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東京近郊某所 12/23/2005

高本淳

 取り囲まれてようやくこちらの正体に気づいたらしい。こわばった山本の腕からトランクを取り上げ彼は小声で、しかし威嚇をこめてささやいた。「悪いな。きゅうに旅先が変わってね。騒がずいっしょに来てもらおうか」
 救いを求めるように周囲を見渡したが早朝の街道に人影はなく、周囲の男たちは鍛え抜かれた身体のうちにただならぬ気配を漂わせている。死人のように血の気のうせた表情で山本はふらふらと自分から車のなかに乗り込んだ。
「まあ、そんなに脅えるな。いますぐどうこうしようというわけじゃない。まずはいろいろ尋ねたいことがあるからな」相手の膝が小刻みに震えているのを冷たく眺めながらKは言った。「たったひとりであれだけ大量の品物をさばけたはずはない。おれたちはおまえの背後にいる人間に興味があるんだ。素直に洗いざらいしゃべることだな。さもなければ……」恐怖でゆがんだ顔ににやりと笑いかけて、「たぶん生まれてきたことを後悔するはめになるぞ」
 自分の正体を知っている者にそれがどんな印象を与えるか、十分計算した微笑だった。銃口を直に額に突きつけられたかのように震え上がって山本は必死で懇願した。
「頼む、なんでも言う。だから、生命だけはたすけてくれ!」
「そうそう、それが利口というものだ。それじゃ……」言いかけて、ふと相手の頭ごしに車外に目をやった。背後から強引に追い抜こうとしている車がある。一見したところ暴走族風の改造車。だが、全開になった助手席の窓の中で男が捧げ持つものが目に入った瞬間――「くそっ! 気をつけろ!」前席とシートの間に身を投げこみながらKは叫んだ。
 連続的な炸裂音とともに無数の銃弾が車内を貫いた。山本が身体をひきつらせるように幾度もはね上がり、その身体からほとばしる鮮血がKの視界を閉ざした。数秒後、彼らの車は急カーブを描いて道沿いの廃車を並べた空き地につっこむと土ぼこりをあげながら幾度となく横転した。

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