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邂逅

中条卓

スサノヲのかけらが埋まっていると伝えられる山で、画家と医師が出会った。

「こんにちわ」「こんにちわ」

互いに初対面だったが、ふたりには相手の生業がすぐにわかった。

「薬用植物を採集して戻られるところですね?」「鉱物顔料を採集しに行かれるところですね?」

「ええ、ここでは特殊な鉱物が採れますもので」「ええ、ここには特別な薬草が生えているので」

ふたりは相手の心に生じた疑問を見透かしたかのように語り始める。

「もともと私はCGイラストレータ/画像診断の専門医でした

ですが、インパクトの直前に思うところがあって日本画/漢方を学び始めたのです

幸いにもそれが役に立って、こんな世の中でもなんとか仕事を続けているのです」

「記念写真の代わりに肖像画を求められたり、|「急病人があれば薬を持って往診いたしますし、

インパクト前の風景を再現して欲しいという方もおられます」|ずいぶん遠くから定期的に診察を受けに来られる方もあります」

「こんな事を言うと不謹慎と叱られてしまいそうですが、

インパクトの後では風景/人間から余分なものがそぎ落とされて美しさを/健康を取り戻したような気がするんですよ

あるいは地球は/人類はスサノヲを必要としていたのかも知れません」

ふたりは無言でうなずき合い、手を差し出した

「さようなら」「さようなら」

ふたりは次の満月の晩に再会を約して別れた。

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