日別アーカイブ: 2019年7月2日

『うつくしい繭』櫻木みわ著

今年になって連続して著者インタビューをお願いしている「ゲンロン 大森望 SF創作講座」受講生関連書籍の紹介です。 櫻木みわ著、ササキエイコ装画 講談社 (2018/12/19)、Kindle版、1,404円 収録作: 「苦い花と甘い花」 「うつくしい繭」 「マグネティック・ジャーニー」 「夏光結晶」 関連リンク先: 発行元の講談社のサイト:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000318321 朝日新聞「好書好日」:https://book.asahi.com/article/12089861 NEWSポストセブン:https://www.news-postseven.com/archives/20190118_850492.html 東ティモール(Wiki):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AB 日本東ティモール協会:http://www.lorosae.org/ 外務省(東ティモール):https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/easttimor/index.html 在東ティモール日本国大使館:https://www.timor-leste.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html 大使館員の見た東ティモール:https://www.timor-leste.emb-japan.go.jp/column.htm 私の見た東ティモール:https://www.timor-leste.emb-japan.go.jp/column2.htm 今月のイチオシ本(文/大森 望):https://www.shosetsu-maru.com/storybox/book_review/1145 すみません、GWの頃に一度アップしていた、『うつくしい繭』『異セカイ系』『乙女文藝ハッカソン(1)(2)』の三冊まとめて紹介していた記事は、櫻木みわ先生著者インタビューが決まったので、仕切り直しします。『うつくしい繭』は、読む人によって様々な貌を見せる懐の深い短編集だと気がついたからなのですが…… 取りあえず「苦い花と甘い花」から始めます。 以下、インタビュー記事中には書けないネタバレ多々につき、未読の方はお読みにならないで下さいませ。というか読んでいることを前提として書いてます。 —————————ここから————————– 「苦い花と甘い花」 東ティモールで「死者の<声>」を聞くことができる少女が主人公。ラストで少女の選んだ選択が「わたしを双子の妹に」ということで、今まで聞こえていた<声>が聞こえなくなってしまう。私も最初は、今まで苦しい生活をしてきたのだから、この苦渋の選択は責められないなぁと思っていたのですが…… 収録されている他の短編も読んでいくにつれ、ん?違うなあ、違和感があるぞと。どの短編もこれから物語が進んでいく余地を残して終わっているんですね。 この短編に限って言うと、特にラストの一行は、ピンと張りつめた耐え難いような「静寂と余韻」を感じさせ、さらにそこまでの決意を持ってアニータが手に入れたかったものとは何かということも考えさせられるんですね。それと、昔アルピニストの野口さんがTVのインタビューで、シェルパの娘さんとの結婚(?)について語られていたのを見ていたからなのです。 アルピニストとシェルパの娘との、世にも奇妙な「結婚生活」:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52512?page=2 で、物語の今までの背景と展開から私が予想した結末は…… —————————ここから————————– 双子の妹になったアニータは、大統領に頼み込んでキューバへの国費留学生となり、医師になって東ティモールへ帰ってくる。他の東ティモール出身の医師と共に地域医療に奮闘するアニータ。その努力が世間にも認められるようになり、東ティモール初の女性大臣に(厚生大臣)。やがて大統領にという声も民衆からわき上がるが、アニータはそれを固辞する。 そしてアニータが天に召された時、<声>たちが戻ってくる。 「お帰り、アニータ」 「みんな心配していたんだよ」 「ひょっとして、“双子の妹に”と言ったときからこうすることを決意していたの?」 「当たり前でしょ(ニッコリ)」 … 続きを読む

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