ある女の優雅な一日

doru

昨日はお酒を呑みすぎて酔っちゃったみたい。ちこちこちこ、夢うつつのうちに目覚まし時計の音が聞えてきたわ。ベットにたどりつく前に寝込んでしまった床から起き上がり、ねぼけ眼で洗面所の鏡に自分の顔を映してみる。あん、髪がちょっと乱れているかもしれない。居間兼寝室に戻ったとたん、どっかぁん、近くでとても大きな鼓膜が破れるぐらいの爆発音が聞えてきたの。

大勢の人がわいわい掛けつけてきた。なんだかわからないけど今日も天気は晴天だぁ。きっといい日になりそう。雲一つない青空の下わたしは大きく伸びをしてその場を離れることにして、そして服を見る。ちょっと汚れているかしら……まあいいわ洗えばいいことだし、そんなに気にすることじゃないわ。わたしは自分にそう言い聞かせると、職場へと向うことにした。

風が耳をくすぐる。髪になびかせなから職場へと向って走る。周りの風景が飛ぶように移り変わっていくのを見るのはいつも飽きない。わたしは唇にリップをつけながらそう思った。きーきっ、車が止まる音がする。ちょっと乱暴だったかしら。まわりの車の運転手が驚いたようにわたしの方を見て指差しているみたい。いつもはこんなふうに走るってことはしないのだけど、目覚まし時計が効いたみたい今日のわたしちょっと変かもしれない。

職場についた。上司がわたしを叱っている。女子たるもの、昨日と同じ格好で来るとは何事かって……だって、だって仕方がないのですもん。わたしがちょっとすねたように言った。そして上司の肩についた糸くずを見つけ、とってあげようとした。とたんに上司の顔色が変わり、ぱっと飛びのいた。もういいから明日からこんなことはないようにですって、それならそうと言ってくれればいいのに、わたしは小さくぶつくさと文句を言いながらその場を離れた。とたんにばりっと言う音が聞こえた。あ、またやったですって、失礼しちゃうわ。今日はまだやってないわよ。心の中でそう思ったがおとなしいわたしは上司にそれ以上反抗はしないことにした。

パートナーを組んでる同僚が近くによってきて、わたしのことを今日も綺麗だねって言ってくれた。嬉しい、この男の他はわたしのことをそんなに気にかけてくれる人なんかいないのに、こいつだけは親切にしてくれる。昨日のお酒の呑みすぎもこの相棒のせい、ちょっとしか呑めないわたしを酒場に誘って、脳がアルコールでぐでんぐでんになるぐらい呑ましたの。もちろん女子たるもの脳がアルコールに汚染されていても男の誘惑にたやすく引っかかるものではないのはわかっている。だから、ぐでんぐでんになりながらもそれ以上の誘惑に負けることなく自分の家に帰ってきたのだけど。

みんなにお茶を配り終えた後、地下に降りて射撃の練習をする。二十発中、十九発が的に当たった。う~ん、今日は調子が悪いみたい。朝の目覚まし時計のせいかな。これじゃ命の保証はできないわね。相棒にそうぼやきを聞かせながら、少しずれた標準を合わせることにした。

ぴーぴーぴー、署内でけたたましい警報がなる。どこかで凶悪事件が発生しているのね。わたしと相棒はパトカーに乗って、多くの仲間と共に現場に急行することにした。

現場に到着してみると、犯人は銃を構えたまま、わたしの名前を大きな声で喚いている。そいつには見覚えがあった。五年前、世界的なスナイパーとして活躍していたテロリストで、わたしが空港で取り押さえて刑務所にたたき込んだ男だった。

呆れた。脱走したあげくこんなところでリベンジなんて……。そんなに大きな声を出さなくてもわたしには聞えているわよ。わたしもまけじと大きな声でそう言ってやった。

男はわたしの名前を叫び続けている。あのときちょっとプライドが崩れたからといって、執念深い男は嫌いよ。拳銃を構えてわたしはそう思った。

ばきゅーん、ばきゅーん、わたしを狙ったスナイパーの銃が数発飛んでくる。

そうして男は目を見開い信じられないという表情でわたしを見る。また服が汚れちゃったわ。困ったものね。前みたいなことはないわ。わたしは拳銃を構え応戦して、そして二発撃った。スナイパーが腕と足から血を吹きながら倒れ込む、ちくしょう。いまに見ていやがれ!  狂気のなかにちょっぴり怯えの混じった目でわたしを睨みながら男は運ばれていった。その後はたいした事件もなく午前中は過ぎていった。

お昼からは銀行強盗がニ件、誘拐が一件、消防士よりも早く火事の現場について猛火の中からマンションの住人を助けたのが一件、こうして平穏なわたしの1日は終ったのでした。

ちなみにわたしを付け狙っていた爆弾おたくに今朝アパートの部屋を吹き飛ばされてしまったからここ当分はカプセルホテル住まいだわ。ま、相棒と一緒に飲んだお酒で油断してぐっすり寝入ってしまったわたしにも責任あるんだけど…。そうそう、帰宅する前にサイコドクターから身体と心の安定を計るため精神安定剤を貰うことを忘れないようにしなきゃ。それから1日1日強化される各部分の不都合を埋めるために専属のサイボーグ・メカニックからメンテも受けておかなきゃね。