日別アーカイブ: 2020年8月14日

高丘哲次先生著者インタビュー関連書籍

関連書籍に関しては、高丘哲次先生のTwitter(@TetsujiTakaoka)の固定ツイートを参考にしました。 ネタバレしている箇所が多々ありますので、未読の方はお気をつけ下さい! 新潮社「波」(2020.3.25)、売り切れですが、内容は新潮社のサイトで読めます。今号の表紙は阿川佐和子先生です。 「留守番電話」(エッセイ)高丘哲次著 奥様が癌の疑い有りと診断され、そこからの数日間で創作への取り組み方も変わったと記されています。奥様のその後の経過についても、著者インタビューでうかがっています。 「小説新潮」2020年6月号(2020.5.22) 「円の終端」高丘哲次著 大規模な温暖化と海底の地殻変動が組み合わさった結果、地球の表面は海で覆い尽くされていた。 その空を四億羽の鳥の群れが飛び続けていた。彼らは羽を休める陸地が無いため一生空を飛び続けなければならないのだ。 人間とハクセキレイの遺伝子交雑により生まれた人に近い知性を持つ鳥たち。一羽一羽が脳細胞だとしたら、鳥のさえずりが神経間の伝達を司る集団知性なのだ。 遺伝子の均一化を防ぎ劣性遺伝子が出現しないように、彼らは一年に一度、ツメナガセキレイの集団と逢瀬を重ねるのだった。 「小説すばる」2020年6・7月合併号(2020.6.17)集英社 「私的偉人伝」(エッセイ)高丘哲次著 “傑王罷りて母の土産話と相成らむ” 中国語を習っている母親が、中国から送ってくれた記念写真の中に、黄金の彫像が顎をそらせて虚空を睨めつけているものがあった。それが「傑王之像」で、彼の高潔な生き様は敵軍も感銘を受けて像が造られたという。 「別冊文藝春秋」2020年7月号(6/19) 「新刊インタビュー」(高丘哲次先生インタビュー) デビューまでの道のりと、『約束の果て 黒と紫の国』がどのようにして着想されたかを語られています。 「野生時代」2020年8月号(2020.7.13) コラム「告白と赦し」“告白します” 高丘哲次著 高丘先生の犬のうんちにまつわる中学時代の話。 『後宮小説』酒見賢一著 冒頭“腹上死であった、と記載されている”から始まる、第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品 時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに……。 『約束の果て 黒と紫の国』高丘哲次著、久島優装画 2020.3.25、新潮社、1600円 以下、完全にネタバレしているので、未読の方はお気をつけ下さい! “すみれは、種子にエライオソームと呼ばれる蟻が好む誘因物質をくっつけていて、運搬行動を誘発し、その種子を散布させる”というのは、元々メインのアイデアひとつではないかと考えていたのですが、著者インタビューでうかがったところ、実は「長編化するにあたり、蟻の集合による大知性体を倒すものは何かと考えたとき、菫に辿り着いたかたちです。」とのことでしたので、元々アイデアとしては持たれていたものが、長編化する際にうまく結実したということみたいです。 この蟻⇔菫の関係性は『約束の果て 黒と紫の国』の構成そのものに深く関わってきているような気がします。 表の帯の煽りに“「悲劇」を超克する鍵は二冊の書物”とあり、裏でも“伝説の国、壙と臷南の王を巡る、ある「悲劇」が記されていた”とあります。 この「悲劇」とは何が原因だったのでしょう。それはその王二人が、蟻の識人と菫の識人であったためなのではないでしょうか。 「識人」というのは、神によって創り出された知性体で、ブリン氏の《知性化シリーズ》でいうと「類属(クライアント・レース)」に相当かな。蟻の識人というと蟻の性質を備えたヒューマノイドとの認識で良いかも。 【第一章 旅立ちの諸相】 梁斉河、伍州で「壙国の螞九なる人物が、臷南国の瑤花にこの矢を捧げるので受け取って欲しい」という意味の銘文が刻まれている“青銅の矢を象った装身具”を発掘し、当該国がいずれの史書にも記録されておらず、わずかに『南朱列国演義』(小説)と『歴世神王拾記』(偽史)に記されているのみだということを知る。 『南朱列国演義』 伍州を統べる壙王・螞帝の第四三二〇一王子・真气が、祭祀をおこなうため、はるか南の臷南国に赴くところから始まるのですが、臷南国の女王である瑤花が、たった一人で出迎えにやってきます 真气は、蟻の識人である螞九の一部が操る人間であり、瑤花は菫の識人であったのでそれとは知らず引かれ合ったのではないかと推測。 瑤花は、植物全般を自由に操ることの出来る菫の識人であり、しかも先代の記憶を代々受け継いでいるという、梶尾真治氏の「エマノン」のような設定であることはラストで明らかになります。 瑤花は天真爛漫で身の安全にもかまわない童女ぶりを発揮してますが、それはその知識と圧倒的な能力により、ほぼ恐れる事象がないので危険にも無頓着になってしまったと推測されます。 実は次の『歴世神王拾記』のパートの方が時代が前になるのですが、最初読んだ時は全く気づかず。 … 続きを読む

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