この作品につきまして

　　ある夏のこと、神社の境内で一人の男性と出会いました。境内には私たち二人きり。暑い盛りだというのに、黒っぽいスーツをかっちり着込んだその男性は、私が前を通り過ぎようとすると、「大変ですね」とぽつりと私に言いました。『この人、ヒトじゃないんだ』と、私は感じました。でも不思議と怖くはありませんでした。
　何が常識で何が普通で何が本物かなんて、誰が決めるのでしょう。『何でも起こり得る日常』というのは、私のオブセッションのひとつになっています。今回書かせていただいたのは、そんな危うい日常のお話です。

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