著者インタビュー関連書籍」カテゴリーアーカイブ

林譲治先生著者インタビュー関連本その1

《工作艦明石の孤独》シリーズ
ワープ航法の開発により、 60ほどの植民星系に広がった人類。そのひとつ辺境のセラエノ星系で突如地球圏とのワープが不能となる。星系政府首相のアーシマ・ジャライは、工作艦明石の狼群涼狐艦長に事態の究明を命じる。 一方、セラエノ星系に取り残された地球宇宙軍の偵察戦艦青鳳、 輸送艦津軽もまた、 それぞれの思惑で動き始める。30光年の虚空で孤立するセラエノ星系150万市民の運命は? 究極のミリタリー文明論SF開幕


工作艦明石の孤独1『工作艦明石の孤独 1』林譲治著、Rey.Hori装画
2022.7.20、ハヤカワ文庫JA、946円、Kindle版851円(税込み)
植民星系のひとつ、辺境のセラエノ星系で突如地球圏とのワープが不能となる。星系政府首相は、工作艦明石の狼群涼狐艦長に事態の究明を命じる。30光年の虚空で孤立するセラエノ星系150万市民の運命は?


工作艦明石の孤独2『工作艦明石の孤独 2』林譲治著、Rey.Hori装画
2022.10.18、ハヤカワ文庫JA、1012円、Kindle版1000円(税込み)
地球圏とのワープが不能となった辺境のセラエノ星系で、150万市民の文明を維持するため、首相が大胆な政策を断行。一方、隣接星系アイレムで、工作艦明石の椎名ラパーナは、知性体イビスとのファーストコンタクトを始めた。


工作艦明石の孤独 3『工作艦明石の孤独 3』林譲治著、Rey.Hori装画
2023.1.24、ハヤカワ文庫JA、1078円、Kindle版1000円(税込み)
アイレム星系・惑星バスラの軌道上に構築されたアイレムステーション。西園寺恭介らは、消息を絶った椎名ラパーナの手がかりを得るため、異種知性イビスの地下都市を探ろうとしていた。そんなとき椎名からの通信電波が届く。
一方、工作艦明石の狼群妖虎と松下紗理奈は、地球圏とのワープ不能の原因を探るため、無人探査機E1によるワープ航路探査実験を開始する……


工作艦明石の孤独4『工作艦明石の孤独 4』林譲治著、Rey.Hori装画
2023.4.25、ハヤカワ文庫JA、1100円、Kindle版1045円(税込み)
徐々に明らかになるワープ航法の真実。工作艦明石は地球圏へ航行できるのか? そしてセラエノ星系人類の運命は? シリーズ完結


『コスタ・コンコルディア 工作艦明石の孤独・外伝』書影

コスタ・コンコルディア 工作艦明石の孤独・外伝


『コスタ・コンコルディア 工作艦明石の孤独・外伝』林譲治著、Rey.Hori装画
2023.8.17、ハヤカワ文庫JA、1188円、Kindle版1129円(税込み)
 150年前に植民されたドルドラ星系の惑星シドンには、人間のような知的生命体ビチマが居た。入植者から家畜同然の扱いを受けたビチマが、実は3000年前のワープ事故により遭難した恒星間宇宙船コスタ・コンコルディアの乗員の末裔と判明。彼らの人権回復が図られる中、ある遺跡でビチマの惨殺死体が発見される。緊迫するシドン社会に対し、地球圏統合弁務官事務所より調停官のテクン・ウマンが派遣されるが……


【関連リンク】
「SFPWのPixiv版創刊によせて」林譲治
今からでも読める林譲治のミリタリーSF《星系出雲の兵站》シリーズ
早川書房特設サイト
星雲賞受賞コメント
第41回日本SF大賞 受賞のことば
『星系出雲の兵站』シリーズ完結記念トークイベント (林譲治×Rey.Hori×塩澤快浩×福田和代)(デジタル・ケイブ1月イベント。ただし視聴出来るのは会員のみ)
https://youtu.be/KRXknqn6Izk
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》著者解題1 林譲治
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》著者解題2 林譲治
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》特別編 キャラクター名の背景について 林譲治
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》イラストアンサー1 Rey.Hori
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》イラストアンサー2 Rey.Hori
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》特別編 支援者特別記事 『星系出雲の兵站』で作者の考えた図表とは2 林譲治(支援者のみ購読可能)
日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》シリーズ解説 増田まもる
牧眞二先生の書評:異質な敵の全容、失われた文明の謎、そして秘匿された人類史


《工作艦明石の孤独》単語別頻度表(Kindleの検索機能使用。どうも仕様で、上限が249のような気がしますね。)
工作艦明石の孤独1 工作艦明石の孤独2 工作艦明石の孤独3 工作艦明石の孤独4
地球 249      椎名 249     椎名  249    イビス  249
セラエノ 249    イビス 249    イビス 249    ガロウ  213
明石 182      ガロウ 217    妖虎  178    セラエノ 196
津軽 175      ギラン・ビー 171  西園寺 160   地球   131
青凰 172      セラエノ 154  ギラン・ビー 159  西園寺  108
松下 132      西園寺 148    ガロウ 138    椎名   108
西園寺 127     地球 110     セラエノ 134   松下   104
妖虎 125    アーシマ 85   地球 92 アイレム・ステーション 102
ギラン・ビー 88  ザリフ 49     E2  86     明石   78
涼狐 85      松下 47      明石  78     妖虎   72
イビス 60      涼狐 29     バスラ 73
椎名 49      セルマ 28    アーシマ 63
妖虎 24     松下  55


装画担当【Rei.Hori/堀】先生ウェブサイト「WORKSPHERE」
Twitter:Rei.Hori(@reyhori)


ティール組織『[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル』フレデリック・ラルー 著、2018.11.27、技術評論社、Kindle版2696円
【目次】
Part 0 イントロダクション――この本はいわゆるマネジメントの本ではありません
Part 1 私たちは,マネジメントについて新しいパラダイムを創り出すことができるでしょうか?
第1章 今日の組織はどこかが壊れている
Part2 それでは,この新しいティール組織はどのようにしたらうまく働くのでしょうか?
第2章 新しいものの意味を理解するために,ある物語から始めましょう
第3章 ブレークスルー1――セルフマネジメント
第4章 ブレークスルー2――「全体性」を取り戻すための闘い
第5章 ブレークスルー3――常に進化する目的
Part3 どうやったら新しい組織の世界にたどり着けるのでしょうか?
第6章 ティール組織を作るための条件
第7章 「CEO」の役割

平谷美樹先生著者インタビュー関連書

《貸し物屋お庸謎解き帖》『貸し物屋お庸謎解き帖 百鬼夜行の宵』平谷美樹著、丹地陽子イラスト
2022.12.15、だいわ文庫、858円、Kindle版858円(書影はKindle版)
「凧、凧揚がれ」“凧の骨を貸してくれ”とやって来た童が心に秘めた願いとは? 
「貸家と散り桜」貸家の仲介を頼まれたが“縁起がいい”はずの仕舞屋に居たのは?
「百鬼夜行の宵」坊主の着物を借りに来た二人組、生兵法は怪我のもととはよく言ったもので
「貸し物卒塔婆」大店の跡取り息子で評判の悪い三人組。卒塔婆を十枚借りに来た理由は?
「信輔と十人」安布団を十組借りたいとやってきた元女衒。お庸の立てた景迹は?
「雪と綿帽子」因縁のある陸奥国神坂家の江戸家老橘が、用人の花嫁衣装を借りたいとやってくる。しかも、背格好が同じだから、お庸に届けて欲しいという怪しい依頼だ。
 お客が求める貸し物の陰に隠れた悩みや事情を見抜いて収めるお庸の景迹(謎捌き)が痛快な、大人気書下ろし時代小説シリーズ


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『渡裸の渡し』平谷美樹著、本田淳装画
2021.4.16、小学館、Kindle版220円
十歳ほどの娘にすぎないむつは、人間を超える力を持つ八百比丘尼になる運命。精神は子供のままであるむつを修行させようと、峻岳坊高星と百夜は津軽への旅に出る。が、むつの持つ力が様々な怪異と霊気を呼び寄せてしまう。千住大橋界隈にさしかかった一行は、さっそく加持祈祷を頼まれることに。


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『九つの目の老人』平谷美樹著、本田淳装画
2021.6.18、小学館、Kindle版220円
神に近いものになろうとしている少女、むつを修行させるため、津軽への旅に出た百夜一行。宇都宮の宿に現れたのは、目のない顔を持つ白髭の老人と九つの光の玉。その正体がわからぬ百夜は、いつになく苛立っている。


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『聖の思惑』平谷美樹著、本田淳装画
2021.12.17、小学館、Kindle版220円
神になろうとしている少女・むつは、旅先で出羽国に行きたいと突然言い出した。その夜、百夜とむつは師匠の峻岳坊高星も気づかぬ間に攫われてしまう。二人は黄泉の世界に踏み込み、次々と異形のモノたちに襲われる。果たしてこの恐るべき力をふるうものは何者なのか。


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『宿坊の夜』平谷美樹著、本田淳装画
2022.4.15、小学館、Kindle版220円
むつの願いで早池峰山詣でに向かった百夜の一行は、雪の夜に麓の主のいない宿坊に泊まることに。
ただならぬ気配を感じながら宿坊に入ると、そこには3人の先客がいた。旅の女のしめ、行商人の為造は怪異が起きていると訴えるのだが、若い僧侶の法稔は頑なにそれを否定する。


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『むつとの別れ(上) 八卦置き』平谷美樹著、本田淳装画
2022.6.17、小学館、Kindle版220円
だんだんと神に近づいていくむつを連れて、百夜の一行は八戸藩に入った。そこで未来の出来事を確実に当てて、米問屋や材木商に大儲けさせている占い師の噂を聞く。謎の素性の八卦占い師を招き寄せたむつに、山崎と名乗るその男は摩訶不思議な話を語り始めた


《百夜・百鬼夜行帖シリーズ》『むつとの別れ(下) 宇曾利山(うそりやま)』平谷美樹著、本田淳装画
2022.12.16、小学館、Kindle版220円
恐山の麓までやってきた百夜一行。いよいよ旅も終局、別れの時は近い。日も陰り、降りしきる雪の中、百夜と当来軒は、むつの導くままに山頂の宇曾利湖を目指し、山道を登り始める。しかし、その後を追う怪しい人影が……


『図解!江戸時代―意外と住みたい?この町と、この時代!』「歴史ミステリー倶楽部」著、図版・DTP/ハッシィ
2015.10.20、三笠書房、649円、Kindle版617円
 江戸時代の複雑な貨幣制度や暦・時刻、不思議なしきたりや多様な刑罰など、時代劇などでお馴染みのこの時代。しかし誤解や間違いも含めて、実際のところは知らないことだらけ!江戸の開発から幕府の統治、武士や庶民の暮らしぶりに至るまで、江戸の町と江戸時代に関する「基本としくみ」を、徹底図解でわかりやすく解説。

松崎有理先生著者インタビュー関連書

シュレーディンガーの少女『シュレーディンガーの少女』松崎有理著、佐藤おどり装画
2022.12.9、創元SF文庫、946円、Kindle版851円(税込)
【収録作】「六十五歳デス」すべての65歳に例外なく、プログラムされた死が訪れる世界。
「太っていたらだめですか?」肥満者たちをテレビスタジオに集め、公開デスゲームを開催する健康至上主義社会。
「異世界数学」あらゆる数学を市民に禁じ、違反者を捕らえては刑に処している王国。
「秋刀魚、苦いかしょっぱいか」日々の食卓から、秋刀魚が消え失せてしまった未来
「ペンローズの少女」少年が流れ着いたのは有名な生け贄儀式が残る島だった
「シュレーディンガーの少女」友人の物理学者から謎の実験に参加することを頼まれた……
 様々なディストピア世界でたくましく生きのびる女性たちを描いた、コミカルでちょっぴりダークな短編集。


松崎先生謹製販促カード『シュレーディンガーの少女』に挟んであった、松崎先生謹製「販促カード」


ユリイカ今井哲也特集『ユリイカ2022年11月号』
特集=今井哲也??『ハックス!』『ぼくらのよあけ』『アリスと蔵六』…マンガを夢みる
2022.10.27、青土社、1980円、Kindle版1980円
青土社の『ユリイカ2022年11月号』の紹介頁
?ロングインタビュー
?今井哲也との遭遇
?今井哲也の読みかた
?オマージュイラストギャラリー
?再録「三丁目クオンタム団地」「スペースおくのほそ道」今井哲也著
?オマージュ短篇「不屈の蛙は青い海をみるか」松崎有理著
?描くことの自由とともに「今井哲也主要作品解題」


ゾンビでわかる神経科学『ゾンビでわかる神経科学』ティモシー・ヴァースタイネン、ブラッドリー・ヴォイテック、鬼澤忍共著
2017.2.10、太田出版、2200円、Kindle版1760円
【ゾンビ症候群の診断書】
病名:意識欠陥活動低下障害(Consciousness Decit Hypoactivity Disorder/CDHD)
症状:CDHDは後天性の症候群で、患者は活動を意図的に制御できず、無気力で疲れきったような動きを見せたり(運動感覚消失)、喜びの感覚を失ったり(快感消失)、全般的な言語機能障害(失語症)や記憶障害(健忘症)に陥り、摂食などの欲求行動や攻撃的「闘争・逃走」行動を抑えられなくなる。患者はしばしば、見慣れた物や人を認識するのが著しく困難になり(失認症)、持続性睡眠障害が慢性的不眠症という形で表れた結果、やがて「覚醒せん妄」状態にいたる。患者はまた、反社会的行動パターン(人をかんだり食べたりしようとする)も見せ、そうした典型的暴力行為の標的は生身の人間のみに限られる。いっぽう、ほかの感染者に対しては非常に強い向社会的な行動が表れる。その証拠に、感染者は群れ、「群知能」を発揮する。”


ゾンビvs数学『ゾンビ 対 数学 ―数学なしでは生き残れない』コリン・アダムズ著、小谷太郎訳、岡村亮太イラスト
2018.7.31、技術評論社、2398円、Kindle版2278円
第1章 6時間後 - 生ける屍の授業開始
第2章 7時間後 - 生ける屍の鼠算
第3章 7時間30分後 - 生ける屍のニュートン力学
第4章 7時間45分後 - 生ける屍の速度ベクトル
第5章 8時間後 - 生ける屍の輪舞曲(ロンド)
第6章 9時間後 - 生ける屍の包囲網
第7章 10時間後 - 生ける屍の脳内革命
第8章 18時間後 - 生ける屍の冷たい方程式
第9章 24時間後 - 生ける屍の大団円
付録A 詳細な議論
付録B エリーとコナーの微積分入門

石川宗生先生関連本

半分世界『半分世界』石川宗生著、千海博美装画
2018.1.26、創元日本SF叢書、1900円
収録作:「吉田同名」第七回創元SF短編賞受賞作
 ある日突然、19,329人に増殖した吉田大輔氏の奇想天外な物語。長男の親友に吉田大恭(読みは同じ)君がいて、月一で我が家を訪れるのだけれども、面白がってました(笑)
「半分世界」
 突然縦に半分となり、世間の目にさらされることとなった家族と、それを観察(ストーカーとも言える)する人々を描いた表題作
「白黒ダービー小史」
 全住民が、白と黒のサッカーチームに分かれ、街をフィールドに延々と試合を続ける物語。
「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」
 999本のルートのバスが止まるという停留所。いっこうに来ないバスを待ちわびる乗客達の狂想曲(?)(笑)


「石川宗生さん『半分世界』刊行記念・飛浩隆先生によるインタビュウ!」Web東京創元社マガジン


ホテル・アルカディア『ホテル・アルカディア』石川宗生著、川名潤装幀
2020.3.30、集英社、2000円
第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作
【目次】
1.[愛のアトラス]
「タイピスト〈1〉」「代理戦争」「すべてはダニエラとファックするために」「愛のテスト」「本の挿絵」「アンジェリカの園」
2.[性のアトラス]
「測りたがり」「転校生・女神」「わた師」「ゾンビのすすめ」「No.121393」
3.[死生のアトラス]
「光り輝く人」「饗宴」「恥辱」「100万の騎士」
4.[文化のアトラス]
「激流」「A#」「糸学」
5.[都市のアトラス]
「チママンダの街」「機械仕掛けのエウリピデス」
6.[時のアトラス]
「時の暴君」
7.[世界のアトラス]
[アトラス・プルデンシア]
 藤井太洋先生との対談で、翻訳紹介するなら「タイピスト〈1〉」が候補という話が出てましたが、私も賛成。小説の中に入り込むとか仮想現実にジャックインする話はよく見かけるのですが、小説の文章をタイプするタイピストに憑依して読者体験を得るという新機軸。どこからこういう発想が出てきたのだろう。もうひとつ、目にするモノは何でも長さを測らないと気が済まない男性を描いた「測りたがり」もお薦め。
“石川宗生『ホテル・アルカディア』刊行記念エッセイ”
高山羽根子先生の『ホテル・アルカディア』書評
児玉雨子先生の『ホテル・アルカディア』書評
藤井太洋先生×石川宗生先生の刊行記念対談


四分の一世界旅行記『四分の一世界旅行記』石川宗生著、千海博美装画
2021.4.30、東京創元社、1800円
【目次】「パスポートナンバー TK49494949の叫び」「落下の山村」「笑いを灯す人」「摂氏四五・一度の異邦人」「世界の終わりとアンダーグラウンド・モスク」「時の旅人たち」「浴室」「旅のゆくえ」「ポータブル・ブコウスキー」「オン・ザ・エンディング・ロード」
【特別対談】宮内悠介 × 石川宗生
 旅行記なんですが、これがまたもの凄く面白い。石川先生のように世界各国を旅して回られた人は少数派だと思います。様々な国や人との出会いが少なくて、常々人生を損した気分がしている私のような出不精の人間が読むと、その損した気分を癒やしてくれる好著と言えます。
「春夏夏夏夏夏夏夏秋とうっ! 石川宗生の旅日記」Web東京創元社マガジン

『眉村卓の異世界物語』ブックレビュー関連書籍

『眉村卓の異世界物語』『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』「眉村卓の異世界物語」刊行委員会
2022.10.20、岡本俊弥編集、村上知子協力、オンデマンド出版1320円
収録作は、この項の最後に入れますので、そちらを参照して下さい。


『静かな終末』眉村卓著、日下三蔵編、まめふくイラスト
2021.3.3、竹書房、1430円、Kindle版1287円
書影は、Kindle版。本来はカラーなのですが、こちらはモノクロになってます。うらぶれた感じが出ていて良いのかも。
【収録作品一覧】いやな話、名優たち、われら人間家族、
廃墟を見ました、大当り、誰か来て、行かないでくれ、応待マナー、ムダを消せ!、委託訓練、面接テスト、忠実な社員、特権、夜中の仕事、のんびりしたい、土星のドライブ、家庭管理士頑張る、自動車強盗、ミス新年コンテスト、物質複製機、獲物、はねられた男、落武者、安物買い、よくある話、動機、酔っちゃいなかった、晩秋、怨霊(おんりょう)地帯、敵は地球だ、虚空の花、最初の戦闘、最後の火星基地、防衛戦闘員、最終作戦、敵と味方と、すれ違い、古都で、雑種、墓地、傾斜の中で、あなたはまだ?、静かな終末、錆びた温室、タイミング、テレビの人気者・クイズマン(人間百科事典)、100の顔を持つ男・デストロイヤー(破壊者)、電話、店、EXPO2000、『ながいながい午睡』あとがき(さんいち・ぶっくす)


仕事ください『仕事ください』眉村卓著、日下三蔵編、まめふくイラスト
2022.9.1、竹書房、1430円、Kindle版1287円
【収録作品】
[Ⅰ]奇妙な妻、ピーや、人類が大変、さむい、針、セールスマン、サルがいる、犬、隣りの子、世界は生きているの?、くり返し、ふくれてくる、機械、やめたくなった、蝶、できすぎた子、むかで、酔えば戦場、風が吹きます、交替の季節、仕事ください、信じていたい
[Ⅱ]その夜、歴史関数、文明考、『奇妙な妻』あとがき(ハヤカワ文庫JA)、変化楽しや?、 編者解説


日本SF傑作選3 眉村卓『日本SF傑作選3 眉村卓 下級アイデアマン/還らざる空』眉村卓著、日下三蔵編
2017.12.6、ハヤカワ文庫JA、1650円、Kindle版1485円
【収録作】
第一部:下級アイデアマン、悪夢と移民、正接曲線、使節、重力地獄、エピソード、わがパキーネ、フニフマム、時間と泥、養成所教官、かれらと私、キガテア、サバントとボク
第二部:還らざる空、準B級市民、表と裏、惑星総長、契約締結命令、工事中止命令、虹は消えた、最後の手段、産業士官候補生


『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』収録作あれこれ
編者の岡本俊弥氏の編集後記によると、冒頭の眉村先生作の「じきにこけるよ」が異世界への入り口で、掉尾の村上知子さん作の「丸池の畔で」が異世界から現実への出口になっているとのこと。
なお、”私ファンタジー”とは、「私小説」のファンタジー版ともいうべき言葉で、眉村先生の諸作を表する際によく使われているようです。

「じきに、こけるよ」眉村卓著
“私ファンタジー”。眉村先生、75,6歳ころの作品。自分もその歳に近づいてきているので、気持ちが良くわかるところも多々ある。

「タク先生の不思議な放送―『メトロポリスの少年探偵』序章」芦辺拓著
中1の少年が「チャチャヤング」を聴きたくてたまらず寝床にラジオを持ち込んだものの寝落ちしてしまったことに端を発する”私ファンタジー”。私は高校生だったけど、「ウルトラQ」は当然のことながら、「ボーイズライフ」も読んでいて投稿したけど落選した(汗;)あれっ?「アウターリミッツ」は中2の時に見た記憶があるけどと思いググったら二期目の「ウルトラゾーン」は高1の時の放映だったのか。

「奇妙な妻と娘の断片」北野勇作著
『ぼくの砂時計』(1974)と「奇妙な妻」(1964、短編集収録1975)に触発された北野ワールド。そうだったのか、北野さんの身近な人間とかこの世界そのものが少し変(偽物)でも、普通に日常生活を営めるという不思議な感覚は眉村先生由来であったのか。

「時の養成所【完全版】」岡本俊弥著
「養成所教官」(1968)へのオマージュとのこと。人類が滅んだ未来の養成所で、何を養成しているのかというと……。こういう設定の時間ものはおしなべて暗いけど、読み切らせるパワーを感じるところも眉村先生ゆずりなのかも。
最近読んだ「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」(久永実木彦著)でも、時間旅行を行使して人的災害を止める非正規職員が、段々と倫理観を喪失し静かに狂っていく様が描かれてました。

「あの頃、私は週に一本の作品を書くのも大変だったのに、眉村先生は一日一話を書いていて、本当にすごいと思った」藤野恵美著
眉村門下生から最初にプロ作家になり、かつ芸大の先生にもなった作者が、眉村先生の創作演習を思い出しながら書いた”私ファンタジー”

「残り火は消えず」雫石鉄也著
『消滅の光輪』へのオマージュとのこと。インサイダー・ファンタジー?倒産(消滅)ファンタジーなのかも。

「ファン二態」高井信著
「日課・一日3字以上」「コロナの呪縛」高井ワールド爆発(笑)眉村先生の言葉(生き方そのものかも)が、高井さんのバックボーンになっていると……

「夜陰譚」菅浩江著
「あの真珠色の朝を」(1970)がお好きとのこと。不可思議な事象の後に残る不穏な”変わらなさ”を描いてるというと北野勇作さんと重なるけど、当たり前だが読後感はずいぶん違う。あ、短編集『夜陰譚』はブックレビューもしてます。

「SF作家パーティ殺人事件」竹本健治原作・ネーム、河内実加作画
落ちが!マンガでしか表現できないオチなんですよ(笑)

「眉村さんへ」竹本健治著
竹本さんが「チャチャヤング」に投稿し眉村先生が朗読された音源。
17歳のころの作品。タイムループものだけどちゃんとSFしているのが見事。

「ねらわれた学園 後日譚」椎原悠介著
有名な『ねらわれた学園』(1976)の視点を変えるとかその後の物語があるとしたらというこれぞトリビュート作品。

「雪の降る夜のお客さま」深田亨著
童謡「ペチカ」から冒頭の情景が浮かんだそうです。パンデミック後に動き続けるアンドロイド(落語家?)と文楽人形の出会い+幽霊。面白くもの悲しい。深田さんの短編は、「チャチャヤング・ショートショート・マガジン」で何本か読んだのですが、まさに深田ワールドという世界ですね。

「新・夢まかせ」大熊宏俊著
眉村作品のパスティーシュを目指すも……。詳しくはブックレビューを参照して下さい。これも分類するなら”私ファンタジー”かな。作家ファンタジーかもしれないけど(笑)

「幻影の手品師」石坪光司著
題名は『幻影の構成』(1966)からとのこと。リストラされたサラリーマンが主人公。手品師の幻影(?)と宇宙規模の厄災が連動する異世界もの。「塔<バベル-75>」が商業誌掲載された石坪さんには、ぜひ宇宙SFに挑戦して欲しかった←勝手に好きなことを言ってます(汗;)

「丸池の畔で」村上知子著
眉村先生の遺伝子とミームと両方を持たれる村上さんの”私ファンタジー”

「インサイダーSFはいかに生まれたか」堀晃著
. 堀晃先生の労作。当時をご存じな方からの貴重な記録となっています。眉村先生と堀先生は、会社人としての経験がある以外にも色々な共通点が存在していて興味深いです。
私は全く会社勤めの経験がないのですが、昔源氏鶏太氏のサラリーマン小説にはまっていた時期があって、眉村先生のインサイダー小説を読んだときは全く違う捉え方に衝撃を受けました。

山口優先生著者インタビュー関連本

『星霊の艦隊 1』山口優著、米村孝一郎イラスト 2022.8.17、ハヤカワ文庫SF、1078円、Kindle版970円
ユウリ「地球時代の皆さん、《星霊の艦隊》主人公の翠真ユウリです。ボクたちの物語、どうぞ楽しんでください。」
アルフリーデ「ちょっとユウリ、それだけじゃ内容がわからないでしょ。銀河を舞台にAIと人間の関係を巡り大艦隊が激突する戦いを描く物語。AIのことはこの時代には『星霊』というのよ。」


『星霊の艦隊 2』山口優著、米村孝一郎イラスト
2022.9.14、ハヤカワ文庫SF、1166円、Kindle版1100円
ユウリ「ボクが性別決定の儀の前に襲撃された時の失われた記憶。それがキーポイントだったとは!」
ナオ「オレがやられるはずだったんだけどな。オレをかばったせいで、ユウリが……」
アルフリーデ「その時、亡命星霊だったワタシと出逢ったのよね」


『星霊の艦隊 3』山口優著、米村孝一郎イラスト
2022.10.18、ハヤカワ文庫SF、1232円、Kindle版1200円
ユウリ、アルフリーデ「《人類連合圏》の新型次元兵器〈クレバス〉の完成は、絶対に阻止するぞ」
ナオ「オレは、敵要塞に潜入して情報を集めてくる」

サロメ「臨時とはいえ《人類連合圏》の元帥になったからには、人類主義のために敵を叩く!」


●「山口優『星霊の艦隊1』特別付録「用語集」Web限定版」
ハヤカワ書房謹呈、用語集。ということは、ハヤカワとしては、ハードSFとしての側面も重視しているのかも。


●山口優(SF作家):note トップページ
1,「星霊の艦隊」シリーズ マシュマロ回答まとめ
著者が答える《星霊の艦隊》シリーズQ&A


「マイ・デリバラー」「SF Prologue Wave」にて連載
人間は裏方に引っ込み、戦争をするのもロボット、歌を歌うのもロボットの世界。人間型のロボットの上部に平たい円筒形のドローンを常に配置させ、それによって人間そっくりのロボットが人間ではないと分かるようにして、人間は彼らを単なる機械と認識していた。
中古ロボットとして配達員として働く元ボーカアンドロイドのリルリは、突然配達先で倒れてしまう。
「人間の仕事を肩代わりするほどに知性が発達した存在は、人間と同等の権利を持たなくて良いのか」という命題に基づいて書かれた、人間とAIの関係性を問う物語。


『ディスロリ』(pixivFANBOXにて連載中:日本SF作家クラブ)
「ディスロリ(無職の俺が幼女に転生したがとんでもないディストピア世界で俺はもう終わりかも知れない)」解題  ~シンギュラリティ時代に無職になるかもしれない多くの人々と、『仕事』の持つ本質的意味について~


『ホモ・デウス』テクノロジーとサピエンスの未来
河出書房のサイトにリンク


『5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク』図子慧著、山口優監修、柏原昇店イラスト
2019.4.25、 KADOKAWA、1320円
「10年後、消える仕事、残る仕事を考えなさい」という課題を出された中学生のミーンさんと4人の仲間たち。
「ちょうどわたしたちが社会に出るころ、AIのせいで仕事がなくなるってホント!?」
そこで5人は、とある研究所での「未来のハローワークVR体験ツアー」を通じて、将来の仕事や働き方を体験することに…。
未来のハローワーク体験によって自分がどんな仕事につけるのか、そのためにはどんな勉強をしていけばいいのかがわかる、まったく新しい未来体験にでかけよう!


『SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略』宮本道人監修・編著、難波優輝・大澤博隆編著
2021.6.2、早川書房、1980円
〈座談ゲスト〉
佐宗邦威 株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー
藤本敦也 三菱総合研究所 経営イノベーション本部 シニアプロデューサー
岡島礼奈 株式会社ALE代表取締役社長/CEO
羽生雄毅 インテグリカルチャー株式会社代表取締役社長/CEO
小谷知也 「WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所」所長
樋口恭介 SF作家、コンサルタント
塚田有那 編集者、キュレーター
長谷川愛 アーティスト、デザイナー
ルース・ワイリー アリゾナ州立大学「科学と想像力センター(CSI)」アシスタント・ディレクター
呉岩 南方科技大学教授
張峰 香港大学名誉助教



『クオリアはどこからくるのか? 統合情報理論のその先へ』土谷尚嗣著
2022.4.28、岩波科学ライブラリー、1540円
これまでの研究における発展と限界,トノーニによって提唱されて意識の理論として有望視されている統合情報理論,そして著者が取り組んでいるクオリア(意識の中身)を特徴づける研究アプローチを解説.意識研究の面白さ,研究者が抱いている興奮を伝える。


『人工知能のための哲学塾 未来社会篇』三宅 陽一郎・大山 匠著
『星霊の艦隊 3』の巻末で「星霊を読み解く」という解説を書かれている三宅陽一郎先生の著書です。お名前がご一緒なので勝手に親近感を抱いてます(笑)
☆第一部 視点〈人工知能から哲学へ〉
哲学を足場に人工知能を築く 三宅陽一郎
第一夜 結びあう人と人工知能の心
第二夜 社会的自我を持つ人工知能の社会
第三夜 世代を超えて作り出す人工知能文化
第四夜 自己変革を促す人工知能の愛
第五夜 揺れ動く人工知能による幸福の探求

☆第二部 視点〈哲学から人工知能へ〉
人工知能を哲学から思考する 大山 匠
第一夜 循環する理解とコミュニケーション
第二夜 響きあう社会と自己
第三夜 文化の記述とアルゴリズム
第四夜 愛のモデルと、その語りがたさ
第五夜 幸福と計算、そして自由

『人工知能のための哲学塾』『人工知能のための哲学塾 東洋哲学編』に続く第三弾。
芸術とAIの章が欲しかった。まあ無い物ねだりですが(汗;)
まだ知能についてもよく分かってないのに、芸術は無理なのか。画や音楽では、既に芸術もどきは出来ているようですが。
知能とか愛とか幸福とかがどのように数値化されるのかという視点から読むとちと当てが外れるかも知れませんが、私のような門外漢が基礎的な知識を得るには良かったです(汗;)

門田充宏先生著者インタビュー関連本

《記憶翻訳者》シリーズの粗筋は、最初から順番に読んで頂くと分かりやすいと思います。
粗筋は、ネタバレも考慮して、門田充宏先生の「公式サイト」「WORKS」から大幅に引用してます。雑誌掲載短編、Web掲載短編の粗筋も、公式サイトの「WORKS」にあります。
「風牙」書影「風牙」門田充宏著
2014.8.8、東京創元社、Kindle版、220円
第5回創元SF短編賞受賞作
主人公の珊瑚は過剰共感能力者で、彼らは他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまっている。珊瑚は、他人の感情と自分の感情を区別できないレベルの能力者故に、過剰共感能力を抑制するインプラントの助けを借りるまで、自我を発達させることが出来なかった過去を持っていた。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者に育った。


『風牙』書
『風牙』門田充宏著、しおんカバーイラスト
2018.10.31、創元日本SF叢書、2200円、Kindle版1935円
収録作:「風牙」「閉鎖回廊」「みなもとに還る」「虚ろの座」
この『風牙』は、以下の二冊に、改題・分冊・増補されて文庫版になっています。
『記憶翻訳者 いつか光になる』は、「風牙」「閉鎖回廊」+「いつか光になる」「嵐の夜に」
『記憶翻訳者 みなもとに還る』は、「みなもとに還る」「虚ろの座」+「流水に刻む」「秋晴れの日に」


「記憶翻訳者」1『記憶翻訳者 いつか光になる』門田充宏著、日田慶治装画
2020.10.23、創元SF文庫、Kindle版、920円
「風牙」
インタープリタとは、個人個人によって独自のものである人の心から抽出した記憶データを“翻訳”し、他者に理解可能なよう立体的に再構築する技能者である。業界トップレベルの女性インタープリタである珊瑚が受けた仕事は前例のないものだった。”潜行”する先は、彼女自身の会社の社長の記憶。しかし珊瑚に先立って送り込まれたインタープリタ3人が、何れも社長の記憶の中で正体不明の存在に襲撃され病院送りとなっていた。社長の記憶世界でいったい何が起こったというのか。珊瑚は”統合サポートシステム”の孫子と共に、社長の記憶世界にアクセスする……
「閉鎖回廊」
珊瑚のもとに、かつて共にインタープリタの導入研修を受け、今はトップクリエイタとなっている由鶴から奇妙なメッセージが届く。「お願い、今すぐ〈閉鎖回廊〉を止めて」。自分が作成した、疑験都市〈九龍〉で最大の人気を誇るコンテンツ、〈閉鎖回廊〉を由鶴は何故止めろと言ってきたのか? 連絡が取れない由鶴の事務所を訪れた珊瑚は、主のいない開発室で、由鶴の過去を巡る九つの記憶が保存されたモジュールを発見する。
「いつか光になる」
九龍の新しい事業、プロモーション用記憶翻訳。その提案者でもあり、記憶データ提供者でもあるハルには人生を賭けた密かな目的があった。ハルと共に新規事業に取り組む珊瑚は、その過程でハルと人生の一部を共有していく。ハルが目指していたものは、そしてその結末は……
「嵐の夜に」
台風で電車が止まってしまった夜、珊瑚はハルと共にオフィスに泊まることになってしまった。嵐の中、少しだけぎくしゃくしていた二人に訪れる、静かで暖かな時間が……

「記憶翻訳者」2『記憶翻訳者 みなもとに還る』門田充宏著、日田慶治装画
2021.2.12、創元SF文庫、Kindle版、950円
「流水に刻む」
疑験都市〈九龍〉の第二階層、二狐。ファンタジイ世界を再現したこの階層に、本来登場しないはずの人間ー少年のNPCが出没する。少年は九龍側の制御を受け付けず、自由に二狐内を行動していた。珊瑚はプレイヤーのひとりとして光の妖精となり、同じくミノタウロスとなった上司の眞角と共に、少年を捕らえるために全力で鬼ごっこを繰り広げることに。果たして少年の正体、そしてその目的は。
「みなもとに還る」
レビューを依頼された疑験都市コンテンツの中で、珊瑚はうなじからどこまでも長く伸びる〈結びの緒〉を生やした子供、マヒロに導かれ、母と名乗る存在と出会う。もういないと聞かされていた母の存在に動揺した珊瑚は、導かれるように〈仮集殿〉と呼ばれる場所へと赴く。そこは、過剰共感能力者たちが肩を寄せ合って暮らす、〈みなもと〉という名の組織の本拠だった……
「虚ろの座」
探偵の調査結果に従い、私は共感能力を礼賛する新興宗教団体、〈みなもと〉へと入信する。それがただひとつ、失った妻と子へと繋がる道だと信じて。だがそこで私を待っていたのは、考えてもいなかった出来事だった。
「秋晴れの日に」
珊瑚は二ヶ月ぶりに〈みなもと〉の仮集殿を訪れ、都や真尋と再会する。珊瑚には密かに心に決めた、小さな目的があった。
(著者談:こちらは「みなもとに還る」の後日談であり、珊瑚の決心の物語でもあります。)

『追憶の社』書影『追憶の社』門田充宏著
2019.5.11、創元日本SF叢書、2585円、Kindle版1834円
収録作品:
「六花の標」
珊瑚が翻訳した記憶データが、ネット上に無制限に公開され始める。急死した料理研究家・雪肌女の最後の日々と、彼女と一緒に暮らしていた少年・仁紀の記憶――それが雪肌女の遺志だからと、仁紀は自分にとって大切な日々の記憶を公開し続ける。その結果、他人の記憶を覗き見ることを楽しむ人間が多く出る一方、記憶データの翻訳自体や、サービス提供元である企業・九龍に対する批判までが起こるようになってしまう。珊瑚は九龍と仁紀を護るため、雪肌女の本当の意図を探ろうするが……
「銀糸の先」
記憶データのレコーディングを実施中のユーザが殺害され、記憶データが持ち去られるという事件が連続して発生する。記憶データはレコーディングされただけの状態では他者は理解できないため、翻訳のためにそのデータは九龍に持ち込まれたのではないかとの推測が流布するが、捜査中であるため九龍はノーコメントを貫いている。そのことが疑念を呼び、また仁紀の事件のあとであったこともあり、九龍に対しての批判が巻き起こる。その対応のため、九龍は自社の仕事を理解して貰うため、若手ジャーナリスト・香月に珊瑚へのインタビュー実施を許可する。あわよくば殺人事件の手がかりを入手しようと考えていた香月だったが、インタビューセッションは彼の予期しない方向に動き出す。
「追憶の杜」
統合サポートシステム<孫子>が作り出した疑験コンテンツのレビュー中、珊瑚は存在するはずのない動的要素を見てしまう。孫子にも、モニタしているエンジニアにも上司にも見えないその存在は、まるで珊瑚を導くかのように姿を見せつつ進んでいく。珊瑚が辿り着いた先には、あり得ないはずの空間と、あり得ないはずの経験が待っていた。


『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』東京創元社編集部編、瀬戸羽方装画
2019.10.31、株式会社東京創元社、Kindle 版、855円
収録作:
「未来への脱獄」松崎有理
「終景累ヶ辻」空木春宵
「時は矢のように」八島游舷
「ABC巡礼」石川宗生
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」久永実木彦
「ゴーストキャンディカテゴリー」高島雄哉
「Too Short Notice」門田充宏



『Genesis 白昼夢通信』創元日本SFアンソロジー Kindle版、2019.12.20、1980円
【収録作】
高島雄哉「配信世界のイデアたち」
石川宗生「モンステリウム」
空木春宵「地獄を縫い取る」
中村融〔エッセイ〕「アンソロジーの極意」
川野芽生「白昼夢通信」
門田充宏「コーラルとロータス」
西崎憲〔エッセイ〕「アンソロジストの個人的事情」
松崎有理「痩せたくないひとは読まないでください。」
水見稜「調律師」

文芸ラジオ7月号「文芸ラジオ7号」、2021.6.1、メタブレーン、1100円
〇Guest Talk 伊藤美来「あまり飾らないで、背伸びをしすぎず、自然体で表現する」
〇特集 陰キャのすすめ
〇特集 虚構旅行 行ったことのない場所に行ったつもりで紀行文を書いてみた
〇小説・散文 門田充宏「社会的舞踏(ソシアル・ダンス)」櫻木みわ「セヴンデイズ」
〇Book in Book 再録 文芸ラジオPetit Vol.03


『蒼衣の末姫』書影『蒼衣の末姫』門田充宏著、シライシユウコ
2021.9.24、創元推理文庫、968円、Kindle版855円
地を這い空を飛び、甲殻で身を固め無数の脚で爪でひとを屠る巨大な怪物、冥?(みょうふ)が跋扈する世界。翻弄されるだけだった人類は壁を築き堀を巡らせた城塞都市〈宮〉を造り、宮ごとに防衛、工業、商業などと機能を特化することで冥?の脅威に抗っていた。
十六歳の少女キサは、ひとを圧倒する冥?を滅ぼすことができる能力を有する蒼衣(そうい)の血を引きながら、僅かな力しか持たないため、冥?を集めるためだけに、囮として最前線に連れ出されていた。だがある日、冥?の前例のない攻勢によって作戦は失敗に終わり、キサは人類と冥?に有毒である水の流れる川へと落下してしまう。
そのキサを救ったのは、生(いくる)という十五歳の少年だった。棄錆(きせい)として大人たちから切り捨てられた生も、命を危険に晒す仕事を毎日続け、懸命に生きてきた存在だった。
自分の命を捨ててでも、ひとという種を繋ぐことを考えねばならない世界で、囮の姫と見棄てられた少年は手を取りあい、蔑まれてきた力と心とを振り絞って、襲い来る脅威、そして課せられた運命に立ち向かう。


『2084年のSF』日本SF作家クラブ編
2022.5.25、ハヤカワ文庫JA、Kindle版、1188円
収録作品:池澤春菜「まえがき」
【仮想】福田和代「タイスケヒトリソラノナカ」、青木和「Alisa」、三方行成「自分の墓で泣いてください」
【社会】逢坂冬馬「目覚めよ、眠れ」、久永実木彦「男性撤廃」、空木春宵「R__ R__」
【認知】門田充宏「情動の棺」、麦原遼「カーテン」、竹田人造「見守りカメラ is watching you」、安野貴博「フリーフォール」
【環境】櫻木みわ「春、マザーレイクで」、揚羽はな「The Plastic World」、池澤春菜「祖母の揺籠」
【記憶】粕谷知世「黄金のさくらんぼ」、十三不塔「至聖所」、坂永雄一「移動遊園地の幽霊たち」、斜線堂有紀「BTTF葬送」
【宇宙】高野史緒「未来への言葉」、吉田親司「上弦の中獄」、人間六度「星の恋バナ」
【火星】草野原々「かえるのからだのかたち」、春暮康一「混沌を掻き回す」、倉田タカシ「火星のザッカーバーグ」
榎木洋子「SF大賞の夜」

小説すばる2019_3『小説すばる』2019年3月号
●私的偉人伝「心のノート」門田充宏作


清水建設×日本SF作家クラブ【建設的な未来】
第2話「理想の小説家」門田充宏作
第18話「恋する海中都市」門田充宏作
●SF Prologue wave
「ミーティエイター」門田充宏作
●日本SF作家クラブ
『楽日』(前編)門田充宏作
●シミルボン
門田充宏先生インタビュー「そもそもSFはあまり読んでいなかった」
●Web東京創元社マガジン
門田充宏『蒼衣の末姫』(創元推理文庫)ここだけのあとがき

平谷美樹著《貸し物屋お庸》シリーズ関連本

『貸し物屋お庸 謎解き帖 桜と長持』平谷美樹著、丹地陽子装画 2022.5.15、だいわ文庫(大和書房)、858円、(Kindle版)815円 江戸っ子の暮らしを支えるレンタルショップをめぐる悲喜交々を描く
収録作:
「桜と長持」同業者から貸した長持が湿っていて変なことに使われたのではとの相談が
「遠眼鏡の向こう」鳥を見るからと遠眼鏡を借りに来た呉服屋の若旦那。いやな感じがするのだが
「小猿の面」座興に使うからと猿の面を借りに来た番頭。延長もあるということは?
「つぐらの損料」赤子の寝床としてもつかわれる藁製のつぐら。捨て子を救おうと蔭間の面々は
「ちびた下駄」芝居に使うからと歯がすり減った下駄を借りにきた自称旅芸人。調べてみると……
「大歳の客」橋の袂にいた少女から湊屋で膳を借りて息子を訪ねろと言われてやってきた老人は……


◆人物紹介◆
【お庸】「無い物はない」と評判の江戸で一、二を争 う貸し物屋・湊 屋両国出店店主。口は悪いが気風のよさと心根の優しさ、行動力で多くの味方を得、持ち前の機知でお客にまつわる難事や謎を見抜いて解決する美形の江戸娘。
【幸太郎】庸の弟。両親の死後、数寄屋大工の名棟梁だった仁座右衛門の後見を得て大工の修業に励んでいる。
【りょう】生まれず亡くなった庸の姉。童女姿の霊となって庸の実家に棲み、家神になるための修行をしている。
【湊屋清五郎】浅草新鳥越町に店を構える貸し物屋・湊屋本店の若き主。「三倉の苗字と帯刀を許されており、初代が将軍の御落胤であったという噂もある。
【松之助】湊屋本店の手代。湊屋で十年以上働いており、両国出店に手伝いに来ることも多い。
【半蔵】清五郎の手下。浪人風、四十絡みの男。
【瑞雲】浅草藪之内の東方寺住職。物の怪を払う力を持つ。
【熊野五郎左衛門】北町奉行所同心。三十路を過ぎた独り者。庸からは「熊五郎」と呼ばれている。


『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』平谷美樹著、げみ装画
2015.1.10、招き猫文庫(白泉社)、690円
収録作:(元禄時代の江戸が舞台。お庸は、賊が押し入る前に清五郎と出会い、一目惚れしている)
「一難去って」大工の娘・庸は“棟梁のお嬢さん”だが自分を「おいら」と呼ぶほどの男勝り。不自由ない生活を送っていたが、ある夜、家に賊が押し入り両親を殺害されたことで生活が一変した。
「初仕事」開店前日のバタバタしているときに、中間が、お殿様が飾る雛人形を借りたいとやってくる。
「桜の茅屋」どこかの店の番頭風の男が、古びた笊を借りに来た。
「盂蘭盆会」藪入り前、お庸の家にお化けが出て悪戯をするという。 


『貸し物屋お庸 娘店主、奔走する』平谷美樹著、げみ装画
2015.5.10、招き猫文庫(白泉社)、640円
収録作:
「紙三味線」大店の若旦那が借りに来た三味線の銘器を巡る大騒動。
「からくり箪笥」大工が引き取ってくれと持ち込んできたタンスには仕掛けがあった。
「俎の下」畳ほどもある大きなまな板を借りに来た男が。
「貸し母」幼い頃に自分を捨てた母親の代わりを貸して欲しいという依頼が。


『貸し物屋お庸 娘店主、捕物に出張る』平谷美樹著、げみ装画
2016.1.10、招き猫文庫(白泉社)、690円
「行李」行李を借りにきた侍の態度を不審に思い、持ち前の好奇心とおせっかいで世話を焼く。そして陸奥国神坂家との因縁が始まる……
「拐かし」知り合いの大工の息子が誘拐されたと聞き、知恵を働かせて解決に走る
「貸し猫探し」蔵に鼠が増えたので猫を借りたいと。しかしその大店には飼い猫がいる
「亡魂の家」化け物よけのお札。産後の肥立ちが悪く亡くなった初七日過ぎから怪異が


『貸し物屋お庸 娘店主、想いを秘める』平谷美樹著、げみ装画
2016.9.10、招き猫文庫(白泉社)、640円
「萱草の簪」簪を借りにきた美しい、しかし訳あり顔の女。清五郎となにやら関係?
「六文銭の夜」雨の夜に現れた裸の子どもと男女十人の亡魂。銭は何のために?
「秋時雨の矢立」手代の松之助に忍び寄る影、隠された過去がお庸を巻き込む
「人形」“おりょう”の手引きで瑞雲の元を訪れた出自を語る人形たちは……
「初雪」若君つきの女中にと、お庸を借りに来たという年配の侍の真意は……


『霊は語りかける 実録怪談集』平谷美樹・岡本美月共著
2022.6.18、ハルキ文庫・Kindle版、597円、(2012.7.18発行の第一刷を底本とした電子版)
ある峠で起きた恐怖の出来事、船旅での怪事件、古いマンションに棲みついていた見えないモノ、どこかで聞こえる不思議な足音……「百物語」を上梓してきた著者のもとに集まってきた、奇妙で恐ろしい話の数々。全三十三篇を収録した、新たなる怪談集
東日本大震災に関連した話や釣り人の話が多数収録されています。UFOの話もあります。
 そういえば、最近の日歯公報に「優しくて心に残る『稲川怪談』第二回」(怪談師:稲川淳二)が掲載されてました。
 稲川さんの怪談は、普段から集めている各地の怪談や不思議な話に関して土地柄や歴史・状況・文化・心理などを綿密に調べ、断片的な話のかけらをまとめて一つの作品に練り上げるそうです。ここらあたりは、平谷先生の怪談話と共通してますが、稲川さんの怪談はその性格上どうしても「怪談」にしなくては受けないので、平谷先生の淡々と聞いたことを記述したものとは違います。
 あと、“怪談で一番大事なのは、心に残る話である。怪談には何かしら人生の教えが含まれていた。気持ち悪くて、後味が悪いのは怪談はないんです。”ともあって、ここらは平谷先生の『霊は語りかける 実録怪談集』に通ずるものがありますね。

杉村修先生著者インタビュー関連(年代順)


『注文の多いカウンセラー』杉村修著
2016.12.16、北の杜編集工房、556円
宮沢賢治のような童話作家になりたかった引きこもりの主人公の成長譚。佐藤司、27 歳の前に突然可憐な美少女が現れた。彼女は「ひきこもりカウンセラー」を名乗り、司にあれこれと注文をつけ始める。彼女の注文に嫌々ながらも応じていくうちに、司の生活に変化が訪れていく。



『イーハトーブの風の音に』杉村修著
2028.4.10、北の杜編集工房、556円
収録作:
「坂口書店」童話作家を目指す若き書店の店主と彼をめぐる二人の少女のお話。
「僕は知らない」ある国からやってきたハーフの少女と出会った少年の学校生活と『星の王子さま』。
「イーハトーブの風の音に」イーハトーブ行きの列車で不思議な出来事に苦悩する青年の姿を描く。



『神話世界のプロローグ』杉村修著、ノブメイラスト
2019.3.13、マイナビ出版、Kindle版、550円
これは神話世界、『最後』で『最初』の物語……。
堕天使として地上へと下ったルシフェル=式部蓮の任務は、神に逆らった「落」を狩ることだった。
VRヘッドセット型の宝具を携え、リリスやベルゼブルと共に世界の敵アイオーンと戦い続ける。
「さあ、始めよう」
蓮が勢いよく剣を振ると、大気がはじけた。



『Jigsaw』岩手文芸サークル「一本桜の会」同人誌
2019.6.11、(有)ツーワンライフ、1000円
収録作:
「始まりは雪のように」杉村修
「心臓の寝坊」藍沢篠
「シンガー」今和立
「はじまりの壁ー坂本麗介」琴葉
「レンタル後輩」下ヶ谷ひろし


『始まりのフェルメイユ』杉村修著、岩村月子イラスト
2020.8.7、ボイジャープレス、Kindle版、275円
人間とアンドロイドの戦争が終わり、気の遠くなるほどの時間が経った世界。
カメラマンのドレ・リクサーはフェルメイユ行きの汽車に乗り、千年の旅を続けてきた。
戦争を終わらせた街『フェルメイユ』まであと少し。
ドレは人間とは何かアンドロイドとは何かについて考える。
しかし、そんな考えを揺するような事件が幾度となく彼に襲いかかる。




『雫町ジュークボックス』杉村修著
2020.20.1、ツーワンライフ出版、450円
収録作:「ベッドタウン」SF-天才研究者と彼女の作ったアンドロイド
「雫町ジュークボックス」プロローグ
「過去日記」恋愛-“想い”を過去に飛ばす過去日記
「始まりは雪のように」青春-想うひと、想われるひと
「水龍伝説」ライトミステリー先輩とめぐる水龍伝説の地
「色づく人生をもう一度」現代ドラマ-受賞後ぱっとしない僕の元にやってきた天使(笑)
「僕の星、どうだろう」SF童話-突然壊された自分の星を後にして僕は星廻りの旅に出る
「じゃがたくら伝説」民話・原文のまま-食い意地が張ったため大蛇になった男
「雫町ジュークボックス」エピローグ



『あの綺麗な花のように~震災~』杉村修著、おさかべ翻訳
2022.2.4、ボイジャープレス、Kindle版、275円
日本語・英語版
未来へと向かう列車に乗る僕とカンパネラ。よそに移ることを余儀なくされた人々が再び集う所。そこにも日は昇り、花は咲くだろう。




『幻想とクトゥルフの雫』杉村修著
2022.3.5、ツーワンライフ出版、500円
「クトゥルフ」震災と神話と
「黒雪」真っ白ではなく、黒い雪
「障がい者が障がい者として生きられる町」住民の1/3が障がい者の街
「あの時みた雪の輝き」テケリ・リ。テケリ・リ。降り積もる雪と幻想カメラ
「私は見ている」永く人々を見守る存在があった。
「春夏秋冬」暑いし寒いし、春はどこへいった。
「とある国で」オーストラリアでは何でもデカい
「そして僕はあの星になった」突然ロケットのように飛び出した六畳間
「ロスト・ブルースフィア」地球に付いたカビ、人類が受けている試練の果て。
「アマノガワ」天の川から生まれた石は「意志」だった。
「特別な体」筋ジストロフィーの僕が学校に通う方法
「今日は特別な日だ」ボイスレコーダーに入っていた謎の声の秘密
「死ぬ火星」マイクロチップを埋め込まれた選ばれた火星の天才児たちと、「星」を見つけ出す任務



『詩集「いわて震災詩歌2017』平成29年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
優秀作6作、入選作14作掲載。入選作に上記「一本桜の会」の藍沢篠さんのお名前があります。
個人的には、優秀作の「野あざみの花が咲いていた」が一番好き。



『いわて震災小説2020』令和2年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
最優秀賞「片寄波」(本堂裕美子)、優秀賞4作、入選9作、佳作4作掲載
入選に「一本桜の会」の藍沢篠さんの名前と杉村修さんの名前があります。



「いわて震災児童文学2022」令和4年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
最優秀賞「ぼくの修学旅行」(神久保敬里)、優秀賞4作、入選4作掲載



『SFG 2020 Vol.03』特集:アジア
インタビュー SFの流儀:小川哲
特集インタビュー・中国のサイバーパンクSF『荒潮』作者・陳楸帆
特集インタビュー・日本における中華圏SF普及の立役者・立原透耶
『バベルの子ら』ピーター・トライアス
『南方蜃気楼水族館』唐澄?
『常夜の国』坂崎かおる
杉村修氏は、「アジアSFカタログ」等でSF本の紹介を担当されてます。

『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著


『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著
表紙: Photo: iStock by Getty Images/ Deklofenak
2022.3.28、スモールベアプレス、Kindle版、380円
収録作:
「子どもの時間」「銀色の魚」「空襲」「ネームレス」「パラドクス」「ソーシャルネットワーク」
「インターセクション」「さまよえる都」「スクライブ」「夏の丘ロケットの空」
以下、ネタバレを含む理系ネタをくだくだと書いてますので苦手な方はパスして下さい(汗;)
あと、粗筋等はあまり書いてません。あくまで読了後の感想と独断と偏見の解説に特化してます。岡本先生とは歳が近いしSFファンということでの共通体験もあるので、それによって想起される思い出話が多いです。すみません(汗;)
岡本俊弥先生著者インタビュー、前編はこちら後編はこちら


「子どもの時間」
最近地元でロケハン(二回見に行きました。遠くから(笑))した映画『とんび』が話題になってますが、原作者の重松清先生は岡山県出身。重松先生の話題作でドラマ化された作品に『流星ワゴン』というタイムスリップ物があります。「子どもの時間」は、テイストとしては似ているのですけれど、最新の時空理論(量子力学も)が併記されることによって、一挙にSF的様相を呈してきます。その意味では、エントロピーとは関係ないけれど、岡本版の「宇宙の熱死」(パミラ・ゾリーン)とも言えると思います。
時間と空間の関係については、橋元先生からも“誤解を恐れずに言えば、時間が虚数になるということは、基本的には時間が空間に変わると言うことである”とうかがっているので納得できるところではありました。
しかし、岡本先生が書かれているストーリーの裏には、文化人類学者の野村直樹先生の提唱されている、マクタガードの時間系列を敷衍したE系列時間があるのではないでしょうか。なぜかというと、物理的な時間がどうであれ、社会的動物である人間には、他者との関わりのある生きた時間こそが必要だと思うからです。(例えるならオーケストラの演奏会において、指揮者と演奏者と聴衆のそれぞれ時間、参加者全員に共通する客観的時間、共通の楽譜、演奏者・聴衆・楽器・まわりの空気まで調和し、同調した生きた時間がある)



作中では、時間とは絶対的な物ではないことが例を挙げて説明されてますが、実は空間の方が絶対的ではないという説もあるわけです。そもそも総てが、光速度は一定で何者も光速を超えることが出来ないという大前提から導きだされているのは、ご存じの通り。
有名な「E=mc^2」という公式は、エネルギーがジュール、質量がkg、光速度がkm/sと様々な単位が一つの式に詰め込まれたもので、こんな式を書くと小学校の先生には怒られます(笑)
この式から導き出されたものがミンコフスキー空間(相対論的空間)というもので、実際には三次元ですが便宜上左のような二次元の図として書くことも出来ます(図は橋元淳一郎先生の著書より引用)
図中の「非因果領域」というのは、光速度を超える世界線が含まれる領域です。人類には知覚できない領域ですね。←「あの世」?



左の図が意味しているところは、光の時間線の長さが”0″になるとしたら、時間か空間かどちらかが「虚数」にならないといけないことを現しています(図は橋元淳一郎先生の著書より引用)
どちらを虚数として扱っても良いということですけど、詳しくは橋元淳一郎先生の著者インタビューを参照して下さい。
そういう意味では、カントが『純粋理性批判』で“時間と空間は感性による直感(ア・プリオリ)に過ぎない”としたのはさすがですね。
本文中に出てくる「ループ量子重力理論」はここが上手くまとめられていると思います。
上記、「E系列の時間」に関してはここから。


「銀色の魚」
ある日突然全人類が失読失書になってしまう。いかに現代文明が文字(記号も含む)に依存しているかが、これでもかという具体例と共に描かれます。文字が失われた世界で口承によって知識を伝えようとするくだりは、「華氏451度」を彷彿とさせますが、さらに深刻な事態ですね。蔵書を誇るSFファンなんかは、もう死にたくなるでしょう←私もですが(汗;)

「空襲」
ある日、旧式(第二次世界大戦当時)の爆撃機が日本上空に現れ市街地を爆撃する事件が勃発する。どうもそれは大戦当時に海軍が採用していた九十六式陸攻ではないかと判明する。
岡本先生の「二〇三八年から来た兵士」は、言ってみれば未来に復讐される話でしたが、こちらは過去に復讐される話と言えます。残留思念のなせるワザだとしたら怖い。
爆撃機はそれほどでもないですが、戦闘機は小学生時代に読んでいた少年誌によく特集されてました。零戦、隼、マイナーどころでは鍾馗・桜花とか。もちろん米国機とか欧州機も。マンガ「紫電改のタカ」とかやたら格好良かった。零戦は今でも描ける。上空の零戦を見上げたアングルが好き(笑)

「ネームレス」
“日本空飛ぶ円盤研究会”の集まりを皮切りに、様々なSF関係の会合や大阪万博のパーティーの写真にまで写る一人の女性。誰ともわからないその謎の女性は、歳もとらないようだった。コンベンションとか例会の熱気は、参加した者にしか分かち合えないというのはよく分かります。もう一つの短編「インターセクション」を読んだ時にも強く感じたのですが、その頃の仲間の記憶はいったん失われてしまうと永久に不明になってしまいます。その昔「日経MIX」という商用BBSに参加していて途中からsf会議の議長役を引き継いだのですが、そのオフミでメンバーのgakio_01(なかじまたかお)さんとタクシーが一緒になりました。車中の会話が小松左京論から高橋和巳に飛び、なぜかゲーデルの「不完全性定理」の話になりました。この時からgakio_01さんは、私の中では「ゲーデルを語る銀行員」として印象づけられたのです。しかし独居生活で闘病中だった彼は、昨年故人となってしまいました。ゲーデルを語る銀行員だったことを知る人間は私ひとりになったかも知れません。
それと、関西・関東の老舗ファンクラブの会員のかたにインタビューさせてもらう機会があったのですが、創立当時のことは詳しく覚えてないとか。他の古株の会員の方に聞いて頂いてもやはり同じで、この短編を読んでいて切なくなってしまいました(私自身は学生時代のファン活動は皆無なのですが)

「パラドクス」
タキオンによる未来からの通信というと『タイムスケープ』(グレゴリイ・ベンフォード)がありましたが、困るのは情報の質を確認しようが無いと言うこと。本当に未来からの通信かどうかもわからないし。本文中にもそれらしき言及がありますが、その時点で最善と思われることをやるしかないですねえ(汗;)

「ソーシャルネットワーク」
岡本先生による大阪的SNS考察(笑) 金星人とか火星人が出てくるというと『美しい星』(三島由紀夫)がありますが、シュールでなおかつ世俗的なところは「宇宙パトロール・シゲマ」(大友克洋)を思いおこさせます。違うのはリアルではなくてネットから得られる情報だけというところ。岡本先生の持ち味が良く出ていて、ちょっと不気味でもあります。

「インターセクション」
“INTERSECTION”というと、我々の世代では真っ先に『アインシュタイン交点』(サミュエル・R・ディレイニー)を思い出します。題名の意味としては「アインシュタイン曲線とゲーデル曲線の交わる一点」と作中で説明されています。そして「その二つの曲線が交差したとき、人類は既知の宇宙の限界まで行き着くことができるようになった。」とあります。まあ、ちんぷんかんぷんだとは思います、私もですが(笑)
「ボルツマン・インターセクション」は、先年急逝した盟友高木淳さんの『アインシュタイン交点』に対する回答といった意味合いの作品です。なぜ「交点」にこだわるかというと、「流れついたガラス」という短編を書かれた岡本先生が、「インターセクション」という題名で無関係な話を書くわけがないと思ったからです(汗;)
クレハ、クサト、クトニ、クニカの名前に「ク=苦」が付いているのも象徴的ですし、四人の人生が重なる時、人生の様は異なれど“変わらない「いま」は続いていき、「いま」の中で生活を送っていくのだ。”との共通認識の元に溶けていくラストはビターな諦観が見てとれます。

「さまよえる都」
「銀色の魚」は、人間が文字を失った後の世界を描いてましたが、こちらはヒトならざるものが言語を獲得したその後を描いてます。人間の使う言語とか文字も“神”が実験のために付与したプログラムだとしたら、我々の歴史とか人生に対する認識に変化は出るのでしょうか。

「スクライブ」
言葉遊びというか筒井康隆先生ばりの実験小説。各要素を取り出せば意味がある文章になるかと思いサッカー関連のところだけ抜き出してみたが、さっぱりわからない(汗;)目茶苦茶に見えて、ひょっとして何か意味があるのではないかと思わせる絶妙のずらし具合が凄い。

「夏の丘 ロケットの空」
題名からしてブラッドベリの「ロケットの夏」(『火星年代記』の第一章)を連想。小学校の頃、ディーラーがスバル360に乗ってきて、買ってくれないかと。うちはだれも免許を持ってなかったんですけど(笑)新しいメカに対する憧れはその時から生じたような気がします。排気ガスとガソリンの臭いもわりと好きだった。
宇宙とロケットに憧れるひとりの少女の成長譚。辛いことも悲しいことも起こるが少女の気持ちが途切れることは無い。これは、岡本先生のSFに対する気持ちと同じなのではないか。実は私も同じ想いを抱いているのですが。→若干恥ずかしくないことも無い(汗;)