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Author Interview

インタビュアー:[雀部]&[粟野]&[浅野]

シネマ天文学入門
『シネマ天文楽入門
―宇宙SF映画を愉しむ―』
> 福江純著/田巻久雄イラスト
> ISBN 978-4-7853-8778-5
(旧ISBN4-7853-8778-5)
> 裳華房
> 1700円
> 2006.11.20発行
 数々のSF映画を題材に、宇宙・天文の愉しみ方のコツを教えます。
目次:詳しくは、裳華房のサイト
第1章 シネマ天文楽への誘い ──〈スター・ウォーズ〉──
第2章 宇宙開発前史 ──『ライトスタッフ』──
第3章 赤い惑星へようこそ ──『ミッション・トゥ・マーズ』『レッド プラネット』──
第4章 空が落ちる日 ──『ディープ・インパクト』『アルマゲドン』──
第5章 ピンポイントクラッシュ ──『地球最後の日』『さよならジュピター』──
第6章 未来のロケット ──『2001年宇宙の旅』──
第7章 侵略者たち ──『宇宙戦争』『物体X』──
第8章 小さな訪問者 ──『アンドロメダ...』『復活の日』──
第9章 水の惑星 ──『惑星ソラリス』『ソラリス』──
第10章 異形の惑星 ──『砂の惑星』──
第11章 時間旅行 ──『タイムマシン』──
第12章 銀河文明への道 ──〈スター・トレック〉──

『ブラックホールを飼いならす!
―ブラックホール天文学応用編―』
> 福江純著
> ISBN 978-4-7699-1040-4
(旧ISBN4-7699-1040-1)
> 恒星社厚生閣
> 3300円
> 2006.6.5発行

 姉妹書『ブラックホールは怖くない?』と併せてブラックホール宇宙物理学について、相対論的な考え方の基礎から、実際の宇宙における応用までを、最新の成果に基づいて解説。本書は応用編で、姉妹書は基礎編に相当するが、それぞれ独立に読めるように配慮してあります。

1,ブラックホールSF
2,宇宙アクリーション天体
3,宇宙ジェット天体
4,重力レンズ天体
5,ブラックホールの一生
6,ブラックホールの渦動
7,ブラックホールとワームホール
8,ブラックホールの利用法

ブラックホールを飼いならす!

[先月号から続く]
雀部 >  第七章は、「侵略者たち」ということで『宇宙戦争』と『物体X』です。
 実は侵略者モノは大好きで、福江先生が未見の印をつけてらっしゃる『ゼイリブ』とか『メン・イン・ブラック』『MIB2』も面白く見ました。ま、TVでですが(笑)
 浅野さんは、『宇宙戦争』(1953年)は見られました?
浅野 >  私も、映画でも小説でも侵略モノは大好きです。攻めてくる侵略者は、動物や植物と多様ですね。侵略モノ映画は、殆ど全部映画館で見ているつもりです。
 1953年版『宇宙戦争』は、たしか銀座の「スバル座」あたりで観たような記憶があります。未だ、私が学生だった頃ですね。
 筋はよく知っている物語ですが、三角な空飛ぶ円盤(?)が出てきたのにはビックリしました。場所がロンドンから、ロサンジェルスに変更されたり、最後は原爆まで使われたりと、若干の変更はありますが、原作にほぼ忠実に作られていると思います。
 先生のご本の中で、映画版の火星人に触れられていますが、主人公たちが農家の空き家に隠れているシーンで、短時間ですが2度火星人が出てきます。ひとつは1秒以下ですからビデオのコマ送りでないと分かりません。(笑) それによると、火星人は首の上に頭が付いた蛙といった感じで、おでこにRGB(赤・緑・青)の三原色で分割された目がひとつ付いています。なるほど、火星人の色認識も我々地球人と同じなのだなー、とそのときは妙に感心しました。が、よく考えてみると、赤い星に住む火星人が、我々と同じ色認識であるはずはないですね。また、火星人が地球のバクテリアで全滅するのであれば、暫く経ってから、今度は地球人が火星人の持ってきたバクテリアで全滅しても不思議ではないとも思いました。
雀部 >  三原色で分割された目は、全然気づきませんでした。あのタコのような姿といい、今の映画よりよほど考えられているんじゃないですか。前述の『ミッション・トゥ・マーズ』の宇宙人よりは数倍マシ(笑)

 Wellsの『宇宙戦争』(The War of the Worlds)は、我が「アニマ・ソラリス」でも、−卓−編集長の翻訳で連載中です。よろしければぜひどうぞ!
 『星間戦争』はこちらから。
 ところで、生命の発生・進化を研究している生物学者の方達と、天文学者の方達が共同で論文を書かれるということはあるのでしょうか?
福江 >  ぼく自身は経験はないですが、十分にあると思います。
 とくに、日本では分野間の垣根がまだ高いですが、欧米ならありそうですね。
雀部 >  生命の発生については、福江先生は適当な惑星が存在すれば“必然”であると書かれてますが、総体的に見て生物学者と天文学者とでは、どちらが異星人の存在に関して楽観的なのでしょうか?(笑)
福江 >  これは完全に想像ですが、天文学者じゃないですかねぇ。
 一般に、天文学者は楽観的で適当な人が多いですから(笑)。
雀部 >  ええ〜っ、そんなこと言ってもよいんですか(爆笑)
 福江先生もこの章で生命の発生について簡単に解説してらっしゃいますが、地球上の生命体は、ほとんどL型のアミノ酸だけで構成されていることが知られてます。で、海底の熱水噴出口付近でできたアミノ酸(ラセミ体)に、偏光した紫外線やγ線が作用して、D型が壊れやすくなったという説があります。この紫外線やγ線の発生元として中性子星が、また、超新星から放射されるβ線も影響しているという説を読みましたが、偏光したγ線とか、片一方のスピンのβ線とかは観測されているのでしょうか?
福江 >  やばいですね、だんだん化けの皮が剥がれてきました。
 一応ぐぐってみたら、中性子星(pulsar)の偏光(polarization)は観測されているようです。
 もっとも、いま観測されているパルサーは、どれも非常に遠方なので、それらの偏光γ線が地球に影響を与えたわけではないでしょう。でも、38億年ほど前に、地球に近いところで、超新星爆発なんかが起こったのかも知れないですね。
雀部 >  その偏光γ線は、ブラックホールの近くを通ると影響されるとかは無いのでしょうか?
福江 >  えっと、一応、ブラックホールで光線は曲げられますが、光線の性質自体には影響がない、いわゆるアクロマティック(色消しレンズ)的な働きをするので、おそらく影響はないと思います。
雀部 >  そうですか、なんか残念(笑)
 巨大ブラックホールの中心近傍から吹き出ているジェットは、偏光成分とか偏ったスピンを持っているということはないのですか?
福江 >  ジェットに来ましたか〜
 ジェットにはプラズマ以外に高エネルギー電子や磁場が含まれているので、ジェットからの放射はバキバキ偏光しています。
 よその銀河中心の巨大ブラックホールからのジェットが、ぼくたちの近辺に影響を与えることはないですが、太陽系の近くにブラックホール連星があれば、そこからのジェットが影響を与える可能性はありそうですね。
 あまり考えたことはなかったですけど、う〜〜む、面白そうです。
 いずれ、リタイアしたら、本気で考えてみようかな。
 そのころに、大方忘れていると思うので、自分(福江)が思いついたように言っていたら、最初に言ったのはオレ(雀部さん)だって、主張してくださいね。
雀部 >  私は当然、忘却の彼方に(笑)
 浅野さん、『遊星よりの物体X』(1951年)は、いかがでしたでしょう。
浅野 >  1951年版と1982年版、両方とも観ています。日本の題名だと『遊星より』と『遊星から』だけの違いで紛らわしい限りです。1951年版は白黒映画でしたが、それが、北極基地の恐怖シーンにうまくマッチしていて、効果的でした。この1951年版の『物体X』は、ちょっと、フランケンシュタインに似ているのが気になりましたが、完全に植物の人間でした。犬に食いちぎられて残していった植物人間の片手から摘出された種子を、基地の博士が栽培するシーンがあります。種子を苗床に蒔き、何十本も発芽させ、医療用の血漿を肥料にやるとどんどん生長、やがてこの植物が呼吸を始めるシーンは強く印象に残っています。
 最後、この植物人間をやっつける武器が、灯油だったり、電気だったりとローテクなのも面白いところです。
 1982年版に比べて、残酷(グロテスク)なシーンがないのがよかったです。が、キャンベルの小説『影が行く』と比較してみると、1982年版の方がシチュエーションは原作に忠実のように思われます。
 植物の地球侵略というと、ジャック・フィニイ原作の『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956)も白黒映画でしたがよかったですね。
雀部 >  植物と言えば、『人類SOS ―トリフィドの日―』(1962)ですが、ローテクというか、トリフィドも海水に弱かったんじゃなかったでしようか?
浅野 >  そうでしたね。最後、ジャージャーと海水を掛けていたシーンがありました。
 最初、「流星雨の天体ショーがあり、それを見ていた世界中の人が盲目になり、それを切っ掛けにトリフィドが暴れ出す」という筋書きだったと思いますが、この流星雨とトリフィドとの科学的(?)関係が、今ひとつ記憶にありません。
 その後、アメリカ西部の砂漠を車で走っていると、トリフィドそっくりのサボテンが沢山生えており、これが全部動き出したらば・・・と何度か考えたことがあります。(笑)
雀部 >  原作では、流星雨とトリフィドは、全然関係はないのですけどね。視力を奪われた人間にとっては、動いて毒棘を持つ植物は大いなる脅威となるという設定を作るための導入部なのかなという気がします。
 『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956)の莢のようなのも植物でしたよね。
浅野 >  この映画も映画館で観た記憶があるのですが、諸資料を調べてみると「日本未公開」となっており、常々不思議に思っていました。が、その後、出版された「SF映画大全」によると「日本では一部の地域でのみ公開」と書かれてあり、納得できました。
 あの頃は未だ独身でしたから、どこへでも観に行けたのだと思っています。
 この映画の中で、宇宙人に変身してしまった人間が、主人公に「サンタ・マイラはトラブルが多い町だった。そこへ何年間も漂流していた宇宙種子(SEED)が舞い降りた。いかなる生命体にも転身再生できる宇宙種子だ。寝ている間に、心も記憶も吸収して再生される」と言っていますので、矢張り植物の人間であると思われます。
 最後、小説では人間が勝ち、莢は新たな餌を求めて宇宙に逃げていくのですが、映画ではどうも人間の負けのようです。私は観ていませんが1978年にリメーク版があるのですね。
 この他、植物が地球を襲う映画では、コメディタッチですが『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1960年、リメイク:1986年。1986年版はミュージカル)がお気に入りです。
雀部 >  『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は私も好きです。なんたって、あの変な歯医者が素敵(笑)
 両作品とも舞台が南極というところが共通してるのですが、以前に南極で発見された隕石が火星から来たものと確認されたことがありましたがこういう惑星由来の隕石は、火星からのものだけなのでしょうか?
福江 >  そうですね。
 火星は大気が薄いので、隕石の衝突で破片が飛び散ることはありえるでしょうが、金星だと大気に阻まれて惑星を飛び出すことが難しいでしょうし、水星は太陽に近すぎて、破片が地球近傍まで飛んでくるのが難しいですから、あるとしたら火星が有望ですね。
雀部 >  他の恒星系の惑星からは飛んできそうにないと思いますが、衛星からはどうなのでしょうか?タイタンとかエウロパあたりは。
福江 >  そうなんですよね、それはありうるんじゃないかと。
 衛星だと脱出速度は小さいですし。
 実際に、どれぐらい検討されているかは知らないですが・・・
雀部 >  見つかると色々なことが分かりますよね。
 第八章は、「小さな訪問者」ということで『アンドロメダ...』と『復活の日』です。
 小さな訪問者というのは、細菌とかウィルスを指しているのですが、宇宙由来ではなくても、地球上にもやっかいなウィルス多いですよねぇ。『アンドロメダ...』の方は、クライトン氏の原作も話題になり、ベストセラー級の売れ行きだったと記憶してます。
 映画もスピーディかつサスペンスフルで、非常に面白かったです。浅野さんはいかがでしたでしょうか?
浅野 >  『アンドロメダ』は日本公開以前に、何故かニューヨーク市北部の映画館で観ています。たまたまニューヨークへ出張し、ホテルの新聞の映画欄で発見、その映画館を地図で調べ、夜、地下鉄に乗って観に行ってきました。事前に、小説を日本語で読んでいましたので、よく分かりました。
 この映画は、前半と後半の二つの部分で楽しめますね。前半は人工衛星が宇宙から持ち帰った病原体が小さな町を全滅させるが、一人の赤ちゃんと男だけが助かる。“何故か”という謎解き。二つ目は、この病原体研究所の防疫体制が破られ、秒読みで原爆により研究所が消滅されそうになる。果たして起爆は食い止められるのであろうかという緊張感、です。
 先生のご本の中に「<アンドロメダ菌株>は実は宇宙からのメッセンジャーだった」と書かれていますが、そのメッセージとは何だったのでしょうか? 録画と小説の後半を再度見直しましましたが、残念ながらそのメッセージが分かりません。この病原体が、標準的な人間の血液と同じpHの人間だけを発病させるという点なのでしょうか。
 月に2度ほど行くのですが、12月中旬に渋谷の東京電力館科学ゼミナールで海洋研究開発機構の講師から『深海底の生物について』というお話を聴きました。
 10000メーター程までの深海底に住む生物とその採取法、保存、応用などの紹介があり、最後には、地球深部探査船(海底掘削船)『ちきゅう』で採取した、海底下500メートルまでの泥土、岩石中の生物のお話にも触れられました。これらの探査で、想像をはるかに越える未知の大型生物や微生物が数多く発見できたとか。
 そこで直ぐに頭に浮かんだのが『アンドロメダ』でした。
 その先生が研究中の微生物“封じ込め”の度合いはP3レベルとのことでしたが、webで調べてみるとかなり緩いような気がします。勿論、最後に原爆が破裂するようなレベルは書いてありませんでしたが。(笑)
福江 >  原作版だったか映画版だったか忘れましたが、アンドロメダストレインのパターンに、幾何学的な模様だったかなにか、あきらかに人工的なものがあった覚えがあります。
 メッセージそのものが解かれたわけではないですが、自己増殖し伝播していくフォンノイマンマシン、いわゆるブレイスウェルマシンだったと思われます。
浅野 >  はい、確かに映画にもありました。電子顕微鏡下、真空と電子照射に晒されながらも、病原体自身の結晶構造(?)が複雑に進化(変化)してゆき、やがて、人畜無害な病原体になる、というシーン。
 私は、単純にウイルスの結晶が変化しているのだと思って観ていましたが、あの中に何らかの情報(メッセージ)が隠されていたのかも知れないのですね。
 因みに、下記、“ウイルス構造研究フォーラム”のsiteによると、地球上のウイルス結晶は正20面体対称になっているみたいです。
 http://www.protein.osaka-u.ac.jp/rcsfp/supracryst/vsrf/index.html
雀部 >  私もウィルスの結晶構造を見て、クライトン氏は医者だからなかなかやるな!と(笑)
 割と単純な正六角形の形だったから、分子量が少なくて普通の処置では防疫しにくいのと、突然変異を起こしやすい設定なんだろうなとは思いました。
 福江先生が『シネマ天文楽入門』で書かれているように、もしロボットメッセンジャーである「ブレイスウェルマシン」だったら、本当におしいことをしたのかも分かりませんね。しかし、はた迷惑なメッセンジャー・ナノマシンではありますが(笑)
 他の星系の異星人たちに、こういうメッセンジャーを送り出すとしたら、四方八方にばらまかないと、他の星系の惑星と遭遇する確率が上がらないですから、何にくっつけてばらまくのが適当なんでしょうか?
 目立つというとミニブラックホールとか(笑)それとも、10の何百乗個のメッセンジャー・ウィルスを内包した爆弾を宇宙空間で爆発させるかな。
福江 >  いやまったく、ナノマシンなら、はた迷惑ですが、それでも、グレイグー化して(暴走して無限増殖して)地球がぐちゃぐちゃにならなかっただけ、ましかなぁ。どっかいっちゃいましたし。
 ある程度ばらまけば、途中で増殖すればいいので、数と言うより、むしろ移動速度(移動手段)が効いてくるかなぁ。
 爆発でばらまくのが単純っぽいですね。宇宙空間だったらほとんど減速ないですから、初速でそのまま飛んでいくでしょうし。
雀部 >  地球では、人間の生命に関わる事態を引き起こしたので、大騒ぎになったですけど、例えば特殊なバクテリアに感染して、その菌が絶滅しても誰も気がつかないだろうなぁ(笑)
 『復活の日』は、原作が小松左京先生で、たまたま私はこの『復活の日』と『日本アパッチ族』に関してのインタビューをさせてもらったことがあるのですが、今読んでも名作だし、映画のほうも原作とは違う味付けですが、面白かったです。
浅野 >  これは確か生物兵器用病原体移送中の奪い合いで病原体が漏れ、地球が滅亡に追い込まれるという物語でしたね。でも題名の通り、最後に一握りの人たちが南極に生き残れそうだ、という救いがあったのがよかったと思います。この間、地震の震動で発射されそうになる原爆ミサイルを止めに行ったりと、いろいろなサービスも盛り込まれていました。
 この映画は「人類滅亡+潜水艦」という組み合わせなので、どうしてもその20年前に観た『渚にて』(1959)と頭の中でダブってしまうのです。『渚にて』は出演者も名優揃いで、大好きな映画のひとつです。私がハム(アマチュア無線家)なので、不明なモールス信号を追って、その発信源を突き止めに行くあたりは興味津々でした。
 あ〜、また、話がずれましたね〜。
雀部 >  『小松左京マガジン 第11巻』の「小松左京自作を語る7 日本アパッチ族/復活の日」で、“実は一つパクったアイデアがあるんだよ。潜水艦で行って沿岸から潜望鏡をあげてみるとってやつ”と語られてますから(笑)
福江 >  『渚にて』に反応しちゃいました〜
 核戦争後に東西が相打ちになって、オーストラリアだけ残るんだけど、死の灰がじわじわとやってくるんでしたね。
 グレゴリー・ペックが艦長でしたっけ?
 最後に艦橋で敬礼してませんでしたっけ?
 あそこが、すっごく格好良かったです。
 ネビル・シュートの原作も前後して読みましたが、だいたい原作に忠実に作られていましたよね。
 ぼくは高校の頃にTVで観たと思うのですが、青春時代(笑)のペシミスティックな気分に、すごくマッチした映画でした。
 いまはあんな暗い映画、もう観れないですけど(爆)。
雀部 >  グレゴリー・ペックとエバ・ガードナーですね。私もTVで観たくちです。
 原作のほうの、最初に出てくるエリオットの詩が格好良かった。
 『復活の日』のウィルス、MM-88の"MM"は、"Martian Murderer"(火星の殺人者)だそうですから、こちらも宇宙からのお客様には違いないですね。
 また、宇宙空間で水やアンモニアをはじめとする化学物質が、塵(ダスト)の表面に付着して「化学進化」を起こし複雑な有機化合物が生じる可能性が『シネマ天文楽入門』のなかで示唆されてますが、ブラックホールの降着円盤あたりだとどうなのでしょうか?
 材料は何でもあるだろうし、放射線などのエネルギーも豊富(あり過ぎ?)だし。
福江 >  物性は詳しくないのですが、(化学苦手だったし)ダストの表面で、単純な分子が結合して、複雑な分子になる、化学進化は実際に起きているようですね。
 アミノ酸などの有機化合物やPAH(多環式芳香族炭化水素だったかな)などと呼ばれる複雑な化合物がたくさん見つかっているのですが、そういうのは分子が衝突しただけでは形成できないそうです。
 ただ、ブラックホール降着円盤の場合は、温度が軽く一千万度いきますから、ダストも分子も壊れて、ちょっと無理っぽいですねえ。
 でも、原始星周辺の降着円盤(原始惑星系円盤)は、温度も低温で、ダストもたくさんあるので、化学進化の温床になりそうです。惑星生命にとっても具合がよさそうですね。
 系外惑星の研究者は、そこらへんは、生命とは行かなくてもダストの形成などは、かなり考えているようです。
雀部 >  そうか、原始星周辺の降着円盤ですね。ありそう。
 第9章は、「水の惑星」ということで『惑星ソラリス』と『ソラリス』です。
 「スタニスワフ・レム追悼ブックレビュー」ということで、「アニマ・ソラリス」でもブックレビューを数ヶ月にわたりやってます。
 原作のイメージに近いのはタルコフスキー監督の『惑星ソラリス』の方だと思いますが、どちらも、原作本来のメッセージからは離れたところで出来上がった作品という印象を受けました。
浅野 >  いよいよ『惑星ソラリス』の登場ですね。
 この映画は1972年の製作ですが、日本公開は5年後の1977年。どう仕事の時間を都合したのか忘れましたが、平日の午後5時(?)からの上映に間に合うように神田神保町の岩波ホールへ行き、階段に行列して入場したのを覚えています。(笑)
 オープニングのタイトルや所々に入るシンセサイザーによるバッハの音楽(ハ短調 コラール前奏曲とのこと)もピッタリでした!
 始めの三分の一ぐらいは、主人公のクリスを取り巻く過去と現在、ソラリスとはの紹介など、伏線が長々と続くので、早くソラリス本体が出てこないかと焦らされました。
 この中で、未来都市を表現するためにバートンが自動操縦の車に乗って、複雑な地下高速道路の中を走っていくシーンが10分ほど続きますが、このシーンは東京の首都高速道路でロケされたもので、当時、マニアの間では話題となりました。多分、赤坂あたりだと思われます。
 後に、VHDビデオディスクで観たらば、この部分40分ばかりが省略され、解説で補われていたのでがっかりしました。
 物語は、皆さんよくご存知のことと思いますので、ここでは省略致します。
 物の本によると、この映画の製作にあたり、レムとタルコフスキーはお互いの主張が噛み合わず、大喧嘩をしながら作ったので、二人ともこの映画は最低だと思っている、そうです。
 このとき買ったプログラムの解説が豪勢で、「スタニスラフ・レムについて」を手塚治虫が、「タルコフスキーと『惑星ソラリス』」を黒澤明が書いています。また、映画評論家の佐藤忠男は、この実体不明な女性ハリーとクリスの恋を『四谷怪談』と対比して書いています。
雀部 >  このプログラムの画像は、レムの追悼レビューのページにあります。
浅野 >  30年後にリメイクされた2003年版の『ソラリス』は、原作よりか、むしろタルコフスキーの『惑星ソラリス』を踏襲している感じで、エンディングは「矢張り、これはハリウッド映画だ!」と思わせるようにできあがっています。加えて、さすがは現代、ソラリスの海もCGで描かれており、シナプスが入り組んだ巨大頭脳がイメージされています。
 『惑星ソラリス』の時は大行列で観たのですが、『ソラリス』の時は劇場に着いたらば私が一番で、映画が始まっても観客は僅か11人でした。(笑)
 先生のご本の中にも「海洋が移動することによって惑星の重心を変化させ、安定な軌道に乗せているのだ」と書かれてますように、ソラリスはその知能の海の移動により重心を変え、二重星を公転する複雑な軌道を安定化し、主星への墜落を防いでいます。
 確かに惑星そのものからみると、海の移動で重心は変化(移動)しますが、惑星の公転軌道について考えてみると、惑星の公転軌道には惑星の重心が乗っているので、海が動いても軌道は変わらないように思うのですが如何なものでしょうか?
 それとも、ブランコのスイングと同じように、公転周期に同期して重心を変えると、軌道が変わるのでしょうか?
 でもブランコには、ロープが付いているし・・・・・・。
 ブランコのロープをゴムひもに変えたら、ブランコを漕ぐことはできないかも。
 分かりません!? (笑)
福江 >  やばい〜ですね。これはまずいっす!!
 ソラリスの重心移動については、さらっと考えていたのですが、鋭い指摘です。
 いや、これは、さらっと考えても、わかっておかなければならない点でした。
 母星とソラリスがよっぽど近接していれば別かも知れないけど、惑星として生命が存在できるぐらい離れているなら、母星からみたら、ほとんど質点ですから、少々重心移動したぐらいでは、軌道角運動量が非常に大きいですから、角運動量の輸送はほとんど無視できますし、軌道はほとんど変わらないでしょうね。
 うわーん、天文屋失格ですねぇ。
 天体力学が一番の苦手分野だったということで、ご勘弁のほどを(笑)。
 このパラグラフ、全部、薄字にしてください(泣)
雀部 >  ということは、レム氏の設定そのものが推敲不足かな(笑)
 デイジーワールドの話、面白く読ませて頂きました。なるほど大気中の酸素分圧が安定しているには、それ相応の原因があるんですね。
 最近、大気中の二酸化炭素の増加による温度上昇が話題になってますが、地球の軌道平面上に、太陽光線を遮る物体を何個か置いて太陽光線量を減らすとかは出来ないのかなと考えているんですが。公転周期との関係もあって、数は要るでしょうが。
福江 >  ちょっと面倒なのは、軌道運動させた場合は、同期しない(対地球で静止しない)ことですね。
 名作『リングワールド』にも遮光板みたいなのがあったと覚えていますが、上手い具合に、昼と夜を繰り返すようになっていたと思います。つまりは、遮光板の数×面積との兼ね合いで、遮光板がトータルとして、地球面を隠している割合×隠している時間の割合で太陽光線量が減ることになりますね。
 むしろ、太陽公転軌道に乗せるよりも、地球周回軌道に乗せた方が、取り扱いは簡単かもしれません。
雀部 >  もちろん『リングワールド』が念頭にありました(笑)
 地球周回軌道のほうが近くて設置とかメンテは楽というのは分かるんですが、遮光板の大きさはどちらが小さくてすむのでしょうか。太陽が点光源なら、話は簡単なのですが。
福江 >  それはグッドクエスチョンですね(笑)。
 大学で、くそ忙しいのに、つい、図まで書いてしまいました。
 これは、日食のときの本影(皆既食)、半影(部分食)なんかと似た話になりますかね。
 時間がないので話をシンプルにするために、<本影>だけに話を絞ると、太陽の半径Rと遮光板の半径Dが重要そうです。(太陽と地球の距離も重要かと思ったけど関係なさそう)
 遮光板の半径が太陽半径より大きければ全部隠れますが、まぁ、そんなに大きな遮光板は無理でしょうから、太陽半径より遮光板の半径が小さいとすると、遮光板を太陽に近づけるほど本影は小さくなって、ある程度近づけると、本影はなくなりますね、おそらく。
(図を書いてみただけなので・・・)
 三角形の相似から、本影がなくなる距離は、地球から測って、太陽地球間距離のD/R倍だけ離れた位置になります。
 地球周回軌道で、地球赤道と23度ほど傾いた黄道面に、幅広の帯状に自己修復仕様薄膜太陽電池フィルムを広げて、発電しながら遮光するというのはいかがでしょうか?
雀部 >  第10章は、「異形の惑星」ということで、『砂の惑星』が取り上げられています。
 “異形の惑星”というと、私は恥ずかしながら井田茂著『異形の惑星』(2003)が、出版されるまで全く知らなかったのですが、後書きを読むと'95年から数年間は、惑星・天文学者さんたちにとっては、一種お祭り騒ぎ状態だったようですね。
福江 >  1995年の惑星発見の一報では、天文学会のネットへは激震が走りましたね。
 ぜんぜん畑違いのぼくでさえ興奮しましたし。
 本には書かなかったですが、理由は2つぐらいあると思います。
 もちろん第一は、よその太陽系での惑星発見です。
 天文学者も人間の端くれですから(あれ、使い方、逆か?)、やっぱり、地球外生命はすごく気になるわけですね。
 もう一つは、より科学的なもので、見つかった惑星が予想外に異形だったことですね。
 まぁ、母星に近いホット・ジュピターだったからこそ、それ以前は不可能だと思われていた方法で見つかったのですが。もしホット・ジュピターのような異形の惑星がなかったら、太陽系外惑星の分野は50年遅れたかも知れませんね・・・
浅野 >  「異形の惑星」については、昔、「NHKスペシャル」か何かで観たことがあり、「ホット・ジュピター」のシミュレーション映像が、強く記憶に残っています。
雀部 >  残念。それ見てません。
 『異形の惑星』(NHKブックス)の口絵にCG想像図が載っています。
 このペガサス座51番星にあるホット・ジュピターは、主星のふれによる「ドップラー偏移」と、主星の明るさが減光する「トランジット」によって検出されたそうですが、前述のリングワールドなり、遮光板なりが存在したら、検出可能なんでしょうか?
福江 >  リングワールドや、球状のダイソン殻なら、検出可能性はあり、実際に検出を試みたことはあります。方法は、掩蔽などによる減光ではなく赤外線探査です。
 ご存じの通り、熱力学の法則から、母星のエネルギーを吸収しても、必ず、廃熱を捨てなければなりません。廃熱は、赤外線領域で捨てることになるので、赤外線源を調べて、ダイソン殻かどうかを探ろうとしたものです。
 残念ながら、人工的だと言える赤外線源はなかったそうです。
雀部 >  む〜、それは残念です。
 ホット・ジュピターの起源は、『異形の惑星』によると2003年当時では、まだよく分かってないみたいですが、現在はどうなのでしょうか。
福江 >  『異形の惑星』自体は読んでいないので(笑)、どの程度わかっていないと書いてあるのか知らないですが、井田さんや小久保さんの話を聞く限りでは、まぁ、現在でも似たり寄ったりじゃないでしょうか。
 一応の考え方としては、2003年当時もあったはずですが、母星のすぐそばで巨大なガス惑星を作ることはおそらく無理なので(原始惑星系星雲の考え方では、ガスは周辺の方が多い)、ホット・ジュピター自体は、最初は、太陽系のガス惑星のように、母星から離れた領域でできたと想像しています。
 そして、そのガス惑星が、まだ大量に残っていたガスの影響か、他の惑星の摂動によるものか(ここらへんがよくわからないのかな)、なんらかの理由で、母星近くまで移動したのだろうと思っています。
 #migration(移民・移動)と呼んでいます。
 太陽系の惑星を見る限り、非常に安定したシステムに見えますが、惑星系というのは、あれで結構カオス的振る舞いをするようですね。
雀部 >  えっと、惑星がガスの影響で落下するのが普通で、どうやって止まるかが問題のようです。
 1,惑星落下+潮汐ブレーキ
 2,惑星落下+質量放出ブレーキ
 すんません、専門外のことをお聞きして(汗)
 『最新 宇宙学』で、佐藤文衛先生が岡山天体物理観測所で300個のG型巨星について惑星探しを続けていると書かれていらっしゃいますが、成果はどうなのでしょう?
粟野 >  だいぶ進んでいて、新しい惑星もいくつか見つかりつつあるようです。
 近いうちにビッグニュースがきけると思いますよ!?
福江 >  いやぁ、とってもいいレスですねぇ。
 ビッグニュースですかぁ。すごいリークです。
 関西に来て**年、やっとサービス精神満載になりました。OKです。
 でも、まだ“ゆみちゃん”は関西の恐ろしさを知りませんねぇ。
 こういうインサイダー情報はどっから仕入れるのかな(笑)。
 とうぜん、つぎに、そういう突っ込みが入ります。
 正確には、どっからというより、誰からだろう。
 あああ、済みません、これ以上、突っ込めません、
 根性なしの福江(非関西ネイティブ)でした(とほほ)。
粟野 >  突っ込みありがとうございます(笑)。
 でも、すでにちゃーんとコメントされてる情報なので、ご安心(?)を。
 岡山観測所の紹介DVD(昨秋完成)は、系外惑星探査やガンマ線バースト観測など、最新の研究成果・将来計画が紹介されていてオススメです。博物館でもご覧いただけます!
雀部 >  ビッグニュース、期待してます〜。
 DVDなんてあるんですか。岡山天文博物館に、買いに行きます。

 映画『砂の惑星』はいかがでしたでしょう?原作を読んでないと、ちと分かりにくいかもしれませんよね。
浅野 >  『惑星ソラリス』の次は、『砂の惑星』ですか。
どこで観たかは忘れましたが、この映画も観ています。何故か書棚にはプログラムが2冊あります。二度観た筈はないのですが?
 「遠い未来のある惑星で繰り広げられる、“地球の中世的いざこざ物語”」というSF小説や映画は、私のもっとも弱いジャンルなのです。
 なにせ、世界史の単位を取っていませんので。(笑)
 別にその気(け)があるわけではないのですが、この映画で当時騒がれていた「ポリス」のスティングのセミヌードが観られる、といった不純な動機もあって、興味本位で出かけた記憶があります。(笑)
 「遠い未来のある惑星で繰り広げられる、“地球の中世的いざこざ物語”」というと、まさに『スター・ウォーズ』もそうなのですが、こちらは超荒唐無稽なので結構楽しめました。
 なまじ『砂の惑星』は、シリアスなだけに観ていて草臥れました。が、この物語には、根強いファンが結構沢山いるようなので、あまりネガティブな評価はできませんね。
雀部 >  根強いファンが居るのは、《デューン》シリーズの方なので、映画の評価はなんとでもどうぞ(笑)
 もちろん《デューン》の一番の魅力は、“地球の中世的いざこざ”(笑)ではなくて、作者の綿密な設定による砂漠の惑星“アラキス”につきると思います。サンドウォームの生態系とか、砂漠で生き抜くための水分をリサイクルするスティルスーツ。またサンドウォームのライフサイクルから生み出されるメランジが、長寿と超光速航行を可能にする“航行恍惚”を引き起こすことが出来るために、アラキスはとてつもない価値を内包しているところとか、総て設定の妙味ですよね。
 まあ、アラキスはそれほど変わった惑星でもないですね。なんせ、ホット・ジュピターでもエキセントリック・プラネットでもない(笑)
福江 >  変わった惑星で思い出すのは、ハル・クレメントの『重力の使命』だったかな。
雀部 >  創元推理文庫でいうと『重力への挑戦』ですね。この地球の700倍の重力を持ち猛烈な自転で扁平になっているメスクリンのような惑星が存在する可能性はあるんでしようか。
福江 >  700倍の重力でしたっけ。太陽が地球の28倍程度で、白色矮星になると一挙に10万倍ぐらいになるから、700倍はちゅーとはんぱですねぇ。
 かなり密度の高い矮星にすれば70倍くらいはいけるかもしれないけど、700倍はきつそうですね。
雀部 >  メスクリンは、メタンの海、水素とメタンの大気をもち、公転周期1800日、自転周期17.75分、赤道付近の重力は3G、極地付近700G、表面気温−50度〜−180度。
 なんというか、700Gってことは、なんで恒星化しなかったんでしょうね。
福江 >  スペックとして質量がわからないと何とも言えないですが、(中心で水素の核融合反応を起こしている)恒星になるためには、およそ太陽の1割の質量が必要です。
 木星の質量は太陽の1000分の1しかないので、ぜんぜん足りません。
 余談ですが、水素が核融合してヘリウムになるって簡単にいいますが、実際には、電子や光子やニュートリノを省いて核子だけで書いても、
 水素+水素→重水素
 重水素+水素→ヘリウム3
 ヘリウム3+ヘリウム3→ヘリウム4+水素+水素
のような結構たくさんのステップを踏みます。
(ここらへんは化学反応の連鎖と似ています)
 最初のステップは、水素(陽子)+水素(陽子)はポテンシャルが高くて起こりにくいですが、2番目のステップは、もう少し低い温度で起こります。
 だから、太陽の1割までいかなくても、重水素の核融合を起こしているような“恒星”はあります。
 ははは、この章、最後みたいなんで、余計な方にいきました。
雀部 >  メスクリン、ひょっとしたら地殻の一部で重水素核融合起こしてるかもしれませんね。わくわくするなあ(笑)
福江 >  また、自転で扁平になること自体は、それほど珍しくありません。
 たとえば、最近の有名な例だと、エリダヌス座α星アケルナルなんかが、かなり扁平だと考えられています。ただ、あまり扁平すぎるのは難しくて、一番単純な回転星のモデルに、ロッシュモデルというのがあるのですが、(質量は中心に集中したと仮定して、軽い外層大気の構造を得るもの)、それだと、極と赤道の比率が2:3ぐらいが限界だったはずです。
 あまり扁平になりすぎると、遠心力のために、赤道からガスが吹き出してしまうのです。
 メスクリンのスペックが、赤道付近の重力は3G、極地付近700G、だとすると、これは極度に偏平なはずで、完全にガスの吹き出し(ブレークアップ)が起きていますねぇ。
雀部 >  大気が無くなっちゃうのも困りますねえ(爆)
 あと、前からお聞きしたかったんですが、ジャック・ヴァンス氏の名作『大いなる惑星』の設定は、地球の10倍の表面積を持つ巨大な惑星で、地殻が非鉄金属質であるので、重力は地球と同じくらいというものなんですが、こういう惑星が出来上がる可能性はあるんでしょうか。
福江 >  『大いなる惑星』は読んでいないですが、地球の10倍の表面積と言うことは、半径は約3倍ですね。この前、彗星で評価したばかりですが、そうすると、地球のような中心が金属の惑星の場合、ふつうに見積もって、表面重力は3倍になりますね。
 一方、質量は密度に比例するのですが、地球の平均密度は5.52g/cm3で、岩石質の小惑星は2.3から3ぐらいか。2倍程度しか小さくできないから、表面重力はどうしても地球の1.5倍くらいにはなりそうですね。
 岩石質の巨大惑星ができる可能性ですが、これはかなり難しい問題ですねぇ。
 炭素や酸素、鉄などの重元素は超新星爆発の際に作られ、星間空間にばらまかれて、だんだんと星間ガスの重元素が増え、時間が経つほど固体惑星はできやすくなってきたと思いますが、鉄などの割合はそんなに変わらないでしょうから、どうしても惑星規模になると鉄なども含まれると思います。
 一方で、なんらかの原因で、元素の分離などが起これば、珪素や炭素だけが多い状態の惑星ができないとも限らないし。
 すんません、あやふやな答えで……
雀部 >  いえいえ。なんか、鉄なんかの重元素比が大きい恒星のほうが惑星を持つ可能性が大きいのではないかと『異形の惑星』に書いてあったもんで。
 さて第11章は、いよいよ「時間旅行」です。映画はもちろん『タイムマシン』。
 『タイムマシン』は二回映画化されてますが、浅野さんの感想はいかがだったでしょうか。
浅野 >  『タイムマシン』の映画は、新・旧とも映画館で観ましたが、旧の方のインパクトが強く、新の方は大分記憶が薄れてしまいました。
 旧(1959)の方の監督は特撮の神様、ジョージ・パル。
 小説の中で、この主人公は「私」と言っているだけで名前は出てきません(?)が、映画の中では「ジョージ」。この「ジョージ」は、勿論、監督の「ジョージ」でもあるし、H・G・ウェルズのGでもあるわけで、ちょっとした“お遊び”ですね。
雀部 >  お、気がつかなかった。そうなのか〜(汗)
浅野 >  この「ジョージ」が、タイム・トラベルに出かけたのが、1899年の大晦日。途中いろいろと見物はしていますが、80万年後に一働きして我が家に帰ってきたのが、1900年1月5日の午後8時。というわけで、彼の時間軸では出発時間から過去へ戻っていないところもミソで、パラドックスを避けています。
 タイム・トラベルで、いつも話題になるのが空間の移動。つまり、80万年後でモーロックによって動かされたマシンの移動距離が、現在の彼の家での移動距離に等しいのは何故か、ということです。地球は動いているのに。
雀部 >  相対性理論によると時間と空間は不可分みたいですから。時間の移動が出来ると言うことは(笑)
浅野 >  余談ですが、この小説には続編『タイム・シップ 上・下』(スティーヴン・バクスター、1998、ハヤカワ文庫)が書かれています。
 さて、新(2002)の方は、監督がH・G・ウェルズの曾孫、サイモン・ウェルズであるということで話題になりましたが、この新米の監督は映画完成直前でダウン、最後の部分は別の監督に引き継がれたとか。監督業も体力が必要なようです。
 映画の方は、恋人が暴漢に射殺されたことから、過去を変えようという下りだけが新しく、後は旧作の二番煎じの感がありました。私の評価では60点になっています(笑)
雀部 >  福江先生は、新作を結構高く評価されてましたね(笑)
 いわゆるタイムトラベルものと言うと、タイムマシンによらないもののほうが、数が多いような気がしますが……
浅野 >  時間移動には、タイムマシンを作って積極的に時空間内を移動する、いわゆるタイム・トラベル(トリップ)の話と、なんだか分からないのに、突然、時間的断層に嵌ってしまい、意図しない時空間に移動させられてしまう、タイム・スリップものがありますね。そのほか、自分の意志(念力?)で、希望の時空間へ移動したり、冷凍(冬眠?)されて時間をつぶしたりする人もいます。

 先生のご本の中に「思いついた範囲では、・・・」ということで、10本のタイムモノ映画の題名が上げられております。侵略モノと同様に、タイムモノ大好き人間な私は、10年前(1997)に、1944年以降のタイムモノ映画を調べてみたことがありますが、実に62本もあり、驚きました。勿論、全部を観ているわけではありませんが。
 その後も、現在までに次々とタイムモノ映画は作られ、2000年以降、私が観た映画データの中から、タイムモノをピックアップしてみましたらば、これまた、なんと19本もありました。
 この中で、出来はちょっとB級ぽかったですが、ブラッドベリ原作の『サウンド・オブ・サンダー』(2006年3月)がパラレル・ワールド的で、最後もリーズナブルに纏められていました。「タイム・ウェーブ」(時波?)という新語(?)も出てきます。
雀部 >  あ〜、去年スカパーでやっていたのを見ました。「タイム・ウェーブ」って、映像的に見せるために無理やり作り出したんじゃないの〜(笑)
 他にお薦めはどういったところでしょうか。
浅野 >  『ニューヨークの恋人』(2002年6月)や『イルマーレ』(2006年9月)などは、タイム・スリップとラブ・ロマンスがうまく渾然一体化していて楽しめました。
 『クレヨンしんちゃん アッパレ! 戦国大合戦』(2002年4月)なんていうのもありましたが、これが結構良くできていて、最後は泣けました。(笑)
雀部 >  『戦国大合戦』は名作ですよね。明らかに子供を連れてきた父親の方を向いて映画を作ってるんだものなあ。泣けます(笑)
浅野 >  そうそう、ハムである私が推薦する映画を、是非もう一つ上げさせて下さい。
 2000年12月に上映された『オーロラの彼方へ』です。
 事故で死んだ消防士の父親が残したハム用の無線機を、その息子が使うと、生前の父親と交信ができる。
 そして、息子は父親に事故の回避法を教え、父親は助かり、現在も変わる、というハッピーエンドの物語です。
 時間移動というと、必ず人間(物質)が移動するようになっていますが、せめて情報だけでしたら何とか時空を越えて転送できないものなのでしょうか?
 それとも、情報=エネルギー=物質、なのでしょうか?
福江 >  なんとまぁ(激爆)。
 情報を転送できる話題、乱入します!
 この1月から、ビッグコミックスピリッツという青年誌で、柏木ハルコ『地平線でダンス』というタイトルで、ワームホールタイムマシンの事故で、“教え子以上彼女未満”の女の子が、幽霊のような存在(情報)になってしまって、未来と現在が交錯するような、SF漫画が連載されているんですが、SF設定でいろいろ相談を受けています。
 #どうも、ワームホールとか、タイムマシンみたいな、
 #イロモノ系のネタで相談を受けることが多い(笑)

 でも、この柏木さんという方は、理系の方で、(表には出ないですが)原理的には可能かどうかなど、いろいろ気にされていて、まぁ、その流れで、上のような問題も出てきたわけです。

 ぼく的な意見で、身体を構成している全素粒子(フェルミ粒子)、(陽子・中性子・電子などの通常の粒子)が、すべてその超対称性パートナーである粒子(ボース粒子)、(超陽子・超中性子・超電子)に転写されたら、情報は残るだろう、と、数日前にレスしたばかりでした。裏設定ですけど、ほんとですかねぇ(笑)。
雀部 >  スピリッツは、毎週取ってます。まだ第一回目を読んだだけだけど、設定がやけに濃いなぁと思っていたら、そういうわけでしたか(笑)
 ちなみに、スピリッツには『日本沈没』の漫画版も連載中です。

 さて、この章では色々な仕掛けのタイムトラベルの方法が紹介されてますが、“ワームホール”と“エキゾチック物質”を使う方法は、スティーヴン・バクスターの《ジーリー》シリーズでも有名ですね。あ、これ福江先生がおっしゃっていた『地平線でダンス』のタイムマシンですね。
 この“エキゾチック物質”というのがよく分からないのですが、超対称性粒子で出来上がった物質とはまた異なるのでしょうか?
福江 >  あちゃー、どんどん厳しい質問ですね。
 教科書的には、エキゾチック物質というのは、ワームホールが重力場で崩壊するのを防ぐための、負の圧力をもった物質ということになっています。
 “フォチーノバード”のように光子(フォトン)の超対称性パートナーである超光子(フォチーノ)などでできたものではないと思います。
 ぼく的な勝手なイメージですが、むしろ、負の圧力をもつということから、ダークエネルギーを物質化したようなものかと。
 アインシュタインの重力場方程式は、
 時空構造(宇宙項を含む)=エネルギー物質分布
 で宇宙項を右辺に移すと、
 時空構造(宇宙項を含まない)=エネルギー物質分布+ダークエネルギー(宇宙項を移したもの)
 のような感じでして、負の圧力をもったエネルギーのように働きます。
 時空的には斥力として働く性質をもっているので、ワームホールの崩壊を防ぐことができると思います。
雀部 >  ありがとうございます。よく分かりませんけど(爆汗)
 この章で、「一般相対論的な時差の利用」ということで、ブラックホールの近くでは時間の進み方が遅くなることが紹介されています。
 そこで、素人な質問その1。
 相対性理論によると何ものも光速を超えることは出来ないはずなのですが、光さえ閉じ込めてしまうブラックホールがどうして重力によって外界に影響を及ぼすことができるのでしょうか。
福江 >  初歩的な質問というのは、往々にして、もっとも根元的な質問だったりします。
 ぼくもちゃんと答えられる自信はないです(^^;
 量子的に捉えると光子ですが、古典的には光速で伝わる電磁波であるように、アインシュタイン方程式を線形化すると光速で伝わる重力波になります。
 電荷があるとそのまわりに電磁場が広がりますが、電磁力を伝えるのは光子です。
 同じように、質量があるとそのまわりに重力場が広がって、重力を伝えるのは重力子(重力波)になります。
 こういう対応関係は成り立つわけですが、問題は、重力を伝える重力子がどこから出ているかということでしょうね。
 たしかに、光子と同様、ブラックホールの内部からは出てこれないような気がします。
 でも、この問題は、質量とは何か、空間の歪みとは何か、といった根本的な問題に行き着くわけでして、すみません、お茶を濁すようなことになってしまいました(m_m
雀部 >  ブラックホールを研究すると言うことは、そういう根元的な問題の回答を得る手段でもあるわけですね。
 素人な質問その2。
 重力子(波)というのは、種類があるんでしょうか。光子は、エネルギーレベルによって、電波から光、X線、γ線と呼び名と性質(人間にとっての)が異なりますが。
 ウチのカミさんは、さすがに紫外線や赤外線は、光だと思っていたようですが、電波やX線は、違うモノだと思ってました(爆)
福江 >  ああ、まだ答えやすい質問かも。
 光子は、たしかに、エネルギー(または波長、または振動数)によって、いろいろ種類があるような気がしますが、光子としては一種類だと考えるべきでしょう。
 これは、たとえば、陽子や電子などの物質粒子が、速度が違う(したがって運動エネルギーが違う)からといって、別物とは考えないのと同じ理由です。
 光子は光速度でしか動けないので、エネルギー(波長)が異なったりしますが、粒子としては一種類と考えます。
 粒子の種類はフェルミに排他律を受けないボース粒子で、スピンは1(だったはず;;)。
 で、重力子(重力波)ですが、まったく同じ理由で、一種類だけです。
 粒子の種類は光子と同じくボース粒子で、スピンは2(だったはず;;)。
雀部 >  素人な質問その3。
 ブラックホールには、質量によるクラス分けとか、臨界量(大きい方の)は無いのでしょうか。スーパーブラックホールになると、並のブラックホールとは振る舞いが異なるとか。
 全宇宙の質量を詰め込んだブラックホールは、爆発したくなるとか(笑)
福江 >  質量による質的な違いはないですが、ただ、出来方によって、大質量の星の爆発でできる、太陽質量程度の通常のブラックホール活動銀河の中心にある、太陽の1億倍程度の超大質量ブラックホールというような区分けはしますね。
 宇宙全体がブラックホールだという考え方もあるんですが、ダークエネルギーなんかが出てきちゃったので、どうもブラックホールにはならないかも、ですね。
雀部 >  宇宙全体がブラックホールというのは、聞いたことがあるんですが素人の感覚だと、ブラックホールの内部構造(といっていいモノかどうか)は、熱力学的(これも適用できるかどうか)にはエントロピーがマックスというイメージがあるのですが、どこからそういう考えが出てきたのでしょうか。
福江 >  情報がないからです。
 ブラックホールに吸い込まれると、ものの形や色や匂いなど、さまざまな属性はすべて失われて、質量・角運動量・電荷だけが残ると考えられています。
 それを熱力学的に考えると、システム的には、均一の温度で熱平衡に達した状態と同一視できるようです。
 そこから、ブラックホールがある温度で黒体放射をしているという、ホーキング放射の概念が生まれました。
 ちなみに、ホーキング放射という名前は付いていますが、最初に言い出したのは別の人のようですね。
雀部 >  ホーキング放射は、福江先生の『ブラックホールを飼い慣らす!』によると、「事象の地平面のすぐそばで仮想粒子対の対生成が起こり、片方だけが事象の地平面に落ち込み、一方が残った現象」との解説がありなるほどと思いました。
 重力子もこれと同じだと、ブラックホールから重力子が出ているように見なすことができるのでしょうか。
福江 >  電荷があると、そこから電気力線が出ていると想定しますが、これは、電荷が仮想光子をやり取りして、電磁力になっていると考えます。
 重力子の場合も、ブラックホールに限らず、質量があれば、そこから重力子が出ていて、重力になっていると考えるわけです。
 だから、おそらく重力子“対”というようなものはなくて、ブラックホールからも重力子が常に出ていると思えばいいのでしょう。ただ、問題は、そもそも“質量”とは何かを、だれも知らないことでしょうね。
雀部 >  そうか、けっこう根本的な問題に解決がついてないわけだ。
 すみません、暴走してます(汗)
 素人な質問その4。
 超対称性粒子を原料として出来上がったブラックホールと我々の宇宙のブラックホールとでは、違いがあるのでしょうか。雰囲気的には一緒のような気がするんですが(笑)
福江 >  ああ、これはおそらく同じだと思います。
 重力的な作用は同じはずです。
 ただ、いわゆる11次元宇宙やブレーンワールドでのブラックホールは、時空構造などが少し異なるようですね。
 プレプリントのタイトルを眺めただけですが(笑)
雀部 >  え〜っ、少し違うんですか。
 一度ブラックホールに戻して押しつぶせば、同じかと思っていました(劇汗)
 重力的な作用が同じということは、重力子(波)は同一と考えて良いのでしょうか。
福江 >  重力子(波)自体は同じだと思います。
 空間の歪み方などの幾何学的構造が違うのだと思います。
 ただ、11次元宇宙では、重力子と他の素粒子とは振る舞いが違ってきて、他の素粒子はわれわれの4次元時空に閉じ込められていますが、重力子(波)だけは11次元時空にしみ出して、他の時空との相互作用を担うらしいです。
 もー、ここらへんは、すべて、“らしい”がつきます(笑)。
雀部 >  ついでに(笑)
 ダークマターのブラックホールは出来ますか?
福江 >  ああ、はいはい、これはぜんぜん、ノープロブレムです。
 ダークマターは正体がわかっていないだけで、ある種の物質であることは間違いないでしょう。陽子や中性子などのバリオン物質でできた黒い天体か、アキシオンやニュートラリーノなどの素粒子でできた希薄なスープかわかりませんが。
 前者のバリオン物質でできたダークマターなら、簡単にブラックホールにできます。というか、もしかしたら、ダークマターの一部は未発見のブラックホールかも知れません。
 後者のある種の素粒子の場合も、もし十分にまとめることができれば、ブラックホールになります。ただ、光子を集めてブラックホールにするのが難しいように、これらの素粒子を集めるのが難しいかも知れませんが。
雀部 >  ダークマターがブラックホールだと凄いですね。そこら中にごろごろ(爆)
 1月9日の新聞に「宇宙規模におけるダークマター(暗黒物質)の分布が、初めて観測的に調べられた。目に見える銀河と同様にダークマターも大規模構造を形成していることが明らかになり、「見える物質」が銀河や大規模構造を形成する上でダークマターの存在が欠かせないことを裏付けた。」との記事が出てまして、ほほぅと思ったのですが、ダークマターの分布が、銀河団の分布と一致してるなら、我が太陽系の近辺にもあるはずだと思いますが、回収・発見の可能性はないでしょうか。
福江 >  まず、上のダークマターの分布の話ですが、重力レンズ効果を使った話ですね。
 遠方の銀河を観測したときに、手前にある銀河団の重力場による重力レンズ効果で、遠方の銀河の形状が歪むことがあります。それを調べると、手前にある銀河団の重力が見積もれるという方法です。
 この方法でいままでにもいろいろな銀河団のダークマターが観測されてきました。
 こんかいは、大がかりなサーベイで、さまざまな銀河団についてダークマターの分布を調べたという点が新しいものです。
 名前が出ている愛媛の谷口くんは、こういうやつです(下から2枚目の写真)
 んで、太陽系近傍のダークマターですが、銀河系におけるダークマターの総量は星のだいたい10倍ほどです。仮にダークマターが星の姿をしていたとしても、平均間隔が1/2になれば量は10倍になるので、星の平均間隔(1光年)に対して、ダークマターの平均間隔は0.5光年ぐらいに下がるだけです。
 なかなか宇宙は広いです。
雀部 >  さて最終の12章は、「銀河文明への道」ということで、《スター・トレック》シリーズです。
 去年(2006)が、アメリカでの放送開始から40周年だったんですね。(1966/09/08)
 日本での放映が1969年ということで、私は高校生でした。たしか真夜中にやっていたので、なかなか見られなかった記憶があります。今でもよく覚えているのが、ちょっとユーモラスな第43話「新種クアドトリティケール」(トリブル騒動"The Trouble With Tribbles")。私らの年代だと、スター・トレックというとこの〈オリジナル・シリーズ〉がまず頭に浮かびます。
 浅野さんは、テレビシリーズは見ていらっしゃいましたか。
浅野 >  まだ、白黒テレビの時代ですね。
 残念ながら、テレビの『スター・トレック』シリーズは殆ど観ていません。
 その頃のテレビ番組では、『タイムトンネル』、『トワイライト・ゾーン』なんかに夢中で、毎週観ていました。SFではないですが、『奥様は魔女』とか、淀川さんが毎週解説していた『ララミー牧場』とか、当時は面白い番組が沢山あったように思います。
雀部 >  福江先生と粟野さんはいかがですか。
 なんか薫陶をうけられたそうですが(笑)
粟野 >  私は『ネクストジェネレーション(TNG)』や『ディープ・スペース・ナイン(DS9)』の頃、良く見てました。ピカード艦長いいですよねえ(笑)。
 しかし去年が40周年ですか。
 そんなに長く続いていたなんて知りませんでした!
雀部 >  ああ、世代が違う(爆〜)
 映画でも、人気投票では『ファースト・コンタクト/STARTREK』がダントツの一位で驚きました。
福江 >  日本放映の1969年だと、アポロの年ですから、ぼくはまだ小学生ですね。
 『タイムトンネル』はぼくも毎回見ていました。
 『逃亡者』とか、その後番組で、宇宙人が密かに隠れている??とかもありましたね。
雀部 >  『インベーダー』ですね。キース・ローマーがノベライズしていた隠れた名作。
福江 >  (アメリカでスタートレックが負けた)『宇宙家族ロビンソン』とか『サンダーバード』とかも見てたけど、そのころじゃないですか?
雀部 >  『宇宙家族ロビンソン』が'66年で、『サンダーバード』は、2006年が日本版放映40周年記念だったみたいです。
福江 >  でも、スタトレの初放映は見ていません。田舎ではやってなかったんでしょう。
 一番最初に見たのは、高校2年の夏休みに東京へ行ったとき、叔父の汚い下宿のボロいテレビで、『宇宙パトロール』というタイトルで流していたときですね(再放映だったんでしょう)。
 さすが東京だと思いました。
 でも、その後、田舎でか、大学に入ってからか忘れましたが、TOS(でよかったっけ;The Original Series?;あやしいトレッキーですね)は、ほとんど見た覚えがあります(再再々放映ぐらいかなぁ)。
 トリブルも面白かったですが、印象に残っているのは、「時の門」だったっけ、いいかげんですが、カーク船長が過去に戻る話で、もてまくりのカーク船長が、唯一、叶えられなかった恋の話ですね(過去は変えられないため)。子供心(少年心)にも、ちょっと切なかったです。
雀部 >  「危険な過去への旅」(エリスンの「永遠の淵に立つ都市」)かな。
 映画の方はいかがだったでしょう。私はなんと言っても最初('79)の『スタートレック』 (Star Trek: The Motion Picture)が一番好きなんです。同時期の最初の〈スター・ウォーズ〉よりも好き(笑)
浅野 >  どうも、私にとっては『スター・トレック』も、矢張り「遠い未来のある“宇宙”で繰り広げられる、“地球の中世的いざこざ物語”」のひとつで弱いのですが、“ワープ航法”や“物質転送”など、いくつも超ハイテク技術が盛り込まれているので、なんだかんだといっても、結局、全10巻を全部映画館で観てしまいました。
 また、「スタートレック<パラマウント社公認>オフィシャルデータベース」なる本も購入、結構嵌っていましたね。(笑) この本の帯には「トレッキーからビギナーまで 完璧解説本」と書かれています。
 一番最後の映画が、『ネメシス S.T.X.』(2003年4月)。今はなき(?)日比谷映画で観ました。S.T.X.というのは、「スタートレック10」ということなのですね。そして、この映画版のシリーズはこれで完結されました。
 この間(かん)、2001年1月には『ギャラクシー・クエスト』なる、『スター・トレック』のパロディ版が上映されました。パロディといっても非常に凝っていて、渋谷のマイナーな映画館でしたがほぼ満員。久し振りに、大笑いしました。華麗に変身して頑張っているシガニー・ウィーバーも好演でした。
 シガニー・ウィーバー的女性は頼りになりそうですが、お好きですか? 『エイリアン』では汚れ役でしたが、流石女優、彼女もちゃんとお化粧すると、なかなかの美女でした。(笑)
雀部 >  シガニー・ウィーバー、好きです。
 福江先生もお好きなんじゃないかな(笑)
福江 >  え、こっちに振りますかぁ?
 ぼくはほとんど『エイリアン』でしか知らないけど、ノストロモス号(名前ちょっと違うか)の脱出船のシーンが、とっても色っぽかったでーす。
 あれ、返し、間違ったかな?
雀部 >  『ワーキング・ガール』の主人公の敵役の女上司も色っぽかったです。
 パロディといえば、『Star Wreck』というパロディもありますね。
 「宇宙空間に白く渦巻くワ〜ンホール、その前にP艦隊が集結した。艦隊を自ら率いるパーク皇帝は、ここにいたる長く苦難に満ちた道のりを思い起こしていた。
 8年前、彼の宇宙船は過去にとびこみ、もとの世界へ戻ることができなくなっていたのだ。時間の流れに干渉しないよう、仲間のドワーフやインフォともバラバラに、ひっそり暮らすパークだったが、女の子にはもてないし、何かとおもしろくない。
 そして、ケネディー宇宙センターから歴史的な発表がなされるはずの日…」
 だそうです(笑)
浅野 >  この『スター・トレック』の映画の中には乗員などの“物質転送”が各所に出てきます。
 もし人間が光速で物質転送されることが可能であれば、転送された人間は現在の情報なので、何十光年か経て帰り着いた人間の情報も現在。だとすると「タイムトラベル」が成立するのでは? この物質転送機の構造はどうなっているのでしょうか? ひょっとして、ワームホール? でも送信機(?)はエンタープライズ側にあるのに、どこにでも行けるし、またどこにいても、送信点に戻れるのも不思議です。
 また、“何とか星人”なるものが、沢山出てきますが、基本的には地球人とそっくり。生命が芽生える惑星の知的生命体は、地球人に似てきてしまうものなのでしょうか? 『スター・ウォーズ』の方がまだバラエティに富んでいたように思えますが。(笑)
福江 >  光子魚雷やフェイザー砲やトリコーダーとか時計型のTV通信機とか、もうドキドキしまくりでした。
 転送ビームは謎でしたね。
 現在のSF的常識だと(笑)、おそらく実際に光速で送れるのは、物質そのものではなく、情報だけなんでしょうね。電磁波の信号に変えて送るんでしょう。
 と、少し前まで思っていたんですが、実は、前に話の出たコミックの裏設定を考えていて、体を作っている構成粒子(陽子や中性子などのバリオンと電子などのレプトン)をすべて超対称性パートナー(超陽子、超中性子、超電子)に転写すれば、もしかしたら、そのまま送れるんじゃないかと;
 #すみません、ここらへん、ほとんど出鱈目です☆
雀部 >  SFのネタとしては、たいへん美味しそうです(笑)
 さて銀河文明への道なんですが、ダイソン球の廃熱は観測できなかったとのことでしたが、降着円盤を利用した重力発電所は、観測可能なのでしょうか。
福江 >  ダイソン構造体で降着円盤全体を覆っていたら、スペクトルが大きく違ってくるはずなので、
観測で違いがわかる可能性はありますね。ただ、降着円盤全体の面積に比べて、ダイソン構造体の覆う面積が小さいと、円盤の光に埋もれてしまうので、わからなくなると思います。
 恒星周辺のダイソン球の場合も、星全体を覆っていれば赤外線源として観測されるとは思いますが、リングワールド的な規模だと、おそらく観測では受からないでしょうね。
雀部 >  個人的には、降着円盤の上下に、ダイソン構造体を配置した浮遊プラットホームによる発電というのがイメージ的にとてもそそられます(笑)
 降着円盤自体から来る輻射圧によって重力を相殺して構造体を支える「フォトンフローター」。まさにSFは絵ですね。数値的な検討をされたそうですが、軌道運動させないとなると、姿勢制御が難しそうですね。
福江 >  はい、かなり詳しい解析は、ハードSF研究所の『ハードSF研究所公報』や、日本天文学会の『天文月報』などに掲載しました。1995年頃ですね。
 で、本書では、どういう風に書いたか忘れたので、
・・・とことこ『シネマ天文楽』を取りに行きました、1mの距離ですが(笑)
 あ、そうか、少し誤解を招く書き方ですね。

 軌道運動だけで維持しようとすると、いろいろな方向に多数の円軌道が必要になるので、それらが斜めに交差して衝突してしまうわけです。
 フォトンフローターも、単純なもの(ニアサーファーと呼んでいた)は、軌道運動はさせるのですが、降着円盤の上空で円軌道をさせ、半径方向の重力は相殺します。
 ただし、鉛直方向の重力が残るので、それを支えるために、円盤からの輻射圧を利用するものです。

 安定性については、
・・・ふたたび、とことこと1mほどファイルを取りに行く

 もう一段階進めたフォトンフローターは、円盤に対して斜めに姿勢を取ることによって(インクラインドサーファーと呼んでいた)、(軌道運動させなくても)中心天体の重力を相殺させることもできます。

 安定性については、前者のニアサーファーは安定点が存在しますが、後者のインクラインドサーファーは数値計算してるけど、なかったみたいですね。
 うーん、このころ、暇だったのかなぁ、莫迦みたいにマニアックなことしてます(爆)
雀部 >  なるほど、安定点があるのは、軌道運動+光子による輻射圧による方法なんですね。
 ところで、よく言われることですが、これだけ広い宇宙が存在し、銀河文明も存在するかも知れないのに、なぜその兆候が一向にうかがえないのでしょうか。皆さんのお考えを聞かせて下さい。異星人が円盤に乗ってホワイトハウスにやって来るとかあっても良いのに(笑)
 私は、人類がアンタッチャブルである可能性が一番高いのではないかと危惧してますが(爆)
福江 >  そいつらは、いったい、どこにおんねん(フェルミパラドックス)ですね。
 答えるのはなかなか難しいですねぇ。
 ぼくは、願望的には、宇宙人もエイリアンもお化けも妖怪も超能力者も異世界人も、みーんないて欲しい人間ですが、(エイリアンに関しては、ぼくからは、人類の半分がそーですけどね)、でも宇宙人に出会えないのは、やっぱ、宇宙は広くて長きにわたっているっちゅうことでしょうか。
 だって、人間同士の出会いだって、運命の相手に出会うには、正しいときに正しいところにいないとダメなわけで、狭い地球でも少し場所が違うか、たった数十年ずれただけで会えないでしょう。
 まして宇宙(銀河系)となると、何万光年と広い上に、人類文明なんて、たかだか数千年から数万年のオーダーだから、いまのところ出会えていなくても不思議はないと思います。
 でも、そのうち(〜数千年)会えると思いますよ。
粟野 >  「そのうち(〜数千年)」かー。果てしないですね。
 でもホント、宇宙は広いということですよね。
 どこかで宇宙人も同じことを考えてるかもしれないなあと思っています。
雀部 >  そうですねえ。でもなんか寂しい……
浅野 >  ちょっとSF的になりますが、エイリアンは光円錐の非因果的領域とか、もっと高次元の世界に集まっている可能性はないのでしょうか?
 2次元の世界に住んでいる人間(?)の話(小説『2次元の世界』や『2次元より平らな世界』など)はあるのに。
 「宇宙は人類を作るために重金属が必要なので、“スーパーノヴァ”を発生させるのだ」といったような難解な映画『スーパーノヴァ』(2001)もありましたが、こうなると“人間原理”的で、人類は孤独ですね。
 先日、本屋で『犬も平気でうそをつく』という本を立ち読みしましたが、それによると、「犬は飼い主を含めて人間を総て犬だと思っている」とのこと。私自身が犬的思考をしているとは考えたくないのですが、我々(私)が人間だと思っている生物は、実は・・・・!となると、回り中エイリアンだらけ・・・か。(笑)
雀部 >  非因果的領域のエイリアンというと『宇宙消失』の原因になったアレでしょうか(笑)
 居てもコンタクト取れないだろうし。
 非因果的領域の話は、第11章でティプラーの円筒に関連して出てきましたが、超スピードで回転するブラックホールの回りでも起きるんでしようか?
福江 >  もともとのティプラーの論文は、超高密度物質でできた、“無限の長さの”円筒が光速の半分くらいの速度で回転しているときに、そのまわりの周回軌道で因果関係が破れるということを証明したものですが、円筒の長さが“有限”でも、おそらく成り立つと思われています。
 したがって、ブラックホールのように球に近い場合でも、赤道面では、因果関係の破れる閉曲線が存在する可能性は高いですね。
 実際、SFでは、山本弘『サイバーナイト:漂流・銀河中心星域』で、そんな“存在”が出てきます。このSF、すごく面白かったけど、もう手に入らないかなぁ。
雀部 >  Amazonあたりにはありそうですけどね。
 前述の『ブラックホールを飼い慣らす!』の8章は「ブラックホールの利用法」で、SFファンとしてとても面白く読ませて頂きました。
 最後にお聞きしたいのですが、ブラックホールから出ている宇宙ジェットは、利用できないのでしょうか。発電とか、宇宙船の動力・燃料とか。
福江 >  はい、もちろん<利用>できます(笑)。
 一番単純な利用法は、ジェットの流れに乗ってサーフィンする方法で、光速近い速度で彼方まで飛翔することができます。これも昔、簡単な解析をしたことがありますが、SFでもそんなシーンを読んだ覚えがあります。
 ベンフォードの機械生命と人類の末裔を描いたシリーズの最後あたりの作品だったと思います。
ああ、それから、クラークの『地球帝国』では、宇宙船のエンジンにマイクロブラックホールを積んで、そこに水素ガスを吹き付けて、片側ジェットを吹き出させ、推進するというシステムがありました。
雀部 >  ああ、既にある(笑)んですね。
 粟野さん、浅野さん、今回インタビューにご協力ありがとうございました。
 助かりました(汗)
粟野 >  私はただ参加しているだけで、すみませんでした(^^;
 でもみなさんのスゴさに圧倒されながらも、楽しく勉強させてもらいました。
 ありがとうございました。
浅野 >  スタートの時点では前途遼遠だと思っていましたが、現在は、もう終わってしまったのか、という感じです。
 いろいろと、変な雑音を入れてばかりいて申し訳ございませんでした。
 楽しい時間を頂き、感謝致しております。有り難うございました。
雀部 >  福江先生、今回も長期間インタビューに応じて頂きありがとうございました。
 最後に、近刊予定などございましたらお教え下さい。
福江 >  こちらこそ、みなさん、本当にありがとうございました。
 なんだか莫迦ばっかり書いたみたいですが、ほとんど素です(笑)。
 近刊予定ですかぁ? じゃぁ、せっかくですので、最後に、思いっきり!

 まず、
・現代の天文学第8巻『ブラックホールと高エネルギー現象』日本評論社
 これは日本天文学会の天文学教科書シリーズで、上の巻の、宇宙ジェット関連を執筆しています。多人数で書いているので、教科書としてはまとまりがないのが欠点ですが、でもほとんどすべての話題が網羅されているはずです。3月頃に出るはずです。

 それから、
・『タイトル未定−日本天文学会百年史』恒星社厚生閣
 こっちは、編纂委員をやっていて、活動銀河とブラックホール連星を執筆しています。
 日本天文学会の百年史をまとめるなんてことは、たった一度しかできないことなので、とても面白いです。編纂委員長の尾崎さんの手際もよくて、会議嫌いなぼくとしては、珍しく編纂会議を楽しめました。いま最終段階で3月脱稿で、夏前ぐらいには出るんじゃないかなぁ。

 これも書いていいんだろうなぁ:
・『宇宙最前線(仮題)』ソフトバンク
 これは粟野ねえさんと一緒に編集してまして、第一線の方にも手伝ってもらい、天文学の基礎的な話と最前線の話を併せて紹介する新書です。ものすごく面白いはず(?)です。
 これも3月脱稿で、いまヒイヒイ言っています。
 KさんとSさんの原稿大丈夫かなぁ・・・
 やっぱり初夏ぐらいには出るんじゃないかな。
雀部 >  一般向けには、粟野さんと共編の『宇宙最前線(仮題)』(ソフトバンク)が面白そうだなあ。
 『タイトル未定−日本天文学会百年史』は記念すべき出版となりそうですね。
 そういえば、今日(2/1)の新聞に“日本天文学会100周年記念出版”と銘打って『人類の住む宇宙』―シリーズ現代の天文学―(全17巻刊行開始。第一回配本)と広告が出てました。
福江 >  あと、脱稿が済んでいる本が3冊ほどあるんですが、出版社の予定で発刊はまだのようです。
 あ、それから、大学院向け英文の教科書ですが、恩師の加藤先生たちと共著の"Black-Hole Accretion Disks"の改訂版(というより大幅書き換え版)がいま大詰めで、英文校閲も終わり、図や文章などの最終チェックをしています。京大学術出版会から、初夏までには出したい予定です。

 なんだか、もう趣味みたいな感じですが、科学書はあまり売れませんので、購入していただければ、ぼくの熱い抱擁という特典がもれなくつきます。
 #ただし女性限定です
 #男性には暑い法要あたりになります

 最後までお付き合いいただきありがとうございました♪
雀部 >  抱擁&法要の要望はあるんですか(笑)
 本当にたくさんありますね。お忙しいそうで驚きました。それに加えてこのインタビューが加わり大変だったと思います。お体ご自愛の上、頑張って下さいませ。


[福江純]
山口県出身。大阪教育大学教授。『SF天文学入門(上・下)』『最新 宇宙学』(裳華房)、『SFアニメを天文する』(日本評論社)、『やさしいアンドロイドの作り方』(大和書房)、『最新天文小辞典』(東京書籍)他多数。
[雀部]
宇宙大好き、SF映画も大好きのハードSFファン。大好きが、よく分かっていると一対一の対応をしてないのと、最近なかなか映画館に足を運べないのが悩ましい。
[粟野]
東京都出身。岡山天文博物館館長。共著として、『宇宙スペクトル博物館シリーズ』『最新 宇宙学』(裳華房)、『マンガ 手作り宇宙』(裳華房)、『星空の遊び方』(東京書籍)等々。
[浅野]
1932年、東京生まれ。小学校入学以前(戦前)、浅草で母親と『キングコング』、『透明人間』の映画を観たのが切っ掛けで、その後、SF映画にはまっています。
終戦後、最初に観たSF映画で印象に残っているのが『月世界征服(1950)』。多分その次が『地球最後の日(1951)』や『地球の静止する日(1951)』だったと思います(これらは新宿で観ました)。
その後、福江先生のご本にあります映画は多分100%映画館で観ております。現在、あまり多くはありませんが、年間、SFものを中心に三十数本の映画を上映開始時に観ております(約、10日に1本)。
テープ、ディスクのビデオもSF映画を中心に数百本ほど持っておりますが、福江先生のご本にもありましたように、古いテープにカビが生えてきて慌てております。
元本業はメーカーのテレビ、ビデオ技術屋です。が、最近はデジタル化が進み、取り残されています。
私の叔父が東京三鷹の天文台に勤めておりましたので、子供の時から天文の話を聞かされ、そんなことも、私をSF好きにさせたのかも知れません。

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