| TOP Short Novel Long Novel Review Interview Colummn Cartoon BBS Diary |

BookReview

レビューア:[雀部]&[彼方]

『プランク・ゼロ』
> スティーブン・バクスター著/古沢嘉通・他訳/撫荒武吉画
> ISBN 4-15-011427-7
> ハヤカワ文庫SF
> 860円
> 2002.12.31発行
収録作:
「イヴ」「太陽人」「論理プール」「グース・サマー」「黄金の繊毛」「リゼール」「パイロット」「ジーリー・フラワー」「時間も距離も」「スイッチ」「青方偏移」「クォグマ・データ」「プランク・ゼロ」

『真空ダイヤグラム』
> スティーブン・バクスター著/小野田和子・他訳/撫荒武吉画
> ISBN 4-15-011430-7
> ハヤカワ文庫SF
> 820円
> 2003.1.31発行
収録作:
「ゲーデルのヒマワリ」「真空ダイヤグラム」「密航者」「天の圧制」「ヒーロー」「秘史」「<殻>」「八番目の部屋」「バリオンの支配者たち」「イヴ」
独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆1/2
 《ジーリー・クロニクル》シリーズに含まれる長編群の間を埋める短編集です。
 37世紀、マイケル・プールが開発したエキゾチック物質によるワームホール・テクノロジーが、恒星間航行への道を開いた。それは同時に、人類の異生命体との邂逅の始まりも意味していた。そして、宇宙の黎明期から存在する超種族ジーリーと、暗黒物質の覇者フォティーノ・バードとの闘いに否応なく巻き込まれていくことに……
《ジーリー・クロニクル》年表 >>
他の長編作品解説 >>

ハードでコアなSFネタと、とんでもないネタとが、同居してしまう面白さ

雀部 >  『プランク・ゼロ』と『真空ダイヤグラム』と二つの短編集から構成されているのですが、長編と比べてどうですか?
彼方 >  読み応えのある作品というか、長編モノが好きなので、ちょっと物足りないかなぁ。でも、やはりバクスターということで、読んでいて面白い作品ではありました。あ、読んでいて、どうでもいいところなんだけど、妙に気になった所があって、各編のタイトルに西暦年が書かれてるじゃないですか、で、この数字がカンマで位取りされているところと、されていないところがあって、この違いは何(^^;?と思いながら読んでました。
雀部 >  ほんとだ。英文のタイトルの方ですね。全然気が付かなかった(笑)
 モロにアイデア勝負の短編と、年代記に沿って書いたんだろうなぁという短編とあるように思えたんですが、いかがですか?
彼方 >  なんというか、時間がインフレーション理論的(^^;に進んでいくので、追付いていくのが大変で、ひとつの本として読んだときに違和感があるなぁと思いつつも、そこまで思い至りませんでした。言われてみると、違和感の正体はそれかもしれません(^^;。
雀部 >  キャラ的には、シルバー・ゴーストが好きなんです(笑) あれは種族全体がマッド・サイエンチストですよね(爆) あれだけの技術を持ちながら、肝心の所に気が付かず失敗するというあり得ない設定。全体的にみて暗いトーンになりがちなので、ああいうずっこけたキャラを入れたと思うのは穿ちすぎでしょうか? たぶん確信犯だと思うけど。
彼方 >  おちゃめと言うか、はた迷惑な種族ですよね(^^;。
 個々の短編を集めて、ひとつの本として落ちをつける話としては、良いキャラだったのではないかと(^^;。解説を読むと、作者も気に入ってるみたいなので、邦訳が楽しみです。
雀部 >  バクスター氏のユーモアのセンスは、ほんとぶっ飛んでますよね(笑)
 それにしても、この短編集以外には、『タイム・シップ』だけしか残ってないのかな。やはり日本ではハードSFは、絶滅寸前なのか(泣)
彼方 >  へ、バクスターってもっと出てなかったっけ(^^;?と、bk1で検索してみたら、あら、全然ヒットしないじゃないですか。そんなに昔の作品じゃないのに絶版ですかぁ。
 けど、ハヤカワSFは絶滅寸前かもしれませんが(確かに、ココ最近、ハヤカワ青背は買ってない(^^;)、ソノラマ文庫とかハルキ文庫とか徳間デュエル文庫あたりが、妙にハードSFになっているので、日本全体ではまだ頑張ってるのではないでしょうか。特に、先日読了したソノラマ文庫の『クリスタル・サイレンス』なんて、とてもソノラマ文庫のカラーとは思えないハードさ(^^;でしたし。
雀部 >  『クリスタル・サイレンス』良いですよね。「アニマ・ソラリス」の創刊当時にブックレビューしたなぁ(遠い目)
 ところで、バクスター氏の長編の魅力はどこらあたりにあると思われますか?
彼方 >  スペオペ的な派手さはないけど、これぞハードでコアなSFっていうネタと、とんでもないネタとが、同居してしまう面白さかな。センス・オブ・ワンダーっていうと、ついスペオペを思い浮べるけど、バクスター氏の作品もセンス・オブ・ワンダーと言っても良いと思います。

お薦めの作品は?

雀部 >  センス・オブ・ワンダーというと、まず『ソラリスの海』を思い浮かべる私は、もはやオールドファンだな(爆)
 長編で一番お好きなというかお薦めの作品は?
 私は『天の筏』なんです、あの重力定数が十億倍という設定には参りました。
彼方 >  『虚空のリング』かな。壮大な設定と、リングとフォティーノ・バードの記述が良いですね。それと、これ以前のジーリーもの長編を読んでいて、しっくり来なかったのが、なるほどとかこれがそうかとオチをつけてくれますし。
雀部 >  『虚空のリング』の希有壮大かつ綿密な設定には、ほとほと感心しますよね。
 この短編集ではゲーデルの不完全性定理がネタの短編が二つ収録されてますが、(「論理プール」「ゲーデルのヒマワリ」)バクスター氏は、好きなんでしょうね。
 私なんか畑違いだから、本当の面白さが分かっているかどうか(泣)
 知り合い(自称堅気の銀行員)と話したとき、ゲーデルの話が出て、当然のように不完全性定理の話題になったんですが、そんなに有名なんかとショックでした。
 まだプランク定数を0にすると……という「プランク・ゼロ」のほうが取っつき易いんですが(笑)
彼方 >  名前だけは結構有名ですね(^^;。説明を聞くと判った気にはなるけど、結局よく分かりません。ただ、システム屋さんからすると、NP完全な問題を解いたってだけでも凄いなと(^^;。不完全性定理ネタだと、「論理プール」が面白かったです。
雀部 >  あと、アーサー・C・クラーク氏との共著である『過ぎ去りし日々の光』は、いかがでした。これはまだ在庫があるようですが(笑)
彼方 >  あ、すいません、読んでません、買ってません(^^;。
雀部 >  最後にハヤカワ文庫SFにご要望を(笑)
彼方 >  <ペリー・ローダン>シリーズを最初から再版してください。ぢゃなくて(^^;。
 最近、単純な未来戦争モノばかりのような気がしますが、これぞハードSFってのを出してください。
雀部 >  いま気が付いたんですが、この"The Xeelee Chronicle"の短編集と『太陽の簒奪者』のカバーイラストを書いたのは、同じ人なんですね。これはひょっとして、早川書房に期待しても良いかも知れませんね。


[雀部]
50歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。
ホームページは、http://www.sasabe.com/
[彼方]
コンピュータシステムのお守となんでも屋さん。アニメとSFが趣味。最近、ハードなSFが少なくて寂しい。また、たれぱんだとともにたれて、こげぱんとともにやさぐれてるらしいヽ(^^;)ぉぃぉぃ ペンネームの彼方は、@niftyで使用しているハンドルです。

トップ読切短編連載長編コラム
ブックレビュー著者インタビュー連載マンガBBS編集部日記
著作権プライバシーポリシーサイトマップ