『奇談 キダン』2005年11月公開、小松隆志監督作品
原作:漫画《妖怪ハンター》シリーズ「生命の木」(諸星大二郎著)
オールドSFファンなら何度か耳にしたことがあるフレーズ、“「ぱらいそ」さ行くだ”の映画です。
ほぼ基礎教養(笑)だと思いますので原作を読んだことのない人は是非。
渡戸村に伝わる聖書異伝『世界開始の科の御伝え』を調べるためにやってきていた考古学者・稗田礼二郎は、かつて一緒に遊んでいた少年と共に神隠しに遭い、その前後の記憶がなくなった女子大生と出会う。
この村の「はなれ」という集落の住人たちは、村ができる遥か以前から全員がキリシタンで、近親婚を繰り返した彼らは7歳程度の知能しかなく、そのうえ不死だと噂されていた……
『LAMB/ラム』2022年9月公開、ヴァルディミール・ヨハンソン監督作品
アイルランド映画
山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産の介助すると、羊ではない何かが産まれてくる。子供を亡くしていた二人は、”アダ”と名付けその生き物を育てることにするが……
二人に奪われた我が子を求めて、窓の外にたたずむ羊が象徴的です。
どうやってこの生き物が生まれてきたかを考えると、まあ結末はこうなるしかない……
『メランコリア』2012年2月公開、ラース・フォン・トリアー監督作品
巨大惑星の接近で終末を迎えつつある地球を舞台に、人々の孤独と絶望、魂の救済をワーグナー作曲の「トリスタンとイゾルデ」の壮大なメロディにのせて描き出していくドラマ。
最初はよく分からない映画だと思ったのだけれど、ミュージックビデオだと思えば、確かに命題に沿った映画だと思いますね。
『ワーニング 地球最後の日』2022年7月公開、アガタ・アレクサンダー監督作品
近未来。人々の生活にはAIやアンドロイドなど、高度な科学技術が密接に関わるようになっていた。
船外活動の途中で宇宙空間をさまよう羽目になった技師デイヴィッドを狂言回しにして、巨大隕石が追突する地球の命運を描いたパニックファンタジー。
個人的には、売れ残ったアンドロイドと彼を売り込もうとする販売員、アンドロイドを買いに来た若い女性とのやり取りが面白かった。なまじ知性を持つと、いつもでも売れ残るのは辛いよなぁ。
『永遠の831』2022年3月公開、神山健治監督作品
wowowオリジナルアニメ。
未曾有の大災厄によって、混迷を極めた世界。東京の大学生浅野スズシロウは、新聞配達で生計を立てていた。彼には、怒りに駆られると時間を止めてしまう能力があった。とある日、スズシロウが時間を止めた際、止まった世界で一人だけ動くことが出来る少女に出会う。後日、その少女なずながやむをえず犯罪に関わっていると知った彼は、衝動的に少女のグルーブに協力することになるのだが……
正義感に突き動かされてテロ行為に走る若者たちのグルーブと大人の世界のせめぎ合いが面白い。結末はちょっと消化不良でしたが。題名の”831″は、夏休み最後の日である8月31日のことです。
『かがみの孤城』2022年12月公開、原恵一監督作品
原作:同名の辻村深月の小説
中学1年生の女の子・安西こころは、いじめが原因で不登校になっていた。ある日、自室の鏡に吸い込まれたこころは、その向こうのオオカミさまという狼面をつけた謎の少女が仕切る絶海の孤城で、自分と似た問題を抱える中学生リオン、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、アキと出会い、隠された「願いの鍵」を見つけようとするが……
ちょっと風変わりなパラレルワールド・時間もの。心に傷を負った中学生たちは安息を見つけられるのか。
『フィル・ティペット 狂気と怪物たち』2019年9月公開、ジル・パンソ&アレクサンドル・ポンセ監督作品
インタビューを交えたフランスのドキュメンタリー映画。日本では未公開。wowowで放送。
視覚効果の巨匠フィル・ティペット監督が語る、創造力の源流と次世代への架け橋
元々は、『ロボコップ2』(90)を終えた後に、『マッドゴッド』に着手したものの、視覚効果のデジタル化の波が押し寄せて撮影が中断。それから20年も放置されていたが、そのフッテージを偶然目にしたスタジオの若い人たちが興味を持ち、ティペット氏が指導する流れになった模様。
『マッドゴッド』2022年12月公開、フィル・ティペット監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆1/2
荒廃した未来(?)世界で、異形の地下世界に潜り込んだ孤高の暗殺者が、廃棄された地下壕やそこでうごめく不気味なクリーチャー達のあいだを通り抜け、化け物たちの巣窟と化した世界の終わりを目撃する。SFファン必見のパペットムービーです。
「エイリアン」のギーガー氏とか「ブレードランナー」のシド・ミード氏とか、SF映画で有名な造形作家がいらっしゃいますが、フィル・ティペット氏はそれ以上に人間の根源的な恐怖とか気味悪さに迫っているような気がします。
詳しくは、映画.comのフィル・ティペット監督インタビュー
『マッドゴッド』公式サイト(トレイラーあり)
『65/シックスティ・ファイブ』2023年3月公開、スコット・ベック、 ブライアン監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆
6500万年前の惑星ソマリス。主人公のミルズは、娘のネヴァインの治療費捻出のため2年間の宇宙探査へ向かうことになった。しかし調査を終えソマリスに戻る途中、船は白亜紀の頃の地球に不時着する羽目に。大破した宇宙船と恐竜たちに襲われながら、彼の他に一名だけ生き残った少女と共に迫り来る小惑星の衝突に立ち向かう。
特殊撮影部分はなかなか見せ所あり。その他は……
『ライフ』2017年7月公開、ダニエル・エスピノーサ監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆1/2
国際宇宙ステーション(ISS)搭乗のクルー6名は無人火星探査機ピルグリムの回収に成功する。探査機が持ち帰った土をISS内で調査・分析したところ、生存反応がある微生物を見つける。地球外生命体発見のニュースは地上でも報道され、微生物は「カルビン」と名付けられた。しかし、微生物と思っていた生命体が急速に成長し、人間を襲うようになってしまい、クルーは被害が地球に及ばないように対策に追われる……
新しいエイリアンもの。まあ人間を襲うのはありとしても、人間の蛋白質を栄養として成長する過程には何かしらの理由付けが欲しいところ。人間が異星に着陸し、そこの生命体を食べようとする際には、まず食べることが出来るか、毒ではないか調査すると思いますが……炭素系生命体なら、なんでもかんでも捕食し栄養にしちゃうのかしら?
『ジェミニマン』2019年10月公開、アン・リー監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆1/2
自身の衰えを理由に引退を決めるたDIAの凄腕スナイパーであるヘンリー。そのヘンリーに秘密を知られることを阻止しようとDIA極秘特殊部隊「ジェミニ」の隊員が派遣される。実は、ジェミニの隊員は類い希な才能を持つヘンリーのクローンだった。若い頃の自分と闘うヘンリーに勝算はあるのか……
ということで、主人公役のウィル・スミスの一人二役のアクションシーンが見所です!
『MEN 同じ顔の男たち』2022年1月公開、アレックス・ガーランド監督作品
厳密に言うとクローンものではないのですが、無性生殖ぽいので←違うな(笑;)
目の前で夫に自殺され心に傷を負ったハーパーは、静養のために田舎の豪奢な館を借りた。しかし周辺に浮浪者のような全裸の男が出現し、警察を呼ぶ羽目。実は、男たちは、放浪者も館の管理人も、教会の司祭も警官も、全員が同じ顔をしていたが、それに気づかないハーパー。←観ていた私も気がつきませんでした(汗;)
ラストの、全裸の人間から同じ顔の人間が生まれる(脱皮する?)シーンが、なんともグロテスクでおぞましく、そこが見所です(笑)
『デュアル』2022年10月公開、ライリー・ステアンズ監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆
ある日突然、自分が病で余命わずかだと知ったサラは、死期の迫った者が遺族を癒すための手段として、自身のクローンを作るプログラム「リプレイスメント(継承者)」の利用を決意する。記憶の継承は、オリジナルがクローンにあれこれ教えることで引き継ぐのです(記憶を完全コピーできるわけではない)
クローンはあくまで身代わりとしての存在なので、自我の発達を抑える処置が施されているが、まれに独自の自我を発達形成してしまうクローンが出てくる場合があり、法律上オリジナルとクローンとの共存は禁止されているため、その際には一対一で決闘して、生き残った勝者が唯一の存在と認定される。
サラも、彼女の病が奇跡的に完治したことを知らされ動揺するが、既にクローンがサラの恋人としたしくなってしまい自我も目覚めていたため、クローンと決闘することを決意する。
滅茶滅茶な設定と展開なんですが、なんか納得のラスト。安易にクローンを作るなという警鐘なのかも。
『パッセンジャー』2017年3月公開、モルテン・ティルドゥム監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
5000人を乗せた移民船の中で眠っていたジムは、人工冬眠ポッドの故障でたった一人目覚めてしまう。目的地に到着まであと約90年かかることを知ったジムは絶望感に苛まれる。
ある日、ジムは冬眠ポッドで眠るオーロラに一目惚れし、さんざん悩んだ末に彼女を目覚めさせてしまう……
極限状態で語られる良く出来た恋愛物語。科学考証はかなり適当ですが、まあそれを追求する映画では無い(笑)
『ヴォイジャー』2022年3月公開、ニール・バーガー監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆
人間が居住可能な惑星を見つけた人類。その惑星に、人間を移住させることを決めますが、到着は86年後。優秀な少年と少女が選抜され惑星に向かいますが、性欲と感情を抑える薬を毎日飲まされます。しかし、乗組員が薬を飲まなくなったことから、乗組員同士の暴力、性欲が暴走したり混迷を極め、お目付役として乗船している唯一の成人男性が亡くなってしまう……
『ジャッジ』2014年1月公開、永井聡監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆1/3
某広告代理店で働くうだつの上がらない社員である太田は、上司の替え玉となって世界一のテレビCMを決める祭典の審査員を務めるよう厳命される。しかも、その広告祭にエントリーする有力スポンサー企業のぼんくら息子のCM作品を入選に導けとの無茶ぶりが。まあ馬鹿馬鹿しくて面白い(笑)エントリーしたトヨタのCMは一見の価値ありです(爆)
『銀平町シネマブルース』2023年2月公開、城定秀夫監督作品
独断と偏見のお薦め度☆☆☆
一文無しになった元映画監督の近藤は、かつて青春時代を過ごした銀平町に舞い戻り、ひょんなことからホームレスの個性的な面々と知り合うことになる。あるきっかけから映画館でアルバイトを始めた彼は、スタッフや一癖も二癖もある常連客たちとの交流を通じて映画への情熱を取り戻そうとする……
『僕が愛したすべての君へ』2022年10月公開、松本淳監督作品
『君を愛したひとりの僕へ』2022年10月公開、カサヰケンイチ監督作品
原作:同名の乙野四方字の小説
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆1/2
無くした物を探している時、先ほど探したはずの場所で見つかることはありませんか?それはあなたの心が瞬間的なパラレルシフトを起こして、平行世界のあなたと入れ替わっていたためなのです……
パラレルワールドの存在が明確となり、その解明のための科学も整備されつつある世界。暦は7歳のときに両親が離婚することとなり、どちらと共に暮らすかという選択を迫られることになった。この選択で彼の運命は大きく変わることとなる。←重要な分岐点
基本的にはよく考えられた恋愛SFもの。面白かったです。
映画のなかで、栞が幽霊(パラレルシフト中に帰還先の肉体が損傷したため生じた精神のみの存在)になってしまい、どの平行世界にパラレルシフトしても栞は幽霊になっているため、暦は栞を救うために時間を遡るタイムシフトの研究を始めるという展開があります。元々、暦と栞が一緒にマシンに入り、同時にパラレルシフトをしたことから強固な結びつきが出来て、暦がパラレルシフトをすると同時に栞も着いてくると説明がありました。
疑似科学的ガジェットが楽しい本作ですので、ここはぜひ、暦と栞が量子もつれ(量子エンタングルメント)状態になっていて、パラレルシフトしてその世界に栞が存在しなくても、(情報としての)栞が視えるとかにして欲しかったぞ(笑)
もしかして原作はそうなっていたなら申し訳ない(汗;)
『カラフル』2010年8月公開、原 恵一監督作品
原作:森絵都の同名の小説
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
前世で罪を犯した魂(前世の記憶は無い)が特別に選ばれて、自殺を図って死んだばかりの中学3年生・小林真の体に入り込み人生に再挑戦する機会を与えられる。
複雑な家庭環境、美術部には所属しているが勉強もスポーツも苦手な主人公(前世の記憶無し)が様々な体験を通じて人生を再構築していく……
『金の国 水の国』2023年1月公開、渡邉こと乃監督作品
原作:岩本ナオの同名コミック
独断と偏見のお薦め度☆☆☆☆
商業国家で現在は繁栄しているが将来の水不足が決定的な金の国と、豊かな水と緑に恵まれているが貧しい水の国は、隣国同士長年にわたり争いを繰り返していた。あまりの仲の悪さに、神様から、金の国は一番美しい娘を水の国に嫁にやり、水の国は国で一番賢い若者を金の国に婿にやりなさいと約束させられた……
その取り決めで出逢った二人がやがて両国の未来を変えていく。
どちらも王道と言える展開で、暖かな気持ちになれます。異セカイ系・なろう系もよいけど、こういほっこりしたアニメもよいものです。(^o^)/