SFファンクラブ探訪記
インタビュアー:[雀部]
SFファンクラブ探訪Anchor KLL No.3
『Anchor KLL No.3』
  • 神戸文芸ラボ
  • Amazonオンデマンド(ペーパーバック)
  • 1210円(税込)
  • 2026.6.30発行
  • 故眉村卓先生が開催されていた「物語・エッセイ講座」の受講生が、講座終了後も自発的に集まり文芸同好会として立ち上げた「神戸文芸ラボ(KLL)」の作品集、第三弾。まつもとみかさん追悼小特集。
●《小特集》ー まつもとみかさん追悼 ー
【収録作】
◆小説
(KLLメンバー推奨)
「護ってあげる」
◆小説
(代表作)
「スマホと居場所」「マリーゴールド」「やさしい幽霊」「吉原逃避」「複製人間クローンズ母乳ミルク
◆エッセイ
―故眉村卓氏を偲んで
「まだ」(眉村卓の異世界通信より転載)
「2枚の写真」(神戸新聞文芸2020年02月17日)
◆エッセイ
(KLLメンバー推奨)
「時間の使い方」「受験シーズンの中で」「うぎゃあああっ」「夏休みの過ごし方」「白い花々(神戸新聞文芸2020年度年間優秀作)」「子宝草」
◆エッセイ
(代表作)
「『鳥山明』という時代」「戦争と水」「コロナ禍の修学旅行」「会いたい友達」「大阪万博(遺作)」
【偲ぶメッセージ】
◆「本格スタート直前だった」堀晃
◆「じゃあね、松本さん。またいつか」上坂京子
◆「まつもとみかさんのこと」高鍋学
◆「伝えたかったこと」東野尚子
◆「松本さんへ」渡邊葉月
◆「ラノベの星が輝く前に……」石坪光司
●作品
◆戯曲:上坂京子 「凍て月の向こうに」
◆小説:堀晃 「人魚の溺死――わが大林雅美事件――」
◆小説:石坪光司 「時渡胡蝶之舞(ときわたるこちょうのまい)」
雀部 >

No.1No.2と、このコーナーで紹介させていただいてる『Anchor KLL No.3』が出ました。堀晃先生、石坪さま、上坂さま、今回もよろしくお願いいたします。


堀  >

故眉村卓さんの講座(神戸新聞文化センターの「エッセイ・物語」講座)を引き継いで、もう8年になります。
その間に、高齢会員がリタイアしてしまったり、昨年は最有力の会員の逝去があり、正直なところ、そろそろ限界かなというのも本音です。
 ただ、石坪光司さんが事務局長としてがんばってくれており、(SF専門ではありませんが)あと数号続けてみようかというところです。

雀部 >

今号は先日逝去された「まつもと みか」様の追悼特集号と言うことですね。
 「アニマ・ソラリス」でもメンバーのkanさんとdoruさんが亡くなられた際には追悼特集を組んでいるので、人ごととは思えません。

石坪 >

ありがとうございます。今回も、よろしくお願いいたします。
 そうですか。アニマソラリスでも同様な事があったのですね。
 私達の年齢を考えれば、同年代の訃報を聞く事は、そう珍しい事ではないのですが、まつもと(本名は松本美加、筆名がひらがな)さんの場合は、二十三歳も年下なので 連絡を受けた時は、まさに絶句でした。
 何で、そんなに早く、と言うのが偽らざる思いです。
 堀さんも、一番気にかけていた人ですから……。

雀部 >

そこらあたりの機微は、石坪さんが書かれた“偲ぶメッセージ”「ラノベの星が輝く前に……」に書かれてますね。

石坪 >

そうですね。『Anchor KLL No.2』に掲載した長編「ダイエットセンター」推敲のお手伝いをしたのが、最後になったことが残念です。
 こちらの力不足もあって新人賞のスポットライトに浮ばなかったのですが、一緒に楽しい時間を過ごせた事が救いですね。

雀部 >

「ダイエットセンター」面白かったですが、数多くの応募作の中に埋もれてしまったのでしょうか。

石坪 >

応募総数564作でしたから。ただ話が雑誌の性格とあっていなかったかも知れません。また、今にして思えば長編としての構成に難があったかなと思います。(実作経験がないので、アドバイスが今一つだったと思います。)
 そこで、2026年の「No.3」を刊行するにあたり「まつもと みか」さんを偲ぶ追悼特集号を組みました。神戸新聞文芸年間優秀作受賞作エッセイや小説、参加メンバーによる追悼文を掲載しています。

雀部 >

アニマ・ソラリスでも、「No.1」では「スルーのない彼」、お好きな小説・映画・アニメや音楽等についてうかがってます。「No.2」では、短編の「祓い屋」と長編の「ダイエットセンター」について色々と。「No.2」の紹介・インタビュー記事を掲載したのは、ご逝去の後になってしまいましたが。

堀先生の『人魚の溺死 ――わが大林雅美事件――』は、以前石飛先生の架空インタビューの際に、「小生は92年のハマコンでやった『大林雅美事件』で暗黒星雲賞を受賞したのが自慢です。」とうかがった案件ですね。
 今回読ませていただき、『大林雅美事件』をなぜ堀先生が取り上げたのかやっと理解出来ました(汗;)

堀  >

暗黒星雲賞の副賞で「中国射撃ツアー」というのを頂いて参加しましたが、これもヘンな体験でしたね。軍のアルバイト事業としか思えませんでした。

雀部 >

実弾射撃は、貴重な体験だと思いますが、変なツアーでしたか(汗;)
上原謙さん(加山雄三さんの父親)とのスキャンダルは、当時のワイドショーを賑わせましたね。故上原謙さんは、二枚目俳優として一世を風靡してましたが、今の若者はそもそも加山雄三さんも知らないか(汗;)

堀  >

ぼくも「二枚目俳優」は見たことがないです。「モスラ」や「妖星ゴラス」に出てきた科学者しかしりませんからねえ。

雀部 >

「妖星ゴラス」は、DVDを持ってますが、池部良さんと共にクレジットされてます。お二人とも科学者役での出演ですが、二枚目だとは思います(笑)
 堀先生、ありがとうございました。
 石坪さんもご多忙ですね。某先生へのインタビューにもとりかかっているとうかがったことがありましたし。

石坪 >

そうなんですが、『Anchor KLL No.3』の編集にかなり時間をとられて中断中です。すみません。
加えて、昨年から「文学フリマ」に出店し始めたので、その関係の準備もありますね。
 9月13日「文学フリマ大阪14」に出店します。店名は「創作集団 星群の会」と言っても星群だけでなく、当然「AnchorKLL」も売るのですが、それ以外に岡本さんの著作や眉村卓先生の異世界シリーズに今回は「SF大会は関西から始まった」も売ります。
 合わせて、故眉村さんの長女、村上知子さんから「卓ちゃん人形缶バッチ」「同Tシャツ」「同トートバッグ」の提供もあり販売予定です。
 その準備を考えると……、時間がないかな……。SF大会スタッフの気分ですね。

雀部 >

フリマって行ったことがないので、今年行ってみようか。知り合いの人も出店するそうだし。
 石坪さんの書かれた「時渡胡蝶之舞(ときわたるこちょうのまい)」は、『故人と話せるAI』がテーマで、過去を引きずっている熟年男性が主人公です。いやはや、なんか心情がわかりすぎて怖いくらい(笑)

石坪 >

ありがとうございます。初稿は2023年11月にKLL例会用に書いたものですが、当時は生成AIがブームになり始めた頃で(ChatGPTが先行し、他はまだスタートアップの時代)どう使えるのか見えていない時期でした。なので、AIを使わない話しだったのですが、皆さんの評判が今一つで、しばらく寝てもらう事にしました。タイトルは気にいっていたので、いつかと思っていた時、実際に『故人と話せるAI』がサービスとして提供され始めたので、取り込んで書き直したものです。
『故人と話せるAI』はテーマと言うより道具立てとして使っていて、どちらか言えばラストにチラッと書いていますが『心中するAI』の方がテーマと言えばテーマです。

雀部 >

実際に、AIに相談して自殺する人が出てきてますからね。
 『Anchor KLL No.1』掲載の「時の崖」は、時空波解析を利用したタイムマシン(?)でしたが、こちらもコンセプトは似てますよね。最近特に感じているのが、SFではよく言われてる「人間とは、つまるところ情報だよ」です。最初に読んだのは山田正紀先生の作品だったかなあ。

石坪 >

どの作品かな。最近物忘れがひどく、すぐに出て来ませんね。それに新作を書いたつもりでも、昔書いた物の焼き直しをしているなぁと思う事もままあります。なので、過去に戻って、やり直す的な感じには似ていますね。(時間ループみたいな話は好きだからかも知れません)
最近の現代物理学では「宇宙は情報で出来ている」というのが話題になっているようです。物理学者ジョン・ホイーラーが1980年代末に提唱した「It from Bit(物質はビットから)」が現実味を帯びだした感があります。極端に言えば「宇宙はコンピュータである」と言う話ですね。
 「時の崖」は、そのアイディアを使っています。ホログラフィック宇宙論がベースです。

雀部 >

宇宙の総ての情報が、どこかに保存されているというのは何か夢がありますね。
上坂京子さまの戯曲「凍て月の向こうに」は、シベリア抑留がテーマ。
「戯曲デジタルアーカイブ」で参照すると、上坂さまの三作品が収録されてます。(戯曲デジタルアーカイブ)
「凍て月」を読ませて頂いたのですが、シベリア抑留を経験した加藤芳雄氏も登場されてるから、舞台は「凍て月の向こうに」より前の時代と理解して良いのですか。

上坂 >

上坂です。 よろしくお願いします。
戯曲デジタルアーカイブの作品もお読みいただいたそうで、ありがとうございます。そうですね。執筆順では『凍て月の向うに』の方が先だったんですが、 『凍て月』は、加藤俊の祖父、加藤芳雄の晩年の様子を描いた作品で、『凍て月の向こう』は、芳雄が亡くなったあとの、孫の俊と芳雄のヘルパーだった橘の物語ですので、時系列でいうと、『凍て月』の方が古い時代の話になります。

余談になりますが、『凍て月』を書き始めた頃、情報収集のつもりで訪れた舞鶴にある「舞鶴引揚記念館」にて、元シベリア抑留兵だった故・今村喜佐夫氏と偶然出会いまして、その場で交渉して、何回も取材させていただいたんです。長い年月、ご家族にさえ黙っておられた貴重なお話をたくさん聞かせていただきまして、伺ったお話は、芳雄の回想シーンとして織り込ませていただきました。 今頃になって、どこの誰かもわからない得体のしれない人間によくぞ、と驚くのですが、(笑)ご縁を感じていただけたようで、本当にありがたかったです。

雀部 >

「凍て月の向こうに」のさらに10年後が舞台の戯曲を執筆されているそうですが……

上坂 >

はい。
『凍て月の向こうに』の初稿は2015年に書きました。今年になってあらためて改稿したと同時に、10年後の世界を書きはじめました。

「戦争」については、折に触れてずっと考えてきてはいたのですが、ここ数年で、世界情勢はどんどん悪化してしまって……。 ですが、じゃあ具体的にはどうすればいいのか。橘のように信念を持って行動できる人間がいるかと思えば、俊のように、「戦争は嫌。だけど、具体的な行動を起こすことは、ちょっと」というところで止まってしまってる人もいますよね。

毎日、世界中の報道を見聞きし、戦争がより身近に感じられるようになってきた昨今、 芳雄の体験ほど壮絶とは言えないけれど、だからといって決して軽く扱ってはいけない問題がそこかしこにある。そうした今の空気を探りたいと思って、2人の10年後の世界を描くことにしたんです。

『AnchorKLL No.3』 発行後、 KLLメンバーから「どうして身内より、そうでない人間の方が会に執着するのか?」と、俊と橘の温度差について意見をいただいたり、「橘と俊の関係、その後どうなったの?」と聞かれたりもしましたので、それも受け止めつつ。俊と橘らしい、その後の「今」が描けたらいいなと思っています。

雀部 >

詳しくありがとうございました。その後の物語もお待ちします。
堀先生、石坪さま、上坂さま、ありがとうございました。
今回は、「まつもとみかさん追悼」号ということで、取り急ぎ紹介させていただきました。皆様、よろしくお願いいたします。

[神戸文芸ラボ(KLL)]
 神戸文芸ラボ(Kobe Literature Lab:略称KLL)は、2019年に逝去された眉村卓先生が開催されていた「物語・エッセイ講座」の受講生が講座終了後も自発的に集まり文芸同好会として立ち上げたものです。 メンバーが「眉村卓の異世界通信」「眉村卓の異世界物語」の編集に関わった縁で堀晃さんも一緒に参加され活動を行っております。
[石坪光司]
 「神戸文芸ラボ」同人。創作集団「星群の会」創設以来の同人。「星群」編集人
[堀晃]
 ハードSF作家。「堀晃の SF HomePage」
[上坂京子]
  劇作家。眉村卓氏の文章講座、伊丹想流私塾、同マスターコースを経て劇作の道へ。「神戸文芸ラボ」同人。日本劇作家協会会員。
[雀部]
 大学卒業後、OSFFC(岡山SFファンクラブ)に加入。その後ハードSF研、コマケン所員。「ソリトン」(堀晃先生主宰)元会員。