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ttaniさんとのレビュー みさとさんとのレビュー 別所さんとのレビュー

ハヤカワ文庫SF


(1) 飛翔せよ、閃光の虚空へ!
(2) 稲妻よ、聖なる星をめざせ!
(3) 制覇せよ、光輝の海を!(上)
(3) 制覇せよ、光輝の海を!(下)


[雀部]  今回は、戦争SF特集の一貫として《スコーリア戦史》を取り上げてみました。
 また新しい試みとして、大勢のマルチセッションタイプのレビューにしてみようかと思います。
 まず最初は、私と同年代のttaniさんです。ttaniさん、よろしくお願いします。
 ttaniさんは、作者のキャサリン・アサロについてどう思われますか?
[ttani]  著者キャサリン・アサロは化学物理博士号と物理学修士号を持つ科学者で、トロント大学、マックス・プランク協会の天体物理学研究所などを経て、現在はモレキュダイン研究所を経営している。(社長さんです)
 また幼少の頃からバレエに打ち込んでいて、今でもバレエを教えている!!
(・・・・う〜ん、それにしては少し太りぎみかなぁ・・・・バシッ!)
 そして、いつ書いているのだろう、こんな面白いSFを?
 連れ合いはNASAに勤務する天体物理学者で、一女キャシーがいる。
(キャサリンの愛称がキャシーではなかったっけ?)
 ここの点を覚えておいて下さい。
 http://www.geocities.com/CapeCanaveral/Lab/7439/
 から著者の情報にたどり着けます。
[雀部]  ありがとうございます。
全部英語なのが残念なのですが(当たり前か^^;)たしかにふっくらとしたお写真がありますね(笑)
 NASAのブレークスルー技術なんかにも取り上げられているんですね。宇宙開発の本家本元のところだから、アサロ女史の理論は実現性が高いのかな?
[ttani]  スコーリア戦史にでてくる超光速移動理論についても作者は本業の方でこのアイデアを学術誌に発表したものをうまく使っています。このあたりは
http://www.sff.net/people/asaro/biblio.html
を見て下さい。
[雀部]  こちらは、アサロ女史のビブリオファイルですね。なるほど小説より、そういう論文関係のほうが多いや。上記サイトから、"ソズ イン アニメ"というリンクが張ってあって、そこには『飛翔せよ、閃光の空へ!』の表紙画とともに、日本での紹
介が書いてありますね。
[ttani]  日本語のタイトルと表紙画は小生の好みではないのですが、表紙画については作者ご本人が "I love it" とおっしゃってるので・・・
[雀部]  確かに上記アドレスからのリンク先にそう書いてありますね(笑)
 ところで、ttaniさんは、お話的には、どういったところが面白いと感じられましたか?
[ttani]  こんな背景を持った作者が提供してくれたSFがなんと!SFはアイデアだ!の類ではなくてまさにスペースオペラ、冒険活劇ところですね。SFの歴史を知悉して、楽しいところをたっぷりとつめこんである。登場人物の心理描写もひとかどのものだし、細部が荒唐無稽にならないように気配りしてあって、鼻白むようなところが全然ないのがすごい。
 まさに神は細部に宿り給うですね。
「ローマの恋人」という映画が、単純なストーリーにもかかわらずあれだけ楽しい作品になっているのにも似て、このスコーリア戦史も比較的単純なストーリーにも関わらず最高に楽しめるSFになっています。
[雀部]  「ローマの恋人」ですか、さすが映画通のttaniさんらしい例えですね。
 確かに、SFファンの心理を知り尽くして書いている感じがしますからネェ。
 それと、ソズとジェイブリオルの設定も凝っていますよね。
[ttani]   そうです、日本での1作目と3作目に登場する主人公〈ソースコニー〉の設定が、一ひねりもふたひねりもしてあります。
 スコーリア王圏の王位継承権を持ちスコーリア王圏軍の戦士(一爵)・未来生体工学の粋を全身に埋め込まれ超光速宇宙艇と一体化する”ジャグ戦士”であり、最上級の超感技能者であり、ローン系サイオンの遺伝子を持つ美女ながらも、二回の結婚に失敗した48歳の女性という設定で、完全なスーパーウーマンではなしに、人間らしい悩みや苦悩を持つかわいい女性としても描かれています。
 アン・マキャフリーの作品の主人公の女性のようには肩肘をはっていないところが好感が持てます。
[雀部]   マキャフリイというと「クリスタル・シンガー」とか「ローワン」の女主人公ですね。あちらは、単に我が儘というか女王様気取りというか(爆)
 他の登場人物の造形はいかがでしたか?
 例えばソズの夫となるジェイブリオルとか、胤違いの兄クージとかは?
[みさと]  キラシャンドラやローワンは、ほんときつい性格ですね(笑)好きな話ではありますが、主人公に共鳴して読むのではなくて遠くから見ている感じです。同化しにくい。
 反対にこちらの女性陣はそれぞれに悩みやらコンプレックスかかえていて人間味があって共感しやすいです。
[ttani]  このソースコニーの描写なのですが、女流作家でないと書けないような表現にはっ!とさせられるところがかなりでてきます。
1作目では、女性が男性を見るときの女性側の視点、3作目では出産のシーンの描写などに、う〜んと感心してしまいます。
[みさと]  "女流作家でないと書けないような表現にはっ!と」"というコメント読みながら、そんなふうに引っかかりながら読まなかったので、再度パラらパラと本を繰りました。
 *気にならないくらい自然に話が入ってきたということでもある
 出産シーンは、本当にそのままだなあ・・と。
 ソズの場合は内蔵の≪ノード≫@脊椎のコンピュータが陣痛が始まったあとでいろいろ指示を出してきていますよね。ラマーズ法による自然分娩といっても、どうしても病院によっては(だと思う、たぶん@産院・病院共に体験)出産間際になると機械につながれるというか機械の手を借りるというか・・・。
 出産の時痛みに耐えてる脇で助産婦さんが医者に「間隔が2分です」とかいうのが聞こえたりして、≪ノード≫の指示ならぬ人間の指示がまるでそっくり。じゃなくて、本の描写がまさに現実。
[ttani]  ジュリエット役の〈ソースコニー〉は寿命を延ばす措置を受けているので48歳という実年齢よりもはるかに若く見えます。これにたいするロミオ役の〈ジェイブリオル〉は、敵対するユーブ協約圏の皇帝ウル・コックスが戦略的目的を持ってローン系遺伝子を持つ女性と、自身に備わるローン系遺伝子との組み合わせで作った[世継ぎ]であり、ローン系サイオンである。ユーブ人の社会の最高支配者階級アリスト階級人から隔離して育てられた〈ジェイブリオル〉は20歳そこそこの年齢で〈ソースコニー〉と出会い、恋に落ちる。
 この設定には女性読者のかなりの方が舌なめずりをするのではないでしょうか?
 失礼、願望充足させてくれるのではないでしょうか?
 このロミオとジュリエットが初めて愛し合うシーンの描写が女流作家ならではの視点で書かれているのですが、さらにスゴイのが二人ともエンパスなのでお互いの情感をフィードバックしながら交歓できるという設定になっているのです。
 このあたりはベンフォード&ブリンの「彗星の核へ」では脊椎のノードからケーブルでお互いを接続して愛し合うシーンがありましたが、それ以上にエロチックです。
[みさと]  ふふ ノーコメント なーんて(^^;。
 いえいえ、おっしゃるとおりおいしい場面たくさんでして、舌なめずりしながら読みました。それもしっかりソズに共調して(*^^*)。
 それやこれやらでこの《スコーリア戦史》、等身大の女性の視点から書かれているところ多いので感情移入しやすいのなんの(^^)。
[ttani]  〈ソースコニー〉の母〈ロカ〉は王立バレエ団のバレリーナ(笑)という設定です。プリマドンナと言う言葉は使用されていません。この〈ロカ〉はローン系であり、〈ロカ〉の前夫との子供がスコーリア王〈クージ〉で、なんと〈ロカ〉の前夫がローン系でないことを知ったため性格が屈折してしまう。〈ロカ〉の実父はローン系である。ローン系どうしの交配からしかローン系サイオンは生まれないのだ。
 この100歳近くのスコーリア王〈クージ〉の屈折ぶりが面白く描かれています。
[雀部]  クージは、けっこう美味しいキャラに仕上がってましたね。(^o^)/
[ttani]  ウル・コックス率いるESコムの艦隊が「惑星の問題を解決」するために惑星を攻撃する方法が面白いですね。核兵器やもっと強力な兵器で惑星を破壊するのではなく、小惑星を使って、その水素を大気圏にそそぎ込み、巨大な放電を起こして酸素と結合させ、水を作り惑星の陸地を水没させ、陸上の生命を全滅させるというやり方で惑星の資源を残したまま人間を皆殺しにするという方法です。
 どうやらこれは、作者の父君の「フランク・アサロ」が(地球の)恐竜絶滅が小惑星の衝突によるものであるとする説を最初に唱えた4人の科学者グループの一人であるということが背景になっているのではないかと推測してしまう のですが・・・
  #好きな作品なので語りだしたら止まらない。
[雀部]  確かに、その仮説はあり得ますね(笑)
 ttaniさんも、このシリーズはとても気に入られたんですね(^o^)/
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[ttani]
一生かかっても今まで出た良質のSFと、これから出てくる良質のSFを全部を読むことは出来ないだろうということが判りだしたSFファンです。
システムハウスを営む。1947年生まれ。エニアックと同い年。
「SFの本棚 」 http://member.nifty.ne.jp/sysindd/sf/sfidx.html

[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員 ホームページは、http://www.sasabe.com

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