月別アーカイブ: 7月 2021

岡本俊弥先生著者インタビュー関連本

岡本俊弥氏の著作には、最新の知見を基にしたコアSF系の短編と、幻想色の濃いファンタジー系の短編がありますが、その境はシームレスに繋がっている感じです。 “新しい酒は新しい革袋に盛れ”とは、よく聞く警句の一つですが、岡本俊弥氏のSF系短編は、“新しい酒を古い革袋に盛る”ことで成功している珍しい例だと思います。SFは扱う題材が題材だけに、あまり懲りすぎると“宇宙人を抽象画で描く(©今岡清)”ことになるので、ひょっとしたらSFにおいては違う意味の警句になるかも。 そんな中でも、特にSFファンにお薦めなのは“機械の精神分析医”シリーズ。 主人公は、機械の故障解析を行う調査会社に属し、一般には”Behavior Analyst of Things:BAT”通称“機械の精神分析医”と呼ばれる。(以下BAT) 設定の解説としては、“「深層学習」はプログラムではない。仮想的なニューロ・ネットワークによるパターンマッチングが基本なのだ。数式を解いて答えを出しているわけではない。そういう機械の内部動作を、手続き型のプログラミング言語のようにデバッグすることはできない。機械がなぜそうしたのかを知るために、機械専門のアナリストが必要になる。”(以上引用) 以下、ネタバレのところは白いフォントにしていますので、未読の方は無理に見ようとしないで下さい(笑) また、これだけの内容とページ数がありながら、380円という価格はコスパ抜群だと思います。Kindleアンリミテッドの会員の方は無料で読めますし。 「岡本ワールド」、お薦めです。 『機械の精神分析医』岡本俊弥著 2019.7.7、スモール・ベア・プレス、Kindle版、380円 収録作: 「機械の精神分析医」BATシリーズ 無人軍用機が事故を起こし、事故の原因として、インテリジェント・ボルトが疑われる。極めて限られたセンサしか持たないIoTボルト内のストレージに、なぜか「酷薄な笑みを浮かべる金髪の少女」の画像が紛れ込んでいたのだ。 「機械か人か」BATシリーズ TOP500の一位である国産スパコン「垓」での創薬研究に従事する研究者から楳木に依頼が届く。「垓」内部からの、出所不明の救いを求めるメッセージが届いたというのだ。「垓」は、物理シミュレーションで感染症に有効な薬を瞬時に探すこともできる能力がある。 (この方法は、新コロナウィルスに合致したmRNAを製造する過程と同じだなあと思ったいたらインタビューでも言及されてます。以下ネタバレあり) 実はその「垓」と「量子コンピュータ」を結合させて兵士のスーパー脳を開発するプロジェクトでの出来事だったのだ。というわけで、題名の「機械か人か」は二重三重の意味を持ってくる。 「にせもの」BATシリーズ 人事部に、VR面談で採用予定の人間が、実在の人間ではないのではないかとの垂れ込みが寄せられた。(以下ネタバレあり) 電子的に生成された魅力的な人間のアバター(実在はしてない)の事案。機械知性なら、最も人間性を発揮する模倣ができ、年期を積んだ人間ほど簡単にだませる。なぜなら経験こそが機械学習のポイントだからだ。←なんとそうなのか! 「衝突」BATシリーズ AIによる自動運転のドローン同士の衝突事故の話。自動運転車に搭載されたAIが「トロッコ問題」をどう解くかというと、八島游舷先生の星新一賞受賞作「Final Anchors」もありますが、あちらが理知的な構成とエモーショナルな展開であるのに対して、こちらは、本質的でクールであると言えると思います。。 「シュムー」BATシリーズ 倒産寸前の企業を買い取り、AI導入により事務職員を極限まで減らし利益がでるようにすることによって収益を上げて大きくなった会社からの依頼。 「シュムー」とは、入力と応答とのマップを多層に積み上げていくと、三次元の図形 が見えるようになる、それをシュムーと呼ぶ。(以下ネタバレあり) 赤字になった会社の欠陥をそのまま引き継いだAI化された会社は、更なる劣化も凄いスピードで進むというのはなんか本当ぽく聞こえる。 「マカオ」 急なマカオへの出張命令。それが総ての発端だった。チケット料金の関係で弾丸ツアーとなったその出張は、マカオのカジノリゾート誘致のプロジェクト絡みであった。 「人事課長の死」 AIによる多方面からの人事評価、その結果は絶対だった。今まで肩を叩く側だった人事課長は、ある日解雇を告げられる。そうして次に就くべき職業はアクターだと告げられる。(以下ネタバレあり)アクターといっても、AIが書く小説の肉付けに使われる経験・記憶を提供する役回なのです。 「ノンバルとの会話」 ノンバルは、道路標識を思わせる形をした会話を主体とするコミュニケータの一つ。収集した仕草や顔の表情・声から相手の感情の動きを読み取り、相手に最も適した声質と適切な相づちによって、人の情動を操ることが出来る。そのノンバルが引き起こした思いもかけない災厄を描く。 「摩天楼2.0」 旧来の友人から、自宅に招待したいと連絡が届く。そこは摩天楼と呼ばれる神戸にある高さ2.5kmにも及ぶ超高層建築の中だった。 「ビブリオグラフィ」 … 続きを読む

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『眉村卓の異世界通信』関連本

『眉村卓の異世界通信』「眉村卓の異世界通信」刊行委員会編集 2021/6/30、オンデマンド版、1980円 ●第一章 父のこと 眉村先生(藤野恵美)/そして。眉村さん追悼(谷甲州)/ 眉村さんのこと(円城塔)/ その果てを知らずについて(小林龍之)/父のこと(村上知子) ●第二章 眉村さんのこと 秋 あきら/芦辺拓/綾崎隼/石黒みなみ/石坪光司/上田早夕里/江坂遊/大熊宏俊/岡本俊弥/川端由香里/木下昭南/木下充矢/上坂京子/児島冬樹/小浜徹也/小林まゆみ/斎藤晋/佐倉希望/椎原豊/雫石鉄也/芝崎美世子/清水杏奈/菅浩江/瀬戸みゆう/妹尾良子/高井信/髙鍋學/竹本健治/田中和子/田中哲弥/CHARLIE/中西秀彦/中野和代/橋元淳一郎/浜田美鈴/林譲治/柊たんぽぽ/緋色比加ル/東野尚子/深田亨/福田和代/藤本あずさ/牧野修/まこと/まつもと みか/真弓創/深山 孝/森香奈/森岡浩之/盛田千里/山崎好志子/山本由樹/山根啓史/渡邊純代/和田宜久 (眉村卓にちなんで寄せられた文集、著者名五〇音順に掲載) ●第三章 SF作家・眉村卓の六十年 SF作家・眉村卓の六十年(山岸真)/ 詩とは何かと問われたら(山田兼士)/眉村卓の初期詩篇について(服部誕)/ 眉村卓さんのこと(祝井堅太郎)/日生を訪ねて――峠からヨータイ日生工場へ――(堀晃)/澤田郁子さんに聞く コピーライター時代の眉村卓さん/対談 眉村さんの光輪(田中啓文×北野勇作)/ インタビュー村上知子さんに聞く ●第四章 夢まかせ 夢まかせ(単行本未収録短編全文掲載)/卓通信 全10回全文掲載 ●第五章 眉村卓著作リスト 眉村卓著作リスト・眉村卓著作リスト解題(岡本俊弥)/眉村卓映像化・ラジオ化作品リスト(石坪光司) 眉村卓さんの葬儀会場には、久しぶりに顔を合わせるグループが幾つか出来上がりました。誰からともなく、いつか「偲ぶ会」を開きたいという空気が生まれたのもこの時です。 しかし、年が明けてからの新コロナ禍で、一周忌での開催は見送らざるを得ません。今年になっても終息の気配はなく、三回忌に併せての開催も難しい情勢です。リアルな世界で眉村ファンが語り合うイベントは不可能な時代になったのかもしれません。 ひそかに結成されていた「眉村さんを偲ぶ会」実行委員会(仮)は「眉村卓の異世界通信」刊行委員会と改称し、当面の活動目標を記念誌の発行に切り替えました。 異世界通信とは、長年眉村さんが続けた異世界との交信記録であり、異世界にいる眉村さんへのファンからの送信でもあります。多くの方に賛同いただき本書が刊行できました。(本書のまえがきより抜粋) 『チャチャヤング・ショートショート・マガジン9 追悼・眉村卓先生』 小野霧宥/和田宜久/柊たんぽぽ/雫石鉄也/岡本俊弥/野波恒夫/深田亨/大熊宏俊/南山鳥27/ミラディス・ジョアン (著) 2020/2/10、チャチャヤング・ショートショートの会、Kindle版、99円 70年代初頭、関西地区で放送された深夜ラジオ番組「MBSチャチャヤング」、その木曜日担当パーソナリティが、当時36歳新進気鋭のSF作家であった眉村卓さんでした。 パーソナリティがそんな方でしたから、自然発生的に「ショートショートコーナー」が生まれ、 … 続きを読む

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町井登志夫先生著者インタビュー関連書籍

#mce_temp_url# 『量子少女(クォーク・ガール)1』町井登志夫著、Dick Thomas Johnson写真 2017/11/7、アドレナライズ、kindle版、770円 藤川コスモ。うちの高校でトップクラスの美少女だ。彼女に関してはいくつも都市伝説が生まれていた。中でも極めつきなのが、別名“量子少女”。彼女は「観察不可能」だという。クラスメイトだったはずが、なぜか次の日には隣のクラスにいる。ただ、そんな気がするだけで、誰も不思議には思わない。なぜなら、世界が変わると同時に、みんなの記憶も入れ替わってしまうのだから。だけどある日、ぼくは気づいてしまった。コスモが変えた世界を“縫う”ことで修復している少女・斉藤真綾に出会ったことがきっかけだった。 『量子少女(クォーク・ガール)2』町井登志夫著、Dick Thomas Johnson写真 2019/11/1、アドレナライズ、kindle版、770円 藤川コスモ。彼女は右手を振るだけで世界を変える。今まであったものはなかったことになり、今までなかったものがこの世に突然出現する。それが彼女の生まれついての特殊能力だ。不審な男たちが学校の周りをうろつくようになった翌日、突然、コスモと連絡が取れなくなってしまった。時空の歪みを修復できる斉藤真綾と、量子の波の影響を受けない犬飼研の二人は、コスモの行方を案じて捜索を開始。しかし彼女は、極秘の国家プロジェクトに協力するため、岩手県にある地下研究施設に保護されていた。 『電波次元の巫女』町井登志夫著、稲荷茶緒デザイン 2017/9/5、アドレナライズ、kindle版、770円 大平淳一は地味で平凡、クラスの中でもまったく目立たない高校生。念願のスマホを手に入れたものの、友達がいないので誰からの着信もない。それどころか、彼のスマホにだけ異変が起き始めた。原因がわからず混乱していると、芸能界でも活躍する学校一の美少女・純夏(みか)が声をかけてきた。彼女に半ば強引につれられてやってきたのは特殊な病院。ベッドの上には、事故で寝たきり状態となり、生命維持装置や様々な電子機器に繋がれた一人の少女・深秋(みあ)。彼女は警告した、「あなたのスマートフォンの中に“何か”がいます」そして彼女こそ、世界を覆う“異変”に気づいた最初の人間だった…。 『生き髪』町井登志夫著、Petras Gagilas写真 2018/2/1、アドレナライズ、kindle版、770円 気は強いがその美しさゆえに街中の視線を集める女・リエ。彼女を巡って、巨躯の筋肉男・中島、天才的な格闘センスを持つ優男・浦浜は、台風が吹き荒れる海岸で拳をまじえる。だがその頃、三人が通う“瀬島大学”では異変が起きていた。頭に茶髪を突っ立てた講師や学生が現れ、ふらふらと歩き回っている。変なカツラでも被っているのか、とバカにする周囲の者たち。だが、彼らは後悔することになる。その茶髪は、次々と人間たちを襲い始めたのだ…! 『スキール・クィーン』町井登志夫著、Robert Moran,Yupeng Wu写真 2018/3/26、アドレナライズ、495円 伊月亜希子はごく平凡な女子大生。軽自動車であるスズキのKeiが愛車である。ある夜、咄嗟に繰り出した慣性ドリフトで、親友ユリを襲った人身事故を未然に防いだ。その瞬間を目撃した「キラー・クィーン」のリーダー、鷺島麗に声をかけられる。「私たちと“バトル”をしなさい。負けたら言うことを聞いて」……なんと彼女たちは、走り屋の間ではカリスマ的な人気を誇る日本屈指のレースチームだった! デパートの立体駐車場で、愛知県警前で、長久手の峠道で、熱い「バトル」が始まった。ユリの恋人和宏が所属する走り屋チーム「名古屋式」と「キラー・クィーン」の抗争に巻き込まれた形になってしまった亜希子。だが、嫌々ながらもハンドルを握る彼女のドライビングテクニックは、本物だった! 『ミューズ叢書<4>SF往復書簡』町井登志夫・上田早夕里共著 2018.2.10、オフィス・トリプルツー、Kindle版、440円 作家同士が行ったメール対談の記録。今回は町井登志夫と上田早夕里。ふたりとも小松左京賞出身で、小松左京賞の話や創作論、SF・映画・漫画の話など。後半には『電波次元の巫女』『量子少女』『破滅の王』などの執筆にまつわる対談もあり。 町井登志夫著、レイチェル・西,丸山真理絵 小学館電子書籍、各巻220円、honto電子書籍 書影は、19~30巻。 《婚活!フィリピーナ》の前回のインタビューはこちら

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