音楽もの」カテゴリーアーカイブ

『犬王』『BLUE GIANT』『白鍵と黒鍵の間に』

『犬王』2022年5月公開、湯浅政明監督作品
原作『平家物語 犬王の巻』古川日出男著
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
 三代将軍足利義満の室町時代初期。京の都の猿楽の一座に生まれた子、犬王はその異形の姿から周囲に疎まれ、顔を瓢箪の面によって隠されて育つ。忌み嫌われる犬王は、芸の修業からは外されていたが、自ら舞や唄を身に付け、その才能は兄たちを上回っていた。
 一方、壇ノ浦に生まれた漁師の息子・友魚(ともな)の父の元に京から侍が訪れ、海に沈んだ天叢雲剣を引き揚げるよう依頼する。友魚は引き揚げ作業に同行するが、鞘から剣が引き抜かれたその瞬間、父は剣の呪いを受けて体が真っ二つに裂け、友魚も盲目となった。
 成長して琵琶法師となった友魚は、平家の隠れ里へ赴いてまだ語られていない物語を知り、新たな平曲を産み出すという夢を抱くようになっていた。
ある夜犬王は、盲目のため彼の異形に気づかない友魚と出会い、舞と演奏を共演した二人は意気投合する。奇抜な二人の演舞と演奏は京の人々から絶大な人気を集める。犬王が新しい舞を演じるごとに、体の異形の部分は一つずつ通常の人体へと変じていった←「百鬼丸」か!(笑)
 アニメの作画とそれにマッチした音楽が魅力的な音楽ファンタジー。古川日出男さんが原作と言うことで、SFファンにもお薦めヽ(^o^)丿

『BLUE GIANT』2023年2月公開、立川譲監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
原作は隔週刊の『ビッグコミック』誌にて連載中。単行本ではなく、連載を読んでます。現在(2024.09)は、ニューヨークのハーレムにある新しい住処にバンドメンバーと共に引っ越したところ。ハーレムの家賃といっても彼らには大金で、食うにも困る有様(笑)さて、どうやって這い上がるか!
 と書いて放っておいたら10月では有名名ジャズコンテストで優勝し、CDを出すという話が進行してます(汗;)
 マンガはともかく、音楽映画となると、実際に観客に音楽を聞かせないとならないわけで、そこにどうやって説得力を持たせるかが勝負所ですね。マンガで表現されたジャズの素晴らしさが、映画でも実現できているかどうかは私にはわかりませんが(汗;)
 仙台市の高校生・宮本大は、ある日聴いたジャズの曲に心を動かされ、サックスプレーヤーを目指すことを決意。そこから仙台→東京→ヨーロッパ→アメリカと活動の場を求めて旅立つ。

『白鍵と黒鍵の間に』2023年10月公開、冨永昌敬監督作品
原作:南博『白鍵と黒鍵の間に-ジャズピアニスト・エレジー銀座編-』
昭和末期の夜の銀座。場末のキャバレーで演奏していたジャズピアニスト志望の男性に、謎の男が曲のリクエストをする。それは、界隈を牛耳る会長だけがリクエストできる曲(ゴッドファーザーのテーマ曲)だった。

『羊と鋼の森』『サウンド・オブ・メタル ?聞こえるということ?』『バジーノイズ』『きみの色』

☆彡音楽SFが好きで、その影響かどうか、音楽物や芸術系の映画が好きです。
 小説はともかく、映画では主題となる音楽を観客に聞かせて、納得させなければ話にならないので、そこらあたりの難しさがあります。

音楽SFの有名どころ―もはや古典?(笑)―としては……
☆山之口洋『オルガニスト』第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。オルガンサイボーグものか(笑)
☆中井 紀夫『山の上の交響楽』全宇宙でたった一度だけ1万年かけて演奏する曲の話。
☆篠田節子『ハルモニア』他人との意思疎通が出来ない超絶技巧のチェロ奏者と、彼女の才能を更に開花させようとする男の物語。
☆オースン・スコット・カード『無伴奏ソナタ』音楽の才能を見込まれいっさいの人工的な音や音楽から遮断されて育った少年のたどった運命とは……
☆トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』歌をうたうことによって肉体から精神を解き放つこと、それが〈飛翔〉だ。魂が飛ぶことへの魅力にとりつかれた少年は、オペラ劇場で歌手を目指すことになるのだが……
☆キム スタンリー ロビンスン『永遠なる天空の調』天才物理学が建造した巨大な音楽機械、それは究極の音楽を演奏するための物だった。全人類の熱狂の中、太陽系縦断ツアーが始まる……
☆スパイダー&ジーン・ロビンソン『スターダンス』重力から解放された究極のダンス、スターダンス。伝説のダンサー、シャーラの成功と死が描かれる。それは地球外知的生命体とのコミュニケーションにも使われることになるが……

『羊と鋼の森』2018年6月公開、橋本光二郎監督作品
原作:宮下奈都『羊と鋼の森』
独断と偏見のお薦め度☆☆☆1/2
自分の将来に悩む外村は、高校でピアノ調律師・板鳥と出会い、彼が調律した音に生まれ故郷と同じ森の匂いを感じて調律の世界に魅せられる。そしてピアニストの姉妹・和音と由仁との出会いが、悩む外村の人生を変えることに。
ピアノの調律師というと、『ピアノの森 -The perfect world of KAI-』の作者一色まことさんが連載中の『もうひとつのピアノの森 整う音』を読んでます。ショパンコンクールのファイナリストの青年が、、『ピアノの森』主人公のイチノセ・カイに再会することを目指し、調律師として研鑽する話です。

『サウンド・オブ・メタル ?聞こえるということ?』2021年10月公開、ダリウス・マーダー監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆1/2
 メタルバンドのドラマーのルーベン・ストーンは、恋人のルーと一緒のバンドで音楽活動していた。ある日、耳が聞こえにくくなっていることに気がついたルーベン。両耳の聴力が極端に低下しており、いつ聴力を失ってもおかしくない状態だと判明。急速に悪化していく病状に絶望して自暴自棄になるルーベンは、聴覚障害者の自助グループに参加して、その交流を通して徐々に生きる希望を見出していくが……
 ジョン・ヴァーリイの「残像」(1978)という有名なSF短編があります―これも古典かな(汗;)―
 ユニークな盲聾者のコミューンに参加することになった主人公が、色々な葛藤と軋轢の末に選んだ道は……
という作品なのですが、そのラストから、甘いとか後ろ向きだとか揶揄されることもありましたが、個人的には大好きな作品でした。
 『サウンド・オブ・メタル』の主人公も最新治療機器をインプラントして、ある程度の聴覚を取り戻せたのですが、音の聞こえ方に違和感を感じます。しかし元の聴覚障害者のグループからは生き方が相違するとの理由から再入会を拒絶されてしまいます。そこらあたりの展開・生き方が「残像」と似ているように思いました。

『バジーノイズ』2024年5月公開、風間太樹監督作品
原作:むつき潤のマンガ『バジーノイズ』
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
人付き合いが大の苦手でな清澄は、神戸のマンションの管理人として働きながら、たった一人で音楽をパソコンで作ること (DTM)に熱中していた。ある日、清澄は「夜に大きな音を出すな。今度苦情が来たら出て行ってもらう」と管理会社から宣告されてしまう。しかし、マンションの上の階に住む女性から、清澄の音楽に励まされた聞き、また作曲した曲を流してしまう。
 最初は、その女の子が配信する演奏の実況のみで世に知られていた彼の音楽だったが、昔清澄が参加していたバンドのギタリストや、そのマネージャーとかが絡み、清澄の音楽が世間に知られていくが……

『きみの色』2024年8月公開、山田尚子監督作品(アニメ)
独断と偏見のお薦め度☆☆☆1/2
 小さい頃にクラシックバレーを習っていたことのある日暮トツ子は、キリスト教系女子高校の3年生だ。彼女は、会う人固有の「色」が見えるという特殊な感覚を持っていて、周りからは少し浮いた存在だった。
 トツ子は同学年の作永きみのことが気になっていたが、彼女はいつの間にか学校を退学していた。噂をもとに、トツ子は市内の本屋を探し回り、ある古書店できみと再会する。そしてそこで、男子高校生の影平ルイと知り合い、三人はバンドを組むことに。
 ルイは、テルミンという楽器を演奏することが出来るのですが、これは電子楽器で、ずいぶん前から知られていて、私が小学生の頃には既にありました。楽器についたアンテナに人間が近づくと変化する静電容量を利用して音階を奏でる電子楽器なのですが、昔の「無線と実験」か「ラジオ技術」誌あたりに製作記事が載ってました(1960年代)
 当時は、まだステレオ装置とかは一般的ではなくて、鉱石ラジオの製作とか、雨だれ音発生器(睡眠導入用)とかの記事も載ってました。雨だれ音発生器やゲルマニウムラジオ(クリスタルイヤホンで聴く、電池の要らないラジオ)とか造った記憶があります。この頃、家にあったスーパーへテロダイン式の真空管ラジオを分解しましたねぇ(汗;)

2025年5月31日