カテゴリー別アーカイブ: 著者インタビュー関連書籍

林譲治先生著者インタビュー関連本その2

《大日本帝国の銀河》シリーズ、林譲治著 昭和15年、日華事変が深刻さを増すなか、天文学者にして空想科学小説家の秋津俊雄は、和歌山県の潮岬にて電波天文台の建設に取り組んでいた。中学の同級生で海軍中佐の武園義徳の要請を受けた秋津は、火星太郎なる人物と面会する。男は、地球と大接近した昨年7月27日に火星を発ったと言う。いっぽう戦火が迫る欧州各地には、未知の四発爆撃機が出現していた――。 架空戦記+ファーストコンタクトの新シリーズ開幕。 『大日本帝国の銀河 1』林譲治著、Rey.Hori装画 2021.1.7、ハヤカワ文庫JA、946円、Kindle版851円(税込み) 昭和15年、天文学者の秋津俊雄は、軍部の要請で火星太郎なる人物と面会する。一方、世界各地では未知の四発大型機が出現して―― 『大日本帝国の銀河 2』林譲治著、Rey.Hori装画 2021.4.14、ハヤカワ文庫JA、968円、Kindle版871円(税込み) 地球外の存在であるというオリオン集団は、未知の四発爆撃機によりドイツ・イギリスの戦艦、戦闘機軍を撃破する。その目的は地球侵略なのか? 対話を試みる天文学者の秋津に対し、オリオン太郎は日本国内での大使館開設を要求する。一方、日本海軍に協力する元禄通商の猪狩周一は、ドイツ国防軍情報部カナリス部長の密命をおびて帰国途上、謎の空中戦艦に拉致される 『大日本帝国の銀河 3』林譲治著、Rey.Hori装画 2021.7.14、ハヤカワ文庫JA、990円、Kindle版891円(税込み) 片桐英吉海軍中将を司令長官として臨時編成された第四艦隊が、オリオン集団の拠点をめざして西太平洋を南下していた。そこには首席参謀として乗り組む武園義徳の姿もあった。東京では大使館設立準備班が組織され、猪狩周一と桑原茂一がオリオン太郎との対話を進めていた。 一方、ソ連邦に滞在する秋津俊雄と外務省の熊谷亮一は、オリオン集団が駆使する演算機の真相を探るため、レニングラードのプルコヴォ天文台へと赴く 『大日本帝国の銀河 4』林譲治著、Rey.Hori装画 2021.10.19、ハヤカワ文庫JA、990円、Kindle版891円(税込み) 昭和15年10月。ウルシ―環礁からの第四艦隊撤退を受け、米内首相を中心とする陸海軍統合参謀本部の第一回会合にて、オリオン集団の大使館開設が承認される。宇宙空間から銚子沖へと投下された巨大客船ジン・ガプスを大使館としたオリオン集団に対し、猪狩周一と桑原茂一海軍少佐が日本代表として交渉に向かう。 一方、オリオン太郎らが世界各地で不穏な活動を開始する頃、国際情勢を一変させる驚愕の知らせがもたらされる 『大日本帝国の銀河 5』林譲治著、Rey.Hori装画 2022.1.25、ハヤカワ文庫JA、1078円、Kindle版970円(税込み) 大使館開設と独裁者の暗殺によって世界大戦を回避したオリオン集団。彼らの軌道エレベーター技術によって、秋津俊雄は宇宙空間の拠点ドグマへと招かれる。そこでは、鮎川悦子や古田暁子をはじめ世界各地から集められた優秀な人材が、オリオン集団の教育を受けていた。異なる文明がもたらした科学技術は、人類社会の未来に大きな変化と軋轢を引き起こしていく。ついに明らかになるオリオン集団の目的とは? シリーズ完結 『日本軍と軍用車両 戦争マネジメントの失敗』林譲治著 2019.9.10、並木書房、2750円 日本陸軍は歩兵師団をはじめとする諸兵科の機械化に熱心であった。海外事情にも通じており、たとえば戦車でも列強に劣らない火力と装甲を重視していた。その一方で、兵站は最後まで軍馬中心であり、数少ない自動車は故障で苦労したという証言も少なくない。この矛盾はどこから生じるのか? 関係する資料を読み解くと、日華事変から終戦までの師団数の急増と根こそぎ動員に原因があることがわかる。大本営レベルの戦争マネジメントの失敗が、自動車不足と稼働率低下を招き、最前線の将兵がそのツケを血と汗で払うことになったのである。 『超武装戦闘機隊【下】米太平洋艦隊奇襲!』林譲治著、久保周史装画 2022.9.14、コスミック出版、803円(税込) 昭和16年末、日本はマレー作戦、真珠湾奇襲と、連日の戦勝報道に沸いていた。 そんな中、四トンの爆弾を積んで4000キロの航続距離がある四発重爆撃機を開発する四三計画によって、新型の一六式四発飛行艇が完成する。 初任務で真珠湾偵察に向かった同機は、サルベージ作業によって復活しつつある米海軍の姿を目撃。日本海軍はすぐに、米戦艦群に完璧な止めを刺すため、真珠湾再攻撃を決定する。 陽動作戦により、壊滅的な打撃を与えた日本海軍。さらに、米海軍の新たな基地建設の情報を掴むと、爆装した双胴戦闘機「毒蛇」と新型四発重爆を、ラバウルから出撃させるのであった! 新型双胴戦闘機の活躍を描く傑作戦記シミュレーション、怒涛の最終決戦──!! 【関連リンク】 「SFPWのPixiv版創刊によせて」林譲治 … 続きを読む

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林譲治先生著者インタビュー関連本その1

《工作艦明石の孤独》シリーズ  ワープ航法の開発により、 60ほどの植民星系に広がった人類。そのひとつ辺境のセラエノ星系で突如地球圏とのワープが不能となる。星系政府首相のアーシマ・ジャライは、工作艦明石の狼群涼狐艦長に事態の究明を命じる。 一方、セラエノ星系に取り残された地球宇宙軍の偵察戦艦青鳳、 輸送艦津軽もまた、 それぞれの思惑で動き始める。30光年の虚空で孤立するセラエノ星系150万市民の運命は? 究極のミリタリー文明論SF開幕 『工作艦明石の孤独 1』林譲治著、Rey.Hori装画 2022.7.20、ハヤカワ文庫JA、946円、Kindle版851円(税込み)  植民星系のひとつ、辺境のセラエノ星系で突如地球圏とのワープが不能となる。星系政府首相は、工作艦明石の狼群涼狐艦長に事態の究明を命じる。30光年の虚空で孤立するセラエノ星系150万市民の運命は? 『工作艦明石の孤独 2』林譲治著、Rey.Hori装画 2022.10.18、ハヤカワ文庫JA、1012円、Kindle版1000円(税込み)  地球圏とのワープが不能となった辺境のセラエノ星系で、150万市民の文明を維持するため、首相が大胆な政策を断行。一方、隣接星系アイレムで、工作艦明石の椎名ラパーナは、知性体イビスとのファーストコンタクトを始めた。 『工作艦明石の孤独 3』林譲治著、Rey.Hori装画 2023.1.24、ハヤカワ文庫JA、1078円、Kindle版1000円(税込み)  アイレム星系・惑星バスラの軌道上に構築されたアイレムステーション。西園寺恭介らは、消息を絶った椎名ラパーナの手がかりを得るため、異種知性イビスの地下都市を探ろうとしていた。そんなとき椎名からの通信電波が届く。  一方、工作艦明石の狼群妖虎と松下紗理奈は、地球圏とのワープ不能の原因を探るため、無人探査機E1によるワープ航路探査実験を開始する…… 【関連リンク】 「SFPWのPixiv版創刊によせて」林譲治 今からでも読める林譲治のミリタリーSF《星系出雲の兵站》シリーズ 早川書房特設サイト 星雲賞受賞コメント 第41回日本SF大賞 受賞のことば 『星系出雲の兵站』シリーズ完結記念トークイベント (林譲治×Rey.Hori×塩澤快浩×福田和代)(デジタル・ケイブ1月イベント。ただし視聴出来るのは会員のみ) https://youtu.be/KRXknqn6Izk 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》著者解題1 林譲治 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》著者解題2 林譲治 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》特別編 キャラクター名の背景について 林譲治 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》イラストアンサー1 Rey.Hori 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》イラストアンサー2 Rey.Hori 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》特別編 支援者特別記事 『星系出雲の兵站』で作者の考えた図表とは2 林譲治(支援者のみ購読可能) 日本SF大賞特別企画:《星系出雲の兵站》シリーズ解説 増田まもる 牧眞二先生の書評:異質な敵の全容、失われた文明の謎、そして秘匿された人類史 《工作艦明石の孤独》単語別頻度表(Kindleの検索機能使用) 工作艦明石の孤独1    工作艦明石の孤独2   工作艦明石の孤独3 … 続きを読む

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平谷美樹先生著者インタビュー関連書

『貸し物屋お庸謎解き帖 百鬼夜行の宵』平谷美樹著、丹地陽子イラスト 2022.12.15、だいわ文庫、858円、Kindle版858円(書影はKindle版) 「凧、凧揚がれ」“凧の骨を貸してくれ”とやって来た童が心に秘めた願いとは?  「貸家と散り桜」貸家の仲介を頼まれたが“縁起がいい”はずの仕舞屋に居たのは? 「百鬼夜行の宵」坊主の着物を借りに来た二人組、生兵法は怪我のもととはよく言ったもので 「貸し物卒塔婆」大店の跡取り息子で評判の悪い三人組。卒塔婆を十枚借りに来た理由は? 「信輔と十人」安布団を十組借りたいとやってきた元女衒。お庸の立てた景迹は? 「雪と綿帽子」因縁のある陸奥国神坂家の江戸家老橘が、用人の花嫁衣装を借りたいとやってくる。しかも、背格好が同じだから、お庸に届けて欲しいという怪しい依頼だ。  お客が求める貸し物の陰に隠れた悩みや事情を見抜いて収めるお庸の景迹(謎捌き)が痛快な、大人気書下ろし時代小説シリーズ 『渡裸の渡し』平谷美樹著、本田淳装画 2021.4.16、小学館、Kindle版220円 十歳ほどの娘にすぎないむつは、人間を超える力を持つ八百比丘尼になる運命。精神は子供のままであるむつを修行させようと、峻岳坊高星と百夜は津軽への旅に出る。が、むつの持つ力が様々な怪異と霊気を呼び寄せてしまう。千住大橋界隈にさしかかった一行は、さっそく加持祈祷を頼まれることに。 『九つの目の老人』平谷美樹著、本田淳装画 2021.6.18、小学館、Kindle版220円 神に近いものになろうとしている少女、むつを修行させるため、津軽への旅に出た百夜一行。宇都宮の宿に現れたのは、目のない顔を持つ白髭の老人と九つの光の玉。その正体がわからぬ百夜は、いつになく苛立っている。 『聖の思惑』平谷美樹著、本田淳装画 2021.12.17、小学館、Kindle版220円 神になろうとしている少女・むつは、旅先で出羽国に行きたいと突然言い出した。その夜、百夜とむつは師匠の峻岳坊高星も気づかぬ間に攫われてしまう。二人は黄泉の世界に踏み込み、次々と異形のモノたちに襲われる。果たしてこの恐るべき力をふるうものは何者なのか。 『宿坊の夜』平谷美樹著、本田淳装画 2022.4.15、小学館、Kindle版220円 むつの願いで早池峰山詣でに向かった百夜の一行は、雪の夜に麓の主のいない宿坊に泊まることに。 ただならぬ気配を感じながら宿坊に入ると、そこには3人の先客がいた。旅の女のしめ、行商人の為造は怪異が起きていると訴えるのだが、若い僧侶の法稔は頑なにそれを否定する。 『むつとの別れ(上) 八卦置き』平谷美樹著、本田淳装画 2022.6.17、小学館、Kindle版220円 だんだんと神に近づいていくむつを連れて、百夜の一行は八戸藩に入った。そこで未来の出来事を確実に当てて、米問屋や材木商に大儲けさせている占い師の噂を聞く。謎の素性の八卦占い師を招き寄せたむつに、山崎と名乗るその男は摩訶不思議な話を語り始めた 『むつとの別れ(下) 宇曾利山(うそりやま)』平谷美樹著、本田淳装画 2022.12.16、小学館、Kindle版220円 恐山の麓までやってきた百夜一行。いよいよ旅も終局、別れの時は近い。日も陰り、降りしきる雪の中、百夜と当来軒は、むつの導くままに山頂の宇曾利湖を目指し、山道を登り始める。しかし、その後を追う怪しい人影が…… 『図解!江戸時代―意外と住みたい?この町と、この時代!』「歴史ミステリー倶楽部」著、図版・DTP/ハッシィ 2015.10.20、三笠書房、649円、Kindle版617円  江戸時代の複雑な貨幣制度や暦・時刻、不思議なしきたりや多様な刑罰など、時代劇などでお馴染みのこの時代。しかし誤解や間違いも含めて、実際のところは知らないことだらけ!江戸の開発から幕府の統治、武士や庶民の暮らしぶりに至るまで、江戸の町と江戸時代に関する「基本としくみ」を、徹底図解でわかりやすく解説。

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松崎有理先生著者インタビュー関連書

『シュレーディンガーの少女』松崎有理著、佐藤おどり装画 2022.12.9、創元SF文庫、946円、Kindle版851円(税込) 【収録作】「六十五歳デス」すべての65歳に例外なく、プログラムされた死が訪れる世界。 「太っていたらだめですか?」肥満者たちをテレビスタジオに集め、公開デスゲームを開催する健康至上主義社会。 「異世界数学」あらゆる数学を市民に禁じ、違反者を捕らえては刑に処している王国。 「秋刀魚、苦いかしょっぱいか」日々の食卓から、秋刀魚が消え失せてしまった未来 「ペンローズの少女」少年が流れ着いたのは有名な生け贄儀式が残る島だった 「シュレーディンガーの少女」友人の物理学者から謎の実験に参加することを頼まれた……  様々なディストピア世界でたくましく生きのびる女性たちを描いた、コミカルでちょっぴりダークな短編集。 『シュレーディンガーの少女』に挟んであった、松崎先生謹製「販促カード」 『ユリイカ2022年11月号』 特集=今井哲也——『ハックス!』『ぼくらのよあけ』『アリスと蔵六』…マンガを夢みる 2022.10.27、青土社、1980円、Kindle版1980円 青土社の『ユリイカ2022年11月号』の紹介頁 ❖ロングインタビュー ❖今井哲也との遭遇 ❖今井哲也の読みかた ❖オマージュイラストギャラリー ❖再録「三丁目クオンタム団地」「スペースおくのほそ道」今井哲也著 ❖オマージュ短篇「不屈の蛙は青い海をみるか」松崎有理著 ❖描くことの自由とともに「今井哲也主要作品解題」 『ゾンビでわかる神経科学』ティモシー・ヴァースタイネン、ブラッドリー・ヴォイテック、鬼澤忍共著 2017.2.10、太田出版、2200円、Kindle版1760円 【ゾンビ症候群の診断書】 病名:意識欠陥活動低下障害(Consciousness Decit Hypoactivity Disorder/CDHD) 症状:CDHDは後天性の症候群で、患者は活動を意図的に制御できず、無気力で疲れきったような動きを見せたり(運動感覚消失)、喜びの感覚を失ったり(快感消失)、全般的な言語機能障害(失語症)や記憶障害(健忘症)に陥り、摂食などの欲求行動や攻撃的「闘争・逃走」行動を抑えられなくなる。患者はしばしば、見慣れた物や人を認識するのが著しく困難になり(失認症)、持続性睡眠障害が慢性的不眠症という形で表れた結果、やがて「覚醒せん妄」状態にいたる。患者はまた、反社会的行動パターン(人をかんだり食べたりしようとする)も見せ、そうした典型的暴力行為の標的は生身の人間のみに限られる。いっぽう、ほかの感染者に対しては非常に強い向社会的な行動が表れる。その証拠に、感染者は群れ、「群知能」を発揮する。” 『ゾンビ 対 数学 ―数学なしでは生き残れない』コリン・アダムズ著、小谷太郎訳、岡村亮太イラスト 2018.7.31、技術評論社、2398円、Kindle版2278円 第1章 6時間後 - 生ける屍の授業開始 第2章 7時間後 - 生ける屍の鼠算 … 続きを読む

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石川宗生先生関連本

『半分世界』石川宗生著、千海博美装画 2018.1.26、創元日本SF叢書、1900円 収録作:「吉田同名」第七回創元SF短編賞受賞作  ある日突然、19,329人に増殖した吉田大輔氏の奇想天外な物語。長男の親友に吉田大恭(読みは同じ)君がいて、月一で我が家を訪れるのだけれども、面白がってました(笑) 「半分世界」  突然縦に半分となり、世間の目にさらされることとなった家族と、それを観察(ストーカーとも言える)する人々を描いた表題作 「白黒ダービー小史」  全住民が、白と黒のサッカーチームに分かれ、街をフィールドに延々と試合を続ける物語。 「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」  999本のルートのバスが止まるという停留所。いっこうに来ないバスを待ちわびる乗客達の狂想曲(?)(笑) 「石川宗生さん『半分世界』刊行記念・飛浩隆先生によるインタビュウ!」Web東京創元社マガジン 『ホテル・アルカディア』石川宗生著、川名潤装幀 2020.3.30、集英社、2000円 第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作 【目次】 1.[愛のアトラス] 「タイピスト〈1〉」「代理戦争」「すべてはダニエラとファックするために」「愛のテスト」「本の挿絵」「アンジェリカの園」 2.[性のアトラス] 「測りたがり」「転校生・女神」「わた師」「ゾンビのすすめ」「No.121393」 3.[死生のアトラス] 「光り輝く人」「饗宴」「恥辱」「100万の騎士」 4.[文化のアトラス] 「激流」「A#」「糸学」 5.[都市のアトラス] 「チママンダの街」「機械仕掛けのエウリピデス」 6.[時のアトラス] 「時の暴君」 7.[世界のアトラス] [アトラス・プルデンシア]  藤井太洋先生との対談で、翻訳紹介するなら「タイピスト〈1〉」が候補という話が出てましたが、私も賛成。小説の中に入り込むとか仮想現実にジャックインする話はよく見かけるのですが、小説の文章をタイプするタイピストに憑依して読者体験を得るという新機軸。どこからこういう発想が出てきたのだろう。もうひとつ、目にするモノは何でも長さを測らないと気が済まない男性を描いた「測りたがり」もお薦め。 “石川宗生『ホテル・アルカディア』刊行記念エッセイ” 高山羽根子先生の『ホテル・アルカディア』書評 児玉雨子先生の『ホテル・アルカディア』書評 藤井太洋先生×石川宗生先生の刊行記念対談 『四分の一世界旅行記』石川宗生著、千海博美装画 2021.4.30、東京創元社、1800円 【目次】「パスポートナンバー TK49494949の叫び」「落下の山村」「笑いを灯す人」「摂氏四五・一度の異邦人」「世界の終わりとアンダーグラウンド・モスク」「時の旅人たち」「浴室」「旅のゆくえ」「ポータブル・ブコウスキー」「オン・ザ・エンディング・ロード」 【特別対談】宮内悠介 × … 続きを読む

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『眉村卓の異世界物語』ブックレビュー関連書籍

『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』「眉村卓の異世界物語」刊行委員会 2022.10.20、岡本俊弥編集、村上知子協力、オンデマンド出版1320円 収録作は、この項の最後に入れますので、そちらを参照して下さい。 『静かな終末』眉村卓著、日下三蔵編、まめふくイラスト 2021.3.3、竹書房、1430円、Kindle版1287円 書影は、Kindle版。本来はカラーなのですが、こちらはモノクロになってます。うらぶれた感じが出ていて良いのかも。 【収録作品一覧】いやな話、名優たち、われら人間家族、 廃墟を見ました、大当り、誰か来て、行かないでくれ、応待マナー、ムダを消せ!、委託訓練、面接テスト、忠実な社員、特権、夜中の仕事、のんびりしたい、土星のドライブ、家庭管理士頑張る、自動車強盗、ミス新年コンテスト、物質複製機、獲物、はねられた男、落武者、安物買い、よくある話、動機、酔っちゃいなかった、晩秋、怨霊(おんりょう)地帯、敵は地球だ、虚空の花、最初の戦闘、最後の火星基地、防衛戦闘員、最終作戦、敵と味方と、すれ違い、古都で、雑種、墓地、傾斜の中で、あなたはまだ?、静かな終末、錆びた温室、タイミング、テレビの人気者・クイズマン(人間百科事典)、100の顔を持つ男・デストロイヤー(破壊者)、電話、店、EXPO2000、『ながいながい午睡』あとがき(さんいち・ぶっくす) 『仕事ください』眉村卓著、日下三蔵編、まめふくイラスト 2022.9.1、竹書房、1430円、Kindle版1287円 【収録作品】 [Ⅰ]奇妙な妻、ピーや、人類が大変、さむい、針、セールスマン、サルがいる、犬、隣りの子、世界は生きているの?、くり返し、ふくれてくる、機械、やめたくなった、蝶、できすぎた子、むかで、酔えば戦場、風が吹きます、交替の季節、仕事ください、信じていたい [Ⅱ]その夜、歴史関数、文明考、『奇妙な妻』あとがき(ハヤカワ文庫JA)、変化楽しや?、 編者解説 『日本SF傑作選3 眉村卓 下級アイデアマン/還らざる空』眉村卓著、日下三蔵編 2017.12.6、ハヤカワ文庫JA、1650円、Kindle版1485円 【収録作】 第一部:下級アイデアマン、悪夢と移民、正接曲線、使節、重力地獄、エピソード、わがパキーネ、フニフマム、時間と泥、養成所教官、かれらと私、キガテア、サバントとボク 第二部:還らざる空、準B級市民、表と裏、惑星総長、契約締結命令、工事中止命令、虹は消えた、最後の手段、産業士官候補生 『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』収録作あれこれ 編者の岡本俊弥氏の編集後記によると、冒頭の眉村先生作の「じきにこけるよ」が異世界への入り口で、掉尾の村上知子さん作の「丸池の畔で」が異世界から現実への出口になっているとのこと。 なお、”私ファンタジー”とは、「私小説」のファンタジー版ともいうべき言葉で、眉村先生の諸作を表する際によく使われているようです。 「じきに、こけるよ」眉村卓著 “私ファンタジー”。眉村先生、75,6歳ころの作品。自分もその歳に近づいてきているので、気持ちが良くわかるところも多々ある。 「タク先生の不思議な放送―『メトロポリスの少年探偵』序章」芦辺拓著 中1の少年が「チャチャヤング」を聴きたくてたまらず寝床にラジオを持ち込んだものの寝落ちしてしまったことに端を発する”私ファンタジー”。私は高校生だったけど、「ウルトラQ」は当然のことながら、「ボーイズライフ」も読んでいて投稿したけど落選した(汗;)あれっ?「アウターリミッツ」は中2の時に見た記憶があるけどと思いググったら二期目の「ウルトラゾーン」は高1の時の放映だったのか。 「奇妙な妻と娘の断片」北野勇作著 『ぼくの砂時計』(1974)と「奇妙な妻」(1964、短編集収録1975)に触発された北野ワールド。そうだったのか、北野さんの身近な人間とかこの世界そのものが少し変(偽物)でも、普通に日常生活を営めるという不思議な感覚は眉村先生由来であったのか。 「時の養成所【完全版】」岡本俊弥著 「養成所教官」(1968)へのオマージュとのこと。人類が滅んだ未来の養成所で、何を養成しているのかというと……。こういう設定の時間ものはおしなべて暗いけど、読み切らせるパワーを感じるところも眉村先生ゆずりなのかも。 最近読んだ「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」(久永実木彦著)でも、時間旅行を行使して人的災害を止める非正規職員が、段々と倫理観を喪失し静かに狂っていく様が描かれてました。 「あの頃、私は週に一本の作品を書くのも大変だったのに、眉村先生は一日一話を書いていて、本当にすごいと思った」藤野恵美著 眉村門下生から最初にプロ作家になり、かつ芸大の先生にもなった作者が、眉村先生の創作演習を思い出しながら書いた”私ファンタジー” 「残り火は消えず」雫石鉄也著 『消滅の光輪』へのオマージュとのこと。インサイダー・ファンタジー?倒産(消滅)ファンタジーなのかも。 「ファン二態」高井信著 「日課・一日3字以上」「コロナの呪縛」高井ワールド爆発(笑)眉村先生の言葉(生き方そのものかも)が、高井さんのバックボーンになっていると…… 「夜陰譚」菅浩江著 「あの真珠色の朝を」(1970)がお好きとのこと。不可思議な事象の後に残る不穏な”変わらなさ”を描いてるというと北野勇作さんと重なるけど、当たり前だが読後感はずいぶん違う。あ、短編集『夜陰譚』はブックレビューもしてます。 「SF作家パーティ殺人事件」竹本健治原作・ネーム、河内実加作画 … 続きを読む

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山口優先生著者インタビュー関連本

『星霊の艦隊 1』山口優著、米村孝一郎イラスト 2022.8.17、ハヤカワ文庫SF、1078円、Kindle版970円 ユウリ「地球時代の皆さん、《星霊の艦隊》主人公の翠真ユウリです。ボクたちの物語、どうぞ楽しんでください。」 アルフリーデ「ちょっとユウリ、それだけじゃ内容がわからないでしょ。銀河を舞台にAIと人間の関係を巡り大艦隊が激突する戦いを描く物語。AIのことはこの時代には『星霊』というのよ。」 『星霊の艦隊 2』山口優著、米村孝一郎イラスト 2022.9.14、ハヤカワ文庫SF、1166円、Kindle版1100円 ユウリ「ボクが性別決定の儀の前に襲撃された時の失われた記憶。それがキーポイントだったとは!」 ナオ「オレがやられるはずだったんだけどな。オレをかばったせいで、ユウリが……」 アルフリーデ「その時、亡命星霊だったワタシと出逢ったのよね」 『星霊の艦隊 3』山口優著、米村孝一郎イラスト 2022.10.18、ハヤカワ文庫SF、1232円、Kindle版1200円 ユウリ、アルフリーデ「《人類連合圏》の新型次元兵器〈クレバス〉の完成は、絶対に阻止するぞ」 ナオ「オレは、敵要塞に潜入して情報を集めてくる」 サロメ「臨時とはいえ《人類連合圏》の元帥になったからには、人類主義のために敵を叩く!」 ●「山口優『星霊の艦隊1』特別付録「用語集」Web限定版」 ハヤカワ書房謹呈、用語集。ということは、ハヤカワとしては、ハードSFとしての側面も重視しているのかも。 ●山口優(SF作家):note トップページ 1,「星霊の艦隊」シリーズ マシュマロ回答まとめ 著者が答える《星霊の艦隊》シリーズQ&A 「マイ・デリバラー」「SF Prologue Wave」にて連載 人間は裏方に引っ込み、戦争をするのもロボット、歌を歌うのもロボットの世界。人間型のロボットの上部に平たい円筒形のドローンを常に配置させ、それによって人間そっくりのロボットが人間ではないと分かるようにして、人間は彼らを単なる機械と認識していた。 中古ロボットとして配達員として働く元ボーカアンドロイドのリルリは、突然配達先で倒れてしまう。 「人間の仕事を肩代わりするほどに知性が発達した存在は、人間と同等の権利を持たなくて良いのか」という命題に基づいて書かれた、人間とAIの関係性を問う物語。 『ディスロリ』(pixivFANBOXにて連載中:日本SF作家クラブ) 「ディスロリ(無職の俺が幼女に転生したがとんでもないディストピア世界で俺はもう終わりかも知れない)」解題  ~シンギュラリティ時代に無職になるかもしれない多くの人々と、『仕事』の持つ本質的意味について~ 『ホモ・デウス』テクノロジーとサピエンスの未来 河出書房のサイトにリンク 『5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク』図子慧著、山口優監修、柏原昇店イラスト 2019.4.25、 KADOKAWA、1320円 「10年後、消える仕事、残る仕事を考えなさい」という課題を出された中学生のミーンさんと4人の仲間たち。 「ちょうどわたしたちが社会に出るころ、AIのせいで仕事がなくなるってホント!?」 … 続きを読む

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門田充宏先生著者インタビュー関連本

《記憶翻訳者》シリーズの粗筋は、最初から順番に読んで頂くと分かりやすいと思います。 粗筋は、ネタバレも考慮して、門田充宏先生の「公式サイト」の「WORKS」から大幅に引用してます。雑誌掲載短編、Web掲載短編の粗筋も、公式サイトの「WORKS」にあります。 「風牙」門田充宏著 2014.8.8、東京創元社、Kindle版、220円 第5回創元SF短編賞受賞作 主人公の珊瑚は過剰共感能力者で、彼らは他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまっている。珊瑚は、他人の感情と自分の感情を区別できないレベルの能力者故に、過剰共感能力を抑制するインプラントの助けを借りるまで、自我を発達させることが出来なかった過去を持っていた。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者に育った。 『風牙』門田充宏著、しおんカバーイラスト 2018.10.31、創元日本SF叢書、2200円、Kindle版1935円 収録作:「風牙」「閉鎖回廊」「みなもとに還る」「虚ろの座」 この『風牙』は、以下の二冊に、改題・分冊・増補されて文庫版になっています。 『記憶翻訳者 いつか光になる』は、「風牙」「閉鎖回廊」+「いつか光になる」「嵐の夜に」 『記憶翻訳者 みなもとに還る』は、「みなもとに還る」「虚ろの座」+「流水に刻む」「秋晴れの日に」 『記憶翻訳者 いつか光になる』門田充宏著、日田慶治装画 2020.10.23、創元SF文庫、Kindle版、920円 「風牙」 インタープリタとは、個人個人によって独自のものである人の心から抽出した記憶データを“翻訳”し、他者に理解可能なよう立体的に再構築する技能者である。業界トップレベルの女性インタープリタである珊瑚が受けた仕事は前例のないものだった。”潜行”する先は、彼女自身の会社の社長の記憶。しかし珊瑚に先立って送り込まれたインタープリタ3人が、何れも社長の記憶の中で正体不明の存在に襲撃され病院送りとなっていた。社長の記憶世界でいったい何が起こったというのか。珊瑚は”統合サポートシステム”の孫子と共に、社長の記憶世界にアクセスする…… 「閉鎖回廊」 珊瑚のもとに、かつて共にインタープリタの導入研修を受け、今はトップクリエイタとなっている由鶴から奇妙なメッセージが届く。「お願い、今すぐ〈閉鎖回廊〉を止めて」。自分が作成した、疑験都市〈九龍〉で最大の人気を誇るコンテンツ、〈閉鎖回廊〉を由鶴は何故止めろと言ってきたのか? 連絡が取れない由鶴の事務所を訪れた珊瑚は、主のいない開発室で、由鶴の過去を巡る九つの記憶が保存されたモジュールを発見する。 「いつか光になる」 九龍の新しい事業、プロモーション用記憶翻訳。その提案者でもあり、記憶データ提供者でもあるハルには人生を賭けた密かな目的があった。ハルと共に新規事業に取り組む珊瑚は、その過程でハルと人生の一部を共有していく。ハルが目指していたものは、そしてその結末は…… 「嵐の夜に」 台風で電車が止まってしまった夜、珊瑚はハルと共にオフィスに泊まることになってしまった。嵐の中、少しだけぎくしゃくしていた二人に訪れる、静かで暖かな時間が…… 『記憶翻訳者 みなもとに還る』門田充宏著、日田慶治装画 2021.2.12、創元SF文庫、Kindle版、950円 「流水に刻む」 疑験都市〈九龍〉の第二階層、二狐。ファンタジイ世界を再現したこの階層に、本来登場しないはずの人間ー少年のNPCが出没する。少年は九龍側の制御を受け付けず、自由に二狐内を行動していた。珊瑚はプレイヤーのひとりとして光の妖精となり、同じくミノタウロスとなった上司の眞角と共に、少年を捕らえるために全力で鬼ごっこを繰り広げることに。果たして少年の正体、そしてその目的は。 「みなもとに還る」 レビューを依頼された疑験都市コンテンツの中で、珊瑚はうなじからどこまでも長く伸びる〈結びの緒〉を生やした子供、マヒロに導かれ、母と名乗る存在と出会う。もういないと聞かされていた母の存在に動揺した珊瑚は、導かれるように〈仮集殿〉と呼ばれる場所へと赴く。そこは、過剰共感能力者たちが肩を寄せ合って暮らす、〈みなもと〉という名の組織の本拠だった…… 「虚ろの座」 探偵の調査結果に従い、私は共感能力を礼賛する新興宗教団体、〈みなもと〉へと入信する。それがただひとつ、失った妻と子へと繋がる道だと信じて。だがそこで私を待っていたのは、考えてもいなかった出来事だった。 「秋晴れの日に」 珊瑚は二ヶ月ぶりに〈みなもと〉の仮集殿を訪れ、都や真尋と再会する。珊瑚には密かに心に決めた、小さな目的があった。 (著者談:こちらは「みなもとに還る」の後日談であり、珊瑚の決心の物語でもあります。) 『追憶の社』門田充宏著 2019.5.11、創元日本SF叢書、2585円、Kindle版1834円 収録作品: 「六花の標」 珊瑚が翻訳した記憶データが、ネット上に無制限に公開され始める。急死した料理研究家・雪肌女の最後の日々と、彼女と一緒に暮らしていた少年・仁紀の記憶――それが雪肌女の遺志だからと、仁紀は自分にとって大切な日々の記憶を公開し続ける。その結果、他人の記憶を覗き見ることを楽しむ人間が多く出る一方、記憶データの翻訳自体や、サービス提供元である企業・九龍に対する批判までが起こるようになってしまう。珊瑚は九龍と仁紀を護るため、雪肌女の本当の意図を探ろうするが…… … 続きを読む

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杉村修先生著者インタビュー関連(年代順)

『注文の多いカウンセラー』杉村修著 2016.12.16、北の杜編集工房、556円 宮沢賢治のような童話作家になりたかった引きこもりの主人公の成長譚。佐藤司、27 歳の前に突然可憐な美少女が現れた。彼女は「ひきこもりカウンセラー」を名乗り、司にあれこれと注文をつけ始める。彼女の注文に嫌々ながらも応じていくうちに、司の生活に変化が訪れていく。 『イーハトーブの風の音に』杉村修著 2028.4.10、北の杜編集工房、556円 収録作: 「坂口書店」童話作家を目指す若き書店の店主と彼をめぐる二人の少女のお話。 「僕は知らない」ある国からやってきたハーフの少女と出会った少年の学校生活と『星の王子さま』。 「イーハトーブの風の音に」イーハトーブ行きの列車で不思議な出来事に苦悩する青年の姿を描く。 『神話世界のプロローグ』杉村修著、ノブメイラスト 2019.3.13、マイナビ出版、Kindle版、550円 これは神話世界、『最後』で『最初』の物語……。 堕天使として地上へと下ったルシフェル=式部蓮の任務は、神に逆らった「落」を狩ることだった。 VRヘッドセット型の宝具を携え、リリスやベルゼブルと共に世界の敵アイオーンと戦い続ける。 「さあ、始めよう」 蓮が勢いよく剣を振ると、大気がはじけた。 『Jigsaw』岩手文芸サークル「一本桜の会」同人誌 2019.6.11、(有)ツーワンライフ、1000円 収録作: 「始まりは雪のように」杉村修 「心臓の寝坊」藍沢篠 「シンガー」今和立 「はじまりの壁ー坂本麗介」琴葉 「レンタル後輩」下ヶ谷ひろし 『始まりのフェルメイユ』杉村修著、岩村月子イラスト 2020.8.7、ボイジャープレス、Kindle版、275円 人間とアンドロイドの戦争が終わり、気の遠くなるほどの時間が経った世界。 カメラマンのドレ・リクサーはフェルメイユ行きの汽車に乗り、千年の旅を続けてきた。 戦争を終わらせた街『フェルメイユ』まであと少し。 ドレは人間とは何かアンドロイドとは何かについて考える。 しかし、そんな考えを揺するような事件が幾度となく彼に襲いかかる。 『雫町ジュークボックス』杉村修著 2020.20.1、ツーワンライフ出版、450円 収録作:「ベッドタウン」SF-天才研究者と彼女の作ったアンドロイド 「雫町ジュークボックス」プロローグ 「過去日記」恋愛-“想い”を過去に飛ばす過去日記 「始まりは雪のように」青春-想うひと、想われるひと 「水龍伝説」ライトミステリー先輩とめぐる水龍伝説の地 「色づく人生をもう一度」現代ドラマ-受賞後ぱっとしない僕の元にやってきた天使(笑) … 続きを読む

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 『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著

『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著 表紙: Photo: iStock by Getty Images/ Deklofenak 2022.3.28、スモールベアプレス、Kindle版、380円 収録作: 「子どもの時間」「銀色の魚」「空襲」「ネームレス」「パラドクス」「ソーシャルネットワーク」 「インターセクション」「さまよえる都」「スクライブ」「夏の丘ロケットの空」 以下、ネタバレを含む理系ネタをくだくだと書いてますので苦手な方はパスして下さい(汗;) あと、粗筋等はあまり書いてません。あくまで読了後の感想と独断と偏見の解説に特化してます。岡本先生とは歳が近いしSFファンということでの共通体験もあるので、それによって想起される思い出話が多いです。すみません(汗;) 岡本俊弥先生著者インタビュー、前編はこちら。後編はこちら。 「子どもの時間」 最近地元でロケハン(二回見に行きました。遠くから(笑))した映画『とんび』が話題になってますが、原作者の重松清先生は岡山県出身。重松先生の話題作でドラマ化された作品に『流星ワゴン』というタイムスリップ物があります。「子どもの時間」は、テイストとしては似ているのですけれど、最新の時空理論(量子力学も)が併記されることによって、一挙にSF的様相を呈してきます。その意味では、エントロピーとは関係ないけれど、岡本版の「宇宙の熱死」(パミラ・ゾリーン)とも言えると思います。 時間と空間の関係については、橋元先生からも“誤解を恐れずに言えば、時間が虚数になるということは、基本的には時間が空間に変わると言うことである”とうかがっているので納得できるところではありました。 しかし、岡本先生が書かれているストーリーの裏には、文化人類学者の野村直樹先生の提唱されている、マクタガードの時間系列を敷衍したE系列時間があるのではないでしょうか。なぜかというと、物理的な時間がどうであれ、社会的動物である人間には、他者との関わりのある生きた時間こそが必要だと思うからです。(例えるならオーケストラの演奏会において、指揮者と演奏者と聴衆のそれぞれ時間、参加者全員に共通する客観的時間、共通の楽譜、演奏者・聴衆・楽器・まわりの空気まで調和し、同調した生きた時間がある) 作中では、時間とは絶対的な物ではないことが例を挙げて説明されてますが、実は空間の方が絶対的ではないという説もあるわけです。そもそも総てが、光速度は一定で何者も光速を超えることが出来ないという大前提から導きだされているのは、ご存じの通り。 有名な「E=mc^2」という公式は、エネルギーがジュール、質量がkg、光速度がkm/sと様々な単位が一つの式に詰め込まれたもので、こんな式を書くと小学校の先生には怒られます(笑) この式から導き出されたものがミンコフスキー空間(相対論的空間)というもので、実際には三次元ですが便宜上左のような二次元の図として書くことも出来ます(図は橋元淳一郎先生の著書より引用) 図中の「非因果領域」というのは、光速度を超える世界線が含まれる領域です。人類には知覚できない領域ですね。←「あの世」? 左の図が意味しているところは、光の時間線の長さが”0″になるとしたら、時間か空間かどちらかが「虚数」にならないといけないことを現しています(図は橋元淳一郎先生の著書より引用) どちらを虚数として扱っても良いということですけど、詳しくは橋元淳一郎先生の著者インタビューを参照して下さい。1,2,3,4 そういう意味では、カントが『純粋理性批判』で“時間と空間は感性による直感(ア・プリオリ)に過ぎない”としたのはさすがですね。 本文中に出てくる「ループ量子重力理論」はここが上手くまとめられていると思います。 上記、「E系列の時間」に関してはここから。 「銀色の魚」 ある日突然全人類が失読失書になってしまう。いかに現代文明が文字(記号も含む)に依存しているかが、これでもかという具体例と共に描かれます。文字が失われた世界で口承によって知識を伝えようとするくだりは、「華氏451度」を彷彿とさせますが、さらに深刻な事態ですね。蔵書を誇るSFファンなんかは、もう死にたくなるでしょう←私もですが(汗;) 「空襲」 ある日、旧式(第二次世界大戦当時)の爆撃機が日本上空に現れ市街地を爆撃する事件が勃発する。どうもそれは大戦当時に海軍が採用していた九十六式陸攻ではないかと判明する。 岡本先生の「二〇三八年から来た兵士」は、言ってみれば未来に復讐される話でしたが、こちらは過去に復讐される話と言えます。残留思念のなせるワザだとしたら怖い。 爆撃機はそれほどでもないですが、戦闘機は小学生時代に読んでいた少年誌によく特集されてました。零戦、隼、マイナーどころでは鍾馗・桜花とか。もちろん米国機とか欧州機も。マンガ「紫電改のタカ」とかやたら格好良かった。零戦は今でも描ける。上空の零戦を見上げたアングルが好き(笑) 「ネームレス」 “日本空飛ぶ円盤研究会”の集まりを皮切りに、様々なSF関係の会合や大阪万博のパーティーの写真にまで写る一人の女性。誰ともわからないその謎の女性は、歳もとらないようだった。コンベンションとか例会の熱気は、参加した者にしか分かち合えないというのはよく分かります。もう一つの短編「インターセクション」を読んだ時にも強く感じたのですが、その頃の仲間の記憶はいったん失われてしまうと永久に不明になってしまいます。その昔「日経MIX」という商用BBSに参加していて途中からsf会議の議長役を引き継いだのですが、そのオフミでメンバーのgakio_01(なかじまたかお)さんとタクシーが一緒になりました。車中の会話が小松左京論から高橋和巳に飛び、なぜかゲーデルの「不完全性定理」の話になりました。この時からgakio_01さんは、私の中では「ゲーデルを語る銀行員」として印象づけられたのです。しかし独居生活で闘病中だった彼は、昨年故人となってしまいました。ゲーデルを語る銀行員だったことを知る人間は私ひとりになったかも知れません。 それと、関西・関東の老舗ファンクラブの会員のかたにインタビューさせてもらう機会があったのですが、創立当時のことは詳しく覚えてないとか。他の古株の会員の方に聞いて頂いてもやはり同じで、この短編を読んでいて切なくなってしまいました(私自身は学生時代のファン活動は皆無なのですが) 「パラドクス」 タキオンによる未来からの通信というと『タイムスケープ』(グレゴリイ・ベンフォード)がありましたが、困るのは情報の質を確認しようが無いと言うこと。本当に未来からの通信かどうかもわからないし。本文中にもそれらしき言及がありますが、その時点で最善と思われることをやるしかないですねえ(汗;) 「ソーシャルネットワーク」 … 続きを読む

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