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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

東北大学SF研究会
> 沿革
 東北大学SF研の明確な設立時期はわかりませんが、かなり古いことは確かです。
> 活動
 1、2週間に一度、事前に決めた小説を読んできて感想を言い合う会を開いています(通称:部会)。たまにSF映画を借りてきて部室で見ることも。
過去は部誌を出していたのですが、残念ながらここ数年は部員の人数的な問題で刊行を休止しています。
> 現状
 ここ数年は新入部員も少なく、なかなか厳しい状態が続いています。なんとか部会は行えているので、来年こそは部員の平均年齢の大幅な若返りを図りたいところ。
> 部員紹介
 過去に所属していた部員で一番有名になった方といえば円城塔先生でしょうか。現在も円城先生の作品の部会を行って内容の解読を試みることがありますが、上手くいくことは少ないです(笑)
> 写真
 部室の写真はぱっと見つからなかったんですが、代わりに部室によく来ていた猫の写真を見つけました。写真の猫はもう人に貰われていきましたが、今はまた別の猫が来ているそうで。SFといえば猫という(勝手な)イメージを持っているので、部室に猫が来てくれるのはなんとなく嬉しいです(笑)

『エピローグ』
> 円城塔著/シライシユウコカバーイラスト
> ISBN-13: 978-4152095619
> 早川書房
> 1,652円(honto電子版)
> 2015.9.25発行(電子版)
 オーバー・チューリング・クリーチャ(OTC)が現実宇宙の解像度を上げ始め、人類がこちら側へと退転してからしばらく―。特化採掘大隊の朝戸連と相棒の支援ロボット・アラクネは、OTCの構成物質(スマート・マテリアル)を入手すべく、現実宇宙へ向かう。いっぽう、ふたつの宇宙で起こった一見関連性のない連続殺人事件の謎に直面した刑事クラビトは、その背景に実存そのものを商品とする多宇宙間企業イグジステンス社の影を見る…。宇宙と物語に、いったい何が起こっているのか?
 SFファンなら、円城さんの本としては取っつきやすい方だと思います。読むと、筒井康隆先生の本を読んだときと同質の感慨にふけることができます。
 関係ありそうな『プロローグ』という本も出たのですが、出版社が違うし、まだ電子版も出てないので、読んでません(汗;)
表紙画像
『エピローグ』書影

雀部> 東北大学SF研究会の皆さん初めまして。1970年入学の雀部陽一郎と申します。
 私が入学した年には、まだSF研は無かったのですが、設立されたのはいつ頃とかはご存じでしょうか。
東北大> 東北大学SF研の明確な設立時期はわかりませんが、かなり古いことは確かです。
 過去には会誌がSFファンジン大賞を受賞したりしたこともあったそうで、その時の賞状が今でも部室に飾ってあります。
 現在、団体としては東北大学推理小説研究会と合併しており、同じ部室を共有して使っています。
雀部> ミス研と共有というのは、よく聞くような気がします。
 会誌『DIVERGENCE』が、1983年のファンジン大賞と1984年に『DIVERGENCE EXTRA』3号が紹介・翻訳部門賞を受賞してるんですね。
 現在はどんな活動をされているのでしょう。
東北大> 1、2週間に一度、事前に決めた小説を読んできて感想を言い合う会を開いています(通称:部会)。たまにSF映画を借りてきて部室で見ることも。
 また、映画を見に行ったり闇鍋をしたりするなど、突発的によくわからない集まりをすることもあります。
 過去は部誌を出していたのですが、残念ながらここ数年は部員の人数的な問題で刊行を休止しているのが現状です。
雀部> かまわなければ、現在の部員数を教えて下さい。
東北大> 現在の部員数は7人です。
 ここ数年は新入部員も少なく、なかなか厳しい状態が続いています。なんとか部会は行えているので、来年こそは部員の平均年齢の大幅な若返りを図りたいところ。
雀部> 部員さんの学部構成もできたら教えて下さい。
東北大> 内訳は学部1年、2年、3年、4年が1人ずつ、修士1年が1人、修士2年が2人ですね。
 あとは、たまにOB(?)の博士の方が来たりすることもあります。
雀部> なかなかバラエティに富んでますね。学部というか専攻別ではどうでしょうか。
東北大> OBの先輩方を含めて考えても、やはり一番多いのは工学部の方ですね。専攻がどうだったかまではあまり覚えていないですが、情報や土木など結構ばらけていた気がします。
 次いで多いのは文学部だったと思います。これもまあ、小説を読むサークルですので妥当かなと。
 あと、割と経済学部の方もいます。何故かわかりませんが結構います。
 他は、理学部、薬学部などがちらほらといる感じです。
雀部> 経済学部は、文化系ですけど、わりと数式使うからかなぁ。
 ところで、女性会員はいらっしゃいますか。
 もし居ない場合は、やはり居て欲しいモノでしょうか。
東北大> 現在は残念ながら女性の部員はいませんが、数年前はいたそうです。
 ほしいかと言われると、うーん、どうでしょうか。私としてはSFの話が出来れば男性でも女性でもロボットでもエイリアンでも誰でもいいと思っているので、とくに意識したことはありません。
 しかしSFと銘打つとどうも男性が多くなりがちな傾向がありまして、そうなると女性は入りにくいでしょうし、なんとかしたほうが良いのかなぁと思って試してはいるのですが、なかなかうまくいきませんね。
 新歓時期はもっと意識して女性作家の作品を取り扱ってみるなど、まだまだやれそうなことはあるので色々とやってみようとは思っています。
雀部> かつては、『アルジャーノンに花束を』あたりは鉄板だったんですけどね。
 元部員で、現在SF関係者の方はいらっしゃいますか。
東北大> 過去に所属していた部員で一番有名になった方といえば円城塔先生でしょうか。
 現在も円城先生の作品の部会を行って内容の解読を試みることがありますが、上手くいくことは少ないです(笑)
雀部> ありゃま(笑)
 おっと、円城さんはSF研の部員であられたんですね。インタビューの時にうかがうべきだった(汗;)
 ということで、円城さん、お忙しいところお呼び立てして申し訳ありません。
 円城さんが部員であられた当時は、どういう活動をされていたのでしょうか。
円城> わら半紙に絵を描いていたり、CDを聞いていたりですね。会誌を作ったり、個人誌を作ったりですか。個人誌の方が多かったはずです。基本的にひまなときにそこにいてだらだらとしている場所でした。
雀部> そうなんですか。
 SF研の創立・沿革とかについて何かご存じでしょうか。
円城> 僕らの頃ですでに、一回断絶がある感じでした。「Divergence」も途切れていた。だから起源は失われていて、中央との連絡も途絶えている。ファウンデーションでいえば、一回帝国がダウンしたあとの辺境、みたいな。
雀部> 何度か部そのものが無くなっていた期間があるのかな。
 ありがとうございました。
 後輩の部員の皆様に、なにか一言頂けませんでしょうか。
円城> ミュールに気をつけて下さい。
東北大> まずは帝国に対抗できるくらいSF研の勢力を伸ばすところからはじめないといけませんね。
雀部> 部員の皆さんは、どんな作品を読まれているのでしょう。もしくはどういった作品がお好きなのでしょうか。
東北大> このインタビューに書くために部員から好きな作家や作品やらを聞いてみました。
 イーガンや円城塔のような理詰め(が行き過ぎてよくわからない)作品が好きな方がいるかと思えば、小野不由美や上遠野浩平といったライトノベル、ファンタジー寄りの作品が好きな方がいたり、1984などのディストピアものがやたら好きな方がいたり。
 まあだいたい皆さん変な人ばっかりですが、話していると面白いです。むしろどこかネジが外れてる人の方が面白い。そういう方と話をする機会が持てるのはファングループのいいところかなと思います。
雀部> 昔はSFファンと言えば変わり者扱いされたものですが、最近もそうだったとは(笑)
 どんな部室なんでしょう。
東北大> 部室の写真はぱっと見つからなかったんですが、代わりに部室によく来ていた猫の写真を見つけました。写真の猫はもう人に貰われていきましたが、今はまた別の猫が来ているそうで。SFといえば猫という(勝手な)イメージを持っているので、部室に猫が来てくれるのはなんとなく嬉しいです(笑)
雀部> オールドファンのイメージで言うと『夏への扉』?、それともコードウェイナー・スミスの方かな?(笑)
東北大> イメージは夏への扉ですね。私がこのSF研に入って最初に読んだSF小説だったので、よく覚えています。
 他には猫の地球儀なんかも思い浮かびます。こちらはライトノベルですが。
雀部> ということは、高校時代にはSFは読まれてなかったのですか。
東北大> 私の場合、読まなかったわけではないですが、あまりSFというジャンルを意識しては読んでいませんでした。どちらかというと図書館にある面白そうな本を適当に借りて読んでいるタイプでしたので。
 といっても、読んでいたのは小川一水や宮部みゆきだったので、SF研には入るべくして入ったという感じはあります(笑)
 海外SFを読み始めたのは大学に入ってからですね。その最初が『夏への扉』でした。
 残念ながら海外SF作家の本は高校の図書館にほとんどなかったので、海外SFはあまり読んだ記憶がありません。今思えばもうちょっと読んでおけばよかったなぁと思うこともあります。今更ですが。
 部員の中には、親がSF好きで家にそういう本があって昔から読んでいた、という方が結構いらっしゃるんですが羨ましい限りですね。
雀部> ということは、海外SF寄付したら読んでもらえるのでしょうか。
 我が家にはいっぱいSFあるんですけど、三人の息子達は誰も読みませんでした(汗;)
東北大> もちろん是非に、と言いたいところなのですが、現在部室の本棚キャパシティがカツカツどころか溢れ出しているのが現状でして、ダンボール単位になるともはや人間の座るところがなくなりそうです。
 紙袋くらいならまだ置くところがありそうなので、数冊送っていただけるとかでしたら大歓迎です。
 また、部会の課題本のネタは随時募集していますので、おススメの海外SF作品を教えて頂けるだけでもありがたいです。
 もし教えていただいた場合は課題本にして部会を開きますので、メールでもtwitterでもネタ投稿は随時募集中です。まあ、流石にサンリオ文庫とか銀背になると難しいですが、努力します(笑)
雀部> 『猫の地球儀』はブックレビューやってますが、どういったところがツボでしたでしょう?
東北大> 科学、技術の進歩にはコストや犠牲がつきものだが、それに対して科学者、技術者はどんな事を考えてどんな答えを返すのか、という点でしょうか。
 外の世界に出ていくという夢に対して払ったコストは本当に適切なものだったのか、という後半の禅(?)問答のところですね。
 キャラクターで言えば、夢を追わずにいられない、ある意味マッドなサイエンティストである幽が一番好きです。
 また、研究に行き詰った時にこういう本を読むと、色々と勇気づけられます。ちょっと自分をごまかしてる感じもしますが(笑)
雀部> なるほど、研究者ならではの視点ですね。研究者の受難を描いた松崎有理さんの著作は読まれましたか?奇しくも東北大出身のSF作家の方ですが(笑)
東北大> 松崎有理先生の作品ですと、あがりは一度部会を行った記憶があります。
 その時の部会では、あんなにDNAを増幅したら東北大どころか仙台がDNAで埋まるんじゃないかとか、原料を買うとしたらいくらかかるのかとか、納豆を実験室に持ち込むだなんてとんでもないだとか言っていたのを思い出しました。最後のは私ですが。
雀部> わはは←納豆のくだり
東北大> 作中で出てきた「ゆきわたり」という名前の喫茶店も探してみたのですが、どうも結構前に閉店してしまっていたようです。残念。
 東北大に縁のある作家の方なので、別の作品も部会で取り上げてみたいところです。
雀部> 『代書屋ミクラ』は、架空論文とか、有名雑誌に論文が掲載されるまでの悲喜交々が面白くかつ切実に描かれていてお薦めです(こういう紹介で間違いないはず!)
 東北大学SF研の皆様、今回は新しい試みに応じて頂きありがとうございました。
 また機会がありましたらよろしくお願いします。
 円城先生、急なお願いにもかかわらず、ご参加ありがとうございました。
東北大>  こちらこそ、色々なお話が出来て楽しかったです。ありがとうございました。これからも細く長く継続していけるよう頑張っていきたいと思います。
雀部> 私が入学した昭和45年には、SF研は無かったのですが、その翌年の46年に「野田昌宏氏愛蔵カバーイラスト展開催、およびSF研入会希望者を募る」とかいう(すでに記憶が曖昧ですが)掲示を見た覚えがあるので、そこらあたりの事情をご存じの方は、ぜひご連絡いただけるとうれしいです。新しい情報が得られたら追記して、告知いたしますので。


[東北大]
 

東北大SF研中の人量産型@tohoku_sf
東北
大学SF研の中の人です。うちのサークルの雰囲気等をお伝えしてゆきたいと思います。課題本やイベントのお知らせもしてゆきます。SF関連ネタ、書籍関連情報等RTも。(業務連絡)部員は見つけ次第フォローします。

東北大学仮サークル棟G15www28.atwiki.jp/tohokusf/
[円城塔]
1972年、北海道生まれ。東北大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞。同年、『Self‐Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫JA)で長篇デビュー。2012年『道化師の蝶』で芥川賞、同年、伊藤計劃との共著『屍者の帝国』で日本SF大賞特別賞を受賞。また2013年、『Self‐Reference ENGINE』の英訳版フィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞
[雀部]
大学生の時にSF研に入れなかった落ちこぼれ。東北大歯学部卒

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