2千円というものをホームセンターで見かけた(さすがにメーカー名は怪しいものだったが)。DVD再生できるパソコンが既にあればプレイヤーは要らないし、リージョンフリー化の道も容易に拓けるだろう。つまり10万円ちょっとで大画面ライフがとりあえず実現するのです。

ホームシアターの選択肢として、プラズマディスプレイという提案がよくされるが、私に言わせると買われた方には申し訳ないがあれはリビング、お茶の間TVが薄く大きくなっただけで、ソフトに対するアプローチ方法が変わったわけではない。つまりシアター=映画作品と暗闇で正面から向き合う(それは本来孤独な行為だ)非日常的時間を創出するため、自分から能動的にハード・ソフト両方向を選択し工夫していくものではなく、やはりお仕着せのプログラムを生活の一部として、食事をしながら、家事をこなしながらと、「ながら」視聴するための装置。さらに、そのような使われ方がメインのものに数十万円、というのはあまりに高価すぎないか。例えばプラズマは40インチで60万円(1万5千円/インチ)。一方プロジェクターは80インチで20万円(2500円/インチ)。ディスプレイの寿命も液晶より短いという話だし、ランプのように簡単に交換がきかない。

だから、家族みんなのリビングでの団らんとホームシアターというのは厳密な意味では両立しない。自分の劇場を造るのなら、本来の意味や経済的な面、後々工夫する楽しさという面からもマイ6畳間で液晶プロジェクターを中心に、というあり方がベストなのではないかと再度主張したい。

さて、突然ですがこの連載も今回でひとまずお別れなのです。最後に、「6畳間シアター」と名乗りながらスタート以来その全体像をお見せしていなかったし、コラムのメインに据える程のものでもなかった小ネタも一緒に蔵出ししてしまおうと思う。

6年前に中古の一戸建てを購入した際、マイルームとして確保した6畳洋間。環境としては直下が家族の寝ぐらなので深夜の大音響は無理だが、この部屋が隣家とはある程度距離を取れる位置にあるので近所への気遣いは要らず助かる。部屋の短辺側の壁一面を使えば4:3の80インチ画面が取れる。

マイ6畳間

スクリーンはスプリング巻き込み方式でかなり重く(10キロはある)、しかしながら高さの微調整も必要(やってみればわかるが、プロジェクターからの投影画像を四隅ピッタリ画面におさめるのはなかなか難しいのだ)なので、DIY派の定番=フリーアングルで支柱を組み、そこからフックで吊している。固定せずに天地で突っ張る形だ。

スクリーン1 スクリーン2

センタースピーカーはコンクリートブロックを3段重ねてのせ、コルク片で上方に角度をつけている。台詞の出所と画像との違和感を少なくするため、出来るだけ画面下端ギリギリまでセンタースピーカーを近づけるのが基本。ワイドスクリーンの映画鑑賞がメインだから、スタンダードでは下端がケラれるとしても、あえてもう一段ぐらい上げるというのが丁度いいのかもしれない。もしくはワイドとスタンダードでセンターの高さを簡単に上げ下げできるようなスタンドの工夫というのも今後の課題として面白い。前に置いているdts&THXのプレートも自作で、フォトスタンドに販売店でもらったステッカーをはさんだもの。

センタースピーカー

フロントスピーカーはALR−JORDANというメーカーのENTRY−Sというモデル。以前書いたが、オーディオフェアでその元気のいい鳴りっぷりとコンパクトサイズにしては雄大なスケール感が気に入って、前後4本これで統一した。新製品がいくら出ても買い換えたいと思わない位、本当にいいスピーカー。ユニットがぶっこわれても又同じものを買うかも。私だけではなく、同様に惚れ込んだ方がStereo Sound最新号でラブコールを書かれているので参照されたし。6畳間でサラウンド組むのにこれ以上大きなスピーカーを四隅に置くのは現実無理だし、といってコンパクトスピーカーで音に妥協したくない。そういう意味から6畳間定番としておすすめなのだ。

フロントスピーカー

そしてフロントスピーカーには3点ほど手を加えている。

レゾナンスチップをユニットを固定するネジ頭に貼る:レゾナンスチップというのは音に有害な振動を逃がすというふれこみで、見てくれは子供雑誌の付録のようで原理もマユツバものだけれど、安価(1800円位)だしダマされたと思って一度お試しあれ。スピーカーに初めて貼った時はビックリした。下品な表現で悪いが歯切れのいい元気な低音が「ブリブリ」出てきた。普通でも元気のいいENTRY−Sにさらにカンフル剤を注射したような。レゾナンスチップは、DVDプレイヤーのトレイ裏にも貼っている。自分がこれまで使ったパイオニア製の光学式プレイヤーは、どれもこれもピックアップの動作音がカリカリと鳴り、気になって仕方がなかったのだが、チップを貼ることで明らかに音が低減された。

レゾナンスチップ

スピーカー台の上板とスピーカー底面の間に特製10円玉インシュレーターをはさむ:オーディオアクセサリーというのは「言ったモン勝ち」の世界で、「下に敷く」モノも一ケ数千円というものがゴロゴロしているが、こういうものはまず自作だ。10円玉を数枚重ね合わせ、ガムテープで周囲を巻いてから金太郎アメのように輪切りにするだけ。それ以前は両面テープで貼り合わせていたのだが、横ズレするので強度的にもこの方がよい。

10円玉インシュレーター

インシュレーターの役目というのは、スピーカー台とスピーカー底面の間で不要な振動を伝えないことと、ガタつきなく設置するための「かまし」であるが、スピーカー底面に空間が生まれることで結果として低音の量感アップも望むことができる。3点支持で左右6個*50円=300円。安上がりなグレードアップだ。

マジックテープでスピーカーを固定した:これもスピーカーが自らの振動により台上で「踊る」のを防ぐもの。転落防止の意味もある。

「敷きモノ」といえば、アンプとCDプレイヤーの下に大理石板。通販で一個400円也。イメージ通り、足下がしっかりした音になった。特にピアノやウッドベース、ゴリっとした感触で存在感がある。背骨が一本しゃきっと通り、自信を持った芯のある音。

敷きモノ

リアスピーカーの置き方についてはかなり苦労した。スクリーンと対面の壁一面が作りつけのクロゼットになっており、その中にプロジェクターとリアセンターを置いているのだが、クロゼットの扉が前方に開くため、物を出し入れする際にはリア左スピーカーをいちいちどかさなければいけないのだ。

6畳間後ろ

以前は、ホームセンターで買ってきた適当な縦長ボックスの下部にキャスターを付け、スピーカー台としていたのだが、フロントよりさらに高い重心位置ではそのぐらつきがよろしくない。そこで写真のような可動式の台を考え出した。台が壁に固定できるのでぐらつきも抑えることができ、クロゼットを開ける時は簡単にたためる。

可動台1 可動台2 可動台3

前々回から2回に渡って苦労したPCでのDVD再生は、結局普通のこのような形に落ち着いた。

6畳間PC

DVDドライブが2つあるのはリージョン1と2で分けているから。静音ケースと謳うだけあって静けさはなかなかのもの。サラウンド音声はデジタル信号で出力してAVアンプでデコードさせる形だが、OS(Win2000)とサウンドカードの相性なのか、2枚程試したカードが全然デジタル出力してくれない。結局、USB接続して光デジタルに変換する周辺機器を使うことにした。インストールもとても簡単だ。

USB接続

以上が「6畳間シアター」の全貌である。真冬の今、夜間この部屋は吐く息も白くなるほど冷えるので、こたつにあたっての鑑賞だ。このこたつという代物、実はホームシアターにぴったりの偉大な発明だと思う。他の暖房器具と違い空気は汚さないし静か、布団で覆えば光も漏れない。ただ暗闇で足ばかり暖めていると、居眠りに陥ってしまうこともしばしばなのだが。

コラムスタートから1年半。「ホームシアター」という言葉はかなり浸透し、DVDもすっかり普及した。当初「おすすめDVD紹介」という主旨でお受けしたのだが、ソフトのコンテンツについての批評は雑誌でもネットでも山程ある。まあ普通の人より1ヶ月間で購入する枚数は多いにしても、同じようなスタンスではそれらとの差別化はできない。そこでAudioVisual的アプローチでの自分と世界の関わり方、という観点から色々好き勝手を書かせてもらった。「面白かった」という感想をいただいた時は本当にうれしかったです。ご愛読本当にありがとうございました。

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