BL系『青の軌跡(上・下)』久能千明著

『青の軌跡』上巻書影『青の軌跡』下巻書影


新惑星Σ‐23を目指す惑星探査船のクルーとなった傭兵あがりの三四郎は、当直のその日、コールドスリープから目覚める。長い歳月を要するこの航海は、コ ンピュータにより精神面はもちろん身体の相性も最高と判断された武官と文官の組み合わせ“バディ”達によって運行される。しかし、三四郎の相手として現れ た人物は、万華鏡の瞳をもつ月生まれの美しい男カイだったのだ。驚きも束の間、二人を乗せた船が、突然軌道を外れ始め―。

かなりSF的な設定も作り込んであるBL作品。カイは、他の人間の感情的反応や肉体的反応を自分のものとして感じ、同時に自分の感情や肉体で感じ取った感覚を相手に伝えることができる能力の持ち主。精神的肉体的LOVEが二倍になってしまうという。ちょっとアナクロだけど謎解き要素もあって、SF的な設定や謎解き総てがBLを描くために存在しているという凄い作品です。SF読者のためのBL入門書としては好適かも(笑)

孫に読ませたい(笑)その2『どろんころんど』

北野勇作先生には、我が「アニマ・ソラリス」で何回かインタビューをさせて頂いてるし、著作は全部読ませて頂いてるのですが、この本を読んで、初めて北野ワールドと童話の相性の良さに気がつきました。『どろんころんど』書影

アンドロイドの少女アリスが長い休止状態からから目覚めると、そこには地平線の彼方まで広がる泥の海があり、あれだけ大勢いたはずのヒトは姿を消していた。アリスの「仕事」は人間相手に商品説明をすること。その「仕事」を全うするため、商品である亀型子守りロボット、レプリカメの万年1号をお供に、いなくなったヒトを探して、アリスはどろんこの世界に旅だった。

「21世紀、SF評論」の記念すべき第1回目に取り上げられたのがこの本です。 的確な評論・評価は、「21世紀、SF評論」にゆずるとして、『どろんころんど』の魅力は、やはり娘を思う親心かな。一家に一台レプリカメ!欲しいですよね。2011年版「SFが読みたい!」国内編で第二位に選ばれたのもむべなるかな(^o^)/

北野さんの作品では、登場人物たちがかなりのほほんとしていて(笑)、自分が本物の人間どうかとか、ほとんど気にしない。アイデンティティの問題は、SFでは主要なテーマとなるくらい重要な問題なのですが、この視点のずれさ加減そのものが、北野さんの作品をSFたらしめていた根底だと思うのですね。それが、「21世紀、SF評論」に書かれている通り、カメの万年1号=娘を守る父親の視点から書かれたことによって、少し変わってきてはいるのですが、わけわかんないけど面白い北野勇作ワールドは、ますます絶好調ですねヽ(^o^)丿

孫に読ませたい(笑)その1『「希望」という名の船にのって』

 最初なので、なぜ孫なのかを。それは、三人の息子たちをSFファンにするのを失敗したから(汗;) 発端は、息子たちと同じSFを読んで、感想を言い合えたらSF者としての冥利に尽きると思っていたわけですが、SFを読まない大人になってしまって。 ラノベ、アニメ、SF映画、ゲームはやるんですが…… で、孫が出来たのでその失敗を取り戻すべく計画を立てているわけです(笑)

『「希望」という名の船にのって』

『「希望」という名の船にのって』森下一仁著、きたむらさとし画
’10/7月刊、ゴブリン書房、1500円

粗筋:20XX年、地球に正体不明の病原体が広まり、人類は絶滅の危機におちいっていた。病原体から逃れて、いつ果てるともない新しい地球を求める旅に出発した41名の人々がいた。12歳のヒロシは、地球のことを知らない「船生まれ」の子供。ある日、人間しか居ないと思われていた船内に、他の動物が居ると聞いたときからヒロシを取り巻く世界は大きく変わり始めた……。

 ヒロシと子ども達が理詰めで船内の矛盾を解きほぐしていく課程が良いですねぇ。こんな息子が欲しかった(笑)オールドSFファンなら真っ先に、世代型宇宙船の世界を描いたハインラインの『宇宙の孤児』を思い出すことでしょう。対象年齢は、たぶん小学校高学年。待ち遠しいことよ(笑) 

 「アニマ・ソラリス」の著者インタビューの時に読ませて頂いた片理誠さんの『終末の海』も、同じく理系の子供が活躍するジュヴナイル小説で、こちらもお薦めできます。

http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/101001.shtml