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坂道

doru

 

梅雨の間ずっと家の中にいたのでまーちゃんとえっちゃんは退屈です。そこでおかあさんにねだって、丘の上公園まであじさいの花を見に自転車に乗って連れていってもらいました。丘の上ではたこやき屋のおじさんがいてたこ焼き3個買って、べんちで3人で食べました。たこは小さかったけど、焼きたてで口の中でじわりととろけるようでとても美味しいものでした。おかあさんとまーちゃんはさっさと食べましたが、小さなえっちゃんはなかなか上手に早く食べることができません。そのうち雲行きが怪しくなってきました。朝方はあんなに晴れていたのに黒い雲がもくもく出て大粒の雨が降ってきました。
「まーちゃん、えっちゃん、そろそろ帰ろうよ」おかあさんは言いました。
たこやき屋のおじさんはかさを貸してあげるといいましたが、丘の上公園は、比較的高いところにあるので坂道が延々とつづいています。だから坂道で傘を差すのは危ないので断りました。
そうしている間に雨はばけつがひっくり返したように降っています。おかあさんは、二人の子供を自転車に乗せて坂道をくだりはじめました。
ちょっといってからおかあさんの顔色がかわりました。自転車が古いのと大雨のせいで、自転車のブレーキが効かなくなっていたのです。ものすごく早いスピードで坂道を下っていきます。雨はますます激しくなります。少しでも早さを落とそうとおかあさんは、くつを地面にこすりつけて止めようとしました。だけどもブレーキが大雨のため馬鹿になったのと急な坂道のため、自転車の早さは遅くなるどころかますます早くなります。あっ、危ない対向車線の車とぶつかりそうになりました。けたたましいクラクションの音、まーちゃんもえっちゃんも怖がって泣いています。泣き声を聞きながら、おかあさんは自転車から放り出されて3人が病院の集中治療室に入れられている映像が浮かびました。時間にして3分でしょうか。やっと平地になって、ブレーキをかけると止まりました。
「まーちゃん、えっちゃん、助かったよ」おかあさんは姉妹をぎゅっと抱きました。
「おかあさん、怖かった」二人は涙を浮かべています。
「お母さんも怖かった」涙でぐちゃぐちゃになった姉妹をおかあさんはもっと強く抱きしめていました。
親子3人の一番怖かった思い出になりそうです。


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