『不老不死の窓口』『ウェザーカレンダー』ブックレビュー
インタビュアー:[雀部]
不老不死の窓口
『不老不死の窓口』
  • 秋待諷月著
  • 弦月の仮宿
  • 500円(税込)
  • 2023.11.11発行
【収録作】
「カプセルギフト 」「モンスター 」「不器用なミツバチ」「大多数決 」「誰がツグミを殺したか 」「われはロボット掃除機 」「不老不死の窓口」
『ウェザーカレンダー』
  • 秋待諷月著
  • 弦月の仮宿
  • 500円(税込)
  • 2024.12.1発行
【収録作】
「アイの代名詞」「今年の夏はひどく青い」「 ペンギンの国」「遙かなるSOS」「進歩の果てに進化する」「消えないゴミの日」「ウェザーカレンダー」「 われはロボット掃除機2」「透明な伝書鳩」
ウェザーカレンダー
雀部 >

今回のインタビューは、最近『不老不死の窓口』(2023/11/11)『ウェザーカレンダー(2024/12/1)の二冊が再版の運びとなった秋待諷月先生です。
 初めまして、よろしくお願いいたします。

秋待 >

初めまして、秋待諷月(あきまち ふうげつ)と申します。
 デビューもしていないアマチュアなので、「先生」などと呼んでいただくのは面映ゆいですね(笑)
 雀部さまのインタビューは、『東京銀経社アンソロジー いつかあの空を越えて』のご縁もあり、以前から楽しませていただいておりました。その節は大変お世話になりました。

雀部 >

こちらこそ、よろしくお願いいたします。
 ブックレビューについては、欠席裁判になっちゃって、申し訳なかったです(汗;)

秋待 >
いえいえ、むしろ腰が引けるあまりに欠席してしまって申し訳ありませんでした(笑)
 なにぶん不慣れな上、他の先生方のような見識もユーモアもありませんが、ヒヨッコなりに楽しくお話できたらと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。
雀部 >
秋待先生は、「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024」を、「花が咲いた日」で受賞されていたんですね。実は私は、一昨年「さなコン」のことを知ったという体たらくでして、こうして初めて読ませて頂きました(汗;) 
秋待 >
とんでもない、お読みいただき光栄です!
 「日本SF~コンテスト」、通称「さなコン」は、アニマソラリスさまとも縁の深い九頭見灯火さまに紹介していただき、2023年の第3回から参加するようになりました。
 共通課題文を書き出しに使うというルールが特徴の、10000字以内の広義のSF短編のコンテストで、プロ作家を含めた凄腕の書き手さんたちも多く参加していらっしゃいます。
 そんな群雄割拠の中で大賞を賜ったのは奇跡だと思っておりますが、そのおかげで色々な方に注目していただけるようになり、僥倖という他ありません。
雀部 >

読ませて頂いたらなんとも、素敵な作品でした。
 (下)の出だしでちょっとビックリさせてから、最後に読者に温かい心を届けてくれるまでの流れが見事でした。

秋待 >

雀部さまが読んでくださったのは、コンテストの主催である「pixiv」に投稿したものではなく、私が作品掲載の拠点にしている「カクヨム」に転載したものですね?
 エピソードの分割をしていないpixiv版と違って、カクヨム版は上下分割してあるため、上から下に切り替わるタイミングで読者を引きつけられるような構成にしてあります。

雀部 >
はい、「カクヨム」掲載版です。その構成にころっとやられてしまいました(笑)
秋待 >
してやったり、です(笑)
 私は作品を書くときに、読者からこんな反応やコメントをもらいたい、という目標を設定することが多いのですが、「花が咲いた日」の目標は、「泣いた」という反応をもらうことでした。
 実際に読んでくださった多くの方から、まさにそういった内容の感想をたくさんいただきまして、内心ガッツポーズを決めましたね(笑)
 雀部さまにも温かい気持ちになっていただけたなら嬉しいです。  
雀部 >
「透明な伝書鳩」の評で、「機械仕掛けの愛・ママジン」(業田良家、ビッグコミック増刊号で連載中)を引き合いに出したのですが、業田先生をさらに洗練させて、捻りをきかせた作品だと思います。 
秋待 >
「透明な伝書鳩」は、前述の『東京銀経社アンソロジー いつかあの空を越えて』でレビューしてくださった作品ですね。
 「機械仕掛けの愛・ママジン」については存じなかったのですが、WEB連載の第1話だけ拝見しました。孤児の世話をする母親ロボットのお話なのですね。
 私がSFを好きになったきっかけはアイザック・アシモフの「われはロボット」でして、以来、「心を持っているかのような機械」を書くことに執心するようになりました。
 ……と、言いますか、機械にも付喪神のように魂が宿ると思い込んでいる気がします。非科学的は百も承知で(笑)
 AIを主とする機械進出に対する懸念が何かと話題になる昨今ですが、私は「ロボットがヒトを助け、ヒトもロボットを大切にする」世界になればいいと常々思っているので、そういった気持ちが読者にも伝わっていたら喜ばしいです。
雀部 >
伝わってきました。私もそういう世界が来るとうれしいですね。
 「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2026」応募作の「てんてん虫と僕の旅」も読ませていただきました。
 これも、ちょっとホロリとさせる良い作品ですね。エイト君、Good job!
秋待 >
最新作まで読んでくださったのですね、ありがとうございます!
 先ほどはロボットの話題でしたが、そもそも私は、「ヒトと知的人外の交流・絆」を描くのが好きなんです。
「てんてん虫と僕の旅」は、愛犬のエイトが雄前(イケワン)に見えるように全力を注ぎました(笑)
 私の作品は人外キャラクターの魅力も売りのひとつと思っているので、読者のみなさんにはぜひ、お気に入りの「推し人外」を見つけていただきたいです。
雀部 >
私は、ロボット執事のアス君!
 今回、二冊を再版されたのですが、やはり読者からの要望が多かったのでしょうか?
秋待 >
そうだったら嬉しいのですが、違います(笑)
 きっかけは、『ペンギンSFアンソロジー』や『東京銀経社アンソロジー 真子と鏡』でもお馴染みの、阿下潮さまが主催・編集された『名古屋SFアンソロジー』に寄稿させていただいたことです。
雀部 >
「お前の血は何味噌だ」(『名古屋SFアンソロジー』収録作)ですね。名古屋人バンザイ的バカSFで面白かったです(笑)
 名古屋のかたたちの感想はどうだったのでしょうか?
 大学時代の親友が蟹江町在住ですが、送ってみようかなぁ。
秋待 >
名古屋に縁のある読者の方からは、それ以外の地域の方以上にご好評をいただいている印象です。
 味噌へのこだわりのみならず、ちょっとした地域ネタだとか、地元に対する複雑な感情など、名古屋の方だからこそ「分かる」と感じていただけることも多いのではないかと。
 蟹江にご友人がお住まいなのですね。『名古屋SFアンソロジー』は名古屋愛に溢れた傑作揃いですので、ご友人にもきっと楽しんでいただけると思いますよ!
雀部 >
はい、早速送ってみます。
 ついでに高井信先生の『名古屋の逆襲』も送ります(笑)
秋待 >
話を名古屋から戻しまして(笑)
 そのアンソロジーを名古屋にある新刊・古書店「henn books」さんに置かせていただくにあたり、同書の収録作家の書籍や同人誌も特設棚に並べていただけることになりまして、そこに便乗したいがために再版しました。
 とは言え、『不老不死の窓口』はこれで5回目、『ウェザーカレンダー』は3回目の再版・増刷ですので、ご好評をいただいているのは確かです。本当にありがたいことですね。
雀部 >
えっ、そんなに版を重ねられているんですね。私の中で秋待先生は、「時事ネタを扱う星新一」という位置づけなのですよ。
秋待 >
なんと畏れ多い……。星新一先生のショートショートは、子どものころに夢中になって読み漁った記憶があります。
 SFを読み慣れない人にも敷居を感じさせないのが星先生の魅力だと思っており、私の作品も同様に、読者にとってのSFのハードルを下げられるようなものになることを目標にしていますので、とても光栄です。
雀部 >
星先生や小松先生、小学校の教科書にも載ってますから。秋待先生のも採用されるとうれしいです。←先見の明があったと自慢できる(笑)
 『不老不死の窓口』の中では「カプセルギフト」が一番好きです。
 遺伝子操作で付与される「天賦の才能」(ギフト)というネタに、新たなアプローチを見せた作品。いやぁ、そう来ましたか。凄い!
 主人公と家族に幸いあれ。
秋待 >
ありがとうございます! 「カプセルギフト」は、前述の「さなコン」に私が初めて参加した2023年の応募作品です。
 「『チャンスは残り三回です』どこか楽しげに声は告げた。」という共通課題文を書き出しにするもので、この課題文をいかに独創性のあるアイデアへ発展させるかに苦労しました。
 もし自分だったらどんな三つの「ギフト」が欲しいか、などと想像しながら読んでいただけたら楽しいのではないかと思います。
 私だったら、小説執筆に役立ちそうなギフトをセットで揃えたいですね(笑)
雀部 >
登場人物たちが勝手に動いてくれる才能が良いかも(笑)
秋待 >
私は登場人物が勝手に動いてしまうタイプなので、制御する才能が必要かも(笑)
雀部 >
あらま、そうなのですね。中々勝手には動いてくれないとうかがうことが多いので(笑)
 『ウェザーカレンダー』では、「今年の夏はひどく青い」と「ウェザーカレンダー」の気象二部作が好きです。
 「暑い」と「青い」は、小さいフォントだと見間違えます(笑)
秋待 >
今回紹介していただいた短編集はどちらも、私の好みでフォントが小さめなので、目が悪い方には不親切かもしれませんね(汗)
 気象二部作、という括りは全く意識していませんでしたが、言われてみれば確かに(笑)
 「今年の夏はひどく青い」は、第二回あたらよ文学賞:テーマ「青」に応募したもので、お題にド直球に挑んだ作品になっています。
 私の作品には珍しく情景描写に重きを置いていて、夏に読むと爽やかな心地になれると思います。
雀部 >
「青い」から「RGB」値の話になろうとは(驚)
 ところで、この現象の原因については考えてられるのでしょうか?
秋待 >
いえ、まったく考えていません!(笑)
 原因もへったくれもなく、ただただそういう現象としてゴリ押ししました。
 SFを自称してはいるものの、実際のところファンタジーですよね、この作品は(笑)
雀部 >
「シミュレーション仮説」だと、プログラムを実行している異生命体の使っているモニターのRGB値がズレたのかと思いました(笑)
秋待 >
それ、面白いですね!(笑) 10000字級に加筆して、何かのコンテストに出したくなります(笑)
雀部 >
もう二捻りくらいして下さい(笑)
 原因がよく分からないというか、「ま、いいかぁ」の精神が貫かれているのは「ペンギンの国」もそうですね。実はペンギン事件の黒幕は、とても怖い存在なのかも(笑)
秋待 >
悲しいながら知識・理解力不足により専門的な説明ができないので、私のSF作品における奇妙な現象は、大体「ま、いいかぁ」を貫いていますね。
 「ペンギンの国」を読んでくださった方の中には、陰謀論や侵略説など、不穏な裏を汲み取ってくださる方もいるのですが、そこは想像にお任せできたらと……(笑)
雀部 >
ちょうど昨日旭山動物園でペンギン君を見てきたんです。(写真にリンク)
 温暖化で将来を憂えたペンギン一族が、甘っちょろい日本人に取り入って繁栄を画策したというのはありきたりですしSF度が弱いかな(汗;)
秋待 >
おっと、雀部さまもしっかりペンギンに侵略されてますね(笑)
 ペンギンがいかに日本人の甘っちょろさに気付いたか、あたりを突き詰めると、なかなか深みのあるSFになりそうな気がします。
 SFという見方であれば、「ウェザーカレンダー」は、将来実現可能かもしれない技術を扱っているという点でSF度は高いかもしれませんね。
 とは言え、SFに慣れない方でも楽しめるようなエンタメ感を意識していて、みなさまからの評判も良く、自信を持ってオススメできる一作です。
雀部 >
子どものために頑張るお父さんの話で、特に親御さんにお薦めですね。中国では、かなり人工降雨が行われていて、その反動も出てきているようなのですが、どうなるんだろう。
秋待 >
私は将来的に安全かつ平和利用のみを目的とする気象制御技術が実現することを切に願っていて、この作品においては、運用面はさておき、技術面では理想的なシステムが完成しているという想定です。
 実際には雀部さまの仰るとおり問題や課題も多く、「ウェザーカレンダー」は夢物語かもしれませんが、誰も天候に苦しめられることのない世界が遠からず訪れて欲しいですね。
雀部 >
とりあえず温暖化現象は止めて欲しいです(切実)
 「ウェザーカレンダー」を読んだ関係者の方が触発されて、画期的なアイデアを思いつき、気象制御技術が大幅に進歩するという展開を希望します(笑)
 それもSFの使命の一つだと思います。
 秋待先生のさらなるご活躍を期待いたします。
秋待 >
SFは、その時代においてはどんなに荒唐無稽だろうと、技術進歩の道標になり得ますからね。
 私の妄想から生まれた作品が、よりよき未来のヒントになるようなことがあれば、SF書きとして最高の栄誉になるだろうなと思います。
 今後も読者のみなさまに夢を与えられるような作品を発信できるよう、精進して参ります。
 このたびは貴重な機会をありがとうございました。
雀部 >
新作、お待ちしております!
[秋待諷月]
名古屋出身・名古屋在住。創作小説・イラストが趣味のアマチュア物書き。学生時代から辺境の個人サイトで細々と活動していたが、2022年に小説投稿サイトのカクヨムに登録、同年に公開した「不老不死の窓口」を九頭見灯火さまに発掘されたことをきっかけにSF短編に目覚める。「花が咲いた日」で「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024」さなコン賞受賞。pixiv小説編集部「from P ~PからはじまるSFアンソロジー~」に「pointer」収録。その他同人アンソロジーに多数収録あり。
管理サイト*弦月の仮宿
http://gengetsunokariyado.web.fc2.com/index.htm
[雀部]
1951年生、歯科医、SF者、ハードSF研所員、コマケン所員、元ソリトン同人
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