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Author Interview

インタビューア:[雀部]&[白田]

『《光世紀世界》への招待
―近距離の恒星をさぐる』
> 石原藤夫著/宮武一貴カバーイラスト
> ISBN 4-7853-8599-5
> 裳華房
> 1300円
> 1994.6.15発行
 《光世紀世界》とは,太陽系を中心とした1光世紀(=直径100光年)の球状宇宙のことです。そこには千数百の既知の、あるいは未知の恒星が存在しており、われわれ人類の訪問を待っています。
 ということで、星雲賞を受賞した幻の著作『光世紀の世界』の書籍化第一弾。
 地球から近距離にある《光世紀世界》の恒星について、名称や各種のカタログ番号・座標・視差・距離・等級・スペクトル型・太陽との質量比・直径比など様々なデータをまとめた「光世紀星表」を収め、その活用を解説した本です。

 内容見本など、この本の詳細は、こちら

『《光世紀世界》の歩き方
―近距離恒星の3Dガイドマップ』
> 石原藤夫著/宮武一貴表紙カバーイラスト
> ISBN 4-7853-8753-X
> 裳華房
> 1800円
> 2002.11.30発行
 星雲賞を受賞し、アーサー・C・クラーク氏から絶賛されながら、私家製版のためになかば伝説となっていた『光世紀の世界』の書籍化第二弾。
 SF作家でもある石原先生が、太陽の“隣人”たる近距離の恒星について、さまざまなデータをまとめた「光世紀星表」を収めた前著『《光世紀世界》への招待』に続き、本書では《光世紀世界》を視覚的にとらえられるよう、さまざまに工夫した俯瞰図や展開図・立体視図など多数の「光世紀星図」を収録。
 また、主要な恒星の紹介や、星の命名法についても詳しく解説してあります。

 内容見本など、この本の詳細は、こちら

「ぜひ英訳してほしい」と言われました

雀部 >  この本は、'85年に星雲賞を受賞された『光世紀の世界』を元にした入門書で、全三巻のうちの第二巻ということでよろしいでしょうか?
石原 >  一応そういうことなのですが、需要の多い分野ではありませんので、第三巻相当が出るかどうかは不明です。逆に言いますと、第二巻めが出たこと自体が、奇跡に近いのです。やはりこれは、SFファンの編集者である國分さんのおかげです。
 それでも注目してくださる人は今でもおられまして、第一巻を活用して独自に星図をつくって発表しているサイトなどもあるようです。
雀部 >  「インペリウム:帝国辺境星域」というSFゲーム"インペリウム"を遊び尽くすというサイトかな。
 またアーサー・C・クラーク氏からも、お褒めの言葉をいただいたそうなんですが、よろしければその経緯についてお聞かせ下さい。
石原 >  クラークさんは、元版のコピーを(元版そのものは無くなっていたので)お送りしたのですが、非常に頭の良い方なので、内容をすぐに理解なさったようです。ただし解説はすべて日本語なので、「ぜひ英訳してほしい」と言われました。また自分も太陽系の外の世界を描いてみたいとも言われました。
 お礼に、ASCENT TO ORBIT というサイン入りの大冊を贈ってくださいました。これはクラークさんの論文や専門的エッセイを集めた大判ハードカバーの本です。英語圏の科学好きのクラークファンは、「クラークさんの最高の書」と言っているようです。
 日本で翻訳されることはまず無いと思いますが、これを読まないで真のアーサー・C・クラーク論を書くことはできないだろうと思います。
 それから、今考えますと、元版が品切れにならないうちに、クラークさんはじめ、ポール・アンダースンさんとか、そういった世代のSF作家に贈呈するべきでした。そうしたら、かなり認められただろうと思います。

近距離の恒星を具体的な個性のあるSFの舞台にしたいと思ったのです

雀部 >  SFの舞台となった《光世紀世界》の星々というリストも載っているのですが、意外に少なくて驚きました。それに、その星系(というかその星系の惑星)が舞台ということに必然性がある作品はさらに少なく、設定そのものに生かされているのはハードSFの大御所クレメント氏の作品くらいしか無いんですね。驚きました。
石原 >  そうなんですよね。私が『光世紀の世界』を作成した理由もそこにありました。太陽系の内部の惑星は、それぞれ個性が分かっていて、SFでも使い分けられているのですが、太陽系を離れて恒星の世界になると、急に個性が無くなって、単に地球から見て明るいか暗いか――要するに光る点でしかなくなるようです。
 それをもう少し改善して、近距離の恒星を具体的な個性のあるSFの舞台にしたいと思ったのです。
雀部 >  太陽から一番近い恒星として有名なプロキシマ・ケンタウルスは、実は二重星であるトリマン(アルファ・ケンタウルス)の周囲を回る連星で、しかも閃光星なんですね。これじゃ、SFの舞台には不向きですねぇ、あまりSFに登場しないわけだ。
石原 >  そうですね。
 それともう一つ、連星を含めてアルファ・ケンタウルスで纏められていたこともありますね。
 閃光星かどうかを気にするSF作家は少数派でしょうが、閃光星というのは面白い現象ですから、逆にこれを利用してハードSFが書けるような気がします。
 たしかフレデリック・ポール(?)にそういうSFがあったような気がします。実在の星では無かったと思いますが・・・。
雀部 >  ポール・アンダースンの『焦熱期』(ハヤカワ文庫SF)かなぁ? これは千年に一度、恒星アヌが惑星イシュタルに接近するというお話だから違うかも知れませんが。
 このなかで、白鳥座61番星というと、ハル・クレメントの『重力の使命』だけではなく、オールドファン(私だ^^;)には、瀬川昌男さんの『白鳥座61番星』が懐かしいですね。では、次は宇宙関連の仕事をしてらっしゃる白田さんにバトンタッチしましょう。

とくにSFファンには知ってほしいです

白田 >  『光世紀の世界』はそのうわさは聞いたことあるのですが、刊行当時はまだ学生だったこともあり、とても手に取れるようなものではありませんでした。分冊版が出ているということは、このインタビューをきっかけで知ったのですが、十数年前にこういう本が容易に手に入っていたらどれだけうれしかったことかと思います。
 私は今回この本を読んではじめてトリマンという名称を知りました。昔からむしろアルファ・ケンタウリの名称の方が知られていましたから。
 《光世紀世界》の時間旅行を見て勘違いしてしまったのですが、天体の位置は現在の位置ではなくて過去の位置じゃないですか。それで、この図も時間的な補正をする必要があるのかな、と。でも、よく考えてみると、半径15光年の領域なわけですから、そんな誤差が生じるわけないんですよね ^^;;; 
 そういう意味でも、光世紀世界というのは非常に丁度よいスケールなんですね。
石原 >  《光世紀世界》に興味をもっていただいてありがとうございます。『《光世紀世界》の歩き方』の星図にも描きましたが、数千年ていどではその動きは誤差に埋もれるていどなので、あまり気にはしませんでした。基本にした星表は主に1950年の位置ですので、50光年の星の位置は100年前ということですが、ほとんど無視できると思います。光世紀星図でいちばん問題なのは視線方向の距離で、これはたぶん何光年もの誤差があると思います。
白田 >  『《光世紀世界》の歩き方』がインタビューで選ばれてから、『《光世紀世界》への招待』の方も買いました。
 『…歩き方』は『…の招待』を受けて、その解説という形を取っているのですが、『…歩き方』単独でも読み物としておもしろいですね。二葉立体図、命名規則、そして太陽近傍の星々についての解説などは、普段あまり見かけることのない内容ですから、この内容だけでも買いだと思います。
 『…歩き方』が先に出てた方が、一般の読者には読みやすかったのではないかと思うのですが?
石原 >  もともと一冊(一箱)の資料集なので、あまり気にはしていなかったのですが、たしかにそうかもしれません。どちらもマニアックな本なので一般向きではありませんが、少しでも多くの方に見てほしいと思います。とくにSFファンには知ってほしいです。
白田 >  まだ刊行も決まっていないうちに早いかもしれませんが、三冊目はどのような内容が予定されているのでしょうか。
石原 >  元版の残り三分の一でして、仮題『《光世紀世界》の観光案内』です。閃光星、連星、白色矮星、とくべつ明るい星、とくべつ暗い星、人間に向いた星など、特色のある星の観光旅行の案内書です。この部分はハードSFを書く資料にしてほしいと思って書きました。出版される可能性は少ないのですが・・・。
白田
雀部
>  三巻目も出すことが出来るよう応援しますので、よろしくお願いします。
 今回はどうもありがとうございました。


[石原藤夫]
'33年、東京都生まれ。早稲田大学電気通信学科卒。工学博士。専門はマイクロ波導波管回路素子。
'65年、「ハイウェイ惑星」でSFマガジンデビュー。以降日本では数少ないハードSFの書き手として活躍。ハードSF研主宰。
書誌研究家としても知られ「SF図書解説総目録」「『SFマガジン』インデックス」で、第12回日本SF大賞特別賞を受賞。その活躍は、海外でも有名で、GROLIER社の"THE MULTIMEDIA ENCYCLOPEDIA OF SCIENCE FICTION"にも名前があげられ、業績が紹介されている。
[雀部]
50歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/
[白田]
白田英雄:謎の宇宙関係者。
日本宇宙開拓史および、魔法物語とヤーヴェイの翻訳をしていた。
今月号で最終回の「初めに光ありき(SF読者のための相対論入門)もよろしく。
現在、次の連載にむけて準備中。

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